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第 3 章 実験結果と議論

第 3 節 CeOs 2 Al 10 の物性

3.3.1 de Haas-van Alphen 効果

LaOs2Al10の dHvA 効果を測定し、フェルミ面とサイクロトロン有効質量を明らかにした。

測定にはRRR = 47の純良単結晶試料を用いた。測定はa軸、b軸、c軸それぞれの間の方向

を4.5°間隔で測定した。図3.3.4(a) はH // a方向でのdHvA振動である。横軸の磁場の逆数に

対して周期的に振動していることが分かる。図3.14(b) はそのFFTスペクトルで、つのブラ ンチを確認しそれぞれをと名付けた。

(a) LaOs

2

Al

10

H // a-axis

T = 0.5 K

1/

0

H

9 T 7 T

100

0 1000 2000 3000

dHvA Frequency (T)

 (b)

3.3.4 LaOs2Al10の(a)dHvA振動と(b)そのFFTスペクトル。

図3.3.5にLaOs2Al10のdHvA振動数の角度依存性とバンド計算の結果との比較を示す。丸

は実験結果で、点は量子物性研究室の播磨氏と播磨教授に提供していただいたバンド計算の 結果である。実験値から得られた、主なフェルミ面の軌道であるブランチとブランチは、

バンド計算の結果とよく一致している。図3.3.6にバンド計算から得られたフェルミ面を示す。

68, 69, 70バンドのフェルミ面にはそれぞれ正孔、正孔、電子で占められた状態に影を付けて

いる。ブランチは69バンドのT点にあるフェルミ面を、ブランチは70バンドのZ点を 中心とするいびつな多重連結状のフェルミ面の一部をそれぞれ表している。以上の dHvA 効 果測定とバンド計算の比較から、多重連結したフェルミ面を確認した。この他に、小さな軌 道を持つブランチが実験で観測されている。ブランチは大きさは違うが70バンドのa 方向へ伸びたフェルミ面の形状と一致する。このフェルミ面の形状は、LaOs2Al10はネスティ ングがない。図3.3.7にバンド計算から求められた(a)バンド分散と(b)状態密度を示す。Z-T間 では群論から 2 つの状態を持つことが分かっており、バンドが二重縮退している。基本単位 格子に2分子あることから、この物質は必ず補償金属になるという性質を持つ。

101

10

1

10

2

10

3

10

4

68th 69th 70th

dH vA F re qu ency ( T )

Field Angle (degree)

-branch

-branch LaOs

2

Al

10

a b c a

0.6 m0 (0.50)

1.9 m0 (4.04)

open circles: exp.

dots: band calc.

-branch

-branch

-branch

1.4 m0

0.4 m0 0.3 m0

0.3 m0

90

3.3.5 LaOs2Al10のdHvA振動数の角度依存性とバンド計算の結果との比較。

102

3.3.6 LaOs2Al10のバンド計算により描かれたフェルミ面。

実験によりband69, 70にそれぞれ, ブランチを観測した。

103

3.3.7 バンド計算により求められたLaOs2Al10のバンド分散と状態密度。

104

図3.3.8(a)にH // bにおけるブランチのマスプロットを示す。振動振幅の温度依存性の傾

きからサイクロトロン有効質量はmc* = 1.37 m0と見積もった。重い電子系の物質ではなく、

典型的な金属の有効質量を持つフェルミ面である。サイクロトロン有効質量と振動数の実験 値と理論値を表3.3.1にまとめた。図3.3.8(b)そのT = 0.5 KにおけるDingleプロットである。

振動振幅の磁場依存性からDingle温度TD = 2.49 Kが求められ、緩和時間 = 4.88 × 10-13 sec、

平均自由行程l = 131 nmと見積もられた。これらは、電子のサイクロトロン運動の不純物に よる散乱が少なく、試料が純良であることを示す結果である。主なフェルミ面の軌道は、H //

a方向におけるブランチはTD = 2.47 K, =4.92 × 10-13 sec, l = 226 nm、H // c方向におけるブ ランチはTD = 2.20 K,  = 5.54 × 10-13 sec, l = 113 nmと求められた。

-4.0 -3.5 -3.0 -2.5 -2.0 -1.5 -1.0

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 1.1 1.2 ln[A{1-exp(-2m c* T/H)}/T] (arb. unit)

T (K) mc* = 1.37(1) m0

(a) LaOs2Al10

-branch H // b

6.5 7.0 7.5 8.0

8.5 9.0 9.5 10.0 10.5 11.0 ln[AH-1/2 sinh(m c* T/H)J 2(x)] (arb. unit)

1/(0H) (x10-2 T-1)

(b) LaOs2Al10

-branch H // b T = 0.5 K

TD = 2.49 K

 = 4.88 x10-13 sec l = 131 nm

3.3.8 LaOs2Al10H // bにおけるブランチの(a)マスプロットと(b)Dingleプロット。

105

3.3.1 LaRu2Al10のdHvA効果測定とバンド計算による, ブランチのdHvA振動数と サイクロトロン有効質量。

Branch Experiment Theory

F (×103 T) mc* (m0) F (×103 T) mb (m0)

H c) 4.465 1.91(11) 4.431 4.037

Ha) 1.989 0.62(1) 1.841 0.495

Hb) 3.332 1.37(1)

H // a) 0.114 0.30(1)

 H // c) 0.128 0.38(1)

 H // a) 0.066 0.26(1)

以上の結果から、LaOs2Al10は LaRu2Al10と同様、典型的な金属と同程度の有効質量を持つ ことが分かった。多重連結の構造を持ち、3次元的な電子状態である。ネスティングはなく、

Peierls転移などは起きにくいフェルミ面である。

本節ではCeOs2Al10の比較物質であるROs2Al10の電気抵抗、Hall効果、磁化・磁化率、dHvA 効果を測定した。LaOs2Al10は弱い反磁性を示す典型金属である。PrOs2Al10は典型的な金属で、

強い磁気異方性を持つ。LaOs2Al10はLaRu2Al10と同様、の有効質量は軽く多重連結したフェ ルミ面を確認した。

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4 章 まとめ

本研究ではRT2Al10化合物の単結晶試料を作製し、その物性を測定した。ここでは第3章の 実験結果をまとめて、明らかになった電子物性を結論として示す。加えて本研究で解明でき なかった物性を挙げ、今後の展望を提示する。

1 項 結論

本論文での研究は異常な反強磁性相転移を持つCeT2Al10の電子状態の解明し、その相転移 の機構の解明を目的に行った。

・ CeT2Al10の低温での磁気抵抗の磁場依存性(0 T < H < 9 T)を電流、磁場方向を変えて9通 りを測定した。~ Hn (n = 1.5 – 1.7)の振る舞いから、フェルミ面にオープン軌道をないこ とを示した。

・ CeT2Al10のSdH効果を測定し、振動数F = 14 – 208 Tの小さな軌道を持つフェルミ面を観 測した。それらのサイクロトロン有効質量は、mc* = 0.57 – 1.54 m0であった。

・ CeRu2Al10とLaRu2Al10とのフェルミ面の比較から、全く異なる電子状態を持ち、CeT2Al10

の4f電子が遍歴していることを示した。

・ 観測したSdH振動数から電子比熱係数を見積もり、今回観測できなかった重く小さいフ ェルミ面の存在を示した。

以上の結果を星野・倉本の理論にあてはめ、量子臨界点近傍において遍歴反強磁性が発現し ている可能性を示唆した。

107

2 項 今後の展望

本研究では観測できなかったと考えられる、CeRu2Al10の小さく重いフェルミ面を観測する 必要がある。重い電子系の電子状態を解明し、量子臨界点近傍における高い相転移温度を持 つ磁気秩序の性質を明らかにする。そのためには、重いフェルミ面の観測に有効な希釈冷凍 機を用いた極低温でのSdH効果測定が必要である。

また、CeRu2Al10T > T0の常磁性状態でのフェルミ面を調べて、相転移温度以上の高温で のフェルミ面観測も必要である。今回観測したT < T0の磁気秩序下でのフェルミ面と比較し て、電子状態が磁気秩序の形成に与える影響を明らかにする。そのため、超高分解能角度分 解光電子分光実験が有効であると考えられ、表面のきれいな壁かいする試料を作製する必要 がある。

さらに、CeFe2Al10とCeOs2Al10も含めた圧力下でのSdH効果測定により、フェルミ面の変 化を系統的に調べる。磁気秩序の有無と、その相転移温度の変化と電子状態の変化を対応さ せる。このように、Ce化合物に圧力をかけることで、既存のDoniachの相図にあてはめて磁 気秩序と量子臨界点を考えることができるかを明らかにする。特に、SdH効果が報告されて いるCeFe2Al10のフェルミ面の全容を解明し、相転移が起こっていない状態での電子状態を調 べて比較し、電子状態が磁気秩序の形成に関係するかを明らかにする。

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謝辞

本論文は筆者が神戸大学、大学院理学研究科に在籍中の 5 年間の研究成果をまとめたもの です。これを作成するにあたり、多くの方にご協力をいただきました。ここに、心より深謝 いたします。

主査で指導教官でもある菅原仁教授には本研究の実施の機会を与えて戴き、その遂行にあ たって終始ご指導を戴きました。ここに感謝の意を表します。

副査の播磨尚朝教授には本論文第3章のバンド計算の結果を提供して戴きました。副査の 藤秀樹教授には本論文第3章の磁気抵抗とdHvA・SdH効果を測定するにあたり、超伝導マグ ネットを使わせて戴きました。副査の藏重久弥教授には、学位論文を査読して頂き貴重なア ドバイスを頂きました。ここに感謝の意を表します。

同じ研究室の松岡英一准教授には、データの解析や発表方法について日頃から御指導を戴 きました。ここに感謝の意を表します。

分子フォトサイエンス研究センターの太田仁教授、研究基盤センターの櫻井敬博助教には 本論文第3章磁化・磁化率を測定するにあたり、測定装置を貸して戴き、また、有益なご支 援を戴きました。ここに感謝の意を表します。

大阪大学、大学院理学研究科の大貫惇睦教授(現琉球大学)、摂待力生准教授(現新潟大学 教授)、本多史憲助教(現東北大学准教授)には本論文第3章のdHvA効果を測定するにあた り、装置をご提供いただき多大なご支援と有益なご助言を戴きました。ここに感謝の意を表 します。

広島大学、大学院先端物質科学研究科の世良正文教授と谷田博司助教には、本論文第3章 のSdH 効果測定のためにCeRu2Al10の貴重な試料をご提供頂きました。ここに感謝の意を表 します。

日本原子力研究開発機構の芳賀芳範博士、松田達磨博士(現首都大学東京准教授)には本 論文第3章の試料の構造解析をして戴きました。ここに感謝の意を表します。

量子物性研究室の播磨真樹君には本論文第3章のバンド計算を行っていただきました。五 宝健君には、バンド計算や結晶場に関して貴重な議論をしていただきました。ここに感謝の 意を表します。

また、電子物性研究室の同輩の田中修平君(現サンディスク株式会社)、後輩の久保田和宏 君(現サンディスク株式会社)、永島壮太君、西脇大平君、中村翔君、堀江基大君には本研究 を遂行するにあたり日頃より大変有益なご支援を戴きました。特に、dHvA効果測定の実験を 日夜交代して行い、価値ある成果を共に達成したことは忘れません。ここに感謝の意を表し ます。

その他、数多くの方々に支えられて、有意義な大学院生活を送ることができました。深く 感謝いたします。

最後に、サポートしてくださった父俊明、母瑞穂に心より感謝いたします。

ありがとうございました。

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