• 検索結果がありません。

VBS 状態を固有状態とする S=1 長距離スピン鎖

ドキュメント内 S=1 Bilinear-Biquadratic (ページ 32-37)

3.2.1 導出過程の確認

中野の論文[43]は、(AKLT模型の一般化として)VBS状態を 固有状態 にもつ長距離相互作用を有する

S=1 1次元スピン模型(S=1長距離スピン鎖)を求めることを目的としている。(その結果出てくるS=1長

距離スピン鎖の一部が変形S=1 BLBQ鎖である)

そのために、中野の論文[43]では、まず、すべての長距離相互作用を有する1次元スピン模型を用意し (手順・1)、そこから、VBS状態が 固有状態 になるように長距離相互作用の結合定数の条件を求め、徐々 に結合定数の数を減らすということを行っている(手順・2)。そして、求まった長距離スピン鎖の中でも次 近接相互作用までに絞った1次元スピン模型を詳細に考察し、VBS状態を基底状態とする領域を報告して いる(手順・3)

3.2.2 結合定数の導出 [ 手順・ 1 、 2]

手順・1 まず、等方性ですべての長距離相互作用を有するS=1 1次元スピン模型HJ1,···,JN,K1,···,KN

を考える。

HJ1,···,JN,K1,···,KN =1 2

N i=1

N1 k=1

[JkSi·Si+k+Kk(Si·Si+k)2] (3.4) (ここで、Siは、サイトiにおけるS=1スピン演算子を表し、Nはサイト数である)

今、周期境界条件を与えるために結合定数にJNm=JmKNm=Kmを課す。

手順・2 次に、周期境界条件を有したこのS=1 1次元スピン模型HJk,Kk が、VBS状態を固有状態と して持つような結合定数の条件を導出する。

VBS状態を定義するため、各サイトに2つのS= 12スピンを置き、サイトiにおいて、S =12 スピンを 2i-1、2iに割り当てる。そうすると、VBS状態は

|Gi= Sym[m2m,2m+1i] (3.5)

となる。(ここで、Symは各サイトの対称化(3重項状態)を表し、mはサイト数すべての直積を表す)ま た、i,jiは、(ij− ↓ij)/

2*1で定義され、i番目とj番目のS=12スピンの1重項状態である*2。 今後の便宜のため、以下をあらかじめ定義しておく。

i,ji= Sym[2i2,2ji ⊗ |ν2i1,2j+1i ⊗m6=i1,j 2m,2m+1i] (3.6)

i,ji= Sym[2i4,2j+3i ⊗ |ν2i3,2j+2i ⊗ |ν2j+1,2i2i ⊗ |ν2j,2i1i

m6=i2,i1,j,j+12m,2m+1i] (3.7)

(ここで、i < jである)次に、以下の状態を考察しよう。

|i1, M1;i2, M2iα=|M1ii11⊗ |M1ii1⊗ |M2ii2⊗ |M2ii2+1

m6=i11,i1,i2,i2+1|0im, (3.8)

|i1, M1;i2, M2iβ=|M1ii12⊗ |M1ii11⊗ |M1ii1⊗ |M2ii2

⊗|M2ii2+1⊗ |M2ii2+2

m6=i12,i11,i1,i2,i2+1,i2+2|0im (3.9) (i1< i2である)ここで、|Miiはサイトiにおける(S=1の)1スピン状態を表し、Siz|Mii=M|Miiであ る。すると、αhi1,+1;i2,−1|Gi,βhi1,+1;i2,−1|Gi,αhi1,+1;i2,−1i,ji ,βhi1,+1;i2,−1i,ji の内積は

*1厳密には、(| ↑ii⊗ | ↓ij− | ↓ii⊗ | ↑ij)/ 2

*2詳細は22.3.2小節を参照。上記の記述は論文[43]に載っているもので、この章ではこの記述に従う

3.2 VBS状態を固有状態とするS=1長距離スピン鎖 21 消えることが分かる*3。また、αhi1,+1;i2,−1i,ji,βhi1,+1;i2,−1i,jiは、i=i1j=i2の時はゼロで はないが、それ以外はゼロになることも分かる*4

もし、VBS状態がS=1 1次元スピン模型HJk,Kk の固有状態であるなら、

βh1,+1; 1 +m,−1|HJk,Kk|Gi= 0 (3.10)  αh1,+1; 1 +m,−1|HJk,Kk|Gi= 0 (3.11) となる*5

計算により、

Si·Si+1|Gi=3

2|Gi+1

2i,i+1i, (3.13)

(Si·Si+1)2|Gi= 5

2|Gi −3

2i,i+1i, (3.14)

Si·Si+2|Gi= 1

2[|Gi − |αi+1,i+2i − |αi,i+1i+i,i+2i], (3.15) (Si·Si+2)2|Gi= 1

2[|Gi+i+1,i+2i+i,i+1i+i,i+2i], (3.16) Si·Si+l|Gi= 1

2[i+1,i+l1i − |αi+1,i+li − |αi,i+l1i+i,i+li],

(3.17) (Si·Si+l)2|Gi= 1

2[i+1,i+l1i+i+1,i+li+i,i+l1i+i,i+li] +i+1,i+l1i,

(3.18) (l 3である)となることがわかる。すると、式(3.11)、(3.18)からl 3でKl = 0となる。よって、

VBS状態が固有状態であるためには、双線形(bilinear)項のすべて結合定数(J1J2· · · , JN)と双2次 (biquadratic)項の最近接と次近接相互作用の結合定数(K1K2)が残ることとなる。

(こうして残った結合定数(J1J2· · ·, JNK1K2)をもつS=1 1次元スピン模型こそVBS状態を固有 状態とするS=1長距離スピン鎖HJ1,···,JN,K1,K2 である)

次に残った相互作用について考えてみると、m≥3という条件下での式(3.11)を考えることで、結合定 数が、

Jl+Jl+2=Jl+1 (l3)  (3.19)

となることがわかる。この系は周期境界条件を有しているので、式(3.19)は、J3 = J4 = · · · となる。

m= 1、m= 2において、式(3.11)から同様にして、

K2=−J2+J3, (3.20)

K1= (J14J2+ 3J3)/3 (3.21)

がそれぞれ得られる。

このようにして、J1J2J3を任意のパラメタとして、そして、K1K2Jl (l 4)がJ1J2J3に 依存するパラメタとして求まった。

(すなわち、VBS状態を固有状態とするS=1長距離スピン鎖HJ1,···,JN,K1,K2は3つのパラメタJ1J2J3 を決めることで残りのパラメタも(一意的に)決まるので、HJ1,···,JN,K1,K2 −→ HJ1,J2,J3となる)

*3詳細は付録C C.2.1小節を参照

*4付録C C.2.2小節を参照

*5|Giがハミルトニアン(式(3.4))の固有状態であれば、H|Gi=EG|Giとなるので、

βh1,+1; 1 +m,1|H|Gi=EG βh1,+1; 1 +m,1|Gi= 0 (3.12)

3.2.3 ハミルトニアンの分割

このようにして求まった結合定数の条件から、VBS状態を固有状態とするS=1長距離スピン鎖HJ1,J2,J3

を2つの部分に分けることが可能となる。

HJ1,J2,J3 =J3H˜0+ (J1−J3) ˜Hp (3.22) H˜0=∑

(i,j)

Si·Sj (3.23)

H˜p=∑

i

hi,i+1,i+2 (3.24)

hi,i+1,i+2=1

2(Si·Si+1+Si+1·Si+2) +14p

6 [(Si·Si+1)2+ (Si+1·Si+2)2]

+p[Si·Si+2(Si·Si+2)2] (3.25) (ここで、p= (J2−J3))/(J1−J3)である。そして、∑

(i,j)は、サイトij(6=i)のすべてのペアをとった ものである)この1次元スピン模型H˜0は、同じ結合定数を有する無限範囲の相互作用であり、VBS状態が この1次元スピン模型の固有状態であることは、自明である。

1次元スピン模型H˜pは、VBS状態を固有状態に持ち、また、その固有値が[(2+10p)3 ]Nになることが 知られている。

次の小節では、この次近接相互作用までを有するハミルトニアンH˜p について、VBS状態を基底状態に もつパラメタの範囲を考察する。

3.2.4 ハミルトニアン H ˜

p

と VBS 状態 [ 手順・ 3]

手順・31次元スピン模型H˜pがVBS状態を基底状態とするパラメタ領域を考察する。

論文[43]では、16個までの有限のサイト数までで数値計算プログラムKOBEPACKを用いて*6数値対角 化を行い、VBS状態が基底状態となる領域を導出している(図3.1、3.2参照)。その結果、熱力学極限にお いては

pdown' −0.34 pup'0.32 (3.26)

となることが分かった。

これは、かつてLangeとその共同研究者が研究した結果14 ≤p≤ 14 [44]よりもより大きい領域である ことが分かった。(図3.1、図3.2の横線はLangeが計算した安定な領域|p|=14 を表している)

3.2.5 変形 S=1 Bilinear-Biquadratic 鎖の導出

ここまでで、中野の論文[43]の内容を述べてきた。変形S=1 BLBQ鎖は、本章3.2.3小節でVBS状態 を固有状態とするS=1長距離スピン鎖HJ1,J2,J3 を2つの部分に分けた時の1次元スピン模型H˜pのこと である。

ここまでの内容を見直せば、変形S=1 BLBQ鎖(1次元スピン模型H˜p)が前節で述べた3つの特徴を有 していることがわかるだろう。

次章では、いよいよ本論文の研究目的である変形S=1 BLBQ鎖における波数の振る舞いを解析する。

*6KOBEPACKのついての詳細は付録Aを参照

3.2 VBS状態を固有状態とするS=1長距離スピン鎖 23

|-pdown|

|pup|

図3.1 [43]より引用 各サイトNごとのVBS状態が基底状態となるパラメタpの上限pupと下限 pdownを絶対値で表示

0.2 0.3 0.4

0 0.1 0.2

-Pdown,Pup

1/N

|-Pdown|

|Pup|

図3.2 確認のためにKOBEPACKを用いて図3.1と同様の計算を行った数値解析結果

25

第 4 章

整合・非整合遷移

これまで、第2章でHaldaneの予想した基底状態の性質を有する1次元スピン模型(AKLT模型)と基底 状態(VBS状態)について述べ、第3 章でその基底状態(VBS状態)を固有状態に持つ、変形S=1 BLBQ 鎖(式(3.1)、(3.2))について導出した。

本章では、第2章で説明したS=1 Bilinear-Biquadratic鎖(以後、S=1 BLBQ鎖)内のHaldane相内 の整合・非整合遷移について着目し、非整合領域での波数の導出法を変形S=1 BlBQ鎖に適用した解析結 果と考察を述べる。

ドキュメント内 S=1 Bilinear-Biquadratic (ページ 32-37)

関連したドキュメント