ミルクフロリデーションプログラ ムのフッ化物曝露の 6 つの評価
E. Villa
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緒 言第 5 章において論じられた技術的,法的ガイドラインが慎重に検討されその結果,
フッ化物添加ミルク計画の実施がひとたび決定されると進行中の計画またはプログラム を定期的に評価することが重要となる.これらの評価は次の 3 つの別々のカテゴリーに 分けることができる.
①臨床評価
特に,フッ化物添加ミルク計画が,ある国で最初の試みであって実証プログラムを意 図したものであれば,フッ化物添加ミルクを飲用している子どもの歯科保健の改善を評 価することは非常に興味深い.ベースライン研究はこの課題の出発点を提供し,その一 方で異なる年齢群の子どもを代表したサンプル群の定期的な歯の検査が時々刻々の評価 を提供する.ただし,これらの詳細は第 2 章および第 7 章で記述されているのでここで は議論されない.
②フッ化物添加ミルクの品質のモニタリング
子どもが消費するミルクの代表サンプルのフッ化物濃度の評価は,品質管理であるだ けでなく重要な安全性の評価でもある.すべてのフッ化物添加ミルク計画において,使 用するミルクのフッ化物濃度の変わりやすさをどこまで受け入れられるかという許容限 界を確定することが必要である.
③生物学的モニタリング
今日では,フッ化物添加ミルクプログラムを開始する前に,任意の地域でその代表と してサンプリングされた子どもについて,飲料水からの自然に摂取されるフッ化物量の みならず多くのフッ化物摂取源(たとえば,幼児が飲み込むフッ化物配合歯磨剤の量)
を考慮に入れることが 1 日のフッ化物全摂取量を推定する際に必要である.このことは 子どもの尿中フッ化物排出量を調査し,計測もしくは推定された尿中 1 日排出量をすで に公表(Marthaler,1999,表 5)されている暫定的な基準値と比較することによって 達成される.ひとたびフッ化物添加ミルク計画が始まれば,前述の生物学的モニタリン グは,歯のフッ素症の危険性を最小にする観点からプログラムが安全に進展しているこ とを確実にするために定期的に実行されなければならない.
この章では上記の 2 項と 3 項が検討される.加えて,フッ化物添加ミルク中および尿 中のフッ化物濃度の測定に関する簡潔なガイドラインが提供される.
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フッ化物添加ミルクの品質のモニタリングフッ化物添加ミルクのフッ化物濃度は,一般にフッ化物添加ミルク計画もしくは地域 実証研究の立案者の技術顧問活動を担当している地方保健衛生当局によって決定され る.以前の類似した多数の調査等からいくつかの要因,たとえばプログラムに参加して いる子どもの年齢範囲,24 時間のフッ化物添加ミルク摂取の頻度,ベースラインのフッ 化物の尿排出量研究から得られた結果,および類似の先行研究の経験等を考慮して決定 される.ほとんどの先行研究および現行のフッ化物添加ミルク研究において,ミルク中 のフッ化物の濃度は 2.0〜5.0 mgF/ の範囲である.
いったん「至適」フッ化物濃度が決められたら,酪農工場においてもっとも重要な品 質管理の手順は異なる生産単位からのサンプルのフッ化物濃度の監視である.目標とな るフッ化物濃度の値と比較して 5〜10%の範囲の変動は許容できると通常考えられてい る.「範囲外濃度」である生産単位に対してはその流通配布の前に,フッ化物が入って いないミルクで希釈するかまたは濃縮したフッ化ナトリウム溶液を加えるかの,いずれ かの方法で是正をしなければならない.酪農施設のミルク中フッ化物濃度があらかじめ 決められている値の範囲内であれば,生産後通常 24〜48 時間以内に消費されるので,
フッ化物濃度に関する他のチェックは不要に思われる.しかし,フッ化物添加超高温
(瞬間)殺菌ミルクの場合,生産から消費までの期間が比較的長期間(1〜2 カ月)に予 定されている場合は(無作為抽出されたサンプルを用いて)フッ化物濃度を再チェック することが望ましい.このように,必要な品質チェック数は製品の種類とその貯蔵寿命
(第 4 章 4‑4)ですでに議論された問題)に依存する.
粉末 MFP を添加したミルクが使われたチリのフッ化物添加ミルクプログラムでは,
品質管理過程は 2 段階で行われている.1 番目は,1 kg のビニール袋内および各袋間の フッ化物濃度の均質性の定期的な検査であり,2 番目は粉末状の製品にあらかじめ沸騰 処理した水道水を加えて作られたフッ化物添加液体ミルクからの頻回のサンプリングで ある.このように,いつでも飲める状態の製品のフッ化物濃度は厳密にモニタリングさ れる.繰り返しになるが目標値のあたりの 10%の変動は受け入れられる.
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生物学的モニタリングフッ化物はあらゆる食品成分の自然の構成要素であり,世界中の飲料水にさまざまな 量で存在している.このように,フッ化物の摂取様式と量は人々の間で広く変化する.
最適フッ化物摂取量は歯のフッ素症の発現と流行を最小限に抑えて,う蝕の効果的予防 を提供する.すべてのフッ化物供給源からの摂取されたフッ化物は,故意に,または意 図せずに摂取されるかどうかに関係なく主として尿中に排出されるので,尿中フッ化物
濃度の研究はフッ化物の摂取量を評価するために最適である(Marthaler,1999,1.3 節).とりわけ,これまでの研究は国家あるいは準国家という環境下でのう蝕予防のた めに地域ベースのフッ化物プログラムに関しての意志決定の基礎もまた提供する.
フッ化物の代謝に関するこれまでの研究(Whitford,1990,1996)から,今日,次 のことが確立されている.
胃からの吸収は即座に始まり,胃液の pH に反比例する.
健康な若年および中年成人の血漿中フッ化物濃度を上昇させ,1 あたりのマイク ロモルとして表現されるが(μmol/ ),数値としてはおおよそ 1 あたりのミリグ ラム(mg/ ,ppm)で表される過去数年間習慣的に摂取した飲料水中のフッ化物 濃度に等しい.
1 日のフッ化物の摂取量のおよそ 10〜20%は吸収されない.摂取されたフッ化物の およそ 50〜70%は若者および中年では摂取後 24 時間の間に尿を経由して排出され る,そして,残りのほぼすべては石灰化した組織とかかわっている(Whitford,
1996;Villa ら,2004).6〜7 歳より小さい子どもの場合,歯のフッ素症を発現す るリスクに晒されている人口区分を構成しており,1 日のフッ化物の摂取量のうち 尿中に排出される割合は,「部分的尿中フッ化物排出(FUFE)」と呼ばれており,
大 人 の 排 出 率 よ り 低 く 見 え る(Villa ら,1999,2000;Ketley と Lennon,2000,
2001;Haftenberger ら,2001;Franco ら 2005).
これらの関係に基づいて,住民の最近のフッ化物への総摂取量をモニタリングするた めのもっとも信頼できる手法は,血漿または尿でフッ化物レベルを決定する方法であ る.後者(尿による方法)は非侵襲性の手段である.地域を対象としたサーベイランス 研究において,尿中フッ化物排出量の評価は比較的簡単で,かつ幼児の毎日のフッ化物 への曝露を推定するための信頼できる手段として一般的に認められている.
1)尿採取の継続と質
可能ならいつでも 24 時間尿サンプルは得られなければならない.なぜなら 24 時間サ ンプルは食習慣,食事の時間帯および最大限のフッ化物の摂取量の時間帯から独立して おり影響を受けない.この種のサンプル収集において,24 時間にわたって排出される フッ化物の総量は効率よく計測され,信頼性の高い 24 時間のフッ化物摂取量の推定値 を提供する.
しかしながら,特定の状況では 24 時間全過程の尿を採取することは可能ではないか もしれない.そして,そのようにサンプルが不完全であるならば,得られる情報は信頼 性が低いであろう.対象となる住民のライフスタイルもしくは組織力や協力度のレベル から,むしろ 24 時間の推定値を得る代替的方法の選択が無難だという示唆がなされる かもしれない.こうした場合,非常に役に立つ報告(Marthaler,1999,第 3 節)があ
る.そこには「時間制限された」非常に短い時間の尿採取法で,いかにして 24 時間の フッ化物尿排出を推定するかの方法の詳細な事例が議論され提供されている.また,本 件に興味を持った読者は先行研究(Baez ら,2000)で 15 時間の尿採取法の典型的事例 を参考にできる.
検査者はしばしば尿量が非現実的なほど多いか,あるいは少ない個々の尿サンプルの 問題に直面する.表 6‑1の値は(Marthaler,1999,表 4)報告から抽出したもので,
正確性が疑わしいほど少量(もしくは大量)のサンプルを破棄する基準が示されてい る.
2)尿中フッ化物排出結果
疫学的視点からみて食品,飲料,歯磨剤飲込量,等々から直接フッ化物量を計測し フッ化物摂取の 1 日量として記録するのは実行が非常に難しい.そのため,24 時間の 間にわたって尿中に排出されるフッ化物量の計測または推定が,毎日のフッ化物曝露総 量のもっとも信頼できるマーカーであることが受け入れられている.
しかしながら,惹起される問題点はどのように 1 日の総フッ化物摂取量(TDFI)
(mg F/日)を推定するか,および,この値と 1 日のフッ化物投与量いわゆる「最適 フッ化物投与量範囲」(Burt,1992)と直接比較できるかということである.後者(1 日投与量)の計算は 1 日量が体重(mgF/kg/day)ごとに TDFI が分けられているの で,あらかじめ被験者の体重が測定されている場合に適用できる.「尿中フッ化物排出 量からいかにして TDFI を推定するか」は,尿中に排出されるフッ化物が摂取された フッ化物のある割合ならば答えることができるであろう.すなわち,調査によって年齢 群の FUFE が示されているので FUFE によって 24 時間に排出されるフッ化物の総量 の単純な割算で TDFI の評価が与えられる.
近年,幼児の FUFE 値の決定について述べている複数の調査が発表された(Villa ら,1999,2000;Ketley と Lennon,2000,2001; Haftenberger ら 2001;Franco ら,
表 6‑1 フッ化物曝露調査における尿サンプルを破棄する基準
下 限 標準値 上 限
尿量平均
年齢<6 歳(m /24 時間)
年齢≧6 歳(m /24 時間)
年齢<6 歳(m /1 時間)
年齢≧6 歳(m /1 時間)
尿中クレアチニン濃度 全年齢(mg/m )
140 200 5 9
0.1
500 1200 20 50
1
1200 3000 160 300
1.5
(Marthaler,1999,表 4)