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組織科学 Vol.50No.1 : 52-69 (2016)

52

【査読付き論文】

  自 由 論 題

破綻企業の構造的慣性を生み出す組織内メカニ

ズムの解明

――環境変化に脆弱な個体群の同定――

  小城 武彦(株式会社日本人材機構 代表取締役社長)

  キーワード

構造的慣性,組織の衰退,組織の重さ,企業再生,産業再生機構

Ⅰ.はじめに

本稿は,破綻企業の構造的慣性を生み出す組織 内メカニズムを業種横断的な観点から解明するこ とを目的とする.

2000 年代以降,我が国の経営実務において, 「企業再生」への取組みが拡大してきている.特 に,2003 年に政府主導により株式会社産業再生 機構が設立されたことを一つの契機として官民双 方の活動が活発となり,多くの再生事例が蓄積さ れてきた.企業が破綻に至る事由は必ずしも一様 ではないが,上場企業など比較的規模の大きい企 業においては,事業環境が変化したにもかかわら ず,不採算事業の縮小・撤退,高コスト構造の是 正,コア事業への経営資源の集中といったいわゆ る事業構造改革をタイムリーに実施できないこと が破綻原因に挙げられることが多い.事業構造改 革を実施しないまま時間が経過してしまい,自力 再生のための体力を失ってしまうことが一つのパ

ターンとなっている1).Hannan & Feeman(1984)

は,組織が環境変化に対応してその戦略や構造を 変化させることができない特性を「構造的慣性」 と呼んだが,破綻企業にはその構造的慣性が強く 働いていると考えられる.

一方,日本企業の再生実務の専門家からは,破 綻企業には,内向きな組織風土や経営者のリテラ シー不足など業種横断的に共通する組織的な要因 が存在するとの声が少なくない(三枝,2001;冨 山,2007;西浦,2009).また,学術界において も,従来日本企業の強みとされてきたミドルの相 互作用による戦略の創発プロセスが逆にマイナス に機能するケースなど組織的な問題が,業種横断 的な観点から指摘されている(延岡,2002;沼 上・ 軽 部・ 加 藤・ 田 中・ 島 本,2007; 高 橋, 2010a,2010b).これらは,日本企業に共通の組 織課題が業種横断的に存在することを示唆するも のである.

(2)

生み出される背後に,類似した組織内メカニズム が稼働しているのであろうか.本稿の目的は,こ の疑問に対する一つの解答を提示することにあ る.

本稿では,株式会社産業再生機構や類似した公 的企業再生支援組織(以下 再生機構等)が支援 対象とした実質破綻企業 7 社(以下 破綻企業) を対象に探索的な事例研究を実施し,業種横断的 な 特 徴 の 抽 出 を 試 み る.Hannan & Freeman (1977)は,環境への脆弱性において同質な特徴 を有する組織を個体群として捉えているが,本稿 は,事業環境変化に対して脆弱であり淘汰されや すい個体群を,その組織内メカニズムに着目し新 たな見地から業種横断的に同定することを試みる ものである.現状では収益を上げているものの, この個体群に属するがゆえにひとたび事業環境が 変化すれば破綻に至るリスクを内包する企業に対 して,警鐘を鳴らすことを企図する.

以下本稿では,組織の構造的慣性を含む環境へ の適応不全に関する先行研究をレビューした上 で,分析の焦点を整理する.その後,具体的な事 例研究を通じて,破綻に至った日本企業に共通に 存在する構造的慣性を生み出す組織内メカニズム の解明を試みる.

Ⅱ.先行研究の検討及び本稿の分析の焦点

1.構造的慣性:個体群生態学アプローチ

Hannan & Freeman(1977, 1984)は,構造的 慣性を「組織が環境における脅威や機会の出現に 対して比較的ゆっくりとしか反応しないこと」2)

と定義し,組織には構造的慣性が強く作用すると 主張する.その上で,構造的慣性を生じさせる組 織内の要因として,①埋没コスト,②意思決定者 が入手しうる情報の制約,③組織内の政治的制 約,④歴史的経緯から生じる規範的制約の 4 点を 挙げているものの,それらがどのように構造的慣 性を生じさせるのか,その具体的な組織内メカニ ズム,すなわち組織成員の行動や相互作用につい ては分析の対象としていない.不確実性が高い状 況下においては,組織成員の行動が意図した結果

に結びつかない可能性が存在するため,組織成員 の行動とその結果との関係は本質的にランダムに なると想定されることが理由として挙げられてい る.本稿は,破綻企業が有する構造的慣性が如何 なる組織内メカニズムから生じるのかを解明する ことを目的としており,Hannan & Freeman の 研究はその糸口を示してくれるに留まるものであ る.

一方,彼らが主たる分析対象とする個体群 (population)は,「環境への脆弱性において同質 性を有するもの」3)として定義され,個体群の捉

え方は研究のテーマごとに変化すべきものとされ ている.本稿は,破綻企業に見られる業種横断的 な共通点の抽出を試みるものであり,その解明 は,事業環境変化に脆弱で淘汰されやすい個体群 を業種横断的な見地から同定することを意味す る.

2.環境への適応不全に関する組織内メカニズ

ム:組織の衰退に関する研究群

事業環境変化への適応不全が生じる組織内メカ ニズムに関しては,経営学では「組織の衰退」の 領域に豊富な研究蓄積が存在する.「組織の衰退」 は,一般に「組織のマイクロニッチへの適応不全 (deterioration of adaptation)及びそれに伴う組 織内資源の減少」(Cameron et al., 1988)と定義 される4).構造的慣性が生じるメカニズムを組織

の衰退に関する先行研究を援用して説明するため には,組織内メカニズムによって環境(マイクロ ニッチ)への適応不全が持続しその是正が困難で あることを説明する必要がある.

組織内メカニズムに焦点を置く先行研究は,い ずれも企業の経営幹部に注目する点で共通してお り,大別して①経営幹部による意思決定プロセス に焦点を置くものと,②経営幹部の資質に焦点を 置くものが存在する.しかしながら,これらのア プローチは,いずれも環境への適応不全が持続し 是正が困難となるメカニズム,すなわち組織の構 造的慣性が生じるメカニズムを十分に説明できな い課題を有している.

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例が,Staw, Sandelands, & Dutton(1981)の脅 威-硬直理論(Threat

-

rigidity Theory)である. 環境変化(脅威)に直面した組織においては,情 報収集と指示命令のための情報発信が同時に発生 し情報処理能力が低下するため,経営幹部は情報 不足に陥り慣れ親しんだ従来の対応策をとってし まうとする.また,意思決定内容を正確に履行さ せようと経営幹部へ権限を集中させるため,対応 の柔軟性が低下し,環境変化への適応不全が生じ るとする.このアプローチは,企業の環境への適 応不全が生じるメカニズムを明らかにしているも のの,経営幹部が合理的であると想定した場合 に,説明力が大きく低下する課題を有する(犬 飼,2005).すなわち,仮に一度は硬直的な対応 をしたとしても,経営幹部が合理的であれば同様 の過ちを繰り返すとは考えにくく,適応不全が持 続し是正が困難であることを説明することは難し い.したがって,組織の構造的慣性を説明するロ ジックとしては不十分であると言わざるを得な い.

経営幹部の資質に関する分析の代表例は,Up-per Echelon Theory (Hambrick & Mason, 1984) である.このアプローチは,組織の意思決定は, 経営幹部が状況を如何に解釈するかに大きく影響 されるとして,経営幹部の経験や価値観などを理 解する重要性を説く.一定期間にわたり,同様の 意思決定が繰り返されることの説明力を持ちうる アプローチである.経営幹部の資質は社外から観 察が困難であるため,不完全で不正確な面があり つつも(Hambrick, 2007),経営幹部の年齢,在 任期間,教育レベルや幹部間の非均質性などのデ モグラフィックな変数で代用し,計量的実証研究 が蓄積されてきた(例えば,Miller, 1991;Wi-ersema & Bantel, 1992;Boeker, 1997). た だ し,これには,デモグラフィック変数と意思決定 の関係がブラックボックス化しており,「なぜ経 営幹部がその意思決定に至ったのか」,そのプロ セスが必ずしも明確ではないとの批判が存在する (Lawrence, 1997)とともに,「そもそも,そうい った資質を有する人間がなぜ経営幹部に就いてい るのか」,社内の選抜プロセスの分析の必要性も

指 摘 さ れ て い る(Hambrick, 2007). こ の よ う に,このアプローチは,組織内メカニズムの解明 としても十分ではなく,また適応不全が持続し是 正が困難であることの説明についても課題を残し ている.したがって,構造的慣性が生じるメカニ ズムの説明としては十分ではない.

3.日本企業に関する先行研究:組織の〈重さ〉

研究

日本企業の組織問題を業種横断的な観点から分 析した先行研究として組織の〈重さ〉研究(沼上 ほか,2007)が存在する.本研究は,従来日本企 業の強みとされてきたミドルの相互作用による戦 略の創発プロセス(加護野・野中・榊原・奥村, 1983;Nonaka, 1988)を阻害する組織の劣化状 態を組織の〈重さ〉と定義し,「過剰な『和』志 向」,「内向きな合意形成」,「フリーライダー問 題」,「経営リテラシー不足」の 4 つの要素から構 成されるとしている.

本研究は,経営幹部ではなくミドル層を分析対 象とし日本企業特有の問題を取り上げている点で ユニークである一方で,組織の〈重さ〉の構成要 素である「過剰な『和』志向」及び「内向きな合 意形成」は意思決定プロセスに,「フリーライダ ー問題」5),「経営リテラシー不足」は主としてリ

ーダーの資質に焦点を当てており,上記 2.の先 行研究と類似したアプローチをとっている.

本研究においては,組織の〈重さ〉を従属変数 と位置づけた上でそれを生み出す組織構造等の分 析に研究の主眼が置かれている.このため,独立 変数としての組織の〈重さ〉が組織の行動に如何 なる影響を及ぼすか,本稿の問題意識に沿って換 言すれば,組織の〈重さ〉が組織の環境適応に如 何なる影響を及ぼすかついての分析はほとんど行 われていない6)

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4.本稿の分析の焦点

このように,構造的慣性を説く個体群生態学ア プローチが組織成員の行動や相互作用に関心を払 わない一方で,組織内メカニズムに焦点を置く組 織の衰退に関する先行研究群は,組織の環境への 適応不全が持続しその是正が困難となるメカニズ ムを十分に説明できていない.また,日本企業特 有の組織課題に焦点を当てる組織の〈重さ〉研究 も多くの示唆を提供するものの構造的慣性を説明 するには不十分である.

構造的慣性が組織内メカニズムから生じること を説明するためには,組織成員が組織の適応不全 に気づきながらもそれを是正できないことを示す ことが必要となる.何らかの自己維持的なメカニ ズムが組織内に駆動しており,組織成員が合理的 な行動をとりながらも,意図せざる結果として (沼上,2000),適応不全が持続してしまうことを

示さなければならない.

上述した組織の衰退に関する先行研究群の 2 つ のアプローチ,①経営幹部による意思決定プロセ スに着目するアプローチと②経営幹部の資質に着 目するアプローチは,それぞれ別個に理論的発展 を遂げてきたが,お互い隣接する領域を扱ってお り,双方を関連付けることによってよりダイナミ ックな視点で組織内メカニズムを分析することが 可能になると考えられる.すなわち,経営幹部の

資質が経営幹部による意思決定プロセスにどのよ うに影響を及ぼし,その意思決定プロセスの特徴 が新たな経営幹部の登用,すなわち経営幹部の資 質にどのように影響するのか,そしてこのプロセ スが自己維持的になっているのか,という視点で ある.また,本稿が日本企業を研究対象とする以 上,日本企業の特徴であるミドルの相互作用を分 析の焦点に加えることが有効であると考えられ る.なぜなら,日本企業においては,経営幹部の 意思決定プロセスにミドルが深く関与するだけで なく,経営幹部は社内のミドルから選抜され登用 されることが通常であるためである.

以上の問題意識に基づき,本稿では,「経営幹 部による意思決定プロセス」及び「経営幹部の資 質」に,ミドルの役割・機能を追加した上でより ダイナミックな視点から組織内に駆動しているメ カニズムの解明を試みることとしたい.具体的に は,「経営幹部による意思決定プロセス」にそれ と密接不可分な要素として「ミドルによる社内調 整プロセス」を付加するとともに,新たな要素と して「ミドルの出世条件及び経営幹部登用プロセ ス」を追加する(図 1).これにより,「経営幹部 による意思決定プロセスがどのように行われ,そ こにミドルがどのように関与するのか」,「その関 与を通じてミドルがどのように評価され経営幹部 に登用されるのか」,「その結果どのような資質を

1 先行研究と本稿の分析の焦点

経営幹部による 意思決定プロセス

経営幹部の資質 ミドルの出世条件・

経営幹部登用プロセス

ミドルによる 社内調整プロセス

実線:先行研究のアプローチ 点線:本稿が追加する焦点

構造的慣性 (事業環境への適応不全の持続

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経営幹部が具備することとなるのか」,翻って 「経営幹部の資質が意思決定プロセス及びミドル の関与に如何なる影響を与えるのか」,というサ イクルが成立しうる.本稿は,このサイクルを念 頭に置き,①破綻企業には各要素に如何なる共通 点が存在するか,②各要素がサイクルとして駆動 するといえるか,③本サイクルが如何に組織の構 造的慣性を生み出すのか,を事例研究を通じて明 らかにしていきたい.

Ⅲ.研究方法

1.研究設計

本稿は破綻企業の構造的慣性を生み出す組織内 メカニズムを業種横断的な観点から解明すること を目的とするため,研究方法として,組織内の因 果関係を詳細に明らかにするとともに(沼上, 2000),理論構築に有効とされる比較事例研究 (Eisenhardt, 1989;金井,1990)を採用する.研 究対象には,再生機構等が支援対象とした破綻企 業 7 社を選択した7).業種横断的な特徴を抽出す

るため,理論的サンプリング(Glacer & Strauss, 1967)により,破綻企業 7 社をいずれも異なる 業種から選択するとともに,企業規模についても 大手企業 4 社,中堅企業(売上高 100 ~ 500 億円 規模)3 社とサンプルの多様性を確保した.

破綻企業 7 社が実質破綻に至った理由は,再生 機構等が公表している資料から判断可能である. 各社の理由は必ずしも同一ではないが,事業環境 変化への対応が不十分である点で共通しており, 具体的には事業構造改革(不採算事業の撤退や高 コスト構造の是正,コア事業への経営資源の集中 など)の遅れや不十分さといった点が共通に指摘 されている.事業環境が変化する以前はいずれも 収益を上げており,環境変化へ適応できなかった ことが収益の悪化を招いた原因となっている.い ずれも,十分な事業構造改革を実施しきれないう ちに時間が経過してしまい,自力再生の機会を失 ってしまった企業である.

2.データ収集源

データ収集源は,①半構造化インタビュー,② 再生機構等の発表資料,③その他の公知の諸資料 (有価証券報告書,新聞記事など)の 3 種類であ り,表 1 にその概要を,各企業のプロファイルと ともに示した.

⑴ 半構造化インタビュー

図 1 の分析の焦点に従い,①経営幹部による意 思決定プロセス,②ミドルによる社内調整プロセ ス,③ミドルの出世条件・経営幹部登用プロセ ス,及び④経営幹部の資質のそれぞれの特徴につ いて,半構造化インタビューを対面で実施した. インタビュー対象者は 46 名,インタビュー時間 の合計は 70 時間である.

インタビューに当たっては,当該企業の経験し か な い 者 に は そ の 特 徴 を 語 る こ と が 難 し い (Schein, 2010)ことを考慮し,当該企業の特徴を 相対的に捉える視点を有する者を対象者とした. 具体的には,再生機構等の役職員で破綻企業に派 遣された者(以下 機構等派遣者)を中核に据え た.彼らは,コンサルタント,会計士,弁護士, 金融機関経験者が大半を占め複数企業の知見を有 することに加え,派遣先企業で再生の陣頭指揮を 執るために,当該企業やその主要事業の全体像が 把握できるポジションに就き,重要な意思決定に 参画する.通常 1 年から 2 年の期間にわたり当該 企業に駐在若しくは頻繁に接触し,その間,各社 の社内資料,役社員へのアクセスに制約はほとん どない.また,派遣前には,再生機構等以外の第 三者(コンサルティング企業,監査法人等)が実 施した当該企業のデューディリジェンス(財務・ 事業・組織等に係る事前評価)について当該第三 者と議論を重ねる機会を有している.このため, 機構等派遣者は,研究者ではないものの事例研究 で重要となる三角測量を各自レベルで確保してい る共通点を有しており,本研究における中核的な データ源として適切であると判断した.

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するために,破綻以前に当該企業に在籍しその後 他社に転出した者8)(以下 OB)をインタビュー

対象者に追加した.OB だけでは対象者数を確保 できない場合には,補完的に破綻以前から在籍し ている現役プロパー役社員(以下 プロパー役社 員)を追加し,破綻前の特徴を重点的に聴取し た9)

⑵ 再生機構等の発表資料

公の機関が企業再生に関与しているため,①対 象企業の概要,②再生機構等への支援申込に至っ た経緯,③事業再生計画の内容などが公表されて いる.特に破綻事由については本資料を主たる情 報源とし,それをインタビューで確認する方法を とった.

⑶ 公知の諸資料

有価証券報告書を主として経営幹部のプロファ イルの確認のために活用した.また,再生時には 新聞に多数の記事が掲載されており,加えて,再 生に携わった関係者がその経験を書籍として出版 しているケースが存在する.これらは,インタビ ューの内容と照合するために活用した.

3.研究プロセス

分析は,事例研究からの理論構築プロセス (Eisenhardt, 1989)に準拠して実施した.インタ ビューは,対象者の了解を得て全て録音の上文字 に起こし,質的データの分析法(佐藤,2002; 2008)に則り,専用ソフト10)によって定性的コ

ーディングを実施した.本稿の分析の焦点であ る,①経営幹部による意思決定プロセス,②ミド ルによる社内調整プロセス,③ミドルの出世条 件・経営幹部登用プロセス,及び④経営幹部の資 質,それぞれの観点から事例とコードのマトリッ クスを作成し,メカニズムの概念モデルを検討し た.

Ⅳ.事例及び分析

11 社に関するインタビュー調査を進めていく 中で,オーナー系企業11)と非オーナー系企業に

は顕著な差異があることが判明した12).紙面の関

係で本稿においては非オーナー系に絞った議論を 展開することとし,オーナー系企業については稿 を改める.この結果,本稿で分析対象とするの は,非オーナー系破綻企業 4 社(大手企業 3 社, 中堅企業 1 社)となり,インタビュー対象者及び 実施時間は,28 名・46.5 時間となる.

1 企業プロファイル及びデータ収集源

企業プロファイル インタビュー対象者数・インタビュー時間

機構等 資料

公知の資料

企業名 規模 オーナー系/ 非オーナー系

機構等

派遣者 OB 転入者

プロパー

役社員 合計 有報 記事 その他 人数 時間 人数 時間 人数 時間 人数 時間 人数 時間

A 社 大手企業 非オーナー系 3 5 3 5 0 0 2 4.5 8 14.5 ○ ○ ○ ○ B 社 大手企業 非オーナー系 8 11.5 4 7.5 0 0 0 0 12 19 ○ ○ ○ ○ C 社 大手企業 非オーナー系 2 2.5 1 1 0 0 2 4 5 7.5 ○ ○ ○ ○ D 社 中堅企業 非オーナー系 3 5.5 0 0 0 0 0 0 3 5.5 ○ - ○ -E 社 大手企業 オーナー系 7 9 2 3 2 2 1 1 12 15 ○ ○ ○ ○ F 社 中堅企業 オーナー系 3 4 0 0 0 0 0 0 3 4 ○ - ○ -G 社 中堅企業 オーナー系 3 4.5 0 0 0 0 0 0 3 4.5 ○ - ○ -合計 29 42 10 16.5 2 2 5 9.5 46 70

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以下,既述した分析の焦点を前提に,①各要素 における共通点,②各要素の関係性(サイクルと しての稼働の確認),③構造的慣性を生み出すメ カニズム,について順次明らかにしていく.

1.各要素における共通点

⑴ 経営幹部による意思決定プロセス:予定調和 的色彩の強さ

取締役会や経営会議など各社の経営幹部による 意思決定プロセスは,予定調和的な色彩が極めて 強い特徴を有している.

その背景として,社内の対立を回避するととも に,役職や入社年次といった社内秩序を遵守する 強い社内規範が存在する.対立を回避するため に,仮に業務上の必要性があっても同僚に対する 批判と取られかねない言動は極力回避され,業務 上の失敗が生じても個人の責任が追及されること は稀である.またヒエラルキー意識が高く,入社 年次が組織成員の間で強く意識されている.機構 等派遣者からは,組織成員の日常会話の中で成員 の氏名と併せて入社年次が言及されることの多さ が指摘されている.ヒエラルキー意識の高さを反 映して,役職下位者が上位者に対して自らの意見 を開陳することは極力回避され,情報流通の大半 が上から下の一方通行となっている.また,役職 上位者に対して失礼があってはいけない,恥をか かせてはいけないという配慮が強く社内で共有さ れており,経営幹部が事業所などを訪問する際に は,現場は予行練習を含め受入準備に多くの労力 を割くことが常態化している.

また,派閥,学閥,本流部門,特定のステーク ホルダーの意向に忠実なグループなど,政治的な 影響力を有する集団も各社に存在し,社内秩序は 政治的性格を併せ持っている13)

このため,取締役会や経営会議は予定調和的な 色彩を強く具備し,侃侃諤諤の議論が行われるこ とはほとんどない.役職上位者や有力者の意見に 他のメンバーが無批判に同調する傾向が存在す る.機構等派遣者の次のコメントは,破綻企業の 会議の様子を端的に表現している.

「自分が会議で(役職が)上の人に議論を投 げかけると,周囲はびっくりしていた.役員は 自分よりも年下の人間が発言すること自体が気 に食わない様子だった.」(D 社機構等派遣者)

会議は全会一致が原則であり,仮に一人でも反 対すると意思決定をせず,議案は次回以降に先送 りされる.意見が割れる議案について議論を尽く し多数決で決議されることはほとんどない.ま た,出席者の大半が自らの担当部門の利益代表者 として会議に臨んでおり,出席者間でお互いの案 件には口を出さない相互不可侵原則ともいえる暗 黙の合意が成立している.このため,経営陣の一 員として本来行うべき全社最適の観点からの発言 はほとんどなされず,会議では部分最適の議論が 大半を占める.

また,いわゆる PDCA サイクルがしっかりま わっていない点も共通している.特に CA 部分が 犯人探しをすると解釈され,忌避されている.こ のため施策の成功 ・ 失敗が明確にならず,結果と して誰が責任者なのかが不明瞭になっている.本 来,PDCA サイクルは,当初目的が未達成の施 策を議論の俎上に載せ予定調和を崩す力を有して いるが,その事態が回避されている.このため, 下記のコメントが示すとおり PDCA を導入しよ うとした機構等派遣者は大きな抵抗に会うことと なる.

「機構が入って KPI(key performance indi-cator)を設定したときに,できたものは○, できなかったものは×,課題があるものは△と いう整理をしようとしたが,ものすごく抵抗さ れた.×が悪いこと,犯人探しをすると解釈さ れた.」(B 社機構等派遣者)

⑵ ミドルによる社内調整プロセス:事前調整の 重視と妥協色の強さ

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というぐらい,調整している」とその業務量の多 さを,B 社機構等派遣者は「仕事において大事に されていることが,あまりにも調整的なことが多 かった.仕事をする上で大事なことが調整であっ た」とその重要性を指摘する.

事前調整は,社内の反対意見を抑えることに主 眼が置かれ,意思決定プロセスと同様に,役職上 位者や有力者の意向が重視される.このため,調 整プロセスは論理を戦わせるものとなりにくく, 強い妥協色を帯びることとなる.一人の反対も出 ないよう,議案内容に修正が施される.相矛盾す る意見が取り入れられた結果,議案自体が同床異 夢になってしまうことも珍しくない.

それでも反対意見を事前に消しきれない場合に は,会議への上程自体が先送りされ,経営幹部同 士が意見を戦わせる事態が回避される.

C 社プロパー役社員は,「会議で反対意見が出 ると,事務方に(経営幹部から)お叱りがあっ た」と,ミドルにとっての事前調整業務の重要性 を指摘している.

⑶ ミドルの出世条件及び経営幹部登用プロセス: 社内調整力,政治性・恣意性の強さ

上記を反映して,ミドルの出世条件,いわゆる 「できる人材」の定義も特異なものとなる.第一 に挙げられるのは,自分の意見を控え,経営幹 部,特に有力者の考えを忖度しその実現に向けて 社内を調整する能力である.各案件の企画立案は ミドルに任されているが,社内秩序が重視される ために,「上が見たい絵を持っていかないと話が 進まない」(A 社プロパー役社員)ことが多く, 幹部の意向を実現する能力に長けた人材が重用さ れる.その能力の核となるのが,予定調和的な意 思決定プロセスを通すための社内力学を踏まえた 社内調整力である.

A 社プロパー役社員は,この能力を「この案 件は,今の立ち位置はこうだし,雰囲気こうだ し,あそこはおさえた方が良いから,あそこは事 務的におさえたから,ここは言及せずに,このま まこっちの方向さえ行けばいいし,あの人はいつ もこういうことを言うから,という感じ」と表現

し,社内力学に目を配った調整力の重要性を指摘 する.

組織に属する者である以上,ある程度の調整能 力が必要であることは論を俟たない.しかしなが ら,破綻企業のミドルの出世条件においては,調 整能力に極めて高いプライオリティが置かれてい る.破綻企業の人事部経験者14)は,「当社で優秀

といわれている人間を外部の専門会社に評価して もらったら,調整能力に長けている人間ばかりだ った.クリエイティビティはなく,調整と根回し の能力が突出しているとの評価だった」とコメン トしている.

第二の条件として,派閥・学閥など強い政治力 を有する集団に所属することが挙げられる.有力 幹部の意向を察知する機会に恵まれることに加え て,社内調整に必要なネットワークの一員となれ ることが大きな理由として挙げられている.第三 には,出過ぎない,気が利くといった点も重要な コンピタンスとなるようだ.「人とぶつかってい る人は偉くならない.ギスギスする人,空気を読 ま な い 人 は い つ の 間 に か い な く な る 」(A 社 OB),「リーダーシップを強く前に出すようなタ イプ,『出る杭』タイプの人は辞めていった」(C 社プロパー役社員)など類するコメントが多い. 第二,第三の条件は,第一の条件を補完するもの と位置づけられる.

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⑷ 経営幹部の資質:強い社内政治力と低い経営 リテラシー・実務能力

ミドルの中から選抜され登用される経営幹部 は,上記の出世条件及び登用プロセスを反映した 資質を具備することとなる.

破綻企業の経営幹部の資質の最大の特徴は,社 内政治力の強さにある.政治的に有力な集団に属 し,社内力学を踏まえた社内調整に長じているこ とに加えて,有力者から高い評価を得て登用され たことが他の組織成員に認識されていることが, 本人に高い社内政治力を付与することは想像に難 くない.このため,経営幹部は戦略や論理ではな く,役員という立場や人間関係をテコにして仕事 を進める傾向を強く有することとなる.

一方で,経営幹部は,企業経営に必要とされる 経営リテラシーや実務能力を十分に備えていな い.社内調整能力に偏重した出世条件と恣意性・ 政治性の高い登用プロセスの中で,経営リテラシ ーや実務能力が必ずしも必要条件とされないため である.PDCA サイクルによる業務成果に基づ く淘汰プロセスも存在しないため,経営リテラシ ーや実務能力が十分に問われないまま経営幹部に 登用されることが可能となっている.

比較的大きな組織の経営を担う以上,一定の社 内政治力は必要と考えられる.しかしながら,破 綻企業の経営幹部の資質は,経営リテラシーや実 務能力と比較して社内政治力に大きく偏重してい ることが特徴である.

インタビューでは,経営幹部の経営リテラシー や実務能力に関しては否定的かつ辛辣なコメント が多数に上る.

B 社機構等派遣者は,「(幹部は)無能なのに 偉い.……彼らは,丸投げしていて,実務がわか らないから,みんなの前で自分の意見を言って物 事を決めることは絶対にしない.……リスクは取 らず,モノを決めない」と,同社 OB は,「特に スタッフ系幹部のリテラシーは極めて低かった. 共通言語,フレームワークが欠如していた.だか ら,指示できない.……3C,SWOT すらない」 とコメントしている.

経営幹部が部下に出す指示・命令は,経営リテ

ラシー・実務能力の低さを反映して,事実に基づ く戦略的・論理的なものではなく,幹部の立場を 背景とした持論や経験に基づくものが必然的に多 くなる.機構等派遣者の評価は同様に手厳しい. 「数字が全部出終わった後に『何だこれは!』と 文句は言うが,だからこうすべきとは一言も言え ない.結果論の後講釈はいくらでもできるが,こ うすべきとの具体論は一言もない.……企業が成 長していた段階ではそれで成り立っていたかもし れないが,事業の構造が破綻しだした時にはお荷 物なだけ」(B 社機構等派遣者),「高い学歴の人 が集まっているが,リテラシーがある感じではな い.……事業部門長は,社長と同じように,理屈 ではなく下に怒鳴る」(D 社機構等派遣者).A 社プロパー役社員は,会議での経営幹部の発言に ついて「事実に基づくものではなく……時にとて も細かいものが多かったり,思いつき,持論だっ たり,昔話だったりすることが多かった.経営レ ベルの議論ではなかった」と破綻前の状況を述べ ている.

いわゆるパワーベース(沼上ほか,2007)につ いては,正当パワー,賞罰パワーに偏重してお り,経営幹部の指示命令に従うのは,その内容の 適切性(情報パワー)や幹部への憧れ(同一パワ ー)によるものではない.また,リーダーシップ 特性については,タスク志向は弱く,人間関係志 向に強く偏重している.

以上が,破綻企業各社に見られる共通点であ る.表 2 に,企業ごとの代表的なインタビューコ メントを示した.

2.各要素の関係性:サイクルの稼働

次に,上記(1)~(4)の各要素の相互の関係 性について考察を加える.上記各要素の特徴から これら 4 要素は,(1)&(2)⇒(3)⇒(4)⇒ (1)&(2)といった因果関係で一つのサイクル

を構成していると考えられる.

(10)

破綻企業の構造的慣性を生み出す組織内メカニズムの解明  

61

A   社 B   社 C   社 D   社

(1)経営幹部による意思決定プロセス

対立回避・既存秩序遵守

の規範の存在 ○

・ 「仲間に傷をつけない,ギスギ スしたことはしない.」(OB) ・ 「(役職上位者に対して)失礼が

あってはいけない.恥をかかせ てはいけない,という配慮はも のすごい.」(機構等派遣者)

・ 「悪いことは隠すし,見て見ぬ ふりをする.対立を顕在化させ ない雰囲気がある.」(機構等派 遣者)

・ 「そもそも絶対に上には逆らわ ない.」(機構等派遣者)

・ 「対立回避,秩序維持の傾向が, 間違いなくあった.」(OB) ・ 「上位下達で下の者は自由に意

見を言う雰囲気ではなかった.」 (プロパー)

・ 「お互い意見を言うことが良し とされない慣習が存在した.」 (機構等派遣者)

・ 「ヒエラルキー意識がものすご く高い.」(機構等派遣者)

予定調和的色彩の強さ ○

・ 「異論はでない.社長が『ああ, いいねぇ.』というと決まって しまう.」(プロパー) ・ 「議論は激しいものにはならな

い.事前に必要なところには調 整が終わっていて,既定路線に なっている.」(機構等派遣者) ・ 「会議は全会一致が原則.多数

決はありえない.」(OB)

・ 「会議の場では,ガチンコの議 論はほとんどない.極めて特徴 的.」(機構等派遣者) ・ 「対案を出して意見を戦わせる

というよりも,空気的に大勢に 同調する.」(機構等派遣者) ・ 「会議には反対がでるものはか

からない.」(機構等派遣者) ○

・ 「本社の会議はガンガン議論す るものではなく,粛々と会議が 進む.」(OB)

・ 「議論を戦わせる風土は薄かっ た.議論を好む人は閑職に追い やられていた.」(機構等派遣者) ・ 「当時は,一人でも反対すると

意思決定をしなかった.」(プロ パー)

・ 「自分が会議で上の人に議論を 投げかけると,周囲はびっくり していた.」(機構等派遣者) ・ 「取締役会は,担当役員が説明

して,良いも悪いもなく,説明 したら終わりという感じだっ た.自分たちが質問したら嫌わ れた.」(機構等派遣者)

PDCA サイクル欠如 ○

・ 「PDCA は無かった.やること が実績で,フォローはなかっ た.学んでいなかった.」(OB) ・ 「責任をはっきりさせない.皆 で皆を守り合う.いろんな部門 が関与することによって,誰が 責任者か判りにくいようになっ ていた.)(機構等派遣者)

・ 「機構が入って KPI を設定した ときに,できたものは○,でき なかったもの×,課題があるも のは△と整理しようとしたが, ものすごく抵抗された.×が悪 いこと,犯人探しをすると解釈 された.」(機構等派遣者) ・ 「誰が責任者だったんだという

ことが多かった.レビューする 風土は全く無かった.」(OB)

・ 「成功と失敗の判断を明確にし ないことが普通だった.個人の 責任は問わなかった.」(プロパ ー)

・ 「事業へのコミットメントが低 かった.PDCA は実態的に存在 しなかった.」(機構等派遣者)

・ 「成功・失敗をしっかり見てい く風土が無かった.…PDCA が 無いので,何がうまく行かなか った,次はどうするという議論 がなかった.責任者が明確でな いのでやりようが無かった.」 (機構等派遣者)

(2)ミドルによる社内調整プロセス

事前調整の重視 ○

・ 「良くぞあそこまで関係ない人 たちにも調整するというぐら い,調整している.」(機構等派

・ 「仕事において大事にされてい ることが,あまりにも調整的な ことが多かった.仕事をする上

・ 「事前根回しが重要視され,異 論が出そうなものは会議には提 出されなかった.」(プロパー)

(11)

  組織科学 Vol. 50 No. 1

遣者) で大事なことが調整であった.」

(機構等派遣者)

・ 「会議で反対意見が出ると事務 方に(経営幹部から)お叱りが あった.」(プロパー)

(機構等派遣者)

妥協色の強さ ○

・ 「根回しの段階で,角がドンド ン取れてしまい,結局残ったも のに対しては,誰もが『ちょっ と違う』ということになり,信 念を持って進めるという感じに ならなかった.」(プロパー)

・ 「上程されてくるものは,毒に も薬にもならないもの.」(OB) ・ 「新たな企画もマーケティング

などをせず,幹部に気にいられ るように作ってしまっていた.」 (機構等派遣者)

・ 「反対意見がでないように角を 丸めることがあった.」(プロパ ー)

・ 「会議をしても意見を言わない で,その後で(機構の提案を) 骨抜きにしようと画策すること が結構あった.」(機構等派遣者)

(3)ミドルの出世条件・経営幹部登用プロセス

幹部の意向実現のための

社内調整力 ○

・ 「役員の欲するものを提供でき る人が重用されていた.上司か らして,便利な人.決して自分 がこう思うではなく,『この案 件は,今の立ち位置はこうだ し,雰囲気こうだし,あそこは おさえた方が良いから,あそこ は事務的におさえたから,ここ は言及せずに,このままこっち の方向さえ行けばいいし,あの 人はいつもこういうことを言う から』,という感じの人.」(プ ロパー)

・ 「出世するのは,上の思ってい ることを絵にして,通せるよう に調整するヤツ」(OB) ・ 「根回しを行って調整できない

ヤツは力量が足らないというこ と.…頭のいいヤツが労力を内 部調整に使ってしまっている.」 (OB)

・ 「皆の動きを見ながら調整する 人間が偉くなる.実力のある人 の意思に従う人や空気を読む 人」(プロパー)

・ 「社内調整力が大事だった.… 偉くなるタイプは上司を支える タイプだった.」(プロパー) ○

・ 「上の人から言われたことをそ のまま意見せずに実行した人が 引き上げられていた.」(機構等 派遣者)

派閥・学閥等への所属 ○

・ 「出世条件は,社内政治,ネッ トワーク力,個としての賢さ. その頭の良さを社内政治と根回 しと人事関連に使う人が生き残 る.」(OB)

・ 「派閥の人脈に入ることが大切. 好き嫌いとか肌合いの世界.引 き上げてくれる人が出てくると 上がっていける.」(OB)

・ 「人間関係.派閥力学が働いて, 本来経営者が持つべき能力とは 異なる次元で評価が行われ上が っていく.」(OB)

・ 「○○大学だと出世が早かった. 人事部は殆どが○○大学出身.」 (機構等派遣者)

・ 「人と人とのつながりで偉くな る人が多かった.派閥というこ と.見ていて良くわかった.実 力よりは人間関係.業績が厳し くなってからは,特定のグルー プに属する人.」(プロパー) ・ 「特定のステークホルダーに忠

実なグループが力を持ってい た」(機構等派遣者)

・ 「本流部門の人間が有利だった. 偏っていた.」(機構等派遣者) ・ 「本流部門は皆 A の評価が付い

ていた.」(機構等派遣者)

出過ぎない,気が利く ○ ・ 「社内から批判されないことが 大切.厳しいことを言うと批判 ○

・ 「社長の好むようなことをいう 人,減点がない人,評判がいい ○

・ 「リーダーシップを強く前へ出 すようなタイプ,『出る杭』タ ○

(12)

破綻企業の構造的慣性を生み出す組織内メカニズムの解明  

63

ていると思うが,そういうこと を許さない風土.」(機構等派遣 者)

・ 「人とぶつかっている人は偉く ならない.ギスギスする人,空 気を読まない人はいつの間にか いなくなる.」(OB)

はない.」(OB)

・ 「議論を戦わせる人よりも,幹 部に耳当りの良いことをいう人 が重用される.」(OB)

ロパー)

・ 「出過ぎない,気が利くという 傾向は本社に存在した.」(OB)

遣者)

(4)経営幹部の資質

社内政治力の強さ ○

・ 「上は派閥の力学で動く.…優 秀な部下を抱えこめるか,その ために毎晩飲んでいる.」(OB) ・ 「何でこの人が偉いのかと思う ような人がいた.酒を飲んでや っているようなことがあったと 思う.親分・子分の関係になっ ている社内政治力.何か特定の 分野で卓越したものを持ってい るわけでもないが社長にまでな った人がいた.」(OB)

・ 「役員たちの威圧感はすごかっ た.一種独特の威圧感があっ た.『われわれが現れたのだか ら断るのか』という感じ.…相 手に交渉力を持つ為の玉の投げ 方がうまい.」(機構等派遣者) ・ 「巧妙に無能な人をポストにつ ける.『自分の言うことを聞い ていればポストにつけてやる』 といってポストを作る.こうし て人望を高めていた.」(機構等 派遣者)

・ 「論理よりも,持論・経験談・ 声の大きさで仕事を行う.」(プ ロパー)

・ 「『実態がわからないのか』とい いながら,事業を拡大しようと する人を抑えつけていった.自 分の力をつけるために抑えつけ るという感じがあった.」(プロ パー)

・ 「本社幹部は,社内政治力,人 間関係志向性が強い人が多かっ た.経営リテラシーがあったら (C 社のその後も)随分違って

いたかもしれない.」(OB) △

・ 「自分たちが入る前は,社長が 怒鳴ればそれで決まるという感 じだった.」(機構等派遣者) ・ 「本部長クラスは,社内政治力

というよりもバン!と言い切る タイプだった.」(機構等派遣者)

経営リテラシーや実務能

力の低さ ○

・ 「事実に基づくものではなく, ファクトを見ないやり方で,幹 部の発言は,時にとても細かい ものが多かったり,思いつき, 持論だったり,昔話だったりす ることが多かった.経営レベル の議論ではなかった.また,目 先の議論が多く,先の話が無 い.」(プロパー)

・ 「外資系のボスは一番勉強して いて,仕事をしていて,考えて いる.A 社のボスは違う.外資

・ 「(幹部)は無能なのに偉い.… 彼らは,丸投げしていて,実務 がわからないから,みんなの前 で自分の意見を言って物事を決 めることは絶対にしない」(機 構等派遣者)

・ 「特にスタッフ系幹部のリテラ シーは極めて低かった.共通言 語,フレームワークが欠如して いた.だから,指示できない. …3C, SWOT すらない.」(OB) ・ 「数字が全部出終わった後に『何

・ 「厳しくなるほど,論理ではな く,持論・経験談で人を動かす 色合が強くなった.」(プロパー) ・ 「会社として儲かるとか,事業

をするという観点でのファクト に興味がない.経験に基づく話 が多い.」(機構等派遣者) ・ 「社外に働きかけて事業を作る

タイプもいた.」(プロパー) ○

・ 「高い学歴の人が集まっている が,リテラシーがある感じでは ない.…事業部門長は,社長と 同じように,理屈ではなく下に 怒鳴る.」(機構等派遣者) ・ 「ROI の試算が無いまま,『何年

(13)

の出世条件及び経営幹部登用プロセスにおける特 徴をもたらしていると考えられる.対立を回避し 政治色を含む社内秩序を遵守する規範が存在する 中で予定調和的な意思決定と妥協色が強い事前調 整が行われている組織において,自らの意見を控 え幹部の意向を実現するための社内調整力を有す る者が重用されることは合理的な帰結であると考 えられる.PDCA サイクルが回らず業務成果に 基づく淘汰メカニズムが機能しない中では,政治 性・恣意性が強い幹部登用が行われることも十分 に理解できるところである((1)&(2)⇒(3)). こうして出世し登用された経営幹部が,強い社 内政治力を有しながら経営リテラシー・実務能力 に乏しい資質を有することも合理的な帰結である と考えられる((3)⇒(4)).翻って,こうした 資質を有する経営陣が当事者である限り,意思決 定や社内調整のプロセスに変化が生じるとは考え にくく,既述の特徴が保持され続けると考えられ る((4)⇒(1)&(2)).

このように分析の焦点として挙げた各要素は相 互に強化し合う関係にあり,サイクルとして駆動 していると考えられる.

3.構造的慣性を生み出すメカニズム

次に,上記のサイクルがどのように構造的慣性 を生み出すのか,すなわちどのようにして環境へ の適応不全が持続しその是正が困難になるのかを 検討する.

まず,本サイクルが駆動している組織が事業環 境変化に直面した場合,次の 3 点の理由から適応 不全が生じると考えられる.それらは,①組織成 員の環境変化への感度の低さ,②意思決定の経済 合理性の低さ,③事業構造改革の実施の困難性の

3 点である.

第一に,社内政治力が強い経営幹部が予定調和 的な議論を行うとともに,社内調整力が出世条件 として重視され恣意性が高い幹部登用が行われて いる状況下では,組織成員の関心は自ずと社外で はなく社内,それも社内の人間関係に向く.競 合・顧客等への関心が下がり事業環境の変化をタ イムリーに把握することが困難になることが想定

ーなと

いう

こと

A

の社

にはそれがなかった.

」(OB)

だこれは

』と文句は言うが

えない

.結果論の後講釈はいく

らでもできるが

,こうすべきと

の具体論は一言もない

.…企業

成り立っていたかもしれない が,事業の構造が破綻しだした 時にはお荷物なだけ

.」

(機構等

派遣者)

人間関係志向性偏重のリ ーダーシップ

「人間関係軸が強い人が多い

成果軸は弱かった

.」

(機構等派

遣者)

「人間関係志向が強い

.そもそ

かも疑問.

」(機構等派遣者)

「人間関係志向

.間違いない

.」

(機構等派遣者)

「圧倒的に人間系

.成果系は一

人もいなかった

.」

(機構等派遣

者)

注:○:該当,△:若干の反対意見や留保が存在.   「プロパー」

(14)

され,適応不全が生じる原因の一つとなると考え られる.機構等派遣者からは,破綻企業 4 社とも に,「役社員の関心が社内人事に強く偏重してお り,顧客・競合・市場に関する話がほとんど出な い」,「驚くほど危機感がない」と事業環境への感 度の低さが指摘されている.

第二に,経営幹部の経営リテラシーや実務能力 が乏しい中で,経済合理性を確認する PDCA サ イクルが回らない状況下では,意思決定の経済合 理性が低下せざるを得ない.事業環境が変化して いるにもかかわらず,前例を踏襲した従来どおり の意思決定を行ってしまい,適応不全を生じさせ ると考えられる.

第三に,本サイクルが駆動すると,事業環境変 化への対応策,すなわち適応不全の是正策として 一般的な事業構造改革(不採算事業の縮小・撤 退,高コスト構造の是正,コア事業への経営資源 の集中など)の実施が困難になると考えられる. 事業構造改革は,その性質上,改革対象部門から 強い反対が出るのが通常であり,予定調和的な意 思決定プロセスで結論を出すことは容易ではな い.事前調整がまとまらず経営会議等の正規の意 思決定プロセスへの上程は困難を極めると想定さ れ,仮に上程されたとしても,全会一致原則が存 在する限り決議に至るのは極めて難しいと考えら れる.

A 社プロパー役社員15)は,「会議では,……事

の本質を回避し,グレーにしながら終わってしま う.捨てない会社だった.捨てることができな い,止めることができない会社だった」と,同社 OB は,事業構造改革について「いつの間にかう やむやになる」「とにかく,決まらない.決める 人がいなかった」と意思決定の難しさを指摘して いる.B 社 OB は,破綻前の経営陣の意思決定に ついて,「会社としての経済合理性とお世話にな った人を天秤にかけると,皆後者をとる」と指摘 している.最後のコメントは,自分を役員に引き 上げてくれた幹部が担当する事業部門やその出身 事業部門にとって厳しい意思決定は忌避されるこ とを意味している.

事業環境に大きな変化がなければ,上記 3 点は

いずれも大きな問題を生じさせないと考えられ る.事業環境が一定であれば,感度の低さは大き な問題とならず,意思決定も前例を踏襲していれ ば一定程度の経済合理性は自動的に担保されるで あろう.また,事業構造改革の必要性も低く,組 織に摩擦が生じる意思決定に直面することも少な いと考えられる.逆に,予定調和的な意思決定や 強い社内政治力を特徴とする経営幹部の資質は, 所与の目的に対して社内資源を効率的に動員する には一定の合理性を有すると考えられる.破綻企 業 4 社ともに,事業環境変化以前には一定の収益 を上げていたことがそれを示唆する.

このように,本サイクルは事業環境が変化しな い限り大きな問題を惹起しない反面,ひとたび事 業環境が変化すれば,適応不全を生じさせると考 えられる.

では,本サイクルは組織の適応不全が生じる中 で果たして駆動し続けるのであろうか.事業環境 への適応不全が持続しその是正が困難となるため には,本サイクルが自己維持的な性格を有し,駆 動し続けることを示すことが必要となる.

(15)

かの外的な力が加わらない限り本サイクルは駆動 し続ける可能性が高いことを示唆する.

このように,破綻企業においては事業環境が変 化する状況の下,組織成員が善意で適応的な行動 をとることを通じて本サイクル(以下 構造的慣 性生成サイクル)が駆動し続け,その意図せざる 結果として(沼上,2000),組織の適応不全が持 続しその是正が困難となる,すなわち構造的慣性 が生み出されると考えられる.

これが,本稿の事例が示唆する破綻企業の構造 的慣性を生み出す組織内メカニズムである.図 2 にこのメカニズムの全体像を示す.

Ⅴ ディスカッション・まとめ

1.本稿の理論的貢献

本稿の理論的貢献を明らかにするために,先行 研究との関係を整理しておきたい.

⑴ 個体群生態学アプローチ

既述のとおり,個体群生態学アプローチは組織 内メカニズムに関心を払わず,構造的慣性が生じ る組織内要因として,①埋没コスト,②意思決定 者が入手しうる情報の制約,③組織内の政治的制 約,④歴史的経緯から生じる規範的制約の 4 点の

みを挙げている.本稿が明らかにした組織内メカ ニズムは,整理の仕方こそ一致しないが,上記 4 点の内容を含んでいる.①埋没コストは事業構造 改革に対して社内から反対が表明される理由の一 つであり,また,②意思決定者が入手しうる情報 の制約は,組織成員の環境変化への感度が下がる こと及びミドルによる社内調整によって全会一致 による合意が可能な議案しか上程されないことに 呼応すると考えられる.③組織内の政治的制約 は,社内政治力が強い経営幹部が行う予定調和的 な意思決定プロセスの制約と類似しており,最後 の④歴史的経緯から生じる規範的制約は,経営幹 部の意思決定プロセスの背後に存在する対立回避 と社内秩序遵守の規範による制約と考えられる. この意味で,本稿は,日本の破綻企業という限 定されたサンプルを対象としてはいるものの,個 体群生態学アプローチが要素のみを指摘するに留 まる構造的慣性について,それが生成される組織 内メカニズムの一つのパターンを明らかにしてお り,この点が理論的な貢献と考えられる.

⑵ 組織の衰退に関する研究群

組織の衰退に関する研究群は,組織の適応不全 が持続しその是正が困難となる理由を十分に説明 できないとの課題を有していた.本稿は,構造的

2 構造的慣性を生み出す組織内メカニズム

・社内調整力重視 ・恣意性・政治性の高さ

(4)経営幹部の資質 ・社内政治力の強さ ・低い経営リテラシー・

実務能力

1 事業環境変化への感度の低さ

2 意思決定の経済合理性の低さ

3 事業構造改革の実施の困難性 構造的慣性生成サイクル

(1)経営幹部による意思決定プロセス 予定調和的色彩の強さ

(2)ミドルによる社内調整プロセス 事前調整の重視と妥協色の強さ

自己維持的 に駆動

(3)ミドルの出世条件・ 経営幹部登用プロセス

構造的慣性 (事業環境への適応不全の持続

(16)

慣性生成サイクルというダイナミックなプロセス が自己維持的に駆動していることを示し,組織成 員の合理性を前提としながらも組織の適応不全が 持続しその是正が困難となる理由を明らかにし た.この点が組織の衰退に関する研究群に対する 理論的な貢献と考えられる.

⑶ 組織の〈重さ〉研究

組織の〈重さ〉研究と本稿の内容には類似した 点が少なくない.構造的慣性生成サイクルの各要 素には,組織の〈重さ〉を構成する要素と類似し たものが含まれている.しかしながら,既述のと おり組織の〈重さ〉研究においては,組織の〈重 さ〉を独立変数として位置づけ組織の行動に如何 なる影響を及ぼすか,特に組織の〈重さ〉が組織 の環境適応に如何なる影響を及ぼすかについての 分析はほとんど行われていない.

本稿は,構造的慣性生成サイクルが,適応不全 を持続させることを明らかにした点で,組織の 〈重さ〉研究に新たな視点を提供するものと考え る.また,構造的慣性生成サイクルが自己維持的 に駆動し続けることを明らかにした点は,破綻企 業においては,組織の〈重さ〉の各構成要素が相 互に強化し合いながら,〈重さ〉自体が自律的に 拡大再生産されるメカニズムが駆動している可能 性を示唆している.この点も,同研究に新たな視 点を提供するものと考える.

⑷ 日本のミドル・マネジメント研究

日本企業の特徴といわれるミドルの役割に着目 したミドル ・ マネジメント研究領域には豊富な研 究蓄積があるが(例えば,Nonaka, 1988;金井, 1991),本稿は,破綻企業においてミドルを含め たダイナミックな組織内メカニズム(構造的慣性 生成サイクル)が駆動していることを明らかにし た点で,従来の研究に新たな知見を付加するもの と考える.

2.実務的インプリケーション

本稿が明らかにした構造的慣性生成サイクル は,事業環境が大きく変化した場合に適応不全を

引き起こす危険性があるものの,事業環境が一定 の間には問題として顕在化しない点に大きな特徴 がある.このことは,現在安定した事業環境下で 良好な業績を上げている企業にも,経営者が認知 しないうちに本サイクルが駆動してしまっている 可能性が存在することが示唆され,この意味で本 稿は経営実務家への警鐘を鳴らすものである.

また,本サイクルは,ミドルも含めた組織全体 にわたるものであるため,一度駆動するとその是 正は簡単ではない.経営者を変えるだけでは不十 分であり,ミドルの行動を是正するための手段 (例えば人事評価制度の改革)などを併せて実施 することが不可欠となる.この点で,本稿は特に 企業再生実務家に対して,多くの示唆を提供する ものと考える.

3.まとめ

本稿では,破綻企業の構造的慣性を生み出す組 織内メカニズムの解明を試みてきた.従来の個体 群生態学アプローチが対象としてこなかった組織 内メカニズムを事例研究から分析し,実質破綻状 態に陥った企業には図 2 に示すメカニズムが存在 し,それが構造的慣性を生み出していることが示 唆された.また,本稿は,事業環境変化に脆弱で 淘汰されやすい個体群を業種横断的な見地から同 定する意義を有すると考えられる.

最後に,本稿の限界について言及する.本稿 は,複数業種の事例を対象とし,各事例を相対化 できる視点を持った方々へインタビューを行うこ とにより,外部妥当性の問題を低減する工夫を行 ったものの,事例研究の限界を超えるものではな い.本稿の結論の更なる一般化を目指した研究の 蓄積が今後必要であろう.

謝辞

本稿の調査において,対象企業に関係する多くの方々に ご多忙の中インタビューにご協力をいただきました.厚く 御礼申し上げます.

(17)

多くのご指導をいただきました.また,シニア ・ エディタ ーの南山大学の安藤史江先生及び 2 名の匿名レフェリーの 先生方には,貴重かつ丁寧な助言を数多く賜りました.こ こに記して感謝申し上げます.

備考

本稿は,著者の個人的な研究成果を発表するものであ り,著者の属する組織の見解を示すものではありません.

1) 株式会社産業再生機構は,支援対象とした企業及び支援に 至った事由等を公表しているが,支援対象となった上場企 業の大半に,事業構造改革の遅れや不十分さが指摘されて いる.

2) Hannan & Freeman (1984), pp. 151 3) Hannan & Freeman (1977), pp. 934

4) 「組織の衰退」については多様な定義が存在するが(Cam-eron, Sutton, & Whetten, 1988),Cameron et al. (1988) の定義が総じて多くの研究者のコンセンサスを得ていると される(Mellahi & Wilkinson, 2004).

5) ①「口は出すが,責任はとらない上司が多い」,②「BU (ビジネスユニット)が利益を上げていないことを自分の 痛みとして感じられないミドルが多い」,③「決めるべき 人が決めてくれない」の 3 つの質問肢によって測定される 概念とされている.2 番目の質問の対象は若干広いもの の,1 番目及び 3 番目の質問はリーダーの資質に関するも のであり,総体として資質に関する概念であると整理して よいと判断する.

6) 組織の〈重さ〉と営業利益率の相関は分析されているもの の,構成概念妥当性を確認する目的で行われているに過ぎ ない.

7) 企業名の秘匿が研究対象とする条件となっているため,業 種・売上高・従業員数等は掲載せず,公的支援組織につい てもその支援先が公開されているため特定しない. 8) 相対的な視点を有することを重視し,他社へ転出した OB

を優先してインタビュー対象者とした.

9) 企業規模が小さい中堅企業 3 社については,OB 及びプロ パー役社員へのインタビューが実現できず,機構等派遣者 に当該企業駐在中にプロパー役社員から聞いた話を重点的 にインタビューし破綻前の状態を推定した.

10) MAXQDA11 を使用した.

11) 創業オーナーまたはその一族が破綻時またはその近年まで 実質的な経営を担っていた企業を指す.株式の持分比率が 過半を超えていることを必ずしも意味しない.

12) オーナー系企業においては,オーナーに多くの権限が集中 しており,経営幹部による意思決定プロセス,ミドルによ る社内調整プロセス,ミドルの出世条件・経営幹部登用プ ロセス,経営幹部の資質の全ての点にオーナー個人の影響 が強く表出するため,分析対象として分別することが適切 と判断した.一方,企業規模による差異は見られなかった. 13) 大手 1 社の派閥については破綻前 20 年間の有価証券報告

書に記載された取締役の経歴及び複数の新聞記事からその

存在を確認した.他の大手 1 社の学閥についても破綻前 20 年間の有価証券報告書に記載された取締役の出身大学 よってその存在を確認した(企業名を秘匿するため詳細情 報は記載しない).しかしながら,他の 2 社についてはイ ンタビュー以外の情報源による確認はできていない. 14) 本人の特定を避けるために企業を特定しない.

15) 事業構造改革が社内で議論されるのは破綻前であるため, 機構等派遣者ではなく OB やプロパー役社員のコメントが 情報源となる.

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参照

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