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第 10 章
流動性のわなの下での経済政策
10.1 流動性のわな
流動性のわなの特徴: 利子率がその下限に張り付いている状態
•例えば、利子率が0% (利子率は一般的にマイナスにはならない)
•名目マネーサプライを増やしても、利子率はほとんど下がらない
•貨幣需要の利子弾力性が無限大になっている
IS-LMモデル上の流動性のわな:LMが水平になる
R IS
LM
Y1 Y
0
・
流動性のわなに陥った代表例: 世界恐慌、バブル崩壊後の日本、世界金融危機後の先進諸国 日本のケース:1990年代から2000年代前半にかけて流動性のわなに陥る
•バブル崩壊(1990年代初頭):消費・投資減少 →ISが左シフト
•金融不安によって投資が利子率に対して反応しなくなった →ISがより垂直に
•この結果、流動性のわなに陥る
明海大学マクロ経済学:影山純二(学生用)
10.2 流動性のわなの解決法
流動性のわなの問題点: 景気が悪くて流動性のわなの下に陥る
•景気が悪いことが問題(利子率が低いこと自体が問題ではない) 経済政策: 景気を刺激する政策が必要
拡張的財政政策:
金融緩和:
量的緩和(物価の上昇を狙って通貨量を増加させる金融政策、QE): 有効かも?
•名目マネーサプライ↑→ 物価上昇 → デフレの悪影響(買い控え、貸し渋り)除去 → 消費や投資↑(IS右シフト)
• 2000年代の日本や2008年世界金融危機後の先進諸国(日本、アメリカ、EU)で実行された 有効な政策: 結局はIS曲線を右に動かす必要がある
日本のケース:IS曲線をどうやって動かしたか?
•不良債権処理(金融不安除去、貸し渋り解消)→ 投資↑(IS右シフト)→ 流動性のわな脱出
•単なる拡張的財政政策は、短期的な効果しかなかった
10.3 課題
(A4、上部に課題番号、学籍番号と氏名、計算過程も記入、読みにくい場合は減点) 1.流動性のわなにおける財政政策と金融政策の効果を、IS-LMモデルのグラフを用いつつ説明せよ。56