0 5×105 1×106
Electric Field (V/cm)
10-6 10-3 100 103
Current Density (mA/cm2 )
0 5×105 1×106
Electric field (V/cm)
10-9 10-6 10-3 100
Current density (A/cm2 )
(a) バイポーラ素子
( c ) 電子オンリー素子 ( b ) 正孔オンリー素子
図 III.2-1-1-⑥-23.高分子青色発光材料の各素子の駆動前後の電流-電界曲線 a) バイポーラ素子 b) 正孔オンリー素子 c)電子オンリー素子
70
駆動中の各素子のPLスペクトルを測定した結果を図III.2-1-1-⑥-24に示す。
バイポーラ素子では、上述したように、駆動中にPL強度は低下することがわかっている。正孔オンリ ー素子では、PL強度のわずかな低下が見られた。これは、測定誤差の範囲内かどうかは、今後の検討 課題であるが、いずれにしても、正孔オンリー素子でのPLスペクトルの変化は、バイポーラ素子に比 べ、非常に小さいものと思われる。
一方、電子オンリー素子の場合は、駆動前後スペクトルの形状の変化が観測された。ただ、この変化も 有意の差であるかどうかは今後更に検証が必要である。電子オンリー素子では、Alを陽極に用いており、
通常の場合は、Al陽極が光を通さないため、PLスペクトルの測定は出来ない。ここでは、PLスペク トルを測定するために、ITO基板の上に、Alを非常に薄く蒸着し、半透明な膜として陽極に用いた。測 定の関係上、電子オンリー素子が光学薄膜として働き、特に青材料の発光波長領域では、測定時の光の 干渉の影響が無視できず、スペクトルの形状の変化に起因している可能性がある。PLの強度に関して も、干渉効果からの影響が無視できないが、バイポーラ素子で見られたよう大幅な減少は見られていな い。
71
400 500 600
Wavelength (nm)
0 0.5 1
P L In tens it y (ar b. uni ts )
Before After
400 500 600
Wavelength (nm)
0 0.5 1
P L In tens it y (ar b. uni ts )
Before After
2000
1500
1000
500
0
Intensity
650 600
550 500
450 400
Wavelength / nm
before after
2.0x10- 3 1.5 1.0 0.5 0.0
PL Intensity
650 600
550 500
450 400
W av e le ngth ( nm )
100 % 80%
60%
40%
20%
(a) バイポーラ素子
(c) 電子オンリー素子 ( b ) 正孔オンリー素子
図 III.2-1-1-⑥-24.高分子青色発光材料の各素子の駆動前後の PL スペクトル a) バイポーラ素子 b) 正孔オンリー素子 c) 電子オンリー素子
72
iii) 高分子青色発光材料の劣化挙動のまとめ
以上、観測された現象をまとめると、表III.2-1-1-⑥-1ようになる。
表 III.2-1-1-⑥-1.各素子の駆動劣化試験のまとめ
強度低下 小
変化無し 減衰 PL スペクトル
減少
(注入領域)
電子オンリー 上昇 デバイス
変化無し ( 初期のみ変 化と推測 ) 変化無し
( 駆動初期 のみ変化 ) ホールオンリー
デバイス
減少 バイポーラ 上昇
デバイス
電流特性 駆動電圧
デバイス
強度低下 小
変化無し 減衰 PL スペクトル
減少
(注入領域)
電子オンリー 上昇 デバイス
変化無し ( 初期のみ変 化と推測 ) 変化無し
( 駆動初期 のみ変化 ) ホールオンリー
デバイス
減少 バイポーラ 上昇
デバイス
電流特性 駆動電圧
デバイス
ここから、青色発光材料の駆動中の劣化の主な原因は、以下のように推定される。
・.発光層に消光中心が生成することよるPL強度の低下
・主に電子注入が減少することにより電荷バランスが変化し、発光効率が低下する。
以上は、非常に単純化した推定であって、実際には、もっと複雑な現象が駆動中に生じていることは 容易に推定できる。
例えば、一つの仮定として、劣化の原因として、発光材料のPL強度の低下で、EL発光効率の低下 を説明する機構も考えることは可能である。PL強度の測定は、原理上発光層全体として測定している が、高分子有機EL発光素子としては、発光層の全体が発光してとは限らないからである。例えば、こ の青色発光材料では、それぞれの単電荷素子とバイポーラ素子の電流量を比較した場合、電子が過剰の 系であることがわかっており、発光領域としては陽極に近いところに偏っていると推定される。この発 光領域中にある発光材料の量子収率の低下が、EL効率の低下を引き起こすという仮定を立てることは 可能である。すなわち、輝度40%に低下したバイポーラ素子において、発光領域の発光材料の量子収 率が初期に対して40%になっているが、上述したPL強度の測定方法では、発光領域に存在する発光 材料のみのPL強度ではなく、薄膜全体としてのPL強度を測定しており、PL強度の低下した発光領 域と低下していない領域のPL強度の加重平均として測定した結果、PL強度が結果として、初期値に 対して70%と測定された可能性も否定は出来ない。
これらの観点を踏まえた、更なる解析が必要である。
73 ロ. 緑色、赤色発光材料の劣化機構
同様の実験を、緑色発光材料、赤色発光材料に関しても行った。以下に示す通り、劣化の現象としては、
ほぼ青色発光材料と同様である。
i) 劣化挙動
青色発光材料と同様に、代表的な緑色発光材料と赤色発光材料のバイポーラ素子を作成し、初期の輝 度の80%、60%、40%、20%の輝度まで劣化させた素子を作成した。このときの駆動中のEL の輝度の変化と電圧の変化を図III.2-1-1-⑥-25(緑色発光材料)および図III.2-1-1-⑥-26(赤色発光材 料)に示した。また、このときのPLおよびELスペクトルの変化と、PL強度の駆動時間依存性を図
III.2-1-1-⑥-27(緑色発光材料)および図III.2-1-1-⑥-28(赤色発光材料)に示した。
青色発光材料と同様に駆動中にPL強度は低下していることがわかる。また、この低下はEL輝度低下 の全てを説明するものではなく、発光効率の低下は、PL強度の低下とその他の要因があることも青色 材料と同様である。一方で、緑色発光材料および赤色発光材料において、EL効率低下に占める、PL 強度の現象の割合は、青色発光材料に比べ少なくなっている。この現象に関しては、緑・赤発光材料に おいては、当然のことならが、青色材料よりも発光波長が長波長で、駆動劣化によって生成した消光中 心の影響を受けにくいという推測も可能であるが、詳細を明らかにするためには、更に解析が必要であ る。
12 8 4 0
Voltage (V)
600 500 400 300 200 100 0
Time (hour)
2 3 4 5 6 7 89
100
Normalized Luminance (%)
600 500 400 300 200 100 0
Time (hour)
$F1682 $F1683 $F1685 $F1684
図 III.2-1-1-⑥-25.高分子緑色発光材料の素子駆動中の輝度と電圧の経時変化(寿命試験)
74
2 3 4 5 67
100
Normalized Luminance (%)
250 200 150 100 50
0
Time (hour)
$F1678 $F1679 $F1681
12 8 4 0
Voltage (V)
250 200 150 100 50
0
Time (hour)
図 III.2-1-1-⑥-26.高分子赤色発光材料の素子駆動中の輝度と電圧の経時変化(寿命試験)
75
Peak intensity PL spectra
EL spectra
500 600 700
Wavelength (nm)
0 0.5 1
EL Intensity (arb. units)
green polymer 100 % 80 % 60 % 40 % 32 %
500 600 700
Wavelength (nm)
0 0.5 1
PL Intensity (arb. units)
green polymer 100 % 80 % 60 % 40 % 32 %
0 200 400 600
Driving time (hrs) 0
0.5 1
PL Intensity (arb. units) EL Intensity (arb. units)
Green polymer PL EL
図 III.2-1-1-⑥-27.高分子緑色発光材料の素子駆動中の PL スペクトルと EL スペクトルの変化とその 強度変化
76
400 500 600 700
Wavelength (nm)
0 0.5 1
PL Intensity (arb. units)
Red polymer before drive 80 % drived 60 % drived 40 % drived 20 % drived
Peak intensity PL spectra
EL spectra
400 500 600 700 800
Wavelength (nm)
0 0.5 1
EL Intensity (arb. units)
Red polymer 100 % 80 % 60 % 40 % 20 %
0 100 200 300
Driving time (hrs) 0
0.5 1
PL Intensity (arb. units)
0 0.5 1
EL Intensity (arb. units)
Red polymer PL EL
図 III.2-1-1-⑥-28.高分子赤色発光材料の素子駆動中の PL スペクトルと EL スペクトルの変化とその 強度変化
77
ii) 単電荷素子による評価(緑色発光材料、赤色発光材料)
同様に、単電荷素子を作成し、その駆動劣化測定を行い、バイポーラ素子と比較した。
図III.2-1-1-⑥-29および図III.2-1-1-⑥-30からわかるように、緑・赤発光材料についても、バイポー
ラ素子および電子オンリー素子では、定電流駆動において電圧上昇が見られるのに対し、正孔オンリー 素子では、駆動初期の電圧低下が観測され、その後の電圧上昇は見られない。
また、各素子の駆動中のスペクトルを図III.2-1-1-⑥-31および図III.2-1-1-⑥-32に示す。バイポーラ 素子では緑・赤材料においても、青色材料と同様に、PLスペクトルの強度の低下が観測されるが、ス ペクトル変化は観測されない。一方で、電子オンリー素子、正孔オンリー素子では、PL強度の低下並 びにスペクトル変化ともに観測されていない。PL強度の変化はバイポーラ素子でのみ観測されている。
図III.2-1-1-⑥-33には、緑色、赤色発光材料の電子オンリー素子での駆動前後の電流-電界曲線を青
色発光材料のそれと合わせて示した。緑・赤発光材料の電子オンリー素子において、その低電界領域の 電流量が大きく減少していることがわかり、このことから、電子オンリー素子で、電子の注入が大きく 変化していることがわかる。
iii)緑色発光材料、赤色発光材料の劣化挙動のまとめ
以上、緑・赤色発光材料の劣化挙動をまとめると、程度の差こそあれ、ほぼ青色発光材料と同様の劣 化機構を有していると推定される。
以上の解析結果から、青色発光材料と同様に、長寿命化には、PL強度(量子収率)の低下の抑制(消 光中心の生成の抑制)および、電子注入の安定化が必要と考えられる。
78
12 8 4 0
Voltage (V)
600 500 400 300 200 100 0
Time (hour)
20 15 10 5
Vo lt a g e ( V )
0200 150 100 50
0
Time (hour)
10 8 6 4 2 0
V o ltag e ( V )
200 150
100 50
0