第4章 企業行動
ミクロ経済学 講義資料
unit 12 生産関数
生産関数(1)
生産関数:生産要素の[ ]と生産物の[ ]との関係
ミクロ経済学では, 企業を,さまざまな生産要素を組み合わせて生産物
を産出するための生産過程とみなす
具体的な生産技術の問題は[ ]と見なし,何をどれ
だけ投入したら何がどれだけ産出されるかのみに着目する
[教科書p.140の図12-1]
生産関数は生産技術を数量的に表現したもの,といえる
生産関数(2)
生産関数の具体例: S 字型
投入量 産出量
投入量が少ないうちは生産量はあまり増加しない 投入量が増えると,あるところから生産量が急に 増加するようになる
さらに投入量が増えると,生産量はあまり増加し なくなる
規模に関する収穫(1)
生産要素の投入量の変化と産出量の変化の関係は,以下の3通りに
分類できる
規模に関する収穫[ ]
すべての生産要素の投入量を
t
(t
> 1 ) 倍したとき,産出量がt
倍より多く増える規模に関する収穫[ ]
すべての生産要素の投入量を
t
(t
> 1 ) 倍したとき,産出量がちょうどt
倍だけ増える規模に関する収穫[ ]
すべての生産要素の投入量を
t
(t
> 1 ) 倍したとき,産出量がt
倍より少なくしか増え ない規模に関する収穫(2)
規模に関する収穫の図解
ある生産物の生産要素が労働力のみである場合,規模に関する収穫は以下のように図解できる
労働投入量 産出量
収穫[ ]
労働投入量 産出量
収穫[ ]
労働投入量 産出量
収穫[ ]
生産関数は直線
生産関数は下に凸の曲線 生産関数は上に凸の曲線
一般的に生産要素は複数あるが,規模に関する収穫をという概念は,
[ ]生産要素の投入量を増やすことによって定義される
これに対して,[ ]生産要素だけを増やしたときに何が
起こるかは,限界生産力という概念で測る
限界生産力とは,「他の生産要素の投入量は固定しておいて,ある1
つの生産要素の投入量を[ ]増やしたときに,生産物の
産出量がどれだけ増えるか」を表す[教科書p.145の表12-1]
限界生産力(1)
限界生産力(2)
限界生産力を図示すると,ある特定の生産要素に関する[
]となる[教科書p.146の図12-4]
生産要素がただ1つしかないときは,限界生産力と規模に関する収穫
とは同じ性質を持つ
規模に関して収穫逓増 限界生産力が逓増
規模に関して収穫一定 限界生産力が一定
規模に関して収穫逓減 限界生産力が逓減
ただし,生産要素が2つ以上存在するとき(この方がはるかに一般
的!)は,限界生産力と規模に関する収穫との上記の関係は成り立た
なくなるので,両者を明確に区別しなければならない
[教科書p.146の下から4行目∼p.147の8行目の例を参照せよ]
限界生産力(3)
等産出量曲線
生産要素が2つある場合,生産関数は3次元空間の曲面になる[教科書p.88
の図7-1の効用関数(曲面)に類するものをイメージせよ]
[ ]: 同じ産出量を実現するような生産要素の投入量の
組み合わせを結んだ線[教科書p.148の図12-5]
等生産量曲線あるいは等量曲線ともいう
生産関数と等産出量曲線の関係は,効用関数と[ ]の関係に同じ 等産出量曲線は無差別曲線と同様の性質を持つ
任意の産出量に対して[ ]描くことができる 右[ ]がり
[ ]に位置する等産出量曲線ほど,より多い産出量に対応する 互いに[ ]
原点に対して[ ](技術的限界代替率が逓減する)
unit 13 生産量と費用
生産関数と費用の関係(1)
総費用:生産物を生産するのにかかる費用全体
総費用のうち,生産量の多少にかかわらず固定的にかかる費用を [ ] ,
生産量に伴って変化する費用を [ ] という
土地や事務所などを借りている場合は地代や家賃,借入をしている場合は元利 返済額などが[ ]
生産量に伴って投入量が変化する生産要素にかかる費用が[ ]
したがって,総費用 = [ ] + [ ] となる
生産関数と費用の関係(2)
生産関数から費用関数を導く(生産要素が1つの場合)
(1)まず,生産関数の縦軸と横軸を入れ替える
投入量 産出量
L X
投入量
産出量
L
X
投入量
産出量
L
X
投入量
産出量
L
X
上下逆さまにする
90°回転したら完成
左回りに回転させる 投入量Lに対してXの産出量が得られる
産出量Xを得るには投入量Lが必要
(2)次に,可変費用を求める
生産要素が労働のみであるとして,その賃金を時給 w とすれば,可変費用は wL と表される. 可変費用のグラフは,(1)の曲線の形状を変えずに,縦軸方向の縮尺を w 倍に変えたものとなる
投入量
産出量
L
X
可変費用
産出量
wL
X L
縦軸方向に w 倍する
生産関数と費用の関係(3)
生産関数と費用の関係(4)
(3)最後に,可変費用に固定費用を加えて総費用を得る
固定費用は産出量に依存せず一定なので,可変費用に固定費用を加えると,グラフは縦軸方向に 固定費用分だけ上方へシフト(平行移動)する
総費用
産出量
wL
X
固定費用 可変費用=
固定費用の分だけ縦軸方向に上方シフトする
生産関数と費用の関係(5)
総費用
産出量
wL
X
固定費用 可変費用=
総費用曲線
投入量 産出量
L X
生産関数
かくして,生産関数から総費用曲線を導くことができた
総費用曲線の形状は生産関数の形状と密接な関係がある
限界生産力が逓増する局面では[ ](総費用曲線の接線の傾き)は逓減する 限界生産力が逓減する局面では[ ]は逓増する
生産要素が2つある場合(1)
以上で,生産要素が1つの場合の費用関数が導出された
一般に生産要素は複数存在する.生産要素が複数ある場合,できるだけ費用が小 さくなるように生産要素の組み合わせを選ぶはず.以下では,生産要素が2つの 場合の最小費用の求め方を説明する(生産要素が3つ以上の場合でも同じ方法が 適用可能)
用いる道具は,等産出量曲線と等費用線である
[ ]:等しい費用をもたらす生産要素の組み合わせを結んだ直線
2つの生産要素を土地と労働とし,土地の量を ,土地の1単位のレンタル料を , 労働時間を ,労働の時給を ,費用を とすれば,等費用線は[ ]と 表される[教科書p.155の図13-2]
生産要素が2つある場合(2)
等費用線の式を変形すると となるので, の大小に応じて等費 用線の切片の大小が決まることがわかる
が大きければ等費用線は[ ]に位置し, が小さければ等費用線は[ ]に 位置する[教科書p.155の図13-2]
費用を最小にする生産要素の組み合わせは,等産出量曲線と等費用線が[ ] 点で実現する
この様子は,第3章「消費者行動」において,無差別曲線と予算制約線が接する点で 効用が最大になるということとよく似ている
消費者理論では,予算制約線が固定されていて,効用が最も高くなるように無差別曲 線の位置を探す(一定の予算のもとで効用を最大化する)
生産者理論では,等産出量曲線が固定されていて,費用が最も小さくなるように等費 用線の位置を探す(一定の産出量のもとで費用を最小化する)
[ ] (marginal cost ; MC) :
生産量を追加的に1単位増やしたときの総費用の増加分
→ 総費用曲線の接線の傾きで表される[教科書p.157の図13-3]
[ ] (average cost ; AC) :
生産量1単位当たりにかかる費用(=[ ]/生産量)
→ ある生産量における平均費用は,原点とその生産量に対する総費用曲線 上の点とを結んだ直線の傾きで表される[教科書p.157の図13-3]
[ ] (average variable cost ; AVC) :
生産量1単位当たりにかかる可変費用(=[ ]/生産量)
→ ある生産量における平均可変費用は,総費用曲線の縦軸切片とその生産量 に対する総費用曲線上の点とを結んだ直線の傾きで表される
[教科書p.157の図13-4]
限界費用と平均費用(1)
限界費用と平均費用(2)
[ ] (average fixed cost ; AFC) :
生産量1単位当たりにかかる固定費用(=[ ]/生産量)
→ ある生産量における平均固定費用は,総費用曲線の縦軸切片の高さに引い た水平線とその生産量での垂線との交点と,原点とを結んだ直線の傾きで 表される[教科書p.157の図13-4]
「総費用=可変費用+固定費用」の両辺を生産量で割れば
総費用/生産量=可変費用/生産量+固定費用/生産量 すなわち
[ ]=[ ]+[ ]
いろいろな費用の性質
平均固定費用は,生産量の増加に伴って
[ ]
する(グラフは[ ]
)《逓増的な総費用関数を前提とすれば》平均可変費用は,生産量の増加に伴って
[ ]
する(グラフは[ ]
)「平均費用=平均可変費用+平均固定費用」が成り立つので,平均費用のグラフ は
[ ]
平均可変費用曲線と平均固定費用曲線は,平均費用曲線より常に下にある 生産量がゼロのとき,平均可変費用と限界費用とは一致する
→ 以上の点を,教科書p.158第3段落からp.160最後までを熟読して確認すること
unit 14 いろいろな費用の性質
平均費用曲線と限界費用曲線の性質(1)
平均費用曲線と限界費用曲線の関係
限界費用曲線は、 U 字型の平均費用曲線の[ ]で右上がりに
交わる[教科書p.165の図14-1]
理由:
の場合 → 生産量を1単位増やしたときの費用の増加分( )がそれまでの 平均( )より小さいので,平均費用は減少する
(例1) 9人の学生で試験をおこなったところ総得点は630点,平均点は70点であった.1人の 学生が追試験を受けたところ,得点が60点だった.この場合,限界点数は60点,もとの 平均点は70点なので,「限界<平均」.したがって,平均点は70点から69点に下がる.
の場合 → 生産量を1単位増やしたときの費用の増加分( )がそれまでの 平均( )より大きいので,平均費用は増加する
(例2) 上の例で追試験の学生の得点が80点だったとせよ
平均費用曲線と限界費用曲線の性質(2)
以上より,限界費用曲線が右上がりであるなら,限界費用曲線と平均費
用曲線は平均費用曲線の[ ]において交わることがわかる
生産量 AC, MC
減少 増加
平均費用曲線と限界費用曲線の性質(3)
総費用曲線,平均費用曲線,
限界費用曲線の関係は右図の
通り
生産量 AC, MC
総費用曲線 総費用
平均費用曲線と限界費用曲線の性質(4)
平均費用が必ずしも U 字型にならないこともある(固定費用が存在しな
い場合など)
ただし,このときでもスライドNo.23の「理由」に示した性質は成り立
つので,教科書p.167の図14-2のいずれかのようになる
[質問:図14-2ではなぜ
MC
曲線とAC
曲線の縦軸切片が一致しているのか?]可変費用と限界費用
限界費用曲線の下方領域のうち,ある産出量 X までの面積は X 単位を
生産するための[ ]に相当する
[教科書p.167の図14-3を参照]
ある産出量 X に対する可変費用は,平均可変費用曲線を用いても表すこ
とができる[教科書p.168の図14-4を参照]
経済学における費用
[ ](サンク・コスト)
費用のうち,事業から撤退するときに回収することのできない部分のこと
(教科書では「投下費用」と呼んでいるが,これは一般的な用語ではないので注意されたい. この講義では,通例にしたがい埋没費用あるいはサンク・コストと呼ぶ)
[ ]
その資源を他の代替的な用途に使用して得られる最大の収益のこと
[あなたにとって,この講義に出席することの機会費用はいくらぐらいか]
沈む sink/sunk/sunk
埋没費用(サンク・コスト) 回収できる
回収できない
unit 15 利潤最大化
企業の目的と利潤最大化
ミクロ経済学では,企業は利潤をできるだけ大きくすることを目的として
行動する,と考える → [ ]の前提
利潤 =[ ]ー[ ]
利潤最大化問題は2段階に分けて考える
① 生産するとしたら,どれだけ生産すれば利潤が最大になるか
② それを前提として,生産するかしないか(生産をして果たして採算が取れ るか)
利潤を最大にする生産量(1)
① 利潤を最大にする生産量の求め方
生産量を1単位増やすことで追加的に得られる収入[= ]と追加的に 増える費用[= ]を比較する
完全競争市場(unit 5 参照)では,限界収入 = 市場価格である 市場価格 > 限界費用の場合:
→ 生産量を1単位増やすと,「収入の増加分>費用の増加分」 なので,生産を[ ]方が利潤が高まる
市場価格 < 限界費用の場合:
→ 生産量を1単位増やすと,「収入の増加分<費用の増加分」 なので,生産を[ ]方が利潤が高まる
以上からわかったことは,市場価格と限界費用が一致していないときは,生産量を 増やすか減らすことで利潤を高めることができるということ
利潤を最大化するためには[ ]が成り立っていなければ ならない
以上と同じことを,図を用いて説明する
利潤を最大にする生産量(2)
生産量 可変費用
[unit 14 の復習]限界費用曲線の下方領域のうち,ある生産量 X までの面積
(図の黄色の領域)は X 単位を生産するための[ ]に相当する
利潤を最大にする生産量(3)
利潤を最大にする生産量(4)
生産量 可変費用
収入
市場価格を P とすれば, P と X によってできる長方形(図の太線の長方形)の 面積は[ ]を表す
生産量 可変費用
収入 利潤+固定費用
図の緑色の領域は,収入 ー 可変費用 = [ ]を表す
なぜなら,利潤=収入ー(可変費用+固定費用)
利潤を最大にする生産量(5)
生産量 可変費用
収入 利潤+固定費用
利潤を最大にする生産量(6)
生産量 X においては[ ]なので,生産量を1単位増やせば「利潤+ 固定費用」(緑色の領域)が大きくなる.固定費用は一定なので,これは利潤の 増加を意味する
生産量 収入 可変費用
利潤を最大にする生産量(7)
生産量 においては[ ]なので, 可変費用を表す黄色の領域が収 入を表す領域からはみ出る
生産量 収入 可変費用
利潤+固定費用 (=AーB)
A
B
この場合,「利潤+固定費用」を表す領域は,緑色の領域(A)から可変費用の はみ出した部分(青色の領域B)を差し引いたものになる
利潤を最大にする生産量(8)
利潤のマイナス部分
利潤を最大にする生産量(9)
生産量 収入 可変費用
利潤+固定費用 (=AーB)
A
B
生産量 においては[ ]なので,生産量を1単位減らせば「利潤+ 固定費用」が大きくなる(利潤のマイナス部分が小さくなる)ので,利潤が増加す る
利潤のマイナス部分
利潤を最大にする生産量(10)
生産量
以上より分かったこと
したがって,利潤が最大になるのは[ ]が成り立つときである
利潤+固定費用
P>MC のとき P<MC のとき
生産量を[ ]利潤が増大する 生産量を[ ]利潤が増大する
② 生産するかしないかの決定
生産する場合に得られる利潤が,生産しない場合に得られる利潤よりも小さいなら ば,企業は生産しないことを選ぶ
生産する場合に得られる利潤: 収入 ー( 可変費用 + 固定費用 ) 生産しない場合に得られる利潤: [ ]
[生産しなくても,固定費用は埋没費用なので赤字が発生する]
よって,企業が生産することを選ぶのは次式が成り立つとき 収入 ー( 可変費用 + 固定費用 )> ー 固定費用
[利潤がマイナスのこともあるが,固定費用の一部でも回収できればよいので生産を行う]
これを書き換えれば [ ]
すなわち,「 収入 > 可変費用 」ならば企業は生産を行う
生産をするかしないかの決定(1)
あるいは「 収入 > 可変費用 」の両辺を生産量で割ると
収入/生産量 = 価格 > 可変費用/生産量 = 平均可変費用 すなわち, [ ]ならば企業は生産を行う
「 価格 = 平均可変費用 」は生産するかしないかを分ける価格なので,[ ああああ]と呼ばれる
利潤最大化問題のまとめ
企業が生産を行うとすればすれば,[ ]かつ[ ]が成
り立っていなければならない
生産をするかしないかの決定(2)
利潤最大化問題の図解(1)
生産量
市場価格が P であるとき,MC 曲線が U 字型ならば P = MC となる点が2つあるが, MC 曲線が右下がりの場合(黒点)は,生産量を増やすことで利潤を増やすことができ るため,利潤最大点ではない
生産量
利潤最大化問題の図解(2)
市場価格が P であるとき,企業は生産量[ ]を選ぶことで利潤が最大になる 市場価格が であるとき,企業は生産量[ ]を選ぶより生産しないことを選ぶ
操業停止価格
利潤最大化問題の図解(3)
生産量
価格 P および生産量 X のとき,企業の[ ]は図の赤色の長方形で表される
(なぜか?)
[ ]
利潤最大化問題の図解(3)
生産量
[ ]
生産量 X のとき,企業の[ ]は図の青色の長方形で表される(なぜか?)
生産量
[ ]
総費用の内訳である[ ]と[ ]は図のように表される
(なぜか?)
利潤最大化問題の図解(4)
[ ]
利潤最大化問題の図解(5)
生産量
価格 P および生産量 X のとき,企業の[ ]は図の橙色の長方形で表される
[ ] (=収入ー総費用)
供給曲線(1)
以上の分析から,供給曲線を導出することができる
スライドNo.40より,市場価格が与えられたとき,限界費用が市場価格に等し くなる( P=MC )ような生産量を選べば利潤は最大になる
スライドNo.42より,市場価格が操業停止価格( P=AVC )以上であれば生産 を行う
これらを総合すれば,供給曲線は,
操業停止価格以上の価格に対しては[ ]と一致する 操業停止価格より低い価格に対しては生産量は[ ]
生産量
[ ]
供給曲線(2)
供給曲線
供給曲線(3)
供給曲線上であれば企業は生産するが,操業停止点では「利潤 = ー 固定費用」と利 潤がマイナスになっている.
企業の利潤が黒字になるか赤字になるかを分ける価格は[ ]と呼ば れるが,これは平均費用曲線の最小点に当たる価格のことである
「価格 > 平均費用」である場合,両辺に生産量を掛ければ「収入 > 総費用」と なるので,利潤 > 0,すなわち[ ]である
「価格 < 平均費用」である場合,利潤 < 0,すなわち[ ]である
生産量 操業停止価格
供給曲線(4)
損益分岐価格
供給曲線
黒字生産
赤字生産 生産しない