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骨を作る細胞と食べる細胞の不思議を探る

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Academic year: 2017

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骨を作る細胞と食べる細胞の不思議を探る

大学院歯学研究科 教授

あみ

づか

憲生

(歯学部歯学科)

専門分野 : 骨代謝,細胞組織学

研究のキーワード : 骨芽細胞,破骨細胞,骨細胞,ナノテクノロジー,顕微鏡

HP アドレス : http://www.den.hokudai.ac.jp/anatomy2/hokudai_d/index.html

何を目指しているのですか?

私たちは骨代謝について研究しています。骨はリン酸カルシウムという石灰化物で石の ように硬くなった組織です。ところが、硬く石灰化した骨を食べる細胞(破骨細胞)と作 る細胞(骨芽細胞)が、絶えず、古い骨を新しい骨に置き換えることで、硬くしなやかな 骨へ換えてゆきます(下図)。これを骨改造(骨リモデリング)とよび、成長期のヒトの大 腿骨(太ももの骨)では新旧の骨の交代に2年とかからず、成人の場合で全骨格の3~5% は常に置き代わっています。さて、骨の石灰化した基質(細胞以外の成分)の中にも細胞 が存在し、それを骨細胞と言います。ごく最近まで、骨細胞は骨基質の中で密やかに過ご す細胞と考えられていましたが、近年、骨細胞は神経細胞のように機能的なネットワーク を作っていて、骨芽細胞や破骨細胞に対して積極的に働きかけていること、さらには、腎 臓に作用する物質を分泌して、血中のリン濃度を調節することが分かってきました。

骨の細胞は、我々が想像する以上に 多岐にわたる機能を示します。女性が 閉経期になると骨の量が急に減少する のは、骨の細胞がそのように誘導して ゆくためです。我々は、骨の細胞群が

正常または骨粗鬆症の状態でどのように振る舞うのか、 様々な顕微鏡にてアプローチを進めています。

どんな装置を使ってどんな実験をしているのですか?

骨の組織には、様々な種類の細胞が存在しています。骨芽細胞や骨細胞は間葉系由来、 破骨細胞は造血系由来であり、骨の細胞は、力学負荷、血中のカルシウム・リン、さらに 全身性ホルモンや局所因子のほかに血管や神経性の調節を受けます。従って、一つ一つの 細胞を観察するために、電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡などの細胞構造を調べる装置

を用います。実験の方法としては、ヒト の骨疾患に関連する特定遺伝子を組み換 えたマウスを作製して、骨の異常を明ら かにしたり、あるいは、骨から細胞を抽 出してきて、骨粗鬆症の治療に用いられ る薬剤や因子に対する反応性などを調べ

出身高校:北海道函館中部高校 最終学歴:新潟大学歯学部

医療/ミクロの世界

共焦点レーザー顕微鏡 透過型電子顕微鏡

破骨細胞

骨芽細胞

骨細胞

骨基質

骨の細胞群の模式図

歯学

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ます。その結果、骨を作る骨芽細胞や骨を食べる破骨細胞は、無論、大切ですが、その周 囲にいて骨芽細胞や破骨細胞を調節する細胞の役割がとても重要なことがわかりました。

私たちは、遺伝子工学を用いた遺伝子組み換えや培養実験なども行いますが、重要視し ているのは、画像イメージングを中心としたナノテクノロジーを用いて、骨の細胞群がど のような構築および相互作用をしているかを明らかにすることです。

新しいこととして何がわかり、次に何を目指しますか?

・骨は絶えずリモデリング(新しい骨と古い骨の入れ換え)を受けることで代謝している ことを説明しました。しかし、私たちは、ある薬剤が骨を作るだけの作用(ミニモデリン グ)を有することを明らかにしており、今後、骨粗鬆症の治療に大きな期待がもたれます。

・骨細胞は機能的なネットワークを作り、血中のリン濃度を調節する因子を腎臓に向けて 分泌したり、骨芽細胞を抑制する因子を分泌すること、さらには、骨細胞が特定の全身性 ホルモンに敏感に反応して周囲の骨基質を溶解することで、血中のカルシウム濃度を速や かに調節する可能性を見いだしています。

・老化や腎臓疾患による動脈硬化ではしばしは血管の石灰化を示します。そのメカニズム として、単にカルシウムやリンが血管に沈着するだけでなく、血管を構成している筋肉の 細胞が骨芽細胞に似た細胞へと変化して石灰化を誘導することが分かってきました(下図)。

上に記したのは、我々が近年、見いだしたことの一部ですが、これらは、全て基礎から 臨床へと直結するトランスレーショナルリサーチです。我々は、骨の細胞群において未だ 知られざる機能や役割を明らかにすることで、骨代謝研究、さらにはそれに関連する腎臓、 神経系、肥満、糖尿病といった疾患に対する骨代謝の影響、すなわち、オステオネットワー クの解明に力を注いでゆきたいと思います。

参考書

(1) 網塚憲生ら,『骨細胞の微細構造と機能』,日本臨牀社 67(5):868-8712009 (2) 網塚憲生ら,『骨細胞による骨基質と骨質の調節機構』,THE BONE メディカルレ

ビュー社 24(3):27-312010

左図:骨芽細胞(A)と 骨 の 初期石 灰化 (B) の電子顕微鏡像。

右図:正常マウス(A) の前足とある遺伝子 を欠損させたマウス (B)の前足。Bでは指 の数が多いことに注 意してください(矢印)

特定遺伝子を欠損したマウス 血中カ ル シウ ム・

リン濃度の上昇

血管石灰化

(赤く染まっている部 分が石灰化を示す)

A

A B

B

歯学

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参照

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