3 章 反粒子
近藤寛記
量子電磁力学の過程における遷移率の計算には第一に多粒子系であること、第二に相対論 的な扱いが必要であることが問題となる。自由クォーク、レプトンに対する 1 粒子波動方 程式の解を求め、相互作用を摂動として扱うことで、2 つの粒子の散乱を調べる。考えて い る 過 程 に 対 応 す る Feynman 図 に Feynman 則 を 適 用 し て 遷 移 率 を 計 算 す る 。 Feynman則を求めるのには場の理論が必要である。
ここでは粒子のスピンを簡単のために無視する。スピンの無いレプトンという非物理的な ものを考えて計算の枠組みを学ぶ(3,4 章)。
3.1 非相対論的量子力学
Schrödinger方程式は、古典的なエネルギー、運動量の関係
E= p
2 m
において、
E →iℏ ∂ ∂ t , p →−iℏ∇
という対応をすることで得られた。i ∂
∂ t ψ ( x ,t )+ 1
2 m ∇
2
ψ ( x ,t )=0
ここで、
ρ ( x , t )= | ψ ( x , t) |
2 は、( x , t )
に粒子を見出す確率密度であると解釈する。確 率の保存により、領域 V における粒子の存在確率の単位時間当たりの減少量は、領域 V か ら出ていく確率流の量に等しい。−∂
∂ t ∫ ρ( x , t) dV = ∫ j( x , t) ∙ n( x ) dS= ∫ ∇ ∙ j ( x, t ) dV
微視的には、確率密度についての連続の方程式
∂
∂t ρ ( x ,t )+∇∙ j ( x , t )=0
が成り立つ。Schrödinger 方程式に、左から −i ψ¿
( x , t )
をかけて、ψ
¿( x , t ) ∂
∂ t ψ ( x ,t )−i ψ
¿( x , t) 1
2m ∇
2
ψ ( x ,t )=0
実部をとって
( ψ
¿( x , t ) ∂ t ∂ ψ ( x ,t )+ψ (x , t) ∂
∂ t ψ
¿
( x ,t ) ) − i
2m ( ψ
¿
(x , t) ∇
2ψ ( x , t )−ψ (x , t) ∇
2ψ
¿( x ,t ) ) =0
∂
∂t | ψ ( x , t ) |
2+∇ ∙ ( −i
2 m ( ψ
¿
( x , t ) ∇ ψ ( x ,t )−ψ ( x ,t ) ∇ψ
¿( x , t ) ) ) =0
これと連続の方程式を比較して、確率流密度が
j ( x , t )= −i
2m (ψ
¿
( x , t ) ∇ ψ ( x ,t )−ψ ( x , t ) ∇ ψ
¿( x , t ))
と書ける。
エネルギー E、運動量
p
を持つ自由粒子ψ ( x , t)=N e
ip ∙ x−iEtについては
ρ ( x , t )= | N |
2j ( x , t )= p
m | N |
2
である。
3.2 Lorentz 共変性と 4 元ベクトルの表記法
現代物理学の基礎は、Lorentz 系(互いに一様な相対速度を持つ座標系)で基本法則が同 じ形をとるということにある。特殊相対論はあらゆる Lorentz 系で光速度は一定であると いうことを前提としている。Lorentz 系から Lorentz 系への変換を Lorentz 変換という。 この変換において
c
2t
2− x
2 は不変である。問題 3.1
座標系 (t , z) から速度 v の Lorentz ブーストで、新たな座標系 (t ' , z ' ) になったとす る。この時
ct
'= ct−(v /c ) z
√ 1−(v /c )
2z
'= z−(v /c ) ct
√ 1−( v /c )
2ここで
θ
をtanhθ=v /c
で定義すると、sinhθ= v /c
√
1−( v /c )
2coshθ=
1√
1−( v /c )
2であるから
ct
'=(coshθ )ct−(sinhθ) z
z
'=−( sinhθ) ct+( coshθ) z
が成り立つ。ここで、
cosiθ=coshθ
、siniθ=isinhθ
であるから、ict
'=( cosiθ)ict−(siniθ) z
z
'=(sinhθ) ict +(coshθ)z
と書ける。すなわち、Lorentz 変換は
ict−z
平面における虚数角iθ
の回転と考える ことができる。Lorentz変換で(ct,
x
)と同じ変換をする 4 つの物理量の組を 4 元ベクトルという。( ct , x )= ( x
0, x
1, x
2, x
3) =x
μ4元ベクトル
A
μ=( A
0, A)
について、Lorentz 変換では( A
0)
2−A
2が不変である。運動量 4 元ベクトルは
( E c , p ) = ( p
0, p
1, p
2, p
3) = p
μである。
( E c )
2
− p
2 は Lorentz 不変な量である。自由粒子に対しては( E
c )
2
− p
2= m
2c
2が成り立つ。m は粒子の静止質量である。以下の議論では、
c=1
の自然単位系を用い る。2つの 4 元ベクトル
A
μ=( A
0, A
1, A
2, A
3)
,B
μ=(B
0, B
1, B
2, B
3)
のスカラー積をA ∙ B= A
0B
0−A ∙ B
として導入する。これは Lorentz 変換で不変である。 共変ベクトル
A
μ=(A
0
,− A)
を導入すると、スカラー積はA ∙ B= A
μB
μ=A
μB
μ=g
μ νA
μB
ν=g
μ νA
μB
νなどと書ける。ここで、
g
μ ν は計量テンソルで、g
00=1, g11=g22=g33=−1,( ほかの成分) =0 また、g
μ ν についてもg
00=−1, g
11= g
22= g
33=1 , (ほかの成分 )=0
自由粒子に対しては
p
μp
μ= E
2− p
2=m
2が成り立つ。これが成り立つとき、粒子は質量殻(mass shell)上にあるという。
問題 3.3 重心系について
p
1μ=( E
cm2 , p)
p
2μ=( E
cm2 ,− p)
である。粒子の質量が M なので、
( E 2
cm)
2− | p |
2= M
2この時、
s ≡ ( p
1+ p
2)
μ( p
1+ p
2)
μ= ( E
cm,0 )
2= E
cm2次に、実験室系において、粒子 2 が静止しているとする。この時、運動量は
p
1 Labμ= ( E
Lab, p
Lab)
p
2 Labμ=( M , 0)
実験室系に移っても s は不変なので
s=E
cm2= ( p
1 Lab+ p
2 Lab)
μ( p
1 Lab+ p
2 Lab)
μ= ( E
Lab+ M , p
Lab)
2= ( E
Lab+ M )
2− ( p
Lab)
2ここで、
( p
1 Lab)
2= ( E
Lab)
2− ( p
Lab)
2=M
2なので、
s= ( E
Lab+ M )
2+ M
2− ( E
Lab)
2=2 M E
Lab+2 M
2= E
cm2E
Lab= E
cm2
2 M −M
が示された。
E
cm には、E
Lab について1 2
乗の依存性を持つので、E
Lab を大き くしてもE
cm はなかなか大きくならない。ゆえに、実験で要求される重心系のエネル ギーを達成するには、固定標的型加速器は衝突型加速器に比べて不利である。しかし、固 定標的型は衝突型よりも標的がビームではなく物質なので、その分密度が高くフラックス が増えるなどの利点がある。微分演算子の 4 元ベクトルには注意が必要で、
∂
μ= ( ∂
∂ t ,−∇ ) , ∂
μ=( ∂ t ∂ , ∇)
のように、
x
μ, x
μ とは符号が異なる。∂
μ はx
μ と同じ Lorentz 変換性を持ち、∂
μ はx
μ と同じ変換性を持つ。これを用いて、E →iℏ ∂ t ∂ , p →−iℏ∇
を共変形に書くと
p
μ→ ∂
μである。また、不変演算子(D’Alembertian)を以下のように定義する。
=∂
μ∂
μLorentz不変な微分演算子である。
3.3 Klein-Gordon 方程式
始めの方で行った操作を相対論的に考えて行う。相対論的なエネルギーと運動量の関係
E
2= p+m
2において、
E →iℏ ∂ ∂ t , p →−iℏ∇
の置き換えをして、−∂
2∂ t
2ϕ+∇
2
ϕ=m
2ϕ
これを、Klein-Gordon 方程式という。
−i ϕ
¿ をかけて、i ϕ
¿∂
2∂ t
2ϕ−i ϕ
¿
∇
2ϕ=−ℑ
2ϕ
¿ϕ
複素共役をとって
−iϕ ∂
2∂t
2ϕ
¿
+iϕ ∇
2ϕ
¿=ℑ
2ϕ ϕ
¿辺々加えて、
i ϕ
¿∂
2∂ t
2ϕ−iϕ ∂
2
∂ t
2ϕ
¿
−i ϕ
¿∇
2ϕ+iϕ ∇
2ϕ
¿= 0
∂
∂t { i(ϕ
¿∂ t ∂ ϕ−ϕ ∂ ∂ t ϕ
¿
) } +∇∙ { −i ( ϕ
¿∇ ϕ−ϕ ∇ ϕ
¿) } =0
これと、確率密度の連続の方程式
∂
∂t ρ+ ∇∙ j=0
と比較して、相対論的な場合の確率密度が
ρ=i(ϕ
¿∂
∂ t ϕ−ϕ ∂ ∂t ϕ
¿
)
j=−i ( ϕ
¿∇ ϕ−ϕ ∇ϕ
¿)
であると同定される。Klein-Gordon 方程式の解として、エネルギー E、運動量
p
の自 由粒子ϕ=N e
ip∙ x−iEtについて、
ρ=i | N |
2(− iE−iE )=2 E | N |
2j=−i | N |
2(−i p−ip)=2 p | N |
2Klein-Gordon方程式を 4 元ベクトルで表すと、
( ∂
μ∂
μ+ m
2) ϕ=0
または、不変演算子(D’Alembertian)を用いて
( □+m
2) ϕ=0
と書ける。 4元ベクトル
j
μ=( ρ , j)=i(ϕ
¿∂
μϕ−ϕ ∂
μϕ
¿)
を用いて、連続の方程式は、
∂
μj
μ= 0
と書ける。自由粒子の解
ϕ=N e
ip∙ x−iEt= N e
−ip∙ xについて、
j
μ=2 p
μ| N |
2と書ける。
ここで、微小体積要素
d
3x
は、d
3x → d
3x √ 1−v
2のように Lorentz 収縮する。一方、
d
3x
の領域に粒子が見出される確率ρ d
3x
は Lorentz不変であるはずなので、ρ
は速度 v の Lorentz ブーストによってρ → ρ / √ 1−v
2のような変換をするはずである。実際、
ρ
は 4 元ベクトルの第 0 成分なのでこのような 変換性を持つ。ここで、
ϕ=N e
ip∙ x−iEt を( ∂
μ∂
μ+ m
2) ϕ=0
に代入すると、−E
2+ p
2+ m
2= 0
E=± √ p
2+ m
2すなわち、許される正エネルギー
( E>0 )
の解だけではなく、負エネルギー( E<0 )
の 解も現れてしまう。このことは始めは決定的な欠陥だと思われていた。その理由は第一に 、 どんどん低い負エネルギーの状態への遷移が起こってしまうことであり、第二にはρ=2 E | N |
2からわかるように。負エネルギーの解は負の確率密度を持つことになってしまうことであ る。すなわち、困難は
ρ<0
を持つE<0
の解である。我々は完全系を用いて議論をしなければならないから、負エネルギーの解を無視 することはできず、この問題に向き合わなければならない。
3.4 歴史のエピソード
Diracは、
∂/∂ t
と∇
について線形な相対論的波動方程式(Dirac 方程式)を案出し た。( i γ
μ∂
μ−m ) ψ=0
これによって負の確率密度の問題を解決した。この方程式はスピン 1/2 の粒子を記述する。 しかし、負エネルギーの解は依然として現れる。彼は、負エネルギー解の問題を回避する ために、真空が無限個の負エネルギーの電子で満たされていると考えた( Dirac の海)。 このように考えれば、Pauli の排他原理により、正エネルギーの電子は低い負のエネル ギー状態に落ち込むことはない。図 3.1 に示したように、電子が負エネルギーの準位
(
−E)
から正エネルギー( E ' )
の準位に励起すると、Dirac の海に孔が空く。そこで、 電荷−e
、エネルギー−E
の電子がなくなることを電荷+e
、エネルギー+ E
の 陽電子ができたと考える。ゆえに、この電子の励起は、粒子対+¿( E)
−¿ ( E
') + e
¿e
¿ の生成に相当する。
1934年、Pauli と Weisskopf は
j
μ=−ie(ϕ
¿∂
μϕ−ϕ ∂
μϕ
¿)
を電子の電荷-電流密度と解釈した。すると、
ρ= j
0 は電荷密度を表すことになり、これ が負の値を持っても問題ない。E<0
の解は、反対電荷をもつ粒子(反粒子)のE>0
の解とみなせる。Dirac の空孔理論と違って、この解釈は Pauli の排他原理が働かないボソンについても適用できる。
3.5 E<0 の解に関する Feynman−Stückelberg の解釈
負エネルギー状態に対して、
Stückelberg
とFeynman
は、これを時間と逆向きに進 む粒子、あるいは時間の向きに進む正エネルギーの反粒子と解釈した。エネルギー E、運動量
p
、電荷-e の電子について、4 元電流ベクトルは、−¿ e
¿¿
j
μ¿
である。次に、エネルギー E、運動量
p
、電荷+e の陽電子について、+¿ e
¿¿
j
μ¿
これはエネルギー
−E
、運動量−p
を持つ電子のものと同じである。すなわち、1 つ の系について、エネルギー E の陽電子を放出することは、エネルギー−E
の電子を救出 することと同じである。これを図示すると次のようになる。時間
つまり、時間と逆向きに進む負エネルギー粒子の解は、時間の向きに進む正エネルギー反 粒子の解を表す。エネルギー E を持つ状態は
e
−iEt のように時間発展するので、エネルギー −E の状態は
e
−i(−E )t=e
−iE (−t ) のように時間発展する。なのでこのような同定が可能になる。
1つの電子がポテンシャルによって 2 回散乱をする場合を考える。図 3.2 のように 2 つの 場合がある。散乱の前後で観測される電子の状態は、2 つの図で同じである。右の図は、 反粒子を考えることで初めて可能になる。この図において、まず時刻
t
1 で電子、陽電子 対が生成し、そのうちの電子の方は散乱電子であり、陽電子の方は時刻t
2 で入射粒子と 対消滅する。与えられた始状態と終状態について散乱振幅を求めるときには、これら 2 つ の図の両方の寄与を考えなければならない。3.6 非相対論的摂動論
自由粒子に対する Schrödinger 方程式
H
0ϕ
n( x)=E
nϕ
n( x )
が解けているとする。ここで、
H
0 は時間に依存しない。簡単のため位、体積 V の箱に 粒子が 1 個存在するように規格化する。我々の目的は、相互作用V ( x , t )
が加わった時 に、Schrödinger 方程式H
(¿¿ 0+V ( x ,t ))ψ (x , t)=i ∂
∂ t ψ ( x , t )
¿
の解くことである。摂動論を用いるためには時間発展を
H
0 によるものとV (x , t)
に よ る も の と に 分 離 す る 。 相 互 作 用 表 示ψ
I( x , t )=e
i H0t
ψ ( x , t )
の 波 動 関 数 は 、 Schrödinger表示の波動関数からH
0 による時間発展を取り去ったものである。ψ
I( x , t )
の時間発展を表す方程式は、H
(¿¿ 0+V ( x ,t ))e
−i H0tψ
I( x , t )=i ∂
∂ t e
−i H0t
ψ
I( x , t )
¿
H
0e
−i H0tψ
I( x , t)+V ( x , t ) e
−i H0tψ
I( x ,t )=e
−i H0tH
0ψ
I( x ,t )+e
−i H0ti ∂
∂ t ψ
I(x , t)
i ∂
∂ t ψ
I( x , t)=e
i H0t
V ( x , t) e
−i H0tψ
I( x , t )
i ∂
∂ t ψ
I( x , t)=V
I( x ,t )ψ
I(x , t)
であり、相互作用表示の波動関数は、
V
I( x ,t )
によって時間発展する。H
0 による時 間発展は演算子に押し付けられている。自由粒子に対する Schrödinger 方程式
H
0ϕ
n( x)=E
nϕ
n( x )
の解
ϕ
n( x)
は、完全系を成すので、ψ
I( x , t )
を各時刻 t ごとに展開できる。ψ
I( x , t )= ∑
n
a
n(t) ϕ
n( x)
この時、
i ∂
∂ t ∑
na
n(t ) ϕ
n( x )=V
I( x ,t ) ∑
na
n(t )ϕ
n(x )
∫ d
3x ϕ
n¿( x) ∑
m
i d
dt a
m(t ) ϕ
n( x )= ∫ d
3
x ϕ
n¿( x)V
I( x , t ) ∑
m
a
m(t) ϕ
m( x)
∑
mi d
dt a
m(t)δ
nm= ∫ d
3
x ϕ
n¿( x )V
I( x , t) ∑
m
a
m(t) ϕ
m(x)
i d
dt a
n(t )= ∑
ma
m(t) ∫ d
3
x ϕ
n¿( x)e
i H0tV ( x , t) e
−i H0tϕ
m( x )
i d
dt a
n(t )= ∑
ma
m(t) ∫ d
3
x ϕ
n¿( x)V ( x , t ) ϕ
m( x )e
i (En−Em)tいま、
t= −T 2
において、粒子がH
0 の固有状態ϕ
i( x)
であったとする。この時、a
i( −T
2 ) =1
a
m( −T
2 ) =0 (m≠ i)
である。
t= −T 2
から摂動を入れる。この時、a
m( t )=δ
mi+O(V )
なので、V の 1 次までで状態
ϕ
f( x )(f ≠ i)
に遷移する確率を考えると、i d
dt a
f(t )= ∑
mδ
mi∫ d
3
x ϕ
f¿( x)V (x , t) ϕ
m( x )e
i( Ef−Em)td
dt a
f( t )
=−i∫ d
3
x ϕ
f¿(x )V ( x , t ) ϕ
i(x )ei( Ef−Ei)ta
f(t )=−i ∫
−T /2 t
dt ' ∫ d
3x ϕ
f¿( x )V ( x ,t ') ϕ
i( x)e
i (Ef−Ei)t '相互作用を
t= T 2
までかけることを考えると、T
fi≡ a
f( T /2)=−i ∫
−T /2 T / 2
dt ∫ d
3x ϕ
f¿( x)V ( x , t) ϕ
i( x)e
i(Ef−Ei)tT
fi=−i ∫
−T 2 T 2
dt ∫ d
3x ( ϕ
f( x ) e
−i Eft)
¿V ( x , t )(ϕ
i( x)e
−iEit)
これを共変形に書いて、
T
fi=−i ∫ d
4x (ϕ
f(x ))
¿V ( x ) ϕ
i( x )
ここで、
| T
fi|
2 は状態 i から f への遷移確率だと解釈できるだろうか。今、V が時間によらない場合を考える。
T → ∞
として、T
fi=−i ∫
−∞
∞
dt ∫ d
3x ( ϕ
f( x ) )
¿V (x) ϕ
i( x)e
i(Ef−Ei)tここで、
V
fi= ∫ d
3x ( ϕ
f( x ) )
¿V (x)ϕ
i( x)
として、
T
fi=−i V
fi∫
−∞
∞
dt e
i( Ef−Ei)tT
fi=−2 πiV
fiδ(E
f− E
i)
すなわち、
| T
fi|
2 はある量ではない。そこで、単位時間当たりの遷移確率というものを 定義する。W= lim
T → ∞
| T
fi|
2T
すると、
W= lim
T → ∞
| V
fi|
2T |
−T /2∫
T /2
dt e
i(Ef−Ei)t∫
−T /2 T /2
dt e
−i(Ef−Ei)t| = lim
T → ∞
| V
fi|
2T 2 πδ ( E
f− E
i) | ∫
−T2 T 2
dt e
i(Ef−Ei)t| = lim
T →∞
| V
fi|
2T 2 πδ ( E
f− E
i) T =2 π | V
fi|
2
δ ( E
f− E
i)
この式は終状態について積分してはじめて意味のある量になる。素粒子物理学で考えたい のは、1 つの始状態から出発していくつかある終状態のうちのどれか 1 つに遷移する確率 である。終状態における状態密度を
ρ(E
f)
とする。遷移率はW
fi=2 π ∫ d E
fρ ( E
f) | V
f i|
2δ ( E
f− E
i) =2 π | V
fi|
2ρ ( E
i)
これは、Fermi の黄金律といわれる。
次に、2 次の摂動を考える。ここでは、相互作用がゆっくりと印加されていくことを考え る。
i d
dt a
f(t )= ∑
na
n(t) ∫ d
3
x ϕ
f¿( x ) V ( x , t) ϕ
n( x ) e
i(Ef−En)t= ∑
n
a
n(t ) V
fne
i(Ef−En)tの右辺に、1 次の結果
a
n( t )
=δ¿−i∫
−T 2 t
d t
'∫ d
3x ϕ
n¿( x ) V ( x ) ϕ
i( x ) e
i(En−Ei)t'=δ¿−i∫
−T 2 t
d t
'V
¿e
i(En−Ei)t'を代入して、
d
dt a
f(t )=…+(−i)
2∑
n
[
−T∫
2 td t
'V
¿e
i(En−Ei)t'] V
fne
i(Ef−En)tここで、
…
は 1 次の寄与である。T
fi の 2 次の寄与は、T
fi=…− ∫
−∞ +∞
dt ∑
n
[
−∞∫
td t
'V
¿e
i(En−Ei)t'] V
fne
i(Ef−En)t=…− ∑
n
V
fnV
¿∫
−∞ +∞
dt e
i(Ef−En)t∫
−∞ t
d t
'e
i(En−Ei)t'ここで、t’についての積分の下端は振動してしまう。なので、指数関数の方に小さな正の 量
ε
を挿入し、積分したのちに 0 に近づける。すなわち、∫
−∞ t
d t
'e
i(En−Ei−iε)t'=i e
i(En−Ei−iε)t
E
i− E
n+iε
この時、
T
fi=…− ∑
n
V
fnV
¿∫
−∞ +∞
dt e
i(Ef−En)ti e
i(En−Ei)t
E
i−E
n+ iε =…−i ∑
nV
fnV
¿E
i− E
n+ iε
−∞∫
+∞
dt e
i(Ef−Ei)t=…−2 πi ∑
n
V
fnV
¿E
i−E
n+ iε δ (E
f− E
i)
となる。2 次まで考慮したとき
W= lim
T → ∞
| T
fi|
2T =
T → ∞lim
1
T | −iV
fi∫
−T2 T 2
dt e
i(Ef−Ei)t−i ∑
n
V
fnV
¿E
i− E
n+iε
−T∫
2 T 2
dt e
i(Ef−Ei)t|
2
= lim
T → ∞
1
T | V
fi+ ∑
nV
fnV
¿E
i− E
n+iε |
2
2 πδ ( E
f− E
i) ∫
−T 2 T 2
dt e
i(Ef−Ei)t= lim
T → ∞
1
T | V
fi+ ∑
nV
fnV
¿E
i− E
n+iε |
2
2 πδ ( E
f− E
i) ∫
−T 2 T 2
dt=2 π | V
fi+ ∑
n
V
fnV
¿E
i− E
n+iε |
2
δ ( E
f−E
i)
となる。2 次まで考慮したときの過程を表したのが図 3.4 である。相互作用バーテックス には
V
¿ のような因子を与え、中間状態には伝播関数の因子として 1/( E
i−E
n)
を対応 させる。これがダイアグラムから遷移振幅を得る規則である。δ ( E
f−E
i)
の因子からもわかるように、始状態と終状態でエネルギーが保存する。
3.7 Feynman−Stückelberg 流の散乱振幅則
反粒子を含む散乱過程を考える。反粒子を時間を逆行する負エネルギーの解とみなすこと で、その過程の散乱振幅を表したい。
1つの粒子が作る電磁ポテンシャル V の中をもう 1 つの粒子が運動しているときを考える。 電子間の電磁相互作用は光子の交換によるものである。V のエネルギー
ω
の光子につい て時間依存性がe
−iωt である。ゆえに、遷移振幅は∫ dt ( e
−i Eft)
¿e
−iωte
−i Eit=2 πδ (E
f− ω−E
i)
に比例する。これと同じ議論が陽電子の散乱についてもあてはまる。図 3.6(a)は、始状態 エネルギー
E
i の陽電子がエネルギーω
の光子を吸収して終状態エネルギーE
f に なることを表している。これを電子状態のみを用いて議論したい。時間を逆行するエネル ギー −Ef の電子がエネルギーω
の光子を吸収してエネルギーE
i の状態になる様 子が図 3.6(b)に描いてある。図 3.6(a)と図 3.6(b)は同じものを表す。図 3.6(b)に描いて ある散乱の振幅は、∫ dt ( e
−i(−Ei)t)
¿e
−iωte
−i(−Ef)t=2 πδ(E
f− ω−E
i)
に比例する。遷移振幅を計算するためのダイアグラムの計算の規則は、行列要素
∫ d
4x ϕ
¿outV ϕ
¿を作ることである。 問題 3.5
(a)
エネルギー
ω
、運動量q
の光子からエネルギーE
1 、運動量p
1 の電子とエネル ギーE
2 、運動量p
2 の陽電子が対生成するとき。これは、エネルギーE
1 、運動量p
1 の電子がエネルギーω
、運動量q
の光子を吸収してエネルギー −E2 、運動 量 −p
2 の電子になるともいえる。遷移振幅は、摂動の 1 次で、
T
fi=−i ∫
−∞
∞
dt ∫ d
3x ( ϕ
f( x ) )
¿V (x ,t ) ϕ
i( x)e
i( Ef−Ei)t終状態
ϕ
f( x )
は、エネルギー −E2 、運動量 −p
2 の電子状態なのでϕ
f( x )= 1
√ 2 π e
i(−p2)∙ x
E
f=−E2始状態
ϕ
i( x)
は、エネルギーE
1 、運動量p
1 の電子状態なのでϕ
i( x )= 1
√ 2 π e
i p1∙ x
E
i=E
1エネルギー
ω
、運動量q
の光子に対応するV (x ,t )
にはe
−iωt の時間依存性とe
i q ∙x の空間依存性があるのでV (x , t) ∝ e
i q ∙ xe
−iωtである。この時、
T
fi∝−i ∫
−∞
∞
dt e
i(−E2−E1−ω)t∫ d
3x e
i(p2+p1+q)∙ x∝ δ( E
2+ E
1+ω)δ( p
2+ p
1+q)
であり、確かにエネルギー保存、運動量保存が得られる。