●相続税のABC
296 297
相
続
税
前項で説明した相続税の計算の順序に したがって計算し、相続税額の2割加算 および各種の税額控除を行った後におい ても納付すべき税額がある場合には、相 続税の申告をする必要があります(ただ し、次ページのQ&Aのように、相続税 額が0でも申告が必要な場合もありま す)。
相続開始のあったことを知った日の翌
日から10ヵ月以内に申告を行い、同じ
期限までに納税も行わなければなりませ ん。
申告書の提出先は、被相続人が死亡時 に住んでいたところの税務署です。財産 のあるところの税務署や相続人等が住ん でいるところの税務署ではありません。 相続人等が2人以上の複数である場 合、1通の申告書に連署して提出するこ とができます。申告書には、被相続人の 死亡時の財産等についての明細書や相続 人の確認のための戸籍謄本や除籍謄本な どを添付しなければなりません。同一の 被相続人から相続等によって財産を取得
したすべての人には、各相続人等が受け た利益の価額を限度として相続税の連帯 納付の義務があります。
同一の被相続人から相続等を受けた他 の共同相続人等がいる場合、相続人等は、 原則として被相続人の死亡時の住所地の 税務署長に対して、相続が開始される前 3年以内にその共同相続人等が被相続人 から取得した財産または相続時精算課税 制度の適用を受けた財産について、贈与 税の申告書に記載された贈与税の課税価 格の合計額の開示を請求することができ ます。ただし、この開示請求ができるの は、相続税の期限内申告書、期限後申告 書、修正申告書の提出または更正の請求 が必要なときに限られます。
なお、平成28年1月1日以降の相続等 に係る申告書(例えば、平成28年1月1 日に相続等があったことを知った場合は 同年11月1日までに提出)から、相続人 等の個人番号(マイナンバー)の記載が 必要です。
相続税の申告と納税
12
遺産分割が申告期限までに行わ
れない場合
遺産分割が、申告期限である10ヵ月以内の期限に間に合
わない場合は、どうすればよいのでしょうか?
このような場合は、遺産分 割が決まらなくても、法定 相続分または包括遺贈の割合通り遺 産を取得したものとして一応期限内
に申告・納税します。この場合、小
規模宅地等の特例や配偶者の税額軽 減は適用せずに申告することになり ます。その後、遺産分割の協議が調 えば、税金を納めすぎているときは 遺産分割があったことを知った日の 翌日から4ヵ月以内に更正の請求を
することにより還付を受けることが できます。逆に、はじめに納めた税 金が少ないときは、遺産分割があっ たことを知った日の翌日から10ヵ月 以内に修正申告を行い、追加納税で 調整します(この修正申告は、加算 税の対象にはなりません)。
なお、小規模宅地等の特例や配偶 者の税額軽減は申告期限から3年以 内に分割された財産については適用 を受けることができます。
相続税額が0でも申告が必要な場合
292ページまでの計算を行った結果、納付すべき相続税額は
0となりました。この場合は、相続税の申告は不要ですか?
いくつかの相続税の規定に は、申告等を条件に軽減を 受けられるものがあり、代表例とし て配偶者の税額軽減( 291ペー ジ参照)や小規模宅地等の特例(
363ページ参照)があげられます。
そのため、これらの規定の適用をし なかった場合に納付すべき相続税額
があるならば、相続税の申告をしな ければなりません。
また、相続時精算課税の適用を受 けた者については、相続税額が0で 申告が不要とされる場合であって も、相続税の申告を行うことで還付 を受けられる場合があります(
316ページ参照)。
-2
●相続税のABC
298 299
相
続
税
延納
相続税は金銭で一時に納めるのが原則 ですが、相続財産の多数を不動産等が占 めている場合など、期限までに納付する ことが困難な場合も考えられます。そこ で相続税には延納という制度が設けられ ています。
相続税額が10万円超で、かつ、納期
限まで(または納付すべき日、以下同じ) に金銭で納付することが困難である事由
がある場合に、その納付が困難な金額(注)
を限度として延納が認められます。金銭 で納付することが困難な金額の範囲は、 相続財産のみでなく納税者の固有財産 (現金や預貯金)も含めて判定が行われ
(注)納付が困難な金額は、納付税額から次の金 額を引いた額とされています。
・納期限に有する現金、預貯金など換価の
容易な財産から、納税者と配偶者その他の 親族の生活費3ヵ月分および事業継続に当 面必要な運転資金を引いた額
相続税の連帯納付義務
自分はきちんと相続税を納めたのに、税務署から兄弟の
分の相続税を納めるよう通知が来ました。兄弟の分の相
続税も払わなければならないのですか?
相続税には、相続人等に連 帯納付義務があります。も し、ある相続人等が相続税を払えず、 税務署がその相続人等に納税能力が ないと判断した場合は、他の相続人 等に相続税を払うように求めます。 したがって、兄弟の分の相続税も払 わなければならないこともあります。 このようなことが起こらないよ う、遺言を遺す際や遺産分割を行う 際には、それぞれの相続人等が相続 税を払うのに困らないかどうかを考
える必要があります。
ただし、平成24年4月1日以後に 申告期限等が到来した相続税につい ては、申告期限から5年を経過して も連帯納付義務者に納付通知書が発 せられていない場合や納税義務者が 延納または納税猶予の適用を受けた 場合には、連帯納付義務が解除され ます(平成24年4月1日において滞 納となっている相続税についても同 様の扱いとなります)。
ます。
延納を利用する場合には、納期限(期 限内申告・期限後申告・修正申告の場合 は申告期限、以下同じ)までに延納申請 書を提出し、担保(公社債・株式・土地・ 建物など一定のもの)を提供することが 必要です。延納申請書が提出されると、 3ヵ月(または6ヵ月)以内に税務署長 から延納が許可あるいは却下されます。 延納税額が50万円未満で、延納期間が3 年以下の場合は担保の提供は不要です。 担保とすることのできる株式および社債
は、原則として上場されているものに限 られます。ただし、①相続等により取得 した財産のほとんどが取引相場のない株 式であり、その株式以外に担保にできる 財産がない場合や、②取引相場のない株 式以外の財産が他の債務の担保になって いる場合は、相続等により取得した取引 相場のない株式を担保とすることができ ます。公社債や株式などを担保とする場 合は、原則として、供託して供託書の正 本を提出する必要があります。
設例 納付税額:5,000万円 換価の容易な財産:1,000万円
3ヵ月分の生活費と当面必要な運転資金の合計額:500万円 延納の限度額:5,000万円−(1,000万円−500万円)=4,500万円
●延納のときにかかる利子税
形 態 延納が認められる年数 利子税※2※3
通常の場合 5年以内 年6.0%(年6.6%)
立木の割合が 30% を 超 え る場合
5年以内
立木に対応する税額 年4.8%(年5.4%) その他の財産に対応
する税額 年6.0%(年6.6%) 不動産等の割合
が50%以上75 %未満の場合※1
不動産等に対応する税額 15年以内 年3.6%(年5.4%) その他の財産に対応する
税額 10年以内 年5.4%(年6.0%)
不動産等の割合 が75% 以 上 の 場合
不動産等に対応する税額 20年以内 年3.6%(年4.8%) その他の財産に対応する
税額 10年以内 年5.4%(年6.0%)
※1 「不動産等」には、不動産のほか借地権など不動産の上に存する権利、立木、事業用の減価償却資産、一定の非 上場の同族会社の株式などを含みます。上の表のほかに、計画伐採立木に係る延納や緑地保全地区等内の土地に 係る延納の特例などがあります。
※2 平成12年4月1日以後の期間に対応する利子税から適用される利子税率です。それ以前は( )内の利子税率 が適用されます。また、各分納期間開始日の2ヵ月前の月末時点の特例基準割合(日本銀行が定める基準割引率 に年4%を加算した割合)が、年7.3%未満である場合には、各利子税の率は以下の算式により算出された率と します(平成12年1月1日以後の期間に対応する利子税から適用)。
各利子税の率×特例基準割合7.3%
したがって特例基準割合が4.3%の場合、実際の利子税率は、6.0%→3.5%、5.4%→3.1%、4.8%→2.8%、 3.6%→2.1%となります。
※3 平成26年1月1日以後の期間に対応する利子税については、「特例基準割合」の定義が、「前々年10月〜前年9 月の銀行の新規の短期貸出約定平均金利をもとに財務大臣が定める割合に1%を加算した割合」に改められ、前 年の特例基準割合が7.3%未満のとき、※2の算式で利子税率が算出されます。平成29年中の期間に対応する利 子税は、特例基準割合が1.7%であるため、実際の利子税率は、6.0%→1.3%、5.4%→1.2%、4.8%→1.1%、 3.6%→0.8%となります。
●相続税のABC
300 301
相
続
税
これらの財産は、物納できる順番が上 の表の①から⑤の順と決まっています。 例えば、③の財産を物納できるのは①と ②の財産がないときに限られます。なお、 平成29年度税制改正で物納財産の範囲と 順位が見直されています。従来第2順位
とされていた上場株式、ETFなどが第1 順位とされました。また、新たにREIT などが物納財産に加えられ、第1順位と されました。
上の表の②④の物納劣後財産は以下の ものです。
物納
税金は金銭で納付するのが原則です が、相続税では一定の場合に金銭以外で 納付することが認められています(物納)。 物納は、相続税を延納によっても金銭 で納付することが困難である事由がある 場合に、納付が困難な金額を限度として 認められます。金銭納付が困難かどうか は、貸付金の返還や退職金の給付の確定 など近い将来における金銭収入も考慮し
た上で判定が行われます。物納財産の収 納価額は、原則として課税価格計算の基 礎となった価額、すなわち課税時期の時 価(相続税評価額)となります。物納に あてることのできる財産は、相続財産の うち、次のものに限られています(ただ し、相続時精算課税制度の適用を受けた 財産は除きます)。
前ページの表の財産の中でも、次に該 当するものは、管理処分不適格財産とな
り、物納は認められません。
物納を利用する場合には、納期限まで に必要書類を添付して物納申請書を提出 することが必要です。物納申請書が提出 されると、3ヵ月(調査などに相当の期 間を要すると見込まれる場合は6ヵ月) 以内に税務署長により物納の許可または 却下がされます。
物納が却下された場合、納期限の翌日 から納付の日まで、相続税額の年7.3% (または、「前年11月30日の特例基準割合」
のいずれか低い割合)の利子税を納付し なければなりません。物納申請をしたも のの、延納が可能であることを理由に却 下された場合は、却下の日の翌日から20 日以内であれば延納の申請を行うことが できます。
いったん物納の許可を受けた後であっ ても、許可を受けた財産が賃借権などの 設定されている不動産であり、相続税を
金銭によって一時にまたは延納によって 納付することが可能になった場合、許可 後1年以内であれば物納を撤回して金銭 による納付によることができます。ただ し、すでに換価されている等の理由によ り物納の撤回を拒絶される場合もありま す。
物納の許可を受けて物納した場合は、 その物納にあてた財産の譲渡はなかった ものとみなされ、譲渡所得等は非課税と なります。一方、不動産など相続財産を 売却換金して納税する場合には、その売 却について譲渡所得等の課税が行われま す。もっとも、その売却が相続開始の翌 日から相続税の申告期限の翌日以後3年 以内に行われた場合には、譲渡所得の計 算において、譲渡した財産の取得費に一 定の相続税額を加算できる特例を受ける ことができます。
順位 物納にあてることのできる財産の種類
第1順位
①不動産、船舶、国債、地方債、「株式・社債・REIT等」のうち上場されているも の、オープンエンド型※または上場の証券投資信託、オープンエンド型※または
上場の投資法人が発行する投資証券 ②不動産のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位
③「株式・社債・REIT等」のうち非上場であるもの、クローズドエンド型※かつ未
上場の証券投資信託
④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位 ⑤動産
※1ヵ月に1日以上換金可能な証券投資信託をオープンエンド型、そうでない証券投資信託をクローズドエンド型とし ます。
(注) 特定登録美術品は、上記の順位によらず物納することができます。
●管理処分不適格財産
不動産
・担保権が設定されている ・権利の帰属について争いがある ・訴訟をしなければ通常の使用ができ
ない
・借地権を有するものが不明 ・他の不動産と一体
・管理処分の費用が過大
・耐用年数を経過し、通常の使用ができな い
・物納を認めると債務を負担しなければな らない
・公序良俗違反の目的に使用されている ・引渡しに必要な行為がされていない ・暴力団員等が地上権等を有している
株式
・譲渡に一定の手続が定められている が、その手続がとられていない ・譲渡制限株式
・担保権の目的となっている ・権利の帰属について争いがある ・共有に属する
・暴力団員等が役員となっている等の法人 の株式
●物納劣後財産
・地上権などが設定されている土地
・法令に違反して建築された建物とその敷地 ・土地区画整理事業などがなされているが、
仮換地などの指定がなされていない土地 ・納税義務者の居住・事業の用に供されてい
る建物と敷地
・工場など維持管理に特殊技能を要する建物 と敷地
・公道に2メートル以上接していない土地 ・法令により建物を建築できない土地 ・忌み地
・休眠会社の株式