第 3 章 実験結果と議論
LaRu 2 Al 10 PrRu 2 Al
3.3.3 de Haas-van Alphen 効果
LaRu2Al10のdHvA効果を測定し、フェルミ面を明らかにした。RRR = 19, 29の試料を用い た。測定はa軸、b軸、c軸それぞれの間の方向を4.5°間隔で測定した。図3.2.8(a) はH // c
からH // aへ20.5°回転した方向でのdHvA振動である。横軸に磁場の逆数をプロットしてあ
り、周期的に振動していることが分かる。図3.14(b) はそのFFTスペクトルで、, と名付け たつのブランチが確認できる。
80
LaRu
2Al
10H // 20.5°
70 mK
16.9 T 1/(µ
0H) → 13 T
8 6
4 2
0
dHvA Frequency (x10
3T)
図3.2.8 LaRu2Al10の(a)dHvA振動と(b)そのFFTスペクトル。
図3.2.9はLaRu2Al10のdHvA振動数の角度依存性で、青丸が本研究で測定した実験値を表
す。橙、緑、赤の点は播磨教授にいただいたバンド計算の理論値である。実験値から得られ たブランチとブランチは、バンド計算の結果とよく一致している。ブランチは計算の一
部が、ブランチは全ての角度において計算と一致している。ブランチに対応するフェルミ
面の曲率因子は大きいことがバンド計算から示されており、そのため実験では観測されなか ったと考えられる。図3.2.10にバンド計算から得られたフェルミ面を示す。68バンドのフェ ルミ面を示すブリルアンゾーンに波数空間で特徴的な点と方向示す。68, 69, 70バンドのフェ ルミ面にはそれぞれ正孔、正孔、電子で埋められた部分に影を付けている。ブランチは 69 バンドのT点にあるフェルミ面を、ブランチは70バンドのZ点を中心とするいびつな多重 連結状のフェルミ面の一部をそれぞれ表している。この他に、a軸からb軸方向への角度でF
= 102 T付近にブランチが実験で観測されている。c軸に伸びた形から、69バンドのラグビ
ーボール状のフェルミ面を指す可能性がある。以上の dHvA 効果測定とバンド計算の比較か ら、多重連結したフェルミ面を確認した。このフェルミ面の形状は、LaRu2Al10はネスティン
(a)
(b)
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グがない。また、ac面に開いた軌道がないという磁気抵抗の結果と一致する。図3.2.11にバ ンド計算から求められた(a) バンド分散と(b) 状態密度を示す。まるで示されたフェルミエネ ルギー上に二重縮退のバンドを形成する。基本単位格子に2分子あることから、この物質は 必ず金属になるという性質を持つ。
10
110
210
310
4dHvA data
band calculation LaRu
2Al
10d H v A F requ en cy (T )
Field Angle (degrees)
a b c 90° a
図3.2.9 LaRu2Al10のdHvA振動数の角度依存性とバンド計算の結果との比較。
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図3.2.10 LaRu2Al10のバンド計算により求められたフェルミ面。実験で観測した, , ブラ
ンチの軌道を図中に示す。
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図3.2.10 バンド計算により求められたLaRu2Al10の(a)バンド分散と(b)状態密度。
H // cからH // aへ20.5° 回転した方向においてdHvA振動を強く観測できたので、サイク ロトロン有効質量とDingle温度を調べた。図3.2.11(a) はそのブランチとブランチのマス プロットである。振動振幅の温度依存性の傾きからサイクロトロン有効質量を求めると、
ブランチでmc* = 1.2 m0、ブランチではmc* = 1.3 m0であった。重い電子系の物質ではなく、
通常の自由電子程度の有効質量を持つ電子系である。この結果は比熱測定から求められる電 子比熱係数の値と比較してコンシステントである。図3.16(b) は同じ方向におけるブランチ のT = 70 mKでのDingleプロットである。振動振幅の磁場依存性からDingle温度TD ~ 2.6 K が求められ、緩和時間 ~ 4.7 × 10-13 sec、平均自由行程l ~ 1200 Åと見積もられた。これらは、
電子のサイクロトロン運動の不純物による散乱が少なく、試料が純良であることを示す結果 である。
84 -4
-3 -2 -1 0 1 2
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
-branch mc
* = 1.29(1) m
0
-branch mc
* = 1.23(14) m
0
T (K) (a) LaRu
2Al10
H // 22.5°from c to a ln[A{1-exp(-2mc*T/H)}/T] (arb.unit)
6.0 6.2 6.4 6.6 6.8 7.0 7.2 7.4 7.6 6.1
6.2 6.3 6.4 6.5 6.6 6.7 6.8 6.9
1/0H (1/T) (b) LaRu2Al10
T = 70 mK ln[AH-1/2sinh{mc*T/H)}/J2(x)] (arb.unit)
TD = 2.6 K
= 4.7 x10-13sec l = 120 nm
図3.2.11 LaRu2Al10の(a)マスプロットと(b)Dingleプロット。
表3.2.1 LaRu2Al10のdHvA実験とバンド計算による, ブランチのdHvA振動数とサイクロ トロン有効質量。
Branch H // 20.5°
from c to a
Experiment Theory
F (×103 T) mc* (m0) F (×103 T) mb (m0)
3.78 1.21(14) 3.746 1.013
2.54 1.29(1) 2.562 0.813
以上の結果から、LaRu2Al10は軽い有効質量を持つ典型的な金属であることが分かった。多 重連結の構造を持ち、3次元的な電子状態である。ネスティングはなく、Peierls転移などは起 きにくいフェルミ面である。
CeRu2Al10についても dHvA 効果測定を様々な条件で試みたが、振動を観測できなかった。
dHvA効果の測定では、小さなフェルミ面は振動数が小いさいため、弱い磁場領域で振動を多 く観測する必要がある。しかしながら、第2章第6項で示したように磁場変調法では振動振 幅の測定強度は Bessel関数で決まっているので、弱い磁場領域で測定するには大きな変調磁 場hが必要である。しかしながらhの値は装置の都合上0.01 Tが最大である。また、磁場が 弱いこと自体、強磁場条件としても不利になるため、小さなフェルミ面が予想される CeRu2Al10において、dHvA効果を観測できなかったと考えられる。
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