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事業の中での知的財産権の貢献割合に関する調査研究

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(1)

平成25年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書

事業の中での知的財産権の

貢献割合に関する調査研究報告書

平成26年2月

新日本有限責任監査法人

(2)

-i-

要約

1.本件調査の俯瞰図

(1)貢献度評価の手順(図表1)

(3)

-ii-

(2)各国のパテントボックス税制導入状況一覧

PB 税制なし PB 税制あり

R&D 税制なし R&D 税制あり

国名 ドイツ 米国 英国 フランス オランダ

PB 導 入年

N/A N/A 2013 1965 2008

法人 税率

30.00% 40.75% 24% 33.33% 25% PB 優

遇税

N/A N/A 実効税率 10% 15% 5%

政策 的背

中小企業の研究 開発活動の促進 研究開発活動の 大半が大企業に よって行われて いる状況を改善 し、経済の底上 げをはかる。

米国企業の租税 回避対策として のタックスヘイ ブン税制の強化

外資系企業の 誘致、国内企業 の留置、高付加 価値事業(雇

用)の創出

各改正により異 なる。 企業誘致を目的 とし、対象が拡 大されてきた一 方で、2011 年に は租税回避の防 止を目的として 要件が追加され

た。

外資系企業の 誘致及びオラ ンダ経済の活 性化への貢献

主な 対象

N/A N/A

英国法人税の 納税者たる適 格企業が特許 権の付された 発明の実施か ら得た所得

特許権によって 保護された技術 上の知財、知財

の改良、 ノウハウ等

認定を受けた 研究開発活動 により自社開 発された知財

主な 要件 の例

N/A N/A

・相当程度の権 利の管理活動

・権利の「開発 要件」を満たす

こと

フランス国内及 び EU 域内で登録

された特許であ ること

納税者が自社 開発した知財 であること

*PB税制:パテントボックス税制

*R&D税制:研究開発税額控除

(4)

-iii-

2.複数主体がそれぞれ所有する知的財産を集合化する際の「貢献度評価」

に関する要約

(1)調査・研究の意義

厳しい国際競争の中で我が国が成長を続けていくためには革新的な技術開発により国際 競争力に勝る事業の創造が求められる。

ビジネス環境の急速な変化、技術の進化、技術の複合化に迅速に対応する事業の創造に は、先読みによる事業を見据えた、複数主体による融合した共同研究開発、或いは複数主 体の技術力、知財力を結集した事業化が相応しい。そして、各主体の参加を促すには各主 体の共同研究開発の成果、或いは技術、知的財産の事業に対する「貢献度の評価」につい ての考え方を整理することが重要であると考えられる。

(2)貢献度評価の手法について

本調査研究においては、既存の評価手法や技術士へのアンケート結果を踏まえ、特定の 事業の中で複数の特許を用いている場合において、事業における各特許の貢献度の見積も りに資する評価項目及び評価項目間の重み付けについて検討した。

貢献度を評価する手順は、例えば図表1に示すようなものが考えられる。貢献度評価は、 事業競争力を高めるという視点で事業に関係する特許を評価するものであり、事業競争力 のベースになるのは技術力と知財力であるから、特許を法的に評価するだけでなく、技術 的にも評価することが適当であると考えられる。

具体的には以下のような手順で評価することが考えられる。

①事業を技術要素に分解し、技術要素毎の事業に対する寄与度の割合を算出するととも に、事業に関係する特許(群)を各技術要素に対応させて分類する。

②技術要素それぞれについて、特許が技術要素にどれほど寄与しているかを算出する。

③技術要素毎に複数の特許(群)が存在し、しかもその特許(群)を別の者が所有して いる場合には、各所有者の特許(群)毎に、各特許(群)の寄与度を算出する。

*③については、これから事業に参入するという段階で評価する場合は、特に排他力を重 視した評価を行うことが重要である。

また、貢献度評価は、事業が計画通り実施できるかを知的財産の面から検討するのであ るから、事業の「強み」を増し、「弱み」を解消することを前提に、事業競争力を高める視

(5)

-iv-

点、即ち、事業の強みを増す「守りの特許」、事業の弱みを解消する「攻めの特許」の視点 で事業に関係する特許の評価を行うものである。

従って、「守りの特許」(「実施技術に関する特許」だけでなく、「代替技術での事業参入 を阻止する特許」)や「攻めの特許」(「事業の弱みを解消する特許」)についても評価する 必要があり、本調査研究においては、以下の事業を守る特許(守りの特許)及び事業の弱 みを解消する特許(攻めの特許)を貢献度評価の対象とした。

・評価対象とした特許

(ⅰ)事業を守る特許(守りの特許)

①事業競争力を高める実施技術に関する特許(登録、未登録、対応外国特許)

:コア技術(事業競争力の源泉となる技術)に関する特許、周辺特許

②代替技術での事業参入を阻止する特許(登録、未登録、対応外国特許):コア技 術の代替技術に関する特許

(ⅱ)事業の弱みを解消する特許(攻めの特許)

①事業の実施に影響を与える他社の特許の排他力をなくす特許(登録、未登録、対 応外国特許)

(3)貢献度評価の考慮要素(評価項目の設定及び重みづけ)

図表1の手順における①から③までの各段階における考慮すべき要素(評価項目)とし ては、例えば以下のようなものが考えられる。なお、以下の考慮要素の他に、特に考慮し なければならない要素がある場合は、それらの要素も加味して判断することが可能である し、 評価に求められる精度、予算(費用)、納期(時間)等に応じて、必要な考慮要素 を選択することができる。

各評価項目間の重みづけを行い、スコア化することで、事業で用いられる技術の中での 特許の貢献度を見積もることが可能となる。

① 事業に対する技術要素の寄与度を評価する際の考慮要素

・ 事業における技術の重要度

・ 技術の創造性

・ 代替技術に対する優位性

② 技術要素中の特許等の寄与度について検討する際の考慮要素

・ 技術要素における特許の利用割合

(6)

-v-

③ 技術要素中の特許群について、各者の持つ特許群同士の貢献度を評価する際の考慮要 素

・ 権利範囲の広さ(排他性を重視)

・ 侵害発見容易性

・ 特許群の体系化度

・ 特許群の成熟度

3.海外主要国におけるパテントボックス税制に関する取組みに関する要約

本調査研究は、国内外の公開情報文献調査、アンケート・ヒアリングによる調査、委員 会による検討から構成されている。各国の要約を以下に記載する。

(1)EU

英国パテントボックスに関する有害税制の議論を明らかにするとともに、EU 独自の前 提的条件を検討するため、EUの税制規制の現状について明らかにした。

・単一市場の原則

EU では、単一市場の原則を維持するため、加盟国における税制は、国家補助(優遇税 制や補助金を含む)に関する共同体のルールと整合していなければならない。そのため、 特定の取引や特定製品の生産を優遇することによって競争を歪めるまたは脅威を及ぼすい かなる形式の補助、または国家補助が加盟国間の貿易に影響を及ぼす場合はそれが単一市 場の原則に反するものであると判断される。英国パテントボックスは下記の綱領に照らし た検討がなされている。

企業課税のための行動綱領(Code of Conduct Group for Business Tax

本綱領は公正な競争を歪める有害な税制措置について加盟国間の「ピア・プレッシャー」 すなわち共同体の相互関係を基礎とした政治的圧力により是正を図ろうとするものであ る。そのため綱領においても、法的拘束力を有するものではない。この綱領に基づき、 EU 加盟国は①有害な税制競争と認められる既存の税施策を改正し(Rollback)、②将来に わたっても、そうした税施策は導入しない(Standstill)、に合意している。

・英国パテントボックス税制に関する議論

EU の行動綱領部会はドイツによる付託を受け、英国のパテントボックス税制について 検討し、これを有害税制だとの結論を下した。

(7)

-vi-

部会は理由として、①特許収入と実際に英国で行われた研究開発活動との関連性が薄い こと、そのため新たな研究開発活動の促進ではなく、単に税務上のメリットを狙った単な る既存特許の英国への移転も対象となってしまうこと、②特許に直接関連しない収入(最 終製品のマーケティングコスト等)も優遇税制の対象となること、を上げた。この後、問 題はEU経済財務相理事会(ECOFIN)でさらに検討されることとなった。

(2)英国

・導入時の政治的背景及び政策的意図

英国のパテントボックス制度は、英国の法人税制度をG20加盟国中、最も競争力あるも のとする政府の目的を支援し、英国内にイノベーション活動を留置し、高付加価値な雇用 を増やす事を奨励することである。

法人税減税ではなくパテントボックスを導入した理由は、もともと開発サイクルの出口 の優遇を篤くしようという政治的なコミットメントの存在である。

適用税率 10%

標準法人税率 23%201341日‐2014331日)

課税方法 軽減税率

対象 英国法人 税の納 税者た る適格企 業が特 許権の 付された 発明の 実 施から得た所得

主要な要件 ・企業が当該事業年度中に相当程度の権利の管理活動を行ってい ること。

・企業が当該権利に関する「開発要件」を満たしていること。 研究開発優遇税制の

有無

あり

その他 英国外で研究開発が行われていても、知的財産が開発・所有され ていても適用可能

直近の改正動向 2013年に導入

(8)

-vii-

(3)フランス

1965 年にフランス国内企業の研究開発活動及び特許権保有を促進する目的で導入され、 その後企業誘致やイノベーションの促進等、様々な理由で改正が行われてきた。

適用税率 15% 標準法人税率 33.33%

課税方法 軽減税率

対象 特許権によって保護された技術上の知的財産

特許権によって保護しうるが、さまざまな実務上の理由(例えば、 法務費用、機密上の問題等)により納税者が保護しない事を選択 した技術上の知的財産

上記の知的財産に関して行われた技術的な改良 上記の知的財産に関連する産業上の製造ノウハウ

主要な要件 フランス国内及びEU域内で登録された特許であること。 研究開発優遇税制の

有無

あり

その他 企業がイノベーションボックスを利用して、子会社・関連会社を 使った租税回避を行うことを抑止するため、グループ会社間で移 転された特許については通常と同じ法人税率が課される。 直近の改正動向 要件にかかわる文言の削除

①当該知的財産権が有効に利用されていること

②租税回避の意図がないこと

③ライセンス取引の場合、実際に行われていること、さらに当該 取引が、ライセンスの契約期間にわたり、ライセンサーに対する 付加価値を生み出していること

(4)オランダ

オランダの政策的な課題は、EU の中で比較的小国であり、特筆すべき国内製造業がな く、その製造業自体の成長率に問題意識を持っていたこと、また製造業が流出すると研究 開発も外国に流出してしまうという傾向があることである。さらに、付加価値のある雇用 を増やしていきたいという意図もあった。

付加価値のある雇用を増やす点については研究者・技術者に対する就労ビザを迅速かつ スムーズに発給する点も含めて対策が進められたがこれは研究開発を促進する為には、企 業側だけではなく研究者にもインセンティブを与えないといけないという考え方による。 オランダは伝統的にオープンイノベーション志向が強く、委託研究を受け入れる環境が 整っており強固なインフラを有する。イノベーションボックス制度導入の背景として、こ れらの整備されたインフラの更なる活用という意図もあった。

(9)

-viii- 適用税率 実効税率 5%

標準法人税率 25%

課税方法 軽減税率

対象 研究開発認定(R&D declarationを受けた当該研究開発活動によ って自社開発された知的財産

主要な要件 納税者が自社開発した知的財産でなければならない。 研究開発優遇税制の

有無

あり

その他 WBSO( 研 究 開 発 優 遇 税 制 ) に よ る 研 究 開 発 認 定 (R&D declaration)を受けていることが前提となる。

直近の改正動向 2010年に適用限度額を撤廃。

(5)米国

標準法人税率 40.75% パテントボックス税制の有無 なし 研究開発優遇税制の有無 あり

米国では、パテントボックスまたはイノベーションボックスと呼ばれているような優遇 税制は存在しない。その代わり無形資産に関する優遇税制として研究開発活動にかかる税 額控除が広く利用されている。

米国では、原則として、海外子会社で生まれた利益は親会社のある本国に戻さない限り 課税対象とならない。このようなルールを利用してグループ企業間でライセンス契約を結 び、アイルランドのような税率の低い国(タックスヘイブン)に利益を移転する方法が一 般化していった。

BEPS(Base Erosion Profit Shifting)に関する議論

20135月に開催された経済協力開発機構(OECD)の閣僚理事会はAmazonGoogle と い っ た よ う な 米 国 大 企 業 の 海 外 子 会 社 を 利 用 し て の 租 税 回 避 の 動 き に 対 応 す る ため、 BEPSBase Erosion Profit Shifting:税源浸食と利益移転)と呼ばれるプロジェクトを立ち 上げた。

このプロジェクトの大きな目的は前述した企業の租税回避ともみなされる行動が現行の 税法では合法だという事実に対して、もう一度国際課税原則を見直し、この問題に対応し ていく方法を見出すことである。

(10)

-ix-

・米国のパテントボックス導入に関する議論

知財活動の出口における手当については米国では導入されていないが、その必要性を訴 える動きが近年見られている。

Feinstein議員法案

Dianne Feinstein 上 院 議 員 ( 民 主 党 ・ カ リ フ ォ ル ニ ア 州 ) は 競 争 力 強 化 法 案 で あ る”Strengthening 21st Century Manufacturing Act”及び” Leveling Playing Field Act of 2012” 提案している。Feinstein 上院議員の「パテントボックス」条項は、国内で生産された特許 取得製品の販売益に対し、通常の法人税率である35%ではなく、15%の軽減税率を適用す るものである。この背景としては、米国が他国・地域との競争に巻き込まれていることを 課題とし、企業の立地の観点から競争力を高めようとするものである。

Camp議員法案について(「オプションC」の概要)

同議員の法案は、連邦租税の税源浸食に関する懸念に対処するために、外国子会社の外 国知財から発生した所得には毎年軽減税率で連邦租税を課税し、同時に国内知財から発生 した所得に対しても、この軽減税率を適用する(アメとムチのアプローチ)としたもので ある。そして 20136月には外国の知財所得に一律で 15%課税することで今問題になっ ている税源浸食を軽減できると訴えた。Camp 下院議員によれば、海外子会社で得られる 優遇税制が米国の優遇税制と一致する場合、米国をベースとする多国籍企業は海外子会社 を作り租税回避をすることに魅力を得られなくなるとされる。

しかし、いずれの法案も20141月現在で成立していない。

Graetz教授らによる軽課税法域移転制限に関する提言

コ ロ ン ビ ア ・ ロ ー ・ ス ク ー ル 教 授 そ し て イ ェ ー ル ・ ロ ー ・ ス ク ー ル の 名 誉 教 授 で あ る Michael Graetz氏は201210月に技術革新と国際課税に関する論文を発表し、研究開発に よって進む技術革新に対して、研究開発に関係する租税政策がいかなる経済効果を持って いるかということについて調査を行った。

③租税政策の方向性

Graetz 教授の論文では知的財産に対する租税政策には2つの方向があり、その一つはイ ンセンティブの供与、そしてもう一つは所得移転の制限である。

この2つの方向性の違いについて、インセンティブ供与は誘致目的、つまり知的財産の 創出・保有の拠点を国内に引き寄せようとする動きであることに対し、所得移転の制限は 知的財産の国内保持、つまり知的財産の創出・保有の拠点の国外流出を抑制する動きであ る。

(11)

-x-

同教授の論文では、米国は外国から知財所得を引き寄せる必要性に迫られておらず、大 きな国内市場を有する技術革新的な国なのであるとしている。キャンプ議員法案などでも 提案されたように今こそ根本的な変革が必要だとした。

(6)ドイツ

標準法人税率 約30% パテントボックス税制の有無 なし 研究開発優遇税制の有無 なし

*標準法人税率は、法人税Körperschaftsteuer15%連帯付加税Solidaritätszuschlag5.5% 営業税・地方税(Gewerbesteuer)自治体により14-17%程度の合計である。

ドイツは研究開発活動及び知的財産から生じる収益に関して、パテントボックス及び研 究開発税額控除をはじめとする優遇税制をまったく適用していない。ただしドイツもまっ たく研究開発振興政策を実施していないわけではなく、補助金が多用されている傾向があ る。

上記いずれのプログラムでも中小企業をより手厚く優遇している。ドイツでは中小企業 に関する法律上の定義がないため、補助金等の要件の設定については EU の中小企業の定 義を引用している。なお「年間収益」と「売上高」はいずれか一方のみを選べばよいこと になっている。

ドイツが近年直面している政策的な課題は、中小企業の研究開発活動の活性化である。 ドイツでは中小企業が全企業数の約9割を占め、労働人口の約8割が中小企業に所属して いるにも関わらず、研究開発活動のほとんどは大企業によって行われている。中小企業の 研究開発支出がドイツ企業全体の支出に占める割合はわずかであり、深刻な偏りが見られ る。そのため政府は中小企業の研究開発活動を促進し、国内経済全体の底上げを目指して いる。

・ドイツにおけるパテントボックス

これまでは一般的に税収減に対する懸念が非常に強く、ドイツの主要政党は、税制上の 優遇措置を実施することで政府の税収が15億ユーロも減少するとしていた。しかし産業界 からは研究開発優遇税制を求める声が高くなっている(パテントボックスについては具体 的な言及がないことが多い)。そのためドイツにおいては、研究開発税額控除をはじめとす る何らかの優遇税制が必要であるという見解については政府内でもおおむね合意が形成さ れつつある。ただしこうしたインセンティブの導入の背景にある政策的課題は、多国籍大 企業の誘致ではなく、上記のような国内中小企業の競争力の強化である。

(12)

委員会名簿

(13)
(14)

委員会名簿

「事業の中での知的財産権の貢献割合に関する調査研究」委員会名簿

委員長

丸島 儀一 丸島特許事務所 所長 弁理士

委 員

秋葉 恵一郎 一般社団法人 技術知的財産経営支援センター 代表理事 久慈 直登 日本知的財産協会 専務理事

正林 真之 正林国際特許商標事務所 所長 弁理士 関谷 浩一 新日本アーンストアンドヤング税理士法人

パートナー 税理士

高島 淳 税理士法人プライスウォーターハウスクーパース パートナー 公認会計士 税理士

伊達 智子 ユアサハラ法律特許事務所 弁護士 宮崎 裕子 長島・大野・常松法律事務所 弁護士

オブザーバー

特許庁企画調査課

山中 隆幸 特許庁企画調査課課長補佐

経済産業省知的財産政策室

川上 敏寛 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室室長 中野 美夏 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室総括補佐 松岡 徹 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室課長補佐 村山 達也 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室課長補佐 西川 喜裕 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室課長補佐 根橋 広樹 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室係長 松田 彩子 経済産業省経済産業政策局知的財産政策室係長

経済産業省技術振興課

太刀川 徹 経済産業省産業技術環境局技術振興課専門職 小川 ゆめ子 経済産業省産業技術環境局技術振興課係長

(15)

技術研究組合

藤田 友之 技術研究組合光電子融合基盤技術研究所 専務理事

中田 正文 技術研究組合光電子融合基盤技術研究所 知的財産担当室長

事務局

新日本有限責任監査法人 株式会社 帝国データバンク

(16)

目次

(17)
(18)

I. 序 ... - 1 -

1.問題の所在 ... - 1 -

2.調査の方法 ... - 2 -

II. 複数主体がそれぞれ所有する知財財産を集合化する際の「貢献度評価」について - 3 - 1.調査・研究の意義 ... - 3 -

2.技術研究組合の取組例 ... - 6 -

(1)PETRA概要 ... - 6 -

(2)知的財産の持分比率について ... - 8 -

(3)知的財産の帰属 ... - 8 -

3.既存の知的財産評価手法について ... - 9 -

(1)既存の知的財産評価手法 ... - 9 -

(2)既存の手法におけるその他の評価項目について ... - 11 -

4.技術士アンケート調査による貢献度評価の考慮要素について ... - 12 -

(1)アンケート対象者 ... - 12 -

(2)価値評価をすることが必要だと考えられる分野について ... - 12 -

(3)共同研究で開発された技術について自社の貢献度算出の際に考慮した事項につ いて ... - 13 -

(4)その他貢献度評価の際の重み付け手法について ... - 14 -

5.知財貢献度評価に関する国内ヒアリング調査 ... - 16 -

(1)ヒアリング調査について ... - 16 -

(2)共同研究・開発における特許の貢献度について ... - 17 -

(3)その他 ... - 18 -

6.既存の評価手法やアンケート調査等を踏まえた「貢献度評価」の手法について - 19 - (1)「貢献度評価」の手法について ... - 19 -

(2)「貢献度評価」の考慮要素について(評価項目の設定) ... - 24 -

(3)評価のスコア化について(評価項目間の重みづけ) ... - 26 -

III. 海外主要国におけるパテントボックス税制に関する取組み ... - 29 -

1.海外調査の進め方 ... - 29 -

(1)文献調査 ... - 29 -

(2)ヒアリング調査 ... - 29 -

(19)

(3)委員会による検討・提案 ... - 30 -

2.EU ... - 31 -

(1)税制調和の背景 ... - 31 -

(2)「国家補助」に対する規制... - 31 -

(3)英国パテントボックス税制に関する議論 ... - 35 -

3.英国 ... - 38 -

(1)パテントボックス税制の概要及び導入時の政治的背景及び政策的意図 ... - 38 -

(2)パテントボックス制度の位置付け ... - 39 -

(3)制度導入の効果、制度評価の結果等 ... - 39 -

(4)パテントボックス制度を周知・利用促進するための取組み... - 40 -

(5)パテントボックス課税制度の内容 ... - 40 -

(6)主な改正履歴と政策的背景 ... - 47 -

(7)将来の動向 ... - 47 -

(8)パテントボックス税制における知財貢献割合の把握方法 ... - 47 -

(9)パテントボックス制度に対する企業の反応 ... - 49 -

4.フランス ... - 51 -

(1)イノベーションボックス税制の概要 ... - 51 -

(2)導入時の政治的背景及び政策的意図 ... - 51 -

(3)イノベーションボックス制度の位置付け ... - 51 -

(4)制度導入の効果、制度評価の結果等 ... - 52 -

(5)イノベーションボックス税制を周知・利用促進するための取組み ... - 53 -

(6)イノベーションボックス課税制度の内容 ... - 54 -

(7)主な改正履歴と政策的背景 ... - 55 -

(8)将来の動向 ... - 57 -

(9)イノベーションボックス税制における知財貢献割合の把握方法 ... - 57 -

(10)イノベーションボックス税制に対する企業の反応 ... - 58 -

5.オランダ ... - 60 -

(1)イノベーションボックス税制の概要 ... - 60 -

(2)導入時の政治的背景及び政策的意図 ... - 60 -

(3)イノベーションボックス税制の位置付け ... - 61 -

(4)制度導入の効果、制度評価の結果等 ... - 62 -

(5)イノベーションボックス税制を周知・利用促進するための取組み ... - 63 -

(6)イノベーションボックス課税制度の内容 ... - 63 -

(20)

(7)主な改正履歴と政策的背景 ... - 66 -

(8)将来の動向 ... - 66 -

(9)イノベーションボックス税制における知財貢献割合の把握方法 ... - 66 -

(10)イノベーションボックス税制に対する企業の反応 ... - 67 -

6.米国 ... - 68 -

(1)米国における政策的優先課題の概要 ... - 68 -

(2)米国におけるタックスヘイブンによる所得移転 ... - 68 -

(3)米国企業の海外配当に対する課税の強化 ... - 70 -

(4)BEPS(Base Erosion Profit Shifting)に関する議論 ... - 70 -

(5)米国における外資誘致政策 ... - 70 -

(6)米国における知財関連の制度 ... - 71 -

(7)投資に対する優遇税制 ... - 72 -

(8)知的財産から生じた収益に対する課税を巡る議論 ... - 74 -

(9)知財移転課税について ... - 75 -

(10)企業実務 ... - 75 -

(11)今後の政策的展望 ... - 81 -

7.ドイツ ... - 85 -

(1)ドイツ知財戦略の概要 ... - 85 -

(2)ドイツにおける研究開発優遇税制の導入に関する従来の議論 ... - 89 -

(3)民間団体及び政府系法人等によるポジションペーパー ... - 90 -

(4)ドイツ政府の見解 ... - 94 -

8.各国の知財政策のまとめ ... - 96 -

資料編 ... - 98 -

Ⅳ.アンケート調査 ... - 98 -

1.国内アンケート調査結果 ... - 98 -

(1)経営企画部門向けアンケート調査結果 ... - 98 -

(2)知的財産部門向けアンケート調査結果 ... - 108 -

2.国内アンケート調査票 ... - 130 -

(1)経営企画部門向けアンケート調査票 ... - 130 -

(2)知的財産部門向けアンケート調査票 ... - 139 -

(3)技術士向けアンケート調査票 ... - 147 -

(21)
(22)

本編

(23)
(24)

- 1 -

I. 序

1.問題の所在

我が国の企業は、グローバルな競争の中で、「技術」で勝っても「事業」で負けてしまい、 したたかに「稼ぐ」ことができていないと言われている。こうした課題を克服するために は、高くても売れる商品やサービスを生み出すなど、我が国企業の事業モデルを「価格競 争」モデルから「価値創造」モデルに転換していくことが求められている。このような「価 値創造」モデルへの転換においては、研究開発などにより創造した知的財産権を最大限利 用することが重要である。そのためには、知的財産権を利用して得られた事業の収益のう ち、知的財産権に起因する割合を把握し、効果的な知的財産権の活用、創造につなげてい く必要がある。

ある事業の中での知的財産の貢献割合については、海外においては特許権等の知的財産 権から生じた所得に対して、法人税の減額などを認める措置であるパテントボックス税制 が導入されていることから、知的財産に起因する事業収入を計算する必要がある国も存在 し、貢献割合の算出について一定程度の知見があるものと考えられる。

一方、日本においても、知的財産を金銭的に評価するための「コストアプローチ」「マー ケットアプローチ」「インカムアプローチ」等の方法論に関して、メリットやデメリットの 検討が行われてきており、平均的なロイヤルティ料率等についても調査が行われている。 しかしながら、これらは個別の特許権などの金銭価値を測定しようとするものであり、あ る事業による収益の中での知的財産権の貢献割合についてはこれまで十分に検討されてき ていない。

そこで、本調査研究では、パテントボックス税制などの海外の事例を踏まえて、ある事 業の中で特許権などの知的財産権がどの程度貢献しているかという指標のあり方を検討す る。また、併せて事業の中でそれぞれの知的財産権を保有する者に対して収益を適切に分 配するための基礎的な資料も収集する。具体的には、①貢献度を評価する際に参照するべ き要素や、②評価確定のための手続の正当性を確保する手段等について整理を行う。なお、 本調査研究においては、知的財産権の絶対的金銭価値ではなく、事業における知的財産権 の貢献度を測定することを目的としており、ある事業において、特許権と人件費、設備投 資費、その他の知的財産権等との相対的な貢献度の比較を行うために必要な要素(技術の 寄与度、代替可能性等)等を検討する。

(25)

- 2 -

2.調査の方法

(1)委員会による検討

本調査研究に関して専門的な視点から検討、分析、助言を得るため、丸島儀一弁理士を 委員長とし、有識者及び実務従事者で構成される総勢 8 名の調査研究委員会を設置し、6 回に亘って議論を行った。

(2)国内外文献調査

書籍、論文、判例、調査研究報告書、審議会報告書、データベース情報及びインターネ ット情報等を利用して、本調査研究を実施する上で有益な文献を調査、整理及び分析した。

(3)国内アンケート調査

国内製造業、情報通信業を中心に、上場企業、海外進出企業3,000社を抽出し、「経営企 画部門向け」、「知的財産部門向け」にそれぞれ異なる調査票を送付し、アンケート調査を 実施した。「経営企画部門向け」は468件(15.6%)、「知的財産部門向け」は450件(15.0%) の回答を得た(調査期間:201310月~12月)。

また、公益財団法人日本技術士会からの協力を得て、2,792名中 152 名(5.4%)の技術 士の方から回答を得た。(調査期間:201311月~12月)。

(4)国内ヒアリング調査

国内アンケート調査及び委員会での議論を参考に、売上や利益に対する貢献度評価を定 量的・定性的に実施している企業19件、技術研究組合1件、合計20件のヒアリング調査 を実施した(20138月~20142月)。

(5)海外ヒアリング調査

海外パテントボックス及び関連する諸制度等について調査するため、海外主要国5か国

(米国、英国、フランス、オランダ、ドイツ)の当局及び税理士、その他有識者計17者に 対して、ヒアリング調査を実施した。

(26)

- 3 -

II. 複数主体がそれぞれ所有する知財財産を集合化する際の 「貢献度評

価」について

1.調査・研究の意義

厳しい国際競争の中で我が国が成長を続けていくためには革新的な技術開発により国際 競争力に勝る事業の創造が求められる。

ビジネス環境の急速な変化、技術の進化、技術の複合化に迅速に対応する事業の創造に は、先読みによる事業を見据えた、複数主体による融合した共同研究開発、或いは複数主 体の技術力、知財力を結集した事業化が相応しい。そして、各主体の参加を促すには各主 体の共同研究開発の成果、或いは技術、知的財産の事業に対する「貢献度の評価」が必要 になる。

産官学連携で行う大型研究開発プロジェクトや、各会社間(ベンチャー、中小企業、大 企業)で行う共同研究開発の成果をジョイント・ベンチャー等で事業化する際や、複数企 業がそれぞれ所有する知的財産を集合し会社化する場合等では、株式の持分比率等を決め るため、各企業の有する知的財産の事業に対する貢献度をそれぞれ評価することが必要に なる場面が存在すると考えられる。例えば、技術研究組合が会社化して共同研究開発の成 果を事業化する際には、組合員の負担及び寄与の程度を勘案して株式を割り当てることに なっているが、その際の一つの手段として、それぞれの知的財産の事業に対する貢献度を 評価する手法が必要となる可能性がある。また、革新的な技術を有するベンチャー企業が 事業化のプロセスとして大企業とアライアンスを組む際には、それぞれが提供する知的財 産について、想定する事業に対する貢献度を評価し、株式の持分比率等を決定することが 考えられるが、このような知的財産の貢献度の評価手法については定まった評価手法が存 在しないため、当事者が合意できる仕掛けが重要になると考えられる。

前述したように、厳しい国際競争の中で我が国が成長を続けていくためには、産学官連 携や企業間連携が不可欠であるところ、プロジェクト結成時や共同研究開始前に、あらか じめ知的財産の貢献度評価の手順、評価の観点、評価者、評価対象、考慮要素などの評価 方法について参加者が合意できれば、出口での利益分配について予測可能となり、プロジ ェクトや共同研究への参加を促したり、融合した研究が行われるきっかけとなったりする 場合もあると思われる。ただし、こうした知的財産の貢献度評価の局面においては、利害 関係を有する当事者だけでは、評価基準や評価について合意が形成しにくい場合もあると 考えられ、評価基準について何らかの考え方を示しておくことや、第三者にも評価を依頼

(27)

- 4 -

できる可能性を準備しておくことも有用と考えられる。

そこで、本調査・研究においては、知的財産(本章では特許を示す、以下同じ)の「貢 献度評価」として、上記のような複数主体がそれぞれ保有する知的財産を持ち寄って事業 化する際に、各知的財産の事業に対する貢献度を評価する際の指標について検討した(図 表 1 参照)。

具体的には、図表 1の上の図にあるように、事業においていくつかの知的財産が関係す る場合に、その各知的財産の貢献度を、事業競争力を高める視点で評価する際の指標につ いて検討した。この場合、各知的財産が別々の会社に帰属していれば、それぞれの会社の 知的財産の貢献度が算出できることになる。

なお、本調査・研究で検討する知的財産の「貢献度評価」は、特許(登録、未登録を含 む)を対象とし、特許の定性的評価による重み付け(特許の相対的評価)であって、事業 の評価(発明の事業化可能性、事業化による収益性等の事業性判断)をするものではなく、 事業に対する総特許群の貢献分を評価するものでもない。また、事業と関係なく特許自体 を評価するものでもない。技術、ノウハウは、事業に対して価値を持つが、今回の貢献度 評価の対象からは外した。

また、図表1 の下の図にあるように、共同研究では、一つの発明を複数の会社に所属す る者が共同して完成させて、共有特許が生じることも想定される。この場合は、一つの特 許における各発明者の貢献度に応じて各者の持分を算出する必要があるが、この算出は、 実務において、出願時等に特許請求の範囲や明細書等の内容にそって各者で協議して取り 決められているものと考えられるため、今回の検討では取り扱わない。知的財産の「貢献 度評価」により算出する共有特許の貢献度に、各者の持分比率をかけることで、各者の貢 献度を算出することができる。

図表 1 本調査研究で検討する貢献度について

(28)

- 5 -

(29)

- 6 -

2.技術研究組合の取組例

複数主体が共同で研究開発を行うケースとして、技術研究組合の取組みが考えられる。 本調査研究では、調査研究委員会において、技術研究組合の例として技術研究組合光電子 融合基盤技術研究所(PETRA)に、共同研究の実施方法や知的財産の取り扱いについて報告 していただいた。ここでは、共同研究開発における事例として、PETRA の事例を掲載する。

(1)

PETRA

概要

フォトニクス集積回路と電子回路を融合させ、電子技術の性能限界を打破し、最終目標 として、情報通信機器の低電力化、小型・軽量化、高性能化を図る基盤技術を確立するこ とを目的に設立された組織である。

設立年月日:平成21年 8 月24 日

理事長:川崎 秀一(沖電気工業(株)代表取締役社長)

組合員:沖電気工業(株)、(株)東芝、日本電気(株)、日本電信電話(株)、

(株)日立製作所、富士通(株)、古河電気工業(株)、 NTT エレクトロニクス(株) 、 (独)産総研、(一般財)光協会 (8 企業1 独法1 財団)

事業費:平成 25 年度 33 億円

事業の概要:光電子融合デバイス・システム基盤技術の研究開発。

実用化の方向性としては、LSI 間、基板間の配線で消費する電力を激減させ、回路の電 力を 50%以下に省電力化し、サーバ等の装置レベルで 30%の省電力化を図る。また、光電子 融合により、高速化、超小型化、軽量化を図り、幅広い情報通信機器の高性能化を図る。

これらの目標に向けて研究開発を行った成果について、積極的に特許出願を行っている。 また、光 I/O コアの事業を推進するにあたり、日本知的財産仲裁センターに事業適合性判 定を申請した。事業適合性判定では、予備調査で抽出した約 15万件の特許を申請人が検討 し、選別して指定した数千件の特許を対象に、弁理士と弁護士のペアからなる5 チームに より、将来、知財紛争が生じるおそれがあるかどうか、ある場合はどの部分かについて、 専門的知見に基づく判定が行われた。

(30)

- 7 - 図表 2 実用化の方向性と事業化の時期(予定)

図表 3 光 I/O コアにおける9のカテゴリー

(31)

- 8 -

図表 4 事業適合性判定に関連する特許数と判定対象となる特許数

(2)知的財産の持分比率について

参加企業の壁を取り払って研究を行っているので、研究者が単独で発明することはあま りない。複数研究者が関わって発明したものは、発明した時点で持ち分比率を決めている。 発明審査会と呼ばれる会議を開催し、発明者と関連する部長等で構成している。誰のアイ デアが何パーセント含まれているかということを客観的に議論し、請求毎にこれはA氏の アイデア、これはB氏のアイデアと分けることで、比率を決めている。

発明時に決めることで、後ほど事業で利用した際に面倒が起きないようにしている。ま た、取り決めの際には、その発明に関連する参加企業のすべての部長クラスが参加してい るので、会社間の合意形成が可能になっている。

そこで、決めた持ち分比率は、その後変更しないというルールがある。

(3)知的財産の帰属

光エレクトロニクスの分野においては、新会社設立を視野に入れているため、PETRA が 知的財産を一括管理している。帰属は 3 種類あり、内容により、①PETRA 単独、②PETRA/ 親会社共有、③親会社占有(複数社も可)のケースがある。全ての特許をPETRA が単独で 保有することはコスト負担の観点から不可能であるため、以下の点を踏まえ、PETRA で保 有するべきかどうかを検討している。

(32)

- 9 -

・設立予定の新会社における製品の特長との関連 (事業直結型)

⇒保有特許を活用し、どのような形で技術が製品に実装されるのか、独自の特徴的構造 などを対象に、必要最小限の知的財産を維持する。

・直接使っていなくとも、利用確率の高い技術か否か (攻めの特許①)

⇒低消費電力化の方法や導波路の減衰率を抑制する技術など、利用価値の高い特許を保 有し、いざという時に相手にとっても有効な特許を保有する。

・相手とクロスライセンスに持ち込める特許群であるか否か(攻めの特許②)

⇒光変調器など、実現の方法に多様性がある場合に、直接使っているものだけでなく、 相手を封じることを狙って特許を維持する。

将来、会社化する場合には、光電子集積回路分野において、特許売買の実績が乏しく、 値をつけるのは難しい状況にあるため、組合員の寄与が測りにくいという問題が生じる可 能性がある。貢献度が決められれば、特許に割り当てる株式総数を決め、そこから各者分 を割り当てられる可能性があるものと考えている。

3.既存の知的財産評価手法について

(1)既存の知的財産評価手法

知的財産の価値評価については、評価する局面によって手法が異なっており、知的財産 をどのような事業に展開するのかという点と切り離しては評価できない。例えば、取引形 態に沿って、DCF法、ロイヤルティ法、コストアプローチ、マーケットアプローチ等が 知られているが、これらは知的財産の流通・流動化を前提とするものであり、知的財産の 金銭的価値を評価する手法である(図表5参照)。

一方、保有中の知的財産に関して技術的評価を行う場合には、スコア化による評価モデ ル(権利範囲、先行出願度合い、代替技術の有無、基本特許・周辺特許、市場規模など、 主に個々の特許の定性的な評価要因を点数化して、保有特許のランキングを行うモデル) 等が知られている(図表6参照)。スコア化による評価モデルの適用ケースとしては、個々 の特許の寄与度の把握等であり、個々の知的財産を定性的に評価する手法である。

この点、「貢献度評価」においては、複数主体の各々が所有する個々の特許の貢献度評価 でなく、各主体が所有する知的財産を(群)として事業に対する貢献度を相対的に評価す

(33)

- 10 -

るもので評価対象が異なるが、定性評価の点では共通するので、スコア化による評価モデ ルが参考になると考えられる。

図表5 取引形態ごとの知的財産評価目的ならびに手法

1

図表6 知的財産評価手法の概要

2

1経済産業省知的財産政策室「知的財産の流通・資金調達事例調査報告」(200711), p3, 図表1-2 2経済産業省知的財産政策室「知的財産の流通・資金調達事例調査報告」(200711), p.14, 図表2-9

(34)

- 11 -

(2)既存の手法におけるその他の評価項目について

知的財産の金銭的価値評価を行う既存の手法であっても、技術要素の有効価値等を評価 する手法においてスコア化を行っているものがあり、参考にできると考えられる。以下に その手法や、スコア化の際の評価項目について例示する。

①テックファクター分析(テクノロジーファクター法)

3

テクノロジーファクター法は、ある技術を用いている事業の価値を算出し、それを技術 の価値と非技術の価値とに分け、この技術の価値をさらに要素技術に分解し、当該要素技 術の価値の中から有効価値を抽出するというものである。この「技術の有効価値」を算出 する過程をテックファクター分析と呼ぶ。

テックファクター分析は、評価する要素技術を容易性とインパクトの2つの観点から分 析する。

②プロテクション・ドライバー・スコア(特許権価値評価モデル)

4

特許権価値評価モデルにおいては、プロテクション・ドライバーと呼ぶ要因を加味する ことで、将来のキャッシュフローが減少するリスクを考慮に入れている。

③パテントプールの事例

パテントプールでのロイヤルティ分配ルールとして、特許権数だけでなく、特許の質を 考慮して重み付けを行うべきという意見については、画一的な方法の確立に至っていない との指摘がある。その他、件数による配分で、世界の地域別の特許を考慮する、特許数に よらない均等割、特許権者の合意を前提とする例外的な配分等が、配分例として例示され る

5

3鈴木公明『知財評価の基本と仕組みがよ~くわかる本』(秀和システム、2004年), p160 4広瀬義州編『特許価値評価モデル(PatVM(東洋経済新報社、2006年)

5株式会社三菱総合研究所「平成24年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 パテントプールを巡る諸課題に関する調査研究報告書」(20132)

(35)

- 12 -

4.技術士アンケート調査による貢献度評価の考慮要素について

貢献度評価における評価項目の参考とするため、企業において技術評価を主に担当して いる技術士の方々にアンケートを行い、技術評価の際の考慮要素や、共同研究の際の貢献 度算出方法について調査した。

(1)アンケート対象者

アンケートはインターネット調査により実施し、2,792名中152名の技術士の方から回答 を得られた。

(2)価値評価をすることが必要だと考えられる分野について

価値評価を行う必要性がある分野について、複数回答可(n=152)として調査を行った ところ、「③製品等の開発方針の決定」が53.3%で最も高かった。次いで「④ライセンスを 行う特許・技術の選定(技術指導を含む)」が51.3%、「⑦発明の対価支払い」が34.9%と なっている。また、「②共同研究で開発された技術・特許についての自社の貢献度算出」は 34.2%、「①共同研究の際の自社の特許権の貢献度」は19.7%と、共同研究に関する項目に ついても、一定程度の必要性が認められた。

図表7 特許権や技術に関する価値評価が必要だと考えるもの

19.7%

34.2%

53.3%

51.3%

11.8%

17.1%

34.9%

21.7%

7.2%

12.5%

31.6%

2.0%

2.6%

0.0% 10.0% 20.0% 30.0% 40.0% 50.0% 60.0%

①共同研究の際の自社の特許権の貢 献度

②共同研究で開発された技術・ 特許につ いて 自 社の貢 献度算 出

③製品等の開発方針の決定

④ライセンスを行う特 許・ 技術の 選定( 技術 指導 を含 む)

⑤特許権の売却

⑥ロイヤルテ ィ料率の設定

⑦発明の対価支払い

⑧人事上の評価

⑨訴訟の提起

⑩パテ ントプールの形成

⑪将来の収益性予測

⑫その他

未回答

特 許 権や技術に関する価値評価が必要だと 考えるもの(n=152)

(36)

- 13 -

(3)共同研究で開発された技術について自社の貢献度算出の際に考慮した事項につ いて

「(2)価値評価をすることが必要だと考えられる分野について」において、「②共同研 究で開発された技術・特許について自社の貢献度を算出」する必要性があると答えた技術 士の方(n=52)に、貢献度を算出する際、どのような要素を考慮しているか調査したと ころ以下の通りであった。

「②製品への使用の有無を基準に特許権・技術の価値を評価している」が40.4%と最も 多く、次いで「④特許権・技術を実施して生産した製品等から得ている収益から特許権・ 技術の価値を評価している」が36.5%、「③技術の高さなどをポイント等にして評価してい る」が26.9%と続いている。

図表8 共同研究で開発された技術・特許について自社の貢献度算出の際に考慮した事項

また、「(2)価値評価をすることが必要だと考えられる分野について」において、「①共 同研究の際の自社の特許権の貢献度を算出」する必要性があると答えた技術士の方(n= 30)に、貢献度を算出する際、どのような要素を考慮しているか調査したところ以下の通 りであった。

「②製品への使用の有無を基準に特許権・技術の価値を評価している」が26.7%と最も 多く、続いて「③技術の高さなどをポイント等にして評価している」が20.0%、「④特許権・

共同研究で開発された技術・特許について自社の貢献度算出の際に考慮した事項(n=52)

15.4%

40.4%

26.9%

36.5%

5.8%

7.7%

19.2%

5.8%

9.6%

3.8%

9.6%

17.3%

9.6%

7.7%

13.5%

1.9%

0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0% 35.0% 40.0% 45.0%

①特許権・技術を生み出すために必要となった経費の計算している

②製品への使用の有無を基準に特許権・技術の価値を評価している

③技術の高さなどをポイント等にして評価している

④特許権・技術を実施して生産した製品等から得ている収益から特許権・技術の価 値を評価している

⑤特許権・技術を実施して生産する予定の製品等から予想される収益を計算し、特 許権・技術の価値を評価している

⑥特許権・技術を実施して行う研究開発の成果から予想される収益を計算し、特許 権・技術の価値を評価している

⑦ライセンスした特許権・技術等のライセンス料から特許権・技術の価値を評価して いる

⑧ライセンス件数の多寡により特許権・技術の価値を評価している

⑨パテントマップ等を作成し当該技術分野における位置づけなどを評価している

⑩特許公報や論文の引用状況から特許権の価値を評価している

⑪他社が当該特許権の侵害している可能性から特許権の価値を評価している

⑫事業への参入に対する排他性を基準に特許権の価値を評価している

⑬特許の回避しにくさを基準に特許権の価値を評価している

⑭デファクトスタンダードになり得るか否かを基準に特許権の価値を評価している

⑮技術が模倣されにくいことを基準に技術の価値を評価している

⑯その他

(37)

- 14 -

技術を実施して生産した製品等から得ている収益から特許権・技術の価値を評価している」 が13.3%と続いている。

図表9 共同研究の際の自社の特許権の貢献度算出の際に考慮した事項

(4)その他貢献度評価の際の重み付け手法について

同一の製品に複数の特許や技術が使用されている場合に、当該製品に対する特許や技術 の貢献度に関する重み付けを行っているかどうかについて、自由記述で回答を求めたとこ ろ、以下のような回答が得られた。

基本特許や周辺特許といった特許権の性質で区別するという回答や、特許権が使われて いる製品の売上高、部品の重要度などで決めるという回答が多かった。

共同研究の際の自社の特許権の貢献度算出の際に考慮した事項(n=30)

16.7%

26.7%

20.0%

13.3%

10.0%

6.7%

0.0%

3.3%

0.0%

0.0%

0.0%

10.0%

3.3%

0.0%

6.7%

3.3%

0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0% 25.0% 30.0%

①特許権・技術を生み出すために必要となった経費の計算している

②製品への使用の有無を基準に特許権・技術の価値を評価している

③技術の高さなどをポイント等にして評価している

④特許権・技術を実施して生産した製品等から得ている収益から特許権・技術の価 値を評価している

⑤特許権・技術を実施して生産する予定の製品等から予想される収益を計算し、特 許権・技術の価値を評価している

⑥特許権・技術を実施して行う研究開発の成果から予想される収益を計算し、特許 権・技術の価値を評価している

⑦ライセンスした特許権・技術等のライセンス料から特許権・技術の価値を評価して いる

⑧ライセンス件数の多寡により特許権・技術の価値を評価している

⑨パテントマップ等を作成し当該技術分野における位置づけなどを評価している

⑩特許公報や論文の引用状況から特許権の価値を評価している

⑪他社が当該特許権の侵害している可能性から特許権の価値を評価している

⑫事業への参入に対する排他性を基準に特許権の価値を評価している

⑬特許の回避しにくさを基準に特許権の価値を評価している

⑭デファクトスタンダードになり得るか否かを基準に特許権の価値を評価している

⑮技術が模倣されにくいことを基準に技術の価値を評価している

⑯その他

(38)

- 15 -

<回答結果>

(基本特許、周辺特許等で分ける)

・3ランク程度に評価する。(基本必須、重要、周辺)

・その特許が①製品そのものを実現させている基本的なものであるか、②改良的、付帯的 なものであるかで、①の方に重きをおいている。

・主要な技術、主な機能に関わる技術の貢献度を大きく、周辺特許、保護のための出願の 貢献度は低い。売上で報償の原資が決まるため、貢献度で配分される。

・実使用上、どの特許がより有効であるかを基準に重み付けを行う。

・当該製品の基本機能、性能に関係しているかどうか。

・先進性(他社商品との差別化)および特許権の排他性を高く評価。

・製品化に不可欠な技術に関する特許を貢献度大とする。

(使われている製品で分ける)

・製品の機能の重要性に対応させる。

・各特許・技術の製品に対する適用範囲からその貢献度の重み付けを行っている。

・その特許の使用率。その特許が無ければどのくらい価値が下がるかを算定。

・装置内でのキーとなるかどうか。使用個数が多いかどうか。

・収益に直接的にどの程度貢献したのかの判定(他の要因も含まれるため)。

・重み付けは部位ごとの製品原価を主な基準にする。

・単純構造で安価に実現できるほど採用され、評価大。

・他社特許との接触の可能性の有無。売り上げへの寄与及び事業化の容易性。

・その製品の部分機能に対する特許数比。

・特許利用技術システム全体に対する実現必要コスト割合。

・製品の差別化あるいは販売にどの程度貢献しているかを評価。

・特許や技術は、それと関連ある要素の重要度を利用して採点、集計することで重み付け を行う。

・製品の実現に対する必須度合い。

・当該製品を構成する主要な要素(機能など)を洗い出し、特定の尺度による重要度順に 並べる。

・特許が適用されている出荷台数でポイント計算。

(売上高で分ける)

・各製品の売上高と研究開発費とのポートフォリオ的評価。

(39)

- 16 -

・重み付けは、必須機能か付加機能か、及び差別化による売り上げ貢献度を判断基準にす る。

・売上高と利益貢献。

(責任者や合議で決める)

・当該事業と技術を把握している責任者が判断。

・複数の技術関係者、知財担当者との合議で決定。

・その製品に対する特許または技術の寄与率を関係者で協議して決める。

(予測によって行う)

・出願時(事業推進途中)に定性的評価を行う。

・特許や技術の将来価値、潜在価値の算出(予測)。

5.知財貢献度評価に関する国内ヒアリング調査

(1)ヒアリング調査について

企業の知的財産部門向けに行ったアンケート調査

6

において、事業における特許の貢献度 を定量的、あるいは、定性的に評価していると回答した企業に対し、20社のヒアリング調 査を実施した。

図表10 事業における特許の貢献度把握状況

ヒアリング調査を実施した際に、特許の貢献度をはかる目的で最も多かった項目は、発 明対価の支払いであった。ヒアリングを実施した企業各社では、発明報奨制度や実績補償 制度があり、定期的に製品における特許の貢献度を定量的、あるいは、定性的に評価して いる。また、少数ではあるが、訴訟の提訴、特許権の売却、ライセンス特許の選定のため

6本稿資料編「1.国内アンケート調査結果 (2知的財産部門向けアンケート調査結果)p.109参照。

No. カテゴリー名 %

1定量的に算出し、管理している 40 9.5

2定性的に評価し、管理している 44 10.5

3発明補償・報償のための評価を行っている 261 62.3

4その他 82 19.6

無回答 32

全体 419 100.0

図表 3  光 I/O コアにおける9のカテゴリー

参照

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