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高田 2013 伊丹 シェークスピアpdf 最近の更新履歴 kentakadasite

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伊丹市昆虫館研究報告 第 1 号 2013 年 3 月 29

映画「虫が演じるシェイクスピア ロミオとジュリエット」に関する雑感

高田兼太

Note on “ Shakespeare’s Romeo and Juliet performed by insects”

Kenta Takada

Independent Researcher of Cultural Entomology and Echological Entomology

(2013 年 2 月 11 日受理)

はじめに

 昆虫は、地球上のあらゆる環境に分布し、人類の居住 区にも生息しているため人の目に触れる機会も多い生物 である。そのため、昆虫が人類の社会に及ぼす影響は大 きいと考えられ、結果として昆虫は様々な文化事象に表 象している。このような昆虫がかかわる文化事象を対象 に、人間の社会に対する昆虫の影響について研究する学 問を文化昆虫学という(Hogue 1987、三橋 2000、小西 2003、野中 2005、河野 2009、高田 2009)。文化昆虫 学は、まさに人類学と昆虫学の接点であり、人間が自然 とどのように向きあっていくべきか(人間が自然と共存 する上で必要な自然観)について考える上で重要である。  数ある文化事象の中でも、映画は多くの人々が気軽に ふれることのできるもののひとつであり、映画において 昆虫は様々な役割を果たしている。昆虫に関連する映画 を鑑賞し、作中における昆虫の役割について解析する ことは、文化昆虫学的にもきわめて重要である(宮ノ下 2005)。本報告文は、数ある昆虫映画の中でも特に異質 な部類に属する映画「虫が演じるシェイクスピア ロミ オとジュリエット」(2002 年、監督:岩木呂卓巳)に関 する雑感をまとめたものである。本作品は、シェイクス ピアの名作「ロミオとジュリエット」の登場人物を昆虫 生体に置き換えて再現した正真正銘・真っ向勝負の昆虫 映画である。なお、本作品は経済産業省 デジタルコンテ ンツ制作基盤整備事業(クリエーター支援型コンテンツ 制作事業)の支援を受けて制作された映画である(一般

財団法人 日本デジタルコンテンツ協会 2002)。

映画「虫が演じるシェイクスピア  ロミオとジュリエット」のあらすじ

 舞台は南国のマレーシア。ヴェローナと呼ば れる森では、カブト家とクワガタ家のいさかい がいつも絶えません。ところが両家の息子と 娘、ロミオとジュリエットがクワガタ家の樹液 パーティで出会い、恋に落ちてしまった。ロレ ンス神父の教会で密かに結婚式をあげる二人。 幸せもつかの間、それを知った両家の争いは ますます激しくなり、そんな争いに巻き込ま れたロミオは、誤ってジュリエットのいとこ、 チボルトを死なせてしまいます。森を追放さ れ、ジュリエットとも離れ離れになってしまっ たロミオ。両家の憎しみの中、ますます燃えさ かる二人の恋の行方は・・・。(以上 「虫が演 じるシェイクスピア ロミオとジュリエット」 DVD パッケージより引用)

本作品のキャストについて

 本作品における登場人物は、すべて昆虫(総勢約 50 種。 ただし、サソリ等を含む)である。ただし、昆虫は、人 間のように会話をすることができないので、セリフはす べて声優がしゃべっている。ロミオ役は、コーカサスオ

問い合わせ先 athemus99@yahoo.co.jp

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オカブトムシ、ジュリエット役はオウゴンオニクワガタ、 チボルト役はセアカフタマタクワガタ、ロレンス神父は ハビロタマムシである。やはり、設定がカブト家とクワ ガタ家のいさかいが絶えない中でのロミオとジュリエッ トの恋の物語なので、メインキャストはコウチュウ目に 属するカブトムシ類とクワガタムシ類である。登場する 昆虫たちは種類数・個体数共にコウチュウ目が圧倒的に 多いが、これはコウチュウ目がチョウ目などと比較して 移動力が低く、撮影しやすいことによるものと思われる。 ちなみに、ジュリエット役であるオウゴンオニクワガタ の声優は、あのアニメ「YAWARA」の猪熊柔役を担当し ていた皆口裕子であることが特筆される(そして、実際 に DVD パッケージには特筆されている)。

文化昆虫学的分析

 何故、あえてロミオとジュリエットを昆虫で再現する のかがよくわからない極めて摩訶不思議で異質な映画で ある(樹液を巡って闘争するカブト家とクワガタ家とい う設定だけは、ロミオとジュリエットの設定に適合する) が、その一方で監督である岩木呂卓巳という人物の並々 ならぬ昆虫愛を感じさせてくれる作品である。本作品の 製作にたずさわるスタッフのうち、一体何人の人達が 監督の情熱についていくことができたのだろうか?パッ ケージには、みうらじゅん氏からコメントがよせられて いるが、氏も「虫に対する情熱、ただただ呆れました」 と述べている。

 本作は、映画作品としては低予算で作られたように見 え、作品にマイナー映画に特有の雰囲気がただよってい ることは否めない(ただし、登場する昆虫の種類やロケ 地がマレーシアであることを考えると、実際に製作費が 安かったわけではないのかもしれない)。また、何故昆 虫を使ってロミオとジュリエットを再現しようとしたの かがわかりにくく、そういった点では昆虫の特性を活か しきった作品とはいえないのかもしれない。しかしなが ら、全体として昆虫のしぐさや行動などを使って、ロミ オとジュリエットにおける会話シーンや、物思いにふけ るシーン、闘争シーンを豊かに表現しており、よく作り こまれているように思われ、また妙なこだわりを感じさ せてくれる。昆虫を主役にした映画を制作することが困 難をきわめることは容易に予想できることである。まず

昆虫は、多くの人々にとって親近感がわく生物ではない

(Kellert 1993)上に、人はもちろんのこと、犬や馬など と違って監督の指示に従って演技することが出来ない。 つまり、人間の会話による行動のコントロールが効か ず、いわゆる監督による演技指導が極度にむずかしい生 物である。昆虫を実際に演技指導した例としては、アリ の道しるべフェロモンを使ってアリの行列を作り出した

「八月の狂詩曲」(黒澤明監督)(宮ノ下 2005)等数える ほどしかないと思われ、加えて昆虫学的な知見を応用し ているという点で、いわゆる一般的な映画監督による演 技指導とはまた異なる。したがって、近年の映画では複 数の節からなる昆虫の体と動きを比較的容易に再現でき る CG により昆虫を再現・演技させている映画が主流に なりつつあるが(宮ノ下 2005、Leskosky 2007)、本作 品は昆虫生体そのものを「俳優」として起用し、CG が 一切なしという点で、近年の昆虫映画の潮流からは大き く外れた作品である。たとえば、本作が発表される 4 年 も前に制作された CG アニメーション昆虫映画「バグズ ライフ」(1998 年)とは対照的である。監督による独 自的あるいは強引な演出表現や解釈も含めて、演技指導 が極度にむずかしい昆虫の生体を使ってシェイクスピア の名作である「ロミオとジュリエット」という作品を完 成させるのには、並々ならぬ昆虫愛をもって挑むほかは なかったのではないだろうか。本作品では、カブトムシ とクワガタムシとの闘争シーンでは特定の演技指導が導 入されている可能性があるが、その他のシーンでは昆虫 の自然なしぐさをとらえるか、半ば強引に昆虫の動きを 引き出しているように見え、撮影には根気や情熱が必要 だったに違いない。加えて、セリフの中には「とっとと 帰りやがれ!この虫けらどもが!」や「腹の虫がおさま らない」など、虫という言葉を使った熟語や慣用句も使 われており、セリフにまで虫尽くしぶりがこらされてい る。そのようなことを考えると、岩木呂卓巳監督の深い 昆虫愛を感じずにはいられないのである。そして、この ような昆虫愛を持つ人物を輩出できるのは、虫好きの文 化と称される日本文化をおいて他にないのかもしれな い。是非とも、本作品に対する海外の反応を知りたい ものである。なお、岩木呂監督が所属する映画、写真、 文 章、 音 の 製 作 ス タ ジ オ「zat’s on」(http://www13. ocn.ne.jp/~zatson/index2.html Accessed data: 24th December 2012)には岩木呂監督のプロフィールが掲

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映画「虫が演じるシェイクスピア ロミオとジュリエット」に関する雑感

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載されているが、その経歴と作品はやはり「昆虫」でう めつくされていた。

 末筆ながら、本作品に関する問い合わせに応じてくだ さった日本デジタルコンテンツ協会にお礼申し上げる。

参考文献

Hogue, C. L. (1987) Cultural entomology. Annual Review of Entomology 32:181-199.

一般財団法人 日本デジタルコンテンツ協会 (2002) 平 成 13 年度予算コンテンツ制作基盤技術等開発事業成 果 集 7 (URL: http://www.dcaj.org/bigbang/mmca/ index.html (2012 年 12 月 17 日アクセス確認)) Kellert, S. R. (1993) Values and perceptions of

invertebrates. Conservation Biology 7: 845-853. 河野義明 (2009) “ 文化と昆虫 ” 田付貞洋・河野義明編 ,

最新応用昆虫学 . 朝倉書店 , 東京 , P. 233-237. 小西正泰 (2003) “ 文化昆虫学序説 ” 三橋淳編 , 昆虫学大

事典 . 朝倉書店 , 東京 , P. 1103-1104.

Leskosky, R. J. (2007) The real millenium bug: giant arthropods films in the 21st Century. Antennae 1(3): 8-12.

三 橋 淳 (2000) 文 化 昆 虫 学 と は . 生 物 の 科 学  遺 伝 54(2): 14-15.

宮ノ下明大 (2005) 映画における昆虫の役割 . 家屋害虫 27(1): 23-34.

野中健一 (2005) 民族昆虫学 - 昆虫学の自然誌 . 東京大 学出版会 , 東京 , 202 pp.

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参照

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