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第 1 章

マクロ経済学とは?

1.1 マクロ経済学の目的

問題: 人々がより幸せになるためにはどうしたら良いか?

ひとつの解答: 国や社会がより豊かになれば、そこに住む人々もより幸せになる

•景気が良くなる → 生活により余裕がでる → より幸せに

•経済が発展する → 生活により余裕がでる → より幸せに

マクロ経済学の役割: 景気を良くする、経済を発展させるためにどうしたら良いか考える

1.2 マクロ経済学のミクロ経済学からの分岐

1.2.1 ケインズの貢献

ケインズ(1936):『雇用・利子および貨幣の一般理論』

•セイの法則「供給量が需要量を規定する」を否定

•需要を供給とは独立に考える必要性を指摘

•一国経済の景気や経済成長を考えることがマクロ経済学として独立した学問分野になる ケインズによるマクロ経済学誕生の背景: 世界恐慌

• 1929年のニューヨーク株式市場の暴落がきっかけ

• 1930年代を通じて世界経済は深刻な状況に陥る(アメリカの失業率は28%まで上昇)

1.2.2 世界恐慌が残した教訓

教訓1: 不況下では政府が需要を下支えすべき

•政府が最後の買い手にならないと、モノはさらに売れなくなり、景気はさらに悪化する 教訓2: 金融システムを守るべき

•金融機関は噂だけで倒産することもある(銀行とりつけ)。金融機関が倒産すると社会におけるお金の流れが滞り、景気が さらに悪化する。このようなことがないように金融システムを守るべき

教訓3: 自由貿易を堅持すべき

•恐慌の結果、自国優先主義が台頭し、近隣窮乏化政策(通貨切り下げ競争など)やブロック経済につながる。この結果、世 界経済が分断され第2時世界大戦が起こった。すべての国が保護主義を取ればすべての国が損をするのだから、自由貿易を 堅持すべき

(2)

現代的意義: 上記の教訓が活かされているか?

自由貿易vs保護貿易

• 2008年世界金融危機(リーマン・ショック)に際しての各国政府の行動

1.3 戦後の世界と日本経済

1.3.1 1950s & 1960s :高度経済成長期

世界秩序: ブレトン・ウッズ体制

世界恐慌から第2次世界大戦までの保護主義化、近隣窮乏化政策の反省の上に作られた世界秩序

•自由貿易志向

– GATT (貿易と関税に関する一般協定)→WTO (世界貿易機関、World Trade Organization)

•金ドル本位制

–アメリカ中央銀行がドル紙幣と金の固定レートでの兌換を保証(金1オンス= $35) –各国の中央銀行がドルと自国通貨の固定レートでの交換を保証(日本:$1 = 360円)

–戦争の結果、世界中の金がアメリカへ集中したため、アメリカ以外の国が金本位制に回帰することが不可能 日本の高度経済成長: ブレトン・ウッズ体制に乗って、第2時世界大戦の破壊からの復興需要により大きく成長 成長のエンジン: 前半は復興のための投資需要、 後半は輸出

日本の1人当たりGDP (購買力平価)推移: 戦後の復興期に成長率が高かったことがわかる

100 1,000 10,000 100,000

1880 1900 1920 1940 1960 1980 2000 1人あたりのGDP ($)

出所: Maddison (2003)

1.3.2 1970s :日本経済の曲がり角

ニクソンショック: アメリカのニクソン大統領が金とドルの兌換(交換)停止を宣言

•金本位制(戦前)→ 金ドル本位制(戦後ニクソンショックまで)→ 管理通貨制度 –通貨制度が、金というアンカーから外れる

–ドルの価値下落(円の価値上昇) –固定相場制度の崩壊 → 変動相場制度へ

第1次石油危機: 第4次中東戦争をきっかけに原油価格が4倍以上に暴騰

•景気悪化とインフレ(狂乱物価)が同時に起こる(スタグフレーション) 高度経済成長の終焉、安定成長へ:1970年代初頭以降、潜在経済成長率は低下

(3)

1.3.3 1980s :規制緩和の流れ

1970年代の反省:1970年代の混乱に対して政府は無力

•規制緩和による民間活力の重要性が強調される(サプライサイドエコノミックス) 日本の規制緩和:1980年代は中途半端に終わり、現在も課題として残る

1.3.4 1980s 後半∼ 2000s 前半:バブルとバブル後

バブル経済:1980年代後半の日本:土地や株式などの資産価格が異常に上昇

•値上がりした資産をもとに消費や投資が増加 → 景気過熱 → バブル

•バブル(bubble):実体がともなわない膨張。針で突っつかれればポンとはじける バブル崩壊:1990年代初頭、急激な景気引き締め策が直接の引き金となり、景気が急速に悪化 バブル後: バブル崩壊から景気が本格的に回復するまでに10年以上かかる

•政府や中央銀行の失敗、構造改革の遅れなどが原因

• 2000年代前半に小泉政権下でバブルの清算(不良債権処理など)が行われ、景気回復

1.3.5 2000s 後半以降:世界金融危機とその後

世界金融危機: 世界恐慌の再来?

• 2007年の米サブプライムローン問題が発端

• 2008年に米大手金融機関、リーマン・ブラザーズが破綻して危機が拡大

各国政府の対応: 世界恐慌の教訓を活かす

•政府支出の拡大

•金融システムの保護

•保護貿易の否定

その後の問題: 世界恐慌の教訓だけでは済まされなかった

•世界金融危機に際して各国政府が支出を拡大させた → 財政赤字が問題になる

•ユーロ危機:ギリシャやスペインといったユーロ圏内南欧諸国の財政危機が原因 自国優先主義の台頭: アメリカ、イギリスの方向転換が顕著

1.4 経済規模を測る指標

1.4.1 指標の役割

マクロ経済学の第一歩: 国や社会の経済活動の大きさを正確に測り、わかりやすく表すこと

•正確な指標がなければ、景気が良いのか、経済が発展しているのかもわからない 経済活動を金額に置き換えて測る:GDP、国民所得、etc

•生産量で表すと、自動車○○台、大根○○本、ラーメン○○杯・・・となる

•現代のように無数の産業がある場合は、経済規模を生産量で表すことは不可能

(4)

1.4.2 フローの考え方とストックの考え方

フローの概念: 一定期間(1年間や四半期)に行われた経済活動の成果

•例:GDPや投資

ストックの概念: ある特定時点までに達成された経済活動の成果

•例:国富や固定資本

例: 蓄積されたフローの合計をある時点で測ったものがストック

•古くなって価値が下がる部分を差し引くと、過去のGDPの合計が国富

景気を考える際にはフローの概念を利用: 景気が良いかどうかは、その時(たとえば2010年)にどれくらい経済活動が活発かで決 まる。ストックの概念は過去の蓄積(過去の経済活動の活発さ)を含んでしまうため、景気を計るのには適さない

1.4.3 国内総生産: Gross Domestic Product

GDP: 経済規模や経済活動の活発さを測る代表的な指標

•日本のGDP:約500兆円

GDPの定義: 一定期間(通常1年間)に国内の人々(産業)が創造した粗付加価値の合計

•あるいは「国内の生産総額−中間生産物の投入額」 付加価値: 新しく作り出された価値のこと

•例:レストランで食事した際に支払う金額は、食材などの原価以上の金額。このように原価以上にお金を支払うのは、レス トランが新たな価値を作り出しており、それを消費者が買っているから。このレストランが新しく創造した価値のことをレ ストランの付加価値と言う。ちなみに食材は農家などによる付加価値と言える

生産総額: 全ての産業の生産額を単純に足し合わせたもの 中間生産物の投入額を引く理由: 二重計算を避けるため 例: 自動車1台の経済規模を計る

•生産総額:自動車の生産額+部品の生産額(部品の生産額が二重計算されている)

• GDP:自動車の生産額+部品の生産額−部品の生産額 = 自動車の生産額

1.4.4 その他の指標

国内総生産(支出側) (Gross Domestic Expenditure) =消費+投資+政府支出+純輸出

•純輸出=輸出−輸入(海外の日本製品への需要−日本の海外製品への需要)

•付加価値(GDP)がどのように使われたか示す

日本のGDE内訳(2011):消費59.2%、投資18.9%、政府支出19.4%、純輸出2.5% –ただし輸出16.1%、輸入13.6%

国内総所得(Gross Domestic Income) =要素所得+間接税−補助金+固定資本減耗

•要素所得 = 配当や利子、賃金など生産活動への報酬として支払われた所得

•付加価値(GDP)がどのように配分されたか示す

国民総生産(Gross National Product) = GDP +海外からの純要素所得

•海外からの純要素所得=外国からの要素所得-外国への要素所得

• GDPは「国内」単位で測っているのに対し、GNPは「国民」単位で測っている

(5)

国内純生産(Net Domestic Product) = GDP −固定資本減耗引当分

• GDPは古くなって価値が下がった工場や設備について何の考慮もされていない

• NDPは価値が下がった分をちゃんと除去している

概念的にはNDPの方がGDPより優れいるが、固定資本減耗引当分を正確に把握することがむずかしいため、あまり使わ れていない

1人あたりのGDP (GDP per capita) = GDP÷ 人口

•豊かさを表す代表的な指標

•日本の1人あたりのGDP (2011年):約400万円

GDP成長率(経済成長率) =昨年から今年にかけてのGDP増加分 ÷ 昨年のGDP

•景気が良い、悪いと言う時に裏付けとして使われることが多い

• 2004年:実質GDP成長率= 2.4%→ 景気が良い

• 2009年:実質GDP成長率= −5.5%→ 景気が悪い

1.5 GDP の限界

資本減耗引当分に関する問題が存在: 前述。NDPの方が望ましい

金銭取引以外は原則GDPに含まれない:GDPが含む経済活動は原則金銭取引のみ

•主婦の家事労働は含まれないが、家政婦を雇うとGDPに含まれる

•環境の価値といった価格のつかないモノを過小評価

GDPは完全ではない: しかしGDPより優れた指標もないのでGDPが使われる

1.6 三面等価の原則

GDP = GDI = GDE: 生産、所得、支出の三面から見て、経済規模が等しい

• GDP, GDI, GDEとも、国内の経済規模という1つしかないものを測っている

•測る方法は違うが、その結果が等しくなる

1.7 名目値と実質値

例題1: 牛丼から成り立っている経済を考える。2010年の生産杯数が40杯、1杯あたりの価格が250円の時、この経済の経済規模 を金額で表せ

• 1万円

例題2:2020年には生産杯数が40杯、1杯あたりの価格が500円となったとする。この経済の経済規模を金額で表せ

• 2万円

例題3:2010年から20年にかけて、この経済の経済規模はどう変化したか?

•金額が2倍になったのだから、経済規模は2倍になった –名目値の考え方:額面通りの値で価値を測る

•生産杯数は変わっていないのだから、経済規模は変化していない –実質値の考え方:実際の生産規模で価値を測る

•名目値の変化は、物価変化を反映しただけ

(6)

名目GDP: ある年の経済規模を、その年の物価で評価したGDP

先の例題では2020年の名目GDP1万円、2020年の名目GDP2万円 実質GDP: ある年の経済規模を、基準年の物価で評価したGDP

先の例題では2020年の経済規模を2010年の牛丼価格を利用して測ると1万円

• 2010年から2020年にかけて経済規模が変化していないことを示す

実質GDPの使い道: 実質GDPは物価変化の影響を除去している。そのため過去と現在で生産規模を比較するといった場合によく 使われる

注意点: 実際は牛丼だけでなく様々な財・サービスがあり、それら1つ1つに価格がある。そこで実質GDPを計算する際には物 価指数が使われる

•物価指数:基準年の財・サービスの価格を総合的に100と基準化し、各年の物価を基準年との比較として表したもの

•例:消費者物価指数、GDPデフレーター

1.8 景気

景気の意味: 社会全体の経済活動の活発さ

好況と不況: 総需要(GDP (支出側))と総供給(潜在GDP)の関係で決まる

•総需要>潜在GDP:潜在的な生産量以上に売れていく → 景気が良い=好況

•総需要<潜在GDP:生産しても売れない → 景気が悪い=不況 景気の測定:GDP成長率で測る

•実際のGDP成長率が、総供給の成長率と比較して高いか低いかで判断 –近年の日本:12%が基準、高度経済成長期の日本:8%程度が基準 好況と不況の波: 総需要と潜在GDPの関係の変化で起こる

潜在GDPはあまり大きく変化しない。その動向もだいたい予想できる

•総需要は人々のムードなどでよく変化する。その動向も予想できない

•総需要の変化が好況と不況の波を引きおこす

実質GDP成長率推移(経済社会総合研究所): 景気が変動していることがわかる

-10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0

1955 1965 1975 1985 1995 2005

実際の実質GDP成長率 総供給の成長率

(7)

1.9 今後の流れ

第II部 総需要を考える: 好況と不況の波を引き起こす主要因が総需要

•総供給を省略して分析できる

•総需要(支出側GDP)の構成項目である消費、投資、政府支出、輸出入から考察

•総需要に影響を及ぼすもう1つの項目、貨幣についても考える

第III部 総供給と総需要のバランスを考える: 長期的には両者のバランスでGDPや景気が循環

•総供給について考えた上で、総需要と総供給を同時に分析する

•この2つをつなぐのが物価

第IV部 細部について考える: ここまで省略してきた事柄のうち、重要な事柄をピックアップ

•とくに日本経済に関連する事柄を選び考察する

Goal: 景気変動を理解し、近年の日本経済が分析できるようになる

1.10 課題

(A4、上部に課題番号、学籍番号と氏名、計算過程も記入、読みにくい場合は減点) 1. 世界恐慌で得られた3つの教訓とは何か。

2. GDPを支出側から4つに分けると、どうなるか。「GDP=○○+....」の形で書け。

3. インフレ(物価上昇)が生じている場合の名目GDP成長率と実質GDP成長率の関係を示せ。 4. GDPが500兆円、人口が1億人の時、1人あたりのGDPはいくらか。

5. 好況の際の総需要と潜在GDPの関係を示せ。

(8)

明海大学マクロ経済学:影山純二(学生用 (財市場)

貨幣需要・貨幣供給 (貨幣市場)

財市場と貨幣市場の統合  ・IS-LMモデル

 ・総需要 (GDP) の決定 総需要

労働市場・資本蓄積・教育・技術・社会制度

(要素市場, etc) 総供給

総需要と総供給の統合  ・AD-ASモデル  ・GDPの変動(景気変動)

リストラ について

経済成長

年金制度

景気

構造改革・規制緩和 財政赤字・国債発行 社会不安

高齢化

少子化

14

参照

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