5.1 能力向上の概要
5.1.1 能力向上の概念
能力向上は、「課題への対応能力が個人、組織、社会などの複数のレベルの総体として向上して いくプロセス」と定義される。上下水道事業体が組織・施設を持続的に運営していくためには技 術面のみならず、事業運営・財務面を含めた、組織全体の能力向上が不可欠である。またそれを 支援するためには、組織だけでなく、個人レベルや社会レベルの能力向上も重要な役割を担って いる。
出典:JICA(2008)キャパシティ・アセスメント ハンドブック 図 5.1 能力向上の概念
5.1.2 能力向上の方法
一般的な研修メカニズムと能力向上の方法について次表に示している。
能力向上は、事業体の人材育成の基本方針、ニーズ分析結果に沿って行われるべきであり、そ の能力向上の方法としては、大きく次の 3 つがある:(1) OJT、(2)Off-JT、(3)自己啓発。
OJT では、必要となる技術や能力を、実務的な業務や作業を通じ、試行錯誤を繰り返しながら 能力向上を図る。Off-JT では、一般的に現場から離れ、外部の講師から教育をうけるもの、自己 啓発は個人的に学んで能力向上を図るものである。
YCDC の能力向上にあたっては、OJT 及び OFF-JT、個人の自己啓発のすべての組み合わせによる 効果的な能力向上が必要となる。現状では、中央研修センターでの研修科目は、一般的なエンジ ニアリングや会計分野に限られており、水道の技術面や事業運営面の専門的な知識や経験を習得 する機会は非常に限られている。特にヤンゴン市においては、今後の急激な需用増加による施設 整備にともない、指導できる経験者の人材の育成や、指導者の知識や技術もより広範囲の分野で、
より深い知識の習得が必要である。長期的には、水供給衛生局の主幹職員(Resource person)を 効果的に育成し、その職員が習得した知識と経験を中堅職員及び若手職員に伝えていくことが望 ましい。また同時に、個人が学習意欲を向上させるためのインセンティブづくりや意識改革、研
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上下水道改善プログラム協力準備調査 第4巻 上水道フィジビリティスタディ
5-2 修効果を活かせる環境整備もあわせて必要となる。
短期(~2025 年)における初期の段階では、援助機関等による外部の専門家の派遣、技術協力 プロジェクト等による支援が有効であり、網羅的に能力向上を図ることができると考えられる。
図 5.2 研修メカニズムと能力向上方法
5.2 YCDC 水供給衛生局のキャパシティ・アセスメント
JICA のキャパシティ・アセスメントのハンドブックに準じ、上下水道事業の管轄部署である水 供給衛生局に対するキャパシティ・アセスメントを試みた。アセスメント方法は、チェックリスト 項目が多く分野も多岐にわたるため、その中から主要な項目を選定して行った。
アセスメント内容は、(1)技術面(テクニカル・キャパシティ)、(2)事業運営面(コア・キャパ シティ)、(3)環境基盤、の 3 つの対象分野について実施した。
上記 3 分野における主なアセスメント対象を次表に示している。
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5-3
表 5.1 キャパシティ・アセスメントの対象分野
対象分野 アセスメント対象
テ ク ニカ ル・ キャ パ シ ティ
(1) 施設の計画・設計能力 (2) 施設の運転維持管理能力 (3) 水質管理能力、等
事業体の知識、技能、及び組織内の知識や情報共 有システムやその質
コア・キャパシティ (1) 組織改善とその機能化を含む組織運営能力、適 切な人材配置・人事管理業務の遂行能力 (2) 財政計画、資金調達、会計処理遂行能力 (3) 顧客台帳管理、水道メータ検針、請求書発行、
料金徴収などの顧客対応能力、等
組織の行動、思考様式(意志決定)及び組織の各 種システム(マネジメント、人事、インセンティ ブ、等)
環境基盤 (1) 法律・条令・制度などの法体系の整備能力、
(2) 財政基盤、
(3) 水道施設等の資産、等
財政制度環境、人的資源、物質資産、社会関係資 本
出典:JICA 調査団
キャパシティ・アセスメント結果(要約)
キャパシティ・アセスメント結果(要約)を次表に示す。キャパシティ・アセスメントの全体 結果については資料 C に添付している。また、無収水対策、水質管理、水道経営に関する分野に ついては、後セクションで詳細に触れている。
表 5.2 キャパシティ・アセスメント結果概要
大分類 中分類 小分類 結 果
テクニカル・
キャパシティ
(技術的側面)
無収水対策 漏水探知技術・技 能
タウンシップ事務所に漏水担当セクションあり 顧客から報告された漏水や修理について対処療法 的に対応
漏水低減のための知識、機材・設備が不足 将来の無収水削減計画なし
顧客メータ、バルク・メータの性能確認の機材・設 備は特になし
明らかに故障した顧客メータは交換
性能不良・性能低下の顧客メータ割合は不明だが、
推定ではおおよそ 1/4~1/3 程度 水質管理 水道施設の日常的
な運転
日常的な運転マニュアル、および緊急対応マニュ アルは策定されていない。
水質検査の結果が、施設の運転管理に反映されて いない
水質検査の実施 水質検査の実施および測定データの分析につい て、経験は非常に少ない。
コア・キャパシ ティ
財務力 財務健全性 料金設定ガイドラインなし
水供給衛生局の経常収支は若干黒字で推移
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5-4
大分類 中分類 小分類 結 果
( 非 技 術 的 側 面)
5 年間で支出が 60%急増しているのは懸念材料 資金調達 中央政府からの一般会計予算、特別会計予算による 会計 単式簿記主体の官庁会計
財務的に独立採算性になっていない
料金 従量制と定額制が混在し、同一顧客形態に対する公 平性が保たれてない
定額料金制の設定基準が不明確 政府機関向け料金は優遇
全体的に料金レベルは比較的低く抑えられている と推定
予算 予算プロセスは基本的に中央政府からのトップダ ウン
但し、その前段階で各部局か必要予算額を申請 検針、請求、料金
徴収
マニュアルは特になし
定期的に検針、検針員のローテーションはない 支払いは原則現金
ガバナンス/ マ ネジメント/ 人 事
組 織 的 機 能 と パ フォーマンス
組織は明確に設立
職務分掌の規定は一部に限定的 業務指標による事業運営は未実施 雇用/ 人事異動/
中途退職
人事担当の部署はなく、総務部署が兼務 技官の雇用は採用試験
中途退職率は低いと推定 人事管理とインセ
ンティブ
表彰制度なし
昇進は能力、学歴、空席状況によって考慮 昇進ポストは限定的、上位ポストには他政府機関か らの人事異動もあり
業績評価は昇進時のみ コミュニケーショ
ン
部門責任者は定期的会合あり 組織の縦割り傾向あり 研修
(トレーニング)
計画 毎年研修実施、但し明確な研修計画なし 人材育成のための予算は特になし 研修プログラム エンジニアリング研修(YCDC)あり
- 教材:基本的になし - 講師:YCDC 各部局責任者 大口径配管研修(DEWS)あり - 教材:あり
- 講師:部署責任者
鋼管・GI 管の維持管理・溶接研修(DEWS)あり - 教材:なし
OJT OJT あり、体制化はされてない 研修体制と実施状
況
研修体制あり(DEWS、YCDC 双方)
大口径配管研修は年 4 回、
資格制度 水共有衛生局による配管技術者/配管工の資格制度 あり
YCDC による土木・建築の資格試験制度あり 共有化の組織文化 体制化されれば、ポテンシャルあり 職員の維持とモチ
ベーション
能力向上のためのインセンティブ、定期的な評価制 度は特になし
研修実績は昇進の際に評価・考慮 環境基盤 外部からの影響 ガバナンスと政治
的影響
独立事業体でない 料金設定への影響不明 規制機関 規制機関なし
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大分類 中分類 小分類 結 果
調達 調達規則は特になし
汚職削減のための機能は特になし 他援助機関との協
力など
他援助機関による M/P 調査、F/S 調査の協力あり 海外の民間企業、地方自治体との協力連携の覚書あ り
法律、規則、ガイ ドライン
法律 国の水道法は制定されていない
ヤンゴン市開発法施行規則に水供給衛生事業に関 する記載あるが、十分網羅されておらず
規制・基準 料金設定ガイドラインなし 住民教育・啓発 YCDC
水供給衛生局としての IEC 活動なし 出典:JICA 調査団
5.3 YCDC の人材育成の現状
YCDC 及び各部局が実施する研修の内、情報収集できたのは、次の 5 箇所における職員研修であ る。
表 5.3 YCDC 及び各部局による研修
研修場所 実施部署 研修対象部署
中央研修センター(Central Training Center)
YCDC 総務局 全部局
YCDC 市庁舎内 右記の各局 都市計画・土地利用局、広報・情報局 Yegu ポンプ場 水供給衛生局 主に水供給衛生局
(但し、他部局、民間企業参加可)
Hlawga 貯水所内作業所 水供給衛生局 主に水供給衛生局
(但し、他部局参加可)
Ahlone 車両輸送・ワークショップ局 情報なし 出典:YCDC 中央研修センターへの聞き取り調査
その内、研修頻度、研修人数が最も多く、その中心となるのは中央研修センターの研修である。
都市計画・土地利用局と広報・情報局の 2 部署については、研修センターとは別に YCDC 市庁舎内 においても研修を行っている。Ahlone では、車両修理・運転技術の研修を行っている。水供給衛 生局が主催して行っている研修は、Yegu ポンプ場、Hlawga 貯水池内作業所の 2 つになる。
また、工事や実験などを行う研修科目では、民間企業などの現場で研修を行うこともある。
代表的な研修状況について、以下に記述する。
5.3.1 YCDC 中央研修センター
(1) 研修センターの概要
中央研修センターは 1996 年 3 月に開講し、センター長は総務局の副局長が兼務している。セン ターの職員構成は、公認ポスト 14 名に対して、実際は所長、副所長、研修係やアシスタントを含 めて計 7 名で構成されており、研修計画の立案、予算申請、研修コース運営を主な業務としてい る。