• 検索結果がありません。

Diet and habitat reconstruction by carbon, nitrogen and oxygen isotopic analysis for the sea otter from archaeological sites in Aleutian Archipelago

Ame M. Garong 九州大学大学院比較社会文化学府

Bone collagen and tooth enamel carbonate of sea otter, Enhydra lutris were analyzed for isotopic composition. These samples were collected from four archaeological sites in Adak Island, Aleutian Islands, Alaska namely: ADK-011, Layer 1 (170-285 BP), ADK-011, Layer 2 (285-415 BP), ADK-012 (ca. 2200 BP) and ADK-171 (ca. 6000 BP). Bones of minke, humpback and beaked whales were also analyzed for comparison. All the bones were identified by ancient DNA method.

Results of the bone coll agen δ

13

C and δ

15

N measurements suggest that the isotopic values can be

divided into two groups. The first group δ

13

C and δ

15

N values range from -11 to -13‰ and 8.5 to

12‰, respectively suggesting kelp ecosystem and main protein resources should be sea-urchin and

mollusks. The second group that included minke and humpback whales has δ

13

C values of -12.5 to

- 14.5‰ and δ

15

N values of 10-14‰ suggesting dependence on oceanic ecosystem and

medium- sized fish. Results of the δ

18

O and δ

13

C analysis of M1 teeth showed that the samples can

be also divided into two categories, the kelp and oceanic ecosystems. Successive sampling of canine

tooth enamel carbonate analysis from two individuals showed variations in δ

18

O values suggesting

seasonal migration between kelp and oceanic ecosystem.

- 45 -

-

45 -

ウナギの保全生態学的研究 I― 耳石微量元素分析を利用した生息水域の推定

横内一樹 東京大学海洋研究所

魚類の耳石は,聴覚や平衡感覚に関係する炭酸カルシウム(CaCO3)と微量のタンパク質を主成分とするアラ ゴナイト結晶組織である。魚類耳石を生態学/資源学へ応用した研究は古く,1899年Reibischによる耳石年輪 の発見までその歴史をさかのぼることができる。 20世紀に入り1971年Pannellaによって耳石日周輪が発見 されると,耳石を用いた魚類初期生活史研究が数多く行われるようになった。その後,1995年頃には,耳石への カルシウム(Ca)取り込みの際に,Caと同族の元素が取り込まれる特性を利用した魚類耳石微量元素分析が盛ん に行われるようになった

1

魚類の耳石微量元素分析は個体の移動や経験した環境履歴への理解を大幅に進め、地域個体群に特有の差 異を検出することによって個体群の判別など、その応用が進められている。例えば、耳石中のストロンチウ ム(Sr)を波長分散型X線分析装置(EPMA)で計測し、耳石中の分布を調べることで、その個体が生活史のどの 時期に海にいて、いつ頃淡水に入ったかを推定すること、すなわち、個体の回遊履歴を推定することができ る。その原理は、海水中のSr濃度は淡水中のそれより高く、魚類は環境水中のSrをその濃度に対応して体内 に取り込み、耳石の成長層を形成するからである。

これまでに耳石中のSrとCaの比(Sr/Ca比)から、海と川を行き来する通し回遊魚のウナギにおいて、

河川に遡上せず、一生を海で過ごす“海ウナギ”の多数いることが発見されている

2

。 この発見はウナギ属魚 類の回遊生態がこれまでいわれてきたような単純な降河回遊型のみではないことを示した。すなわち、成育 場 と し て 淡 水 域 、 河 口 域 お よ び 海 域 に 定 着 す る 個 体

(resident)、それぞれ川ウナギ、河口ウナギ、海ウナギが

存在し、さらにはこうした生息域の間を行き来する移動

個体(habitat shifter)も出現することが明らかとなった。

ウナギ属魚類の回遊は多様な変異と柔軟な可塑性をもち、

その生活史には様々な多型が生じているものといえる。

このように、通し回遊魚において表現型の可塑性は回 遊型の多型(回遊多型)として表れることが知られている

3

。回遊多型は、予期しない不利な条件が、ある生 息域において起こる危険性を回避することにより、個体群の強靭さ(population resiliency)を増進させるため に役立つと考えられている

4

。この意味で、通し回遊魚の生活史研究において、回遊多型の理解を進めること は、種や個体群の保全を図る上で重要である。

回遊履歴推定に耳石微量元素分析を用いる際には、元素によって耳石への取り込みの際に生理的な制御を 受けるため、魚種ごとに耳石微量元素と環境水微量元素の対応をしらべる必要がある。 加えて、詳細な履歴 推定を行うためには、環境水の組成が耳石へと反映される期間を明らかにする必要がある。またウナギでは、

成育場において複数の回遊型が生じる原因は不明で、実際の回遊型の分化過程に関する記述や分化機構の解 明を目指した研究はほとんどない。

本講演では、耳石を用いたウナギ生態研究に関して、1)正確な回遊履歴推定を行うために必要となる、

耳石への微量元素の取り込み速度について、2)耳石微量元素分析によって明らかとなるウナギの回遊型とそ の割合、ウナギ回遊型の分化過程について紹介し、それらを踏まえ、本種の保全のために必要な事項を挙げ る。

耳石Srマップ

- 46 -

-

46 - 2007年2月の夜間上げ潮時に浜名湖・湖口で採集したシラスウナギを用いて、耳石Sr/Ca比による回遊履

歴推定法の実効性を検証した。様々な塩分濃度(0,3.2,15,32 psu)とSr/Ca比(2.0,3.4,7.8,8.2 mmol/mol) をもつ環境水中で30日間飼育した結果、ウナギの耳石Sr/Ca比は環境水のSr/Ca比および塩分濃度と正の相 関関係を示すことが確認された。また、実験開始時にウナギを淡水へ移行した実験区と、そのまま海水で30 日間継続飼育した対照区の耳石Sr/Ca比を比較したところ、移行後 10日目以降からすでに両区の耳石Sr/Ca 比には有意差が検出されたが、生息域移動後の耳石のSr/Ca比が安定するには、少なくとも30日を要するも のと考えられた。

2003年から2007年にかけて浜名湖で採集された銀ウナギ172個体の耳石Sr/Ca比を測定して、回遊型の 分化過 程を 明らか にし た。回 遊型 を定 義し 分類し たと ころ、 一つ の生息 域内 に留 まっ て成長 する 定着個体

(resident)は全体の83%で、黄ウナギ期に生息域を変える移動個体(habitat shifter)は17%となった。定着

個体はさらに細分され、44%の川ウナギ、31%の河口ウナギ、および8%の海ウナギに分かれた。移動個体の 中では淡水域から汽水域へ移動した下流移動個体(River-Estuary shifter)が優占し(82%)、その他のタイプの 移動個体はそれぞれ 1-2 個体出現したに過ぎなかった。銀ウナギの性比は回遊型ごとに異なり、川ウナギで は雌が68%と優占し、河口ウナギと下流移動個体ではともに雄が57-60%と優占した。個体ごとに耳石Sr/Ca 比の変化パターンを解析すると、下流移動個体の生息域移動は主に当歳で起こることが示唆された。また、

浜名湖に加入後直ちに河川遡上したものがそのまま定着して川ウナギとなり、移動個体は汽水域に加入・滞 在した後、当歳の夏までに淡水域へ到達したものの中から生じるものと考えられた。ウナギの回遊型は当歳 における最上流到達点と移動時期の違いによって決定され、その後にそれぞれの生息域で性決定が起こるた め、各回遊型に性差が生ずるものと結論された。これらの知見は、ウナギ属魚類で初めて回遊多型の発生機 構を明らかにしたものとなった。

本研究により得られた知見から、ウナギ資源の保全策として、淡水域と汽水域の狭間である感潮域は、あ る一定以上の割合を占める回遊型である移動個体にとって重要な生息域であり、海と川の連続性が、水系全 体のウナギの地域個体群の健全性に必要であるといえる。そのため、川か海の二者択一の保全策では十分と はいえず、水系全体をとらえた環境保全が重要である。加えて、ハビタットシフトが同種間の競争によって おこるとすれば、河川下流域の生息環境の改善が、水系全体の若齢小型個体の供給源としての機能を高める こととなる可能性がある。

参考文献:

1Secor et al. 1995 J Exp Mar Biol Ecol. 92, 15-33. 2Tsukamoto et al. 1998. Nature 396, 635-636. 3Roff, D. A. 1996. Quart. Rev. Biol. 71, 3-35. 4Secor, DH. & Rooker, JR. 2005. Estuar. Coast. Shelf Sci. 64, 1-3.

- 47 -

-

47 -

ウナギの保全生態学的研究Ⅱ:三方湖における調査の現状と展望

海部健三 東京大学海洋研究所

東京大学海洋研究所行動生態研究室は,三方湖におけるウナギ(Anguilla japonica)の生態を明らかにする ことを目的に,2010年1月より現地調査を開始した。調査の内容はおもに①天然加入個体の有無を確認する ためのシラスウナギ採集調査と,②三方湖のウナギの生態を明らかにするための黄ウナギ(成長期)・銀ウナ ギ(成熟初期)の採集調査である。これら調査によって得られた結果は,すでに当研究室によってウナギの 生態調査が行われている,岡山県児島湾水系および静岡県浜名湖水系(いずれも汽水域を含む)において得 られた知見との比較において考察される予定である。

 天然加入個体の確認

1844 年に刊行された「重修本草綱目啓蒙」(小野編)には,若狭地方において,江戸時代にウナギが漁 獲されていた記録が存在する。このため,福井県南部には過去,ウナギが加入していたと考えられる。三 方五湖には現在も「天然」ウナギが存在するが,三方湖・菅湖・水月湖ではウナギの放流事業がおこなわ れており,現在の三方五湖に天然加入魚が生息している証拠はない。そこで2010年1月より,シラスウナ ギの加入を確認するために採集調査を開始した。新月の大潮の時期に,久々子湖と若狭湾をつなぐ水道に おいて,上げ潮時に毎月灯火採集を行う。2010年1月の調査ではシラスウナギは確認されなかったが,他 水域へのシラスウナギの加入時期から推測すると,加入があるとしても3月以降である可能性が高い。

 三方湖のウナギの生態(予備調査)

2008年10月に三方湖汽水域において採集されたウナギ7個体(黄ウナギ5個体,銀ウナギ2個体)に ついて,形態計測,胃内容物査定,齢査定,耳石微量元素測定(Sr, Ca)をおこなった。今後,三方湖およ びその流入河川においてサンプル採集をおこなう。

胃内容物 摂餌を行わない銀ウナギ2個体を除き,黄ウナギ5個体のうち,4個体より多毛類のものと思 われる大顎が複数組と,多数の剛毛が確認された。このことは,三方湖のウナギがおもにゴカイ類を捕食 しているとする地元漁業者の見解と合致している。

齢査定・耳石微量元素測定 耳石の年輪構造を用いて齢査定をおこなうとともに,耳石微量元素(Sr, Ca) 解析により,淡水・汽水間の移動時期を推定した。解析を行った6個体は全て加入後2年以上を淡水域で 過ごしており,加入から2〜9年後に淡水から汽水へ移動したと推測された。放流に用いられる養殖魚は一 般に淡水で飼育される。また,三方湖の漁業者によれば,放流魚は当歳である可能性が高く,流入河川で の放流は行われていない。したがって,放流場所が三方湖汽水域である場合,放流魚は,当歳において淡 水から汽水へ移動することになる。以上の前提に基づくと,今回試供した個体の耳石微量元素が,加入か ら2〜9年後の生息域移動を示していることは,これらの個体が天然加入個体であることを示唆していると 考えられる。

関連したドキュメント