第 4 章 ユークリッド幾何学と位相幾何学 61
4.3 n 次元ユークリッド幾何学
第 4. ユークリッド幾何学と位相幾何学 4.3. N次元ユークリッド幾何学
定義4.3.4. 【R3における距離】
R3 内の2点P(x1, x2.x3)と Q(y1, y2, y3)に対して,P とQとの距離 d(3)(P, Q)を√
(x1−y1)2+ (x2−y2)2+ (x3−y3)2 と定義する.
注意 4.3.2. つまり,平面幾何学におけるいわゆる「ピタゴラスの定理(三
平方の定理)」は,この講義では(解析幾何学の立場では),定理ではなく定 義に近い.
さて,これをふまえて,n≥4の場合を考えてみよう.こうなると,これ までに学んだ「図形的な直観」には頼れなくなる...が,しかし,そこには 深く(哲学的に)悩まないで,以下のように(自然に)定義することにする.
定義4.3.5. 【Rnにおけるユークリッド距離(Euclidean distance)】
n を 自 然 数 と す る .Rn 内 の 2 点 P(x1,· · · , xn) と Q(y1,· · ·, yn) に 対 し て ,P と Q と の ユ ー ク リッド 距 離 d(n)(P, Q) を
√(x1−y1)2+· · ·+ (xn−yn)2 と定義する.
正確には,d(n)は,
d(n)((x1,· · · , xn),(y1,· · ·, yn)) :=√
(x1−y1)2+· · ·+ (xn−yn)2 で決まる関数d(n):Rn×Rn→Rのこと.よって,特にd(n)のことを,
(n次元)ユークリッド距離関数ともいう.
注意 4.3.3. n= 1の場合は,
定義4.3.2にちゃんと一致する.
注意4.3.4. 「ユークリッド」とはもちろん紀元前のギリシャのユークリッド
のこと.上のような距離をユークリッド自身が考えた訳ではないけれど,考え ている空間が,いわゆる数直線や平面の拡張であることから,特にこう呼ぶ.
4.3.3 ユークリッド空間とユークリッド幾何学
以上をあわせて,次のように「n次元の空間」を定義する.
定義4.3.6.【n次元ユークリッド空間(n-dimensional Euclidean space)】
集合Rnとユークリッド距離関数d(n)の組,(Rn, d(n))を,n次元ユーク リッド空間という.
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4.3. N 次元ユークリッド幾何学 第4. ユークリッド幾何学と位相幾何学
注意 4.3.5. 自然数から実数までを定義したのと同様に,単なる集合ではな
く,追加の写像を組にして考えることが重要.「数」のときは,集合と演算.
このような演算を代数構造といったりする.集合と代数構造の組を研究する のが代数学だとすれば,集合と距離関数などの「幾何的」な構造の組を研究 するのが幾何学だとも言える.
注意4.3.6. 単純に集合Rnのことを「ユークリッド空間」といってしまうこ
とも多い.また多くの場合,Rnとかいたら,ユークリッド距離が自然に定義 されているとみなして,Rnをユークリッド空間とよんでいる.
これで準備は終わり.いよいよ(n次元)ユークリッド幾何学を定義しよう.
定義4.3.7. 【Rnの等長写像】
n次元ユークリッド空間(Rn, d(n))(ただし,d(n)はユークリッド距離 関数)を考える.写像f :Rn→Rnが
d(n)(x, y) =d(n)(f(x), f(y))
を任意のx, y∈Rnに対してみたすとき,fをRnからRnへの等長写像
(もしくは合同変換)という.
注意 4.3.7. 一般に,写像f :Rn→Rmが
d(n)(x, y) =d(m)(f(x), f(y))
を任意のx, y∈Rnに対してみたすとき,fをRnからRmへの等長写像とい う.さらに一般の場合については,(たぶん)最後の節で触れる.
定義4.3.8.【n次元ユークリッド幾何学(n-dimensional Euclidean Ge-ometry)】
全体の空間としてRnを考えて,その中の図形(要するに部分集合のこ と)を合同という規準で研究する(つまり,Rnのある等長写像fが存在
して,f(A) =Bとなるような二つの図形AとBは「同じ」とみなす)
学問をユークリッド幾何学という.
注意 4.3.8. 集合Rnに対して,ユークリッド距離d(n)ではない距離を考え
ることもできる.詳しくは4.6節で学ぶ(はず).
第 4. ユークリッド幾何学と位相幾何学 4.3. N次元ユークリッド幾何学
練習問題 4.3.1. 平面R2上のユークリッド距離d(2)が次を満たすことを示
しなさい.
d(2)(P, Q) = 0⇒P =Q
練習問題 4.3.2. R2上のx軸に沿った平行移動は等長写像になることを示し
なさい.
練習問題 4.3.3. F((x, y)) =xで定義される写像F :R2→Rは等長写像で ないことを示しなさい.
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