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4次元の空間では、信じる信じないにかかわらず、平行でない二つの平面が交わらない事がある。

そのような高次元の空間における半径rの球の体積を求めてみよう。n次元空間に存在する半径 rの球の体積をVnと書く。すでに知っているとおり、

V2=πr2, V3= 4 3πr3 である。n次元ならば

Vn =Cnrn

と書かれるはずである。Cnは円周率を含んだ何らかの関数であると予想できるが、それを以下で 求めよう。

n次元空間における座標点の位置は、それぞれがお互いに直行するn本の座標軸によって指定さ れる。それらの座標軸をx1, x2, x3,· · ·, xnと書く。点(x1, x2, x3,· · · , xn)と原点の間の距離は、

n次元版ピタゴラスの定理

r2=x21+x22+· · ·+x2n (63) によって定義される。さて、a= 1としたガウス積分

I =

−∞ex2dx= π を考える。まず

In= (∫

−∞ex2dx )n

= (∫

−∞

ex21dx1

) (∫

−∞

ex22dx2

)

· · · (∫

−∞

ex2ndxn

)

=

−∞

−∞· · ·

−∞

e(x21+x22+···+x2n)dx1dx2· · ·dxn (64)

=πn/2

を考える。上式の3行目に表されているように、Inn次元空間のガウス積分になっている。

ところで、(62)式を思い出そう。2次元空間のガウス積分I2 I2= 2π

0

er2rdr

と書き直すことが出来た。ここで、2πrは2次元球の表面積(=円の周りの長さ)である。それな らば、In

In =

0

er2Sndr

と書き直せるであろう。Snn次元球の表面積であり、Sn= dVn

dr =nCnrn1と書ける。よって In=nCn

0

er2rn1dr In=πn/2なのだから、もとめるCn

Cn= πn/2 n

0

er2rn1dr

と、積分を含んだ形で書かれる。ところで、分母の積分は、変数変換r2=xを施すと 1

2

0

exxn/21dx と変形できるが、これはガンマ関数 1

2Γ(n2)に他ならない。最終的に、n次元球の体積は Vn= πn/2

n

(n 2

)rn (65)

となる。

試しに、n= 4の場合、Γ(2) = 1だからV4= π2

2 r4となる。

提出課題

1,式(65)を用い、3次元球の体積の公式を再導出せよ。

2,5次元球と6次元球の体積を求めよ。

3,ガウス積分を導出せよ。

発展課題

1,積分

0

eax

√x dx=

π

a を示せ。(hint:

x=tと置く置換積分を行うと...) 2,積分

0

dx (1 +x)√

x =πを示せ。

(hint: 1 1 +x =

0

e(1+x)ydyを用いて、二重積分に直す)

さらなる発展課題

IF =

0

sin(x2)dxを計算せよ。

(答えはp

π/2になる。これはフレネル積分と呼ばれていて、光学などへの応用がある。この積分は、大学教養程度の解 析学のなかでおそらく最も計算が難しい部類に入る。しかし、今回の内容と、去年勉強したガンマ関数ベータ関数を用いた 計算法を駆使して、求めることが出来る。やる気があれば挑戦してみよ。この問題の提出期限は2月18日()とする。)

11 変分法

11.1 最速降下曲線の問題

ビルの屋上からあらかじめ決められた目標位置へと滑り落ちるための、非常脱出用のすべり台を 設計する問題を考えよう。滑るひとが、出来るだけ素早く目標点へ避難できるような、すべり台の 形を求めたい。

屋上を目標点を直線で結べば、滑る距離は確かに最短になる。しかし、すべり台の形状を弛ませ て、始めに勢いよく滑り落ちるようにした方が、結局は早いかも知れない。または、はじめはゆっ くりスタートして、後半に一気に加速した方が良いのかも知れない。

これは「最速降下曲線の問題」と呼ばれる、古典的な問題である。

図15の左のようにy軸を下向きにとり、任意の形をしたすべり台の曲線を、関数y=y(x)で表 そう。簡単のために、ビルの高さをy= 1、目標点までの距離をx= 1とする。到達時間T は、関y(x)の形に依存して変化するであろうことは、想像がつくであろう。言い換えれば、T は、関y(x)の関数である。このような量を汎関数 (functional)と呼び、T[y(x)]と書く。

T[y(x)]の具体的な形を求めるのは、簡単である。摩擦や空気抵抗は無視することにすれば、人

が位置(x, y)まで滑り落ちたときの速度vは、それまでのすべり台の形状に関係なく、エネルギー

の保存則

1

2v2=gy から求まる(gは重力加速度)。よって、

v=√ 2gy である。曲線の微小長さd`d` =√

dx2+dy2と表されるから、d`を通過するのに要する時間 dt

dt= d`

v =

dx2+dy2 2gy である。曲線の微分 dy

dx y0と略記することにしてdtdt=

1 +y02 2gy dx

x

y

v

1

1

15 すべり台問題。屋上から地上へ最も早く滑り落ちることの出来るすべり台の曲線型をもとめたい。

両辺を積分すれば、汎関数

T[y(x)] =

1 0

1 +y02

2gy dx (66)

を得る。よって最速降下曲線を求める問題は、積分(66)を最小にするような関数y(x)を得ること に帰着される。

変分問題

汎関数は一般的に

J[y(x)] =

b a

F(y0, y, x)dx (67)

という形に書かれる。関数y(x)から、値J[y(x)]が求まる。その値を最小にする関数y(x)を 求めること。

ここで、微分の問題を思い出すであろう:

微分:値xから、値f(x)がひとつ求まる。その値f(x)を最小にするxを求める。

変分:関数y(x)から、値J[y(x)]が求まる。その値を最小にする関数y(x)を求める。

変分問題は、関数の極値を求める問題の、一種の拡張である。

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