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教育学部・大学院教育学研究院

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Academic year: 2017

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人間らしく生きるための学び

大学院教育学研究院・大学院教育学院 教授

宮﨑

み や ざ き

隆志

(教育学部教育学科)

専門分野 : 社会教育学

研究のキーワード : 生涯学習,自己教育,探究的学習,創造的学習 HP アドレス : http://www.edu.hokudai.ac.jp/

何を目指しているのですか?

みなさんが通っている学校は楽しいですか?新しい世界への扉が次々と開かれ、他者と の刺激的な出会い繰り広げられる、そしてそれらを通して自分の変化・成長の確かな手応 えが得られる…。もしそうであれば、まるで冒険旅行でもしているかのようなワクワク・ ドキドキ感がそこにはあるはずです。

残念ながら、日本の多くの子ども・若者はそう感じていません。閉塞感に満ち溢れ、自 己肯定感が低く、学びへの意欲が低下しているのが現状です。これは大人が置かれた状況 の反映です。大人が探求的で創造的な人生を送れない社会で、子どもや若者が生き生きす るはずがありません。

では、冒険旅行のように世界と自分が開かれていく学びはもはや成立しないのでしょう か?否です。1985年にユネスコは「人々を、なりゆきまかせの客体から、自らの歴史をつ くる主体にかえていく」学習が、人間らしく生きるために不可欠であることを宣言しまし た(「学習権宣言」)。誰もが自分の・自分たちの人生の主人公となれるような学習のありか たを解明することは時代の要請でもあります。私たちの研究室では、そのような学びの特 質とその学びを通した人間形成の論理を解明することを目指しています。

どのように研究を進めているのですか?

「ピンチはチャンス」とよく言わ れます。「ピンチ」はそれまでの支配 的なふるまい方や物の見方・考え方 では対処できない事態を指しますが、 実は、暗黙化されていた前提(=当 たり前と思っていたこと)が批判的 に吟味され、新しいもの(考え方・ 生き方)を創発する機会にもなりま す。私たちは、人生に必ず訪れるそ のような場面に、探求的・創造的な 学びの特質を解くカギがあると考 えています。

「ピンチ」を生きづらさや行き詰

札幌市むくどり公園。住民参加ワークショップによって障がいの有無 を超えた出会いの場として作られた。

出身高校:高槻高校(大阪府) 最終学歴:北海道大学大学院教育学研究科

教育

教育

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まりと言い換えれば、例えば孤立した子育て に悩む親、高校中退や引きこもりを経験した 若者たち、さまざまな差異によって「マイノ リティ」とされている人々、あるいは過疎化 によって不安に押しつぶされそうな地域の 人々は、誰もが生きづらさに直面し、その限 りで同様の経験をしています。そして、人生 の転換点とも言うべき状況に遭遇し、価値観 が転換し、新たな社会や人生の構想を得た人 も数多くいます。私たちはそのような方々の 経験に学び、フィールド調査や実験的な実践 の組織化を通して、転換・創発に至る学びの プロセスの解明に挑戦しています。

次になにを目指しますか?

私たちは「誰もが人生の主人公になれる学び」を、主に学校外の場(生涯学習)で探求 していますが、最終的には、そのような学びを学校に埋め込み、これまでにない学校像を 描くことが目標です。また同時に、その学びによって職場や地域を「人が育つ場」につく り変える見通しも明らかにしたいと考えています。

むくどり公園に隣接するむくどりホームでの子育て交流 学習会

左:北アイルランドにおける若者の職 業教育・訓練の取り組み。日本では 高校中退にあたる早期離学者を地域 の教育福祉組織が支援している。 右:北アイルランドにおける早期離学 者へのライフストーリー調査

左:アイルランドのTransition Inishowenによる 持続可能なライフスタイル構築のためのワーク ショップ。化石エネルギーへ過度に依存した生 活から、地域内循環・協働の地域づくりをめざ す Transition Town Movement の一環として取り 組まれている。新たな価値創造をめざす住民 による生涯学習・自己教育運動。

教育

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乳幼児の不思議な世界をさぐる

大学院教育学研究院・大学院教育学院 准教授

川田

まなぶ

(教育学部教育学科)

専門分野 : 発達心理学

研究のキーワード : 乳幼児,発達,他者理解,子育て,幼児教育 HP アドレス : http://www.edu.hokudai.ac.jp/(教育学研究院)

http://cdee.edu.hokudai.ac.jp/wordpress/(乳幼児発達論研究室)

何を目指しているのですか?

英語で乳児を意味するinfantの語源は、“もの言わぬ者”です。人間を定義するときの 1つの重要な側面は言語の使用だと言われますが、私たちの人生はその定義から外れたと ころから始まるのです。私が専門とする発達心理学では、乳児期を0歳から2歳頃までと しますが、あなたは2歳より前の記憶をどの程度持っていますか?おそらく、ほとんどの 人はその時期の記憶にアクセスすることができないでしょう。記憶機能そのものは、胎児 期の後半には存在しているのです。しかし、後年になって想起可能なかたちに加工されて はいません。

古いアルバムやビデオ映像の中の自分を見ると、不思議な気 分になるものです。確かに身体は存在していたようだ、しかし、 この幼い自分の心の世界が、今の自分にまで繋がっているとい う実感はどうしても得られない・・・。もし、あなたがこの不 思議な感覚に共感できるなら、それはすでに人間発達の科学的 探究への扉を開いています。

私はこれまで、乳幼児が身の回りの世界をどう認識し、その 認識をどう発達させていくのかについて研究を行ってきまし た。特に、自己意識や他者理解というものがどのようなしくみ やプロセスで発達していくのかを中心的なテーマとしてきました。自分は何者であるか、 他者とは何であるかという問いは、私たち人類にとって最も根源的なものです 。そうした 問いは、乳幼児の段階ですでに立ち上がっていくのです。不思議でしょう?

どのように研究するのですか?

乳幼児の心に対する探究は魅惑的ですが、研究をする上で大きな問題となるのは、より 大きな子どもや大人と同じような方法を採用することができないということです。大人で あれば、感じていることや考えていることを言語で報告してもらったり、パソコンの画面 上に特定の刺激映像が現れたらボタンを押してくださいというような言語的教示によって 反応してもらうという方法を用いることができます。特に乳児にはこうした方法が使えな いため、乳児の視線、刺激への馴れと関心の回復、表情、身体動作などをもとに、乳児の 心的世界を推測することになります。

出身高校:神奈川県立座間高校 最終学歴:東京都立大学大学院

人文科学研究科

こころ/教育

乳児はいったい何を思い、感 じているのだろう?

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乳幼児というと、「幼稚園の先生」とか「保育士さん」といった柔らかいイメージの職 業が連想されるかもしれません。たしかに、乳幼児の研

究は子育てや幼児教育の実践にも示唆を与えるもので すし、私も現場と協働して実践に示唆を与える研究を大 切にしています。しかし、乳幼児の研究は動物の行動研 究とも相通じ、実験方法を開発したり、映像機器を携え てフィールドワークに出かけたり、乳幼児の行動や反応 を測定するための材料(玩具的なもの)を製作するなど、 マルチな能力を必要とする分野であり、それが醍醐味で もあります。

最近の研究にはどのようなものがありますか?

擬似酸味反応という現象についての研究を紹介しましょう。擬似酸味反応というのは、 例えば梅干を食べたことのある人が、他者が梅干を食べようとしている場面を見て、思わ ず酸っぱそうな表情をしてしまうといったものです。私はこうした反応が乳児期にすでに 見られるのではないかと考え、生後5~14か月の赤ちゃんたちに協力してもらい、レモン を用いて実験を行いました。

その結果、レモンを食べた経 験のある赤ちゃんは、実験者が 真顔のままレモンを食べようと する場面を見ると、酸っぱそう に顔をゆがめたり、頭をかきむ しったり、のけぞったりといっ た特徴的な反応を示しました。 こうした反応は、レモンを食べ たことのない赤ちゃんには観察 されませんでした。ちなみに、 赤ちゃんたちにはレモンのみを 提示する時間も設けましたが、いずれの群の赤ちゃんもあまり反応を示しませんでした。 レモン摂食経験のある赤ちゃんたちは、なぜ他者のレモン摂食場面の観察だけで、自分 が酸っぱいような反応を示したのか?ここから先は、心理学研究者にとって最も楽しみな 時間です。色々な解釈可能性があります。理論や先行知見を踏まえながら、研究者として のアイデンティティをかけた独自の理論化へと進むのです。

今後の課題は?

乳幼児の発達研究は、社会に子どもの不思議さを伝え、子どもへの敬意と配慮を育てて いくことが使命であると考えています。研究のための研究に陥らず、常に社会的な課題を 視野に入れながら、基礎研究と実践研究をまたぐスタンスを維持したいと願っています。

1、2歳児の実験で使用する材料の 一例(タモ網とサカナ)

事前にレモンを食べた経験のある乳 児に、実験者が真顔のままレモンを食

べるところを見せる 顔をゆがめる

頭をかく 舌を出す

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参照

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