シリ
コ
ンバレーと
ケンブリ
ッ
ジにみる
オープン・
イ
ノ
ベーショ
ン
法政大学 経営学部&ビジネススクール
田路則子
『
ハイテク
スタ
ート
アッ
プの経営戦略
-オープン・
イノ
ベーショ
ンの源泉』
オープン・
イ
ノ
ベーショ
ンで高まる
ハイ
テク
・
スタ
ート
アッ
プへの期待
共同研究
特許利用
ス タ ー トア ッフ ゚投資
ス タ ー トア ッフ ゚買収 社内研究
研究 開発
ヒ ゙シ ゙ネ ス モ テ ゙ル
本書の内容
•
バイ
オテク
ノ
ロジー、
半導体、
ICT分野のハイ
テク
・
スタ
ー
ト
アッ
プの成長事例の紹介
•
米国、
英国、
台湾の起業先進地域の起業イ
ンフ
ラ
がハイ
テク
・
スタ
ート
アッ
プ創出と
成長へ及ぼす影響
用語の定義
•
ハイ
テク
・
スタ
ート
アッ
プス
(HS)
「
経済的基盤を築けるまで成長できた場合には、
多く
の
雇用を生み、
技術変化を普及さ
せ、
自ら
つく
り
だし
たイ
ノ
ベーショ
ンのカ
ルチャ
ーをあら
ゆる経営体に波及さ
せて
いく
よう
な潜在的影響力を持ちう
る中小企業」
(
コ
ーネル大学の
David BenDanielによる
)用語の定義
•
アカ
デミ
ッ
ク
・
スタ
ート
アッ
プス
「
研究機関(
または大学)
の技術を基に、
起業家・
発明家
により
率いら
れた革新的な中小企業」
(
新藤晴臣
,2005)
日本では一般に、
「
研究機関発ベンチャ
ー」
「
大学発ベン
チャ
ー」
と
呼ばれるこ
と
が多い。
•
スピンアウト
「
既存企業を退職し
た起業家により
率いら
れた中小企業」
ハイ
テク
・
スタ
ート
アッ
プ
(HS)
と
シリ
コ
ンバレー
時代と
と
も
にシリ
コ
ンバレーは、
H
S
を生み出し
産業
を育てた
1938
年
HP
社創業
1950
∼
60
代
半導体(
Fairchild
、
Int el
)
1970
∼
80
代
I
T
(
Apple Oracle)
シリ
コ
ンバレー
の先行研究
• サクセニアンによるSVの特徴
– 企業の新陳代謝激しい
– 移民が多く流入し、特に優秀な技術系人材を集まった
– ベンチャー・キャピタルが豊富な資金とノウハウを提供した
Region Advantage (Saxenian 1994)
現代の二都物語―なぜシリコンバレーは復活し、ボストン・ルート128は沈んだか
• 高い労働市場の流動性
– 企業の新陳代謝激しくても、人材は企業を異動しながらSV地 域に住み、コミュニティを形成する
– 技術者は個人レベルで情報交換しながら、企業から企業へ渡 り歩いている。雇用者も解雇や雇用を煩雑に行う。人材流動化 が進むSV地域は企業間の境が無い、大きな人材市場として機 能している(バウンダリーレス・キャリア)
投資にみるシリ
コ
ンバレーの位置づけ
• 2008年のVC投資額は、米国284億ドル、欧州は780億ドル、 日本は15億ドルであり、欧州のVCは米国のスタートアップ へも投資している。
• 米国VC投資284 億ドルの地域別内訳
Californiaに55.2%、M assachusett sに8.4%、
New Yorkに7.2%、Texas 4.8%、Washingt onに3.8% Californiaのうち、かなりをシリコンバレーが占める
• 米国VC投資284億ドルの業種別内訳
ソフトウエア17%、バイオ16%、エネルギー関連16% 通信14.2%、医療機器12% 、ITサービス7%、
起業を支える環境:
流入する人材
• シリコンバレーの人種構成 (1995−2005年のデータ) インドから移民15.5%
中国&台湾から移民12.8%
他日本、ドイツ、イラク、イスラエル、フィリピン等から数%ずつ
• 移民の創業者の割合(1995−2005年のデータ) California 39%(中でもシリコンバレーは52.4% ) New Jersey 38%
M assachuset t s 29%
・ 最近は意識が変わってきている(2008年のデータ:中国人とインド人)
留学後は米国で働いてみたいが、永住を必ずしも望まない
革新的製品を生む国は、10年後は米国、25年後は自国と予想 自国で起業を望む人は、米国で起業を望む人の3倍の数
起業を支える環境:
支援機関
• ベンチャー・キャピタル
スタートアップ専門の投資金融機関
人的資源管理の策定、人材採用活動、ストックオプションの導入、 営業担当バイスプレジデント(VP)の採用時期に影響する
(Hellman andPuri,2002)
• スタートアップ専門の弁護士、会計士、弁理士
• 大学発の技術
– TLO(技術移転機関)が大学に存在し、特許収入は大学や個人 に還元される
起業を支える環境:
高学歴者によるH
S
の起業
• Californiaには、St anford、UC Berkeley 、CALTECHの理工系難関 大学が所在し、技術系人材を起業家として輩出する
• CA所在の技術系企業4,230社の代表取締役の出身校に、 St anford、UC Berkeley 、CALTECHが占める割合は11.5% (Vent ure Access社2008年のデータ)
• 利点
– 同窓会ネットワークを利用できる
– VCによる審査で高い評価を得やすい
米国の事例:
バイ
オテク
ノ
ロジー
企業名 テルシカ(T erc ic a) タセレ(T ac ere)
出自 スピンアウト アカデミック・スタートアップ
技術シーズ
創業者のジェネンテック勤務
時代の技術を利用
スタンフォード大学医学部
教授の技術を利用
(S c ientific Adviser)
製品サービス 成長不全治療薬開発 RNAi関連創薬(肝炎)
設立 2000年 2002年
公開前調達額 6500万ドル 800万ドル(再設立等経緯)
出口
2004年ナスダック市場上場
(調達額5300万ドル)
未上場
アライアンス先 イプセン、藤沢薬品等
ファイザー等
(1億4500万ドル)
アライアンスの方法 特許利用、公開後に買収 特許利用、共同研究
創業者の出身 オーストラリア 米国
創業者の学歴と職位 生物学博士、C T O 生物学修士、C EO
米国の事例:
半導体・
ICT
半導体における事例 IC T における事例
企業名 S igmax T ec hwell MailF rontier B ac kblaze
出自 スピンアウト 二度目 スピンアウト 二度目
技術シーズ 起業後開発 起業後開発 起業後開発 起業後開発
製品サービス
C D- R OM制御チップ 設計
監視カメラ用チップ 設計
スパムメール対策 ソフト
自動バックアップ システム
設立 1994年 1997年 2001年 2007年
公開前調達額 ? 6300万ドル 1600万ドル 0
出口
2年で売却 (1440万ドル)
2006年NAS DAQ上場 (調達額5000万ドル)
2005年売却 (3100万ドル)
未上場
アライアンス先 アダプテック サムソン、三洋電機 ソニックウォール 日本企業?
アライアンスの 方法
スタートアップ買収
共同研究、 スタートアップ投資
スタートアップ買収 買収の交渉有
創業者の出身 日本 米国
創業者の学歴と職 位
米国大学理学部卒、 C E O
C E O 工学修士、C T O C T O
技術シーズ
•
技術革新性高い分野(
バイ
オテク
ノ
ロジーの事例)
①大企業や大学の持つ技術シーズ利用
②
HSが事業化
③別の大企業にラ
イ
センシングやバイ
アウト
•
大企業と
競合し
ない事業ド
メ
イ
ン(
半導体と
ICTの事例)
①大企業の隙間を狙う
製品や市場の設定
②開発リ
ード
タ
イ
ムの早さ
チームレベルで繰り
返す起業
•
成功後のシリ
アルな起業であっ
ても
、
失敗後の再チャ
レンジであっ
ても
、
同じ
構成メ
ンバーで再度の起業が
はから
れるこ
と
が多い。
•
経営陣も
、
雇用さ
れる人材も
、
あたかも
ひと
つのチー
ムのよう
に、
スタ
ート
アッ
プから
スタ
ート
アッ
プへ渡り
鳥
のよう
に移動し
ていく
起業に関わる人的資源が狭い地域にプールさ
れてい
て、
ビジネスチャ
ンスがあると
一気に複数の人材が供
給さ
れるのではなく
、
適切なタ
イ
ミ
ングで必要な人材が
VC
の役割
•
VCは、
出口戦略に影響を与える。
•
近い将来の
IPOの可能性がみえなければ、
バイ
アウ
ト
を出口戦略と
し
てすすめる。
VC
によっ
て、
成長可能性のないスタ
ート
アッ
プが早
く
淘汰さ
れるこ
と
で、
次の起業の機会が促さ
れ、
産
ケンブリ
ッ
ジ地域の歴史
地理的条件
ロンドンの北北東約80KM(ケンブリッジ州の州都) 1960年代までは農業地域
ロンドン地域から移転した小規模工場が周辺に点在するだけで 大企業が存在せず
歴史的経緯
1209 Cambridge University 創立(創立800年) 1960 Cambridge Consultant Ltd. 設立
1968 CAD Centre 設立 → 1983年民営化 *国研の民営化(HSのさきがけ)
1970 Cambridge Science ParkをTrinity Collegeの土地に設立 *最初のサイエンスパーク
1985 Cambridge Phenomenon Report by Segal
ケンブリ
ッ
ジ現象の特徴
数多く
のハイ
テク
企業が集積し
ているこ
と
ハイ
テク
企業の技術分野は、
ICT
(
ハード
ウエア、
ソ
フ
ト
ウエア)
、
エレク
ト
ロニク
ス、
バイ
オテク
ノ
ロジーが
主であるこ
と
創業し
たばかり
で、
規模が小さ
く
、
独立系で、
ケンブ
リ
ッ
ジ生まれである
HS
が多いこ
と
HS
は技術開発やデザイ
ンを主な事業にし
ているか、
付加価値の高い製品を少数生産し
ているこ
と
HS
は大学や公的・
民間の研究機関と
連携し
てビジ
ネス展開を行っ
ているこ
と
HS
を支える特別のイ
ンフ
ラ
• HSが技術開発やデザインを主な事業にしているか、付加価 値の高い製品を少数生産することを支えるのは、
• 製品の企画と開発を請け負うコンサルタント会社
1963年Cambridge Consult ant s, 1970年PA Technology Cent re 1987年 The Technology Part nership, 1996年Cambridge Design
Part nership
• 研究ではなく、開発を手伝って製品化することが役割
HS
を支える起業イ
ンフ
ラ
技術移転・創業支援機関:Cambridge Enterprise Ltd.
大学100%出資、スタッフ45名、ライセンシング、スタートアッ プ創業支援、出資を行う。
2006年の設立時から2009年まで90社程度に出資した。
VC投資
ケンブリッジ地域に対するVC投資はUK全体の18%、 総額約1,278億円(2007年)
ライフサイエンスが36%、ICTが40%を占める。
資金調達
エンジェル、大学のギャップファンド、国内VC、海外VCの
アカ
デミ
ッ
ク
・
スタ
ート
アッ
プの現状
1990年からケンブリッジ大学の技術を使ったアカデミック・ス タートアップ(AS)は一貫して増加傾向にある。
1998年までは毎年10社以下、2002年と2005年は20社
2008年時点で事業継続中のASは45社
大学の技術を使ってはいないが、博士課程の学生が起業し たスタートアップは3倍以上存在している。
英国の事例:
バイ
オテク
ノ
ロジー
企業名 Abc am Astex
出自 アカデミック・スタートアップ アカデミック・スタートアップ
技術シーズ
ケンブリッジ大ポスドク(創業
者でC E O)
ケンブリジ大教授(創業者の
ひとり)
製品サービス 抗体の開発と調達
創薬支援ツールの提供・
新薬開発
設立 1998年 1999年
公開前調達額
5000万円( £=197円) 未公開で144億円
($=92円)
出口
2005年AIM上場
(調達額30億円)
£=197円
未公開
アライアンス先 各大学
アストロゼネカ、ファイザー、
藤沢薬品、三菱ファーマ
アライアンスの方法 大学研究室から仕入れる 共同研究・受託研究
創業者の出身 英国 英国
創業者の学歴と職位 生物学博士・CEO 生物学博士・CEO・取締役
英国の事例:
半導体・
ICT
半導体 I CT
企業名 C DT Bango
出自 アカデミック・スタートアップ 3回目起業
技術シーズ
ケンブリッジ大学教授(創業者
のひとり)
起業後開発
製品サービス
有機発光ダイオードの素材・
デバイス開発
携帯向け課金・
支払いサービス提供
設立 1989年 1999年
公開前調達額 160億円($=92円) ?億円
出口
2004年NAS DAQ上場、2007年
住友化学へ売却(262億円)
($=92円)
2005年AI M上場
(調達額12億円)
1£=197円
アライアンス先
住友化学・フィリップス、
エプソン
_
アライアンスの 方法 特許利用・共同研究 _
創業者の出身 英国 英国
創業者の学歴と職位 博士・C T O 工学学士・CEO
ケンブリッジ地域:まとめ
(
1
)
100
社以上の
VC
投資をう
けた
HS
が集積し
、
毎年
新たに
10
社以上が創業し
ているアカ
デミ
ッ
ク
・
ス
タ
ート
アッ
プを含む
HS
の創業のイ
ンフ
ラ
が確立さ
れた例外的な地域
(
2
)
技術コ
ンサルティ
ング会社や
VC
や起業家やエン
ジェ
ルが多数存在し
、
それら
が個別の役割を果た
し
ながら
複合的な効果をも
たら
し
、
スタ
ート
アッ
プ
を含むハイ
テク
産業を集積さ
せている
ケンブリ
ッ
ジ
地域と
米国と
の関係
米国市場の重要性
• Bangoは、販売や業務提携の責任者は米国人であり、NYに オフィスを持つ
• Abcamの売上高の4割強は北米であり、米国ケンブリッジに 拠点を持つ。
資金調達
• CDTは、大型投資を米国の東海岸のVCから受け、NASDAQに 公開した。
日本の大手企業の姿
• 米国・英国のスタートアップを共同研究やライセンシングの 提携先として選ぶ
• 投資を行うことも少なくない。
• 買収にも積極的、特にバイオテクノロジーと素材関係
日本のスタートアップに対しては、
• 共同研究開発も、試作品の前払いをすることも稀
• 数千万の前払金を拒否する(海外には数十億単位の投資)
日本のスタートアップは、パートナーではなく、サプライヤー に過ぎない、、、?
国内のイノベーションの源泉を見捨てた先にあるものは、何 だろうか?
日本のハイ
テク
・
スタ
ート
アッ
プを顧みると
通常のスタートアップの状況は、、、
• 日本の起業家たちが掲げる堅実・謙虚な目標
• ベンチャーキャピタルの未成熟
• 新興企業の深刻な人材不足 ∼ 有能な人材の大手志向
Feigenbaum & Brunner (2003) 筆者の調査からは、、
• グローバル市場は、国内市場を制覇した後で狙うつもり
• 大企業からのスピンアウトが多く、チームではなく、孤独な起業
• ハイテク・スタートアップの経営者は、CTOタイプがCEOの役割も
担うため、営業、マーケティング、財務が疎かになる。