図6.10: (左)normal BG とnew BGとを用いた場合での T3-T4望遠鏡 2台の解析によるカニパ ルサー/星雲の θ2 を示す。バックグラウンド領域の取り方が異なっても、ほぼ同様の結果を示し ている。ここで、データ点は見やすいように若干横軸に平行に前後させている。(右)new BGを用 いた場合のFisher-fit を示す。
85.0 84.5 84.0 83.5 83.0 82.5 21.0
21.5 22.0 22.5 23.0
85.0 84.5 84.0 83.5 83.0 82.5 Right Ascension (J2000, deg) 21.0
21.5 22.0 22.5 23.0
Declination (J2000, deg)
85.0 84.5 84.0 83.5 83.0 82.5 21.0
21.5 22.0 22.5 23.0
PSF
-92. 8. 107. 206. 306.
energy [TeV]
10
energy [TeV]
10
differential flux [photons/cm2/s/TeV]
10-14
10-13
10-12
10-11
HEGRA H.E.S.S.
CANGAROO-III 3fold
CANGAROO-III T3-T4 normal BG CANGAROO-III T3-T4 new BG
differential flux
図6.11: (左)new BGを用いた場合のガンマ線強度マップ。(右)normal BG、new BGを用いた場 合T3-T4 望遠鏡 2台の解析によるカニパルサー/星雲の微分フラックスをしめす。new BG を用 いた場合と通常のBG を用いた場合とで統計的な誤差の範囲内で結果は一致し、またその結果は 他グループの結果と誤差の範囲内で一致する。
シェルの中心から解析するためのバックグラウンド領域の取り方
以上のように、通常の解析とバックグラウンドを同様の領域をとりつつ、H.E.S.S.の放射領域 を除くという手法は、CANGAROO-IIIで実績の有るバックグラウンド領域の一部(48.8%)を用 いているので、有る程度信頼性の高い解析ができると期待される。一方で、私は、X線で観測され た超新星残骸RX J1713.7-3946のシェル全体からのガンマ線放射についても評価しようと考えた。
図6.12 で示された0.5< θ2 <0.8度2 の領域をバックグラウンドとして取れば、H.E.S.S.で観測 されたように、X 線で観測されたシェルの全面からのガンマ線放射を捉えることができるかもし れない。この場合、放射マップをシェル全体に対して描けると期待される。ここで、下限の0.5と いう値は、H.E.S.S.が放射領域を半径θ=0.65度、θ2 で示せばθ2=0.4225という値に取っている ことから、CANGAROO-IIIの点源の広がりがH.E.S.S.よりも広がっていることも仮定して、ガ ンマ線が存在しないであろう0.5度とした。また、上限の0.8は通常の点源解析で 0.2< θ2 <0.5 度2 を使う時とバックグラウンドの面積が同じになるようにした。しかしながら図でも分かると おり、この場合のバックグラウンド領域の取り方がCANGAROO-III望遠鏡視野内で観測中心に 対して非対称に分布している。このように、観測中心からの距離が非対称な分布をしているため、
アクセプタンスの違いが場所ごとに考えられる。このようなバックグラウンドの取り方によって、
信頼性の高い解析結果を得ることが出来るか疑問である。今回は、この領域をバックグラウンド 領域として用いて、シェル全体からのフラックスを評価した。
図6.12: X線で観測されたシェルの広がり、RX J1713.7-3946全体からのフラックスを調べるた め、同時に放射マップを調べるために、H.E.S.S.の観測中心から、0.5 < θ2 <0.8度2 の領域を (図では点線の円の間の領域)をバックグラウンドとして採用する。
ここに示した 2通りのバックグラウンド領域の取り方を用いて、それぞれ解析を行った。以下 ではその結果について報告する。今回の解析に使ったノイズカットのパラメータ(ADC、TDCな どのカット値)は、カニパルサー/星雲の解析のときと同じである。また、広がったガンマ線放射 をしている可能性からエッジカットもカニパルサー/星雲解析時と同様 15本の bright PMTエッ ジカットが用いられている。
Section 6.5
シェルの北西端からの放射の解析
まず始めに、シェルの北西端を中心とした解析の結果を示す。まず、得られたθ2 分布を図6.14 に示す。ここで、0.1、0.2、0.3と記されているのは、点源を仮定せずガウシアンの広がりをもた せて、モンテカルロシミュレーションを降らせた場合に σ がそれぞれ0.1、0.2、0.3になるよう シミュレーションを作っているものを示している。図6.13にはモンテカルロシミュレーションで、
点源に降った場合0.3 と0.5に広げて降った場合のカメラ視野内における観測目標からの IP-Fit の交点分布をそれぞれ示している。先にも述べたが、今回の解析自体は、点源モンテカルロシミュ レーションを用いて行われている。
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 -1.5
-1 -0.5 0 0.5 1 1.50 1000 2000 3000 4000 5000 6000 g2
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 -1.5
-1 -0.5 0 0.5 1 1.50
20 40 60 80 100 120 g2
-1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 -1.5
-1 -0.5 0 0.5 1 1.50
20 40 60 80 100 g2
図6.13: 左からそれぞれモンテカルロシミュレーションを点源で降った場合、ガウシアンでσ 0.3、
0.5となるように広げて降った場合でのカメラ面上の IP-Fit による交点分布を示している。
放射は、点源で降った場合に比べて、明らかに広がっていることが分かり、広がった放射を検 出した。図から分かるとおり、モンテカルロシミュレーションで 0.2度に広げたときに近い放射 となっている。θ2 分布では各 binで対応する面積が同じであるから、θ2 の形状からはX 線の放 射ピークである中心に行くほどに表面輝度が強い構造となっていることが分かる。これは、後述 するがシェルの中心から解析した場合では違う様相を示す。θ2 <0.2度2 に入る事象について評 価すると1874±160事象 11.7σ であった。
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5 0
100 200 300 400 Fit result
Point Like Wide 0.1 Wide 0.2 Wide 0.3 Fit result
-4 -3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000
FD distribution
ON BG MC gamma subtracted FD distribution
図6.14: (左)new BG を用いた場合でのT3-T4 望遠鏡2 台の解析によるRX J1713.7-3946のθ2 を示す。赤線の点源を仮定して降らせたモンテカルロシミュレーションよりも、明らかに広がった 放射領域を示している。(右)new BG を用いた場合の Fisher-fit を示す。
ここで、H.E.S.S.による強度分布のfitsファイル[40]を用いて、われわれの強度分布をH.E.S.S.
の結果と比較する。この場合注意しなければならないのは、H.E.S.S.のfits ファイルは、ガウシ アンでスムージングされたものであって、正確な強度分布ではないということである。ここで、
H.E.S.S. の観測中心であるシェルの中心から、半径 0.65 度以内に入る事象を 100% とした場合 に、北西端から距離角 θ の範囲に全体の何 %の事象のガンマ線が入るかというのを fits ファイ ルから調べたところ図6.15(左)のようになった。この図において、縦軸が 100%を超えているの は、H.E.S.S. では半径 θ < 0.65 度の範囲から全フラックスを計算していたが、それ以外の範囲 においても、ガンマ線が存在することを示している。実際 RX J1713.7-3946 の観測された領域 は銀河面に相当し、π0 崩壊からの広がったガンマ線放射の存在する領域である。これを用いて、
CANGAROO-IIIで得られたθ2 分布とH.E.S.S.のθ2 分布をピークから描いたものが図6.15(右) である。ここでは、θ2 分布の 1 bin目で規格化してある。また、H.E.S.S.については、スムージ ング後の情報のため縦の誤差についてはbin に入る事象に対しての統計的なもののみを考慮して いる。今回の解析では、バックグラウンド領域を 0.2< θ2 <0.5度2 に取っているため、この領 域と重なる範囲では有効な事象数を見積もることは出来ない。そのため、実際に評価可能な領域 は、θ2<0.2度2 のみである。θ2 <0.2度2 の領域だけを見れば、誤差の範囲内で図6.15(右) で はCANGAROO-IIIとH.E.S.S. は一致する結果を得ている。
theta [degree]
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
% flux [H.E.S.S.unit]
0 20 40 60 80 100 120 Area
0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3 0.35 0.4 0.45 0.5 0
100 200 300 400
Fit result
H.E.S.S. (smoothed)
CANGAROO-III T3-T4 Fit result
図 6.15: H.E.S.S. の観測中心から半径 0.65 度に入る領域を 100% とした場合のCANGAROO の観測点から半径 θ の領域に何 % のフラックスが存在するかを示す。(右)CANGAROO-III と H.E.S.S.のθ2 を比較している。
また、H.E.S.S.の報告により、図6.16に見られるように大部分の放射領域でフラックスの冪は、
誤差の範囲内で変化していないということが得られている。図6.15により、θ2 <0.2度2以内に入
るのは、H.E.S.S.が報告した事象数全体の50%である。そこで、領域により冪が変化しないという
情報から、H.E.S.S.がシェル全体から得たフラックスの50%のフラックスがCANGAROO-IIIの 観測ポイントであるX線強度のピークからθ2 <0.2度2 以内に存在すると考えて、 CANGAROO-IIIのフラックスを比べる。得られたRX J1713.7-3946のCANGAROO-III観測点からθ2 <0.2 度2 の微分フラックスを、図6.17に示す。この結果を冪を仮定してフィットした結果、図では点 線に対応し、微分フラックスとして次を得た。誤差は統計誤差のみを考慮したものである。
(1.45±0.29)×10−11× ( E
1 TeV
)−2.26±0.37
photons cm−2 sec−1 TeV−1 (6.2) H.E.S.S.グループはRX J1713.7-3946 の精度の高い微分フラックスを報告しており、その値は、
(1.71±0.05)×10−11× ( E
1 TeV
)−2.26±0.02
photons cm−2 sec−1 TeV−1 (6.3) である[30]。これは、一見CANGAROO-IIIのフラックスがH.E.S.S.の50%程度ではなくかなり高 めに出ているようであるが、CANGAROO-IIIの今回の観測エネルギー帯域である600GeV∼3TeV
の範囲のH.E.S.S. のデータ点を、冪を仮定してフィッテングしてやると
(2.50±0.08)×10−11× ( E
1 TeV
)−1.89±0.06
photons cm−2 sec−1 TeV−1 (6.4) となり、CANGAROO-IIIの観測により得られた、シェルの北西端からθ2<0.2度2 以内に入る フラックスは統計的な誤差の範囲内でH.E.S.S.のフラックスの約半分であることが分かる。この ようにして、CANGAROO-IIIの放射ピークからの観測により、H.E.S.S.の微分フラックスを支 持する結果を得た。
-39d00’
-40d00’
17h10m 17h15m
1 2 3
4 5 6 7
8 9 10 11
12 13 14
1.9 2.0 2.1 2.2
Γ Photon index
1.9 2 2.1 2.2 2.3
)-1 s-2 cm-12Flux(> 1 TeV) (10
0.8 1 1.2 1.4
1 2 3
4
5 6
7
8 9
10 11
12 13
14
図6.16: H.E.S.S.グループによる放射領域を分割した場合の各々の領域における1 TeV 以上の積 分フラックスとその冪[30]
energy [TeV]
1
energy [TeV]
1
differential flux [photons/cm2/s/TeV]
10-13
10-12
10-11
10-10
10-9
10-8
differential flux
Crab (HEGRA) H.E.S.S.
50% H.E.S.S.
CANGAROO-III T3-T4 new BG
differential flux
図6.17: 得られた微分フラックス。統計的な誤差の範囲内で H.E.S.S.のフラックスを 50% にし たフラックスと一致している。
mean E(TeV) f lux(photon/cm2/s/T eV) 統計誤差 有意度(σ) ADC値(p.e.) 0.60 5.05·10−11 ±3.70·10−11 1.4σ 45∼90
0.80 2.15·10−11 ±1.13·10−11 1.9σ 90∼120
1.00 1.45·10−11 ±5.06·10−12 2.9σ 120∼160
1.24 6.08·10−12 ±3.81·10−12 1.6σ 160∼200 1.50 6.67·10−12 ±2.05·10−12 3.6σ 200∼250 1.91 4.34·10−12 ±1.12·10−12 3.9σ 250∼370 2.41 1.60·10−13 ±6.64·10−13 1.9σ 370∼500 表6.1: CANGAROO-III望遠鏡の観測による超新星残骸 RX J1713.7-3946のX 線放射ピークか らθ2 <0.2度2 の微分フラックス。
以上のようにして CANGAROO-IIIの観測により、RX J1713.7-3946 からの広がった TeV 放 射を観測し、H.E.S.S. のフラックスと一致するフラックスを得た。
北西端からの解析で強度マップを作成した。用いたバックグラウンド領域は、CANGAROO-III の観測中心から半径 θ <0.5度の領域については、new BG を用い、その他の領域は観測中心か
らθ >0.5 度の領域のみを使って、その評価する領域を中心として0.2< θ2 <0.4度2 をバック
グラウンドとしてガンマ線強度マップを作成することとした。得られた結果が図6.18 である。
259 258 257
-40.5 -40.0 -39.5 -39.0 -38.5
259 258 257
Right Ascension (J2000, deg) -40.5
-40.0 -39.5 -39.0 -38.5
Declination (J2000, deg)
-35. -14. 6. 26. 47.
259 258 257
-40.5 -40.0 -39.5 -39.0 -38.5
259 258 257
-40.5 -40.0 -39.5 -39.0 -38.5
PSF
図6.18: シェルの北西端を中心とする解析から得られたRX J1713.7-3946のCANGAROO-IIIに よるガンマ線強度マップ。黄色の線はH.E.S.S.がフラックスを評価したシェル中心から半径0.65 度の領域に相当する。また、コントアは H.E.S.S.の結果を示す。
Section 6.6
シェル中心からの解析
次に、シェル中心からの解析結果を述べる。H.E.S.S.は中心から、半径θ= 0.65度を放射領域と している。今回、それと同等の範囲について評価する。得られたデータから、WIDTH、LENGTH の分離について示したものが図6.19である。今回は、ON領域であるシェル中心から、半径θ= 0.65 度の円と OFF 領域であるシェル中心から0.5< θ2 <0.8度2 の領域では、単位面積当りの望遠 鏡のアクセプタンスが異なるので、広げて降ったガンマ線モンテカルロシミュレーションを利用 してその違いを補正した。