4.3 変形 S=1 Bilinear-Biquadratic 鎖における波数の導出
4.3.1 変形 S=1 Bilinear-Biquadratic 鎖を解析する動機
なぜ、この変形S=1 BLBQ鎖にこの導出法を適用させるかという動機を述べるために、この1次元ス ピン模型の持つ特徴について考える。
既に3章3.1節であげたように、変形S=1 BLBQ鎖には、
• AKLT模型の基底状態であるVBS状態を固有状態にもつ
• 次近接相互作用を有する
• 模型のパラメタpがおよそ−0.34≤p≤0.32の範囲で、VBS状態を基底状態にもつ という特徴を持っている。
この中で、特に注目したいのは一定の範囲にVBS状態を基底状態にもつという点である。
図4.1を見直すとわかるように、S=1 BLBQ鎖ではパラメタαがVBS状態を基底状態とするAKLT 点を境にして整合領域と非整合領域が分かれている。これだと、AKLT点という1点を境にした非整合領 域の波数の振る舞いしか見えてこない。それに対して、変形S=1 BLBQ鎖は、VBS状態を基底状態とす るパラメタ領域が一定の範囲に広がっている。そのため、このスピン模型のパラメタ周辺を考えれば、S=1 BLBQ鎖のパラメタαのただ1点(AKLT点)からはじまる非整合領域の波数の振る舞いだけではなく、広 がった領域からはじまる非整合領域の波数の振る舞いを見ることができるのではないかと考えた。これが、
変形S=1 BLBQ鎖にこの導出法を適用させようとする動機である。
4.3.2 1 次元スピン模型 H
p,β波数の解析は、パラメタpをもつ変形S=1 BLBQ鎖(式(3.1)、(3.2))に対して、パラメタβ をもつ項 β∑
i 1
2(Si·Si+1+Si+1·Si+2)を加えた1次元スピン模型Hp,β について行う。
Hp,β =∑
i
[
hi,i+1,i+2+1
2β (Si·Si+1+Si+1·Si+2) ]
(4.11)
=∑
i
[1
2(1 +β)(Si·Si+1+Si+1·Si+2) +1−4p
6 [(Si·Si+1)2+ (Si+1·Si+2)2] +p[Si·Si+2−(Si·Si+2)2]]
(4.12) 次小節で、この1次元スピン模型Hp,β がもつ特徴についてp、βの2次元パラメタ空間で考えていく。
4.3.3 1 次元スピン模型 H
p,βのもつ特徴
変形S=1 BLBQ鎖の特徴については、すでに4章4.3.1小節で述べている
(A) 変形S=1 BLBQ鎖はパラメタpがおよそ−0.34≤p≤0.32の範囲で、VBS状態を基底状態 にもつ
があるが、そのことに関連してもう1つ重要な特徴をあげておく。それは、
(A0) 変形S=1 BLBQ鎖はパラメタp= 0でAKLT模型と一致する。
ということである*5。
そして、1次元スピン模型Hp,β については、
(B) 1次元スピン模型Hp,β はβ軸上(p= 0の線上)でS=1 BLBQ鎖に比例する形で一致する。
という特徴があることがわかる*6。スピン模型において重要なのは、各スピンの相互作用の仕方であり、比 例する形になっているということは、S=1 BLBQ鎖の相図をそのまま適用することができるということで ある*7。さらに、このことに関してもう少し詳しく言うと、
(C) 1次元スピン模型Hp,β はβ軸上(p= 0の線上)−1 < β≤0の範囲において、パラメタαが AKLT点より大きい領域(13 ≤α)のS=1 BLBQ鎖と比例する形で一致している。さらにこの範囲 では、パラメタβが負に向かうことが、S=1 BLBQ鎖のパラメタαをAKLT点(α= 13)から正の 方向へもっていくことに対応している*8。
ここまでの特徴をまとめたものを図4.4に載せる。
この図4.4を見れば、本章4.3.1節で述べた動機と合わせて、解析を行いたい範囲が図4.5の斜線部とい うことになる。
*5詳細は付録C C.3.1小節を参照
*6詳細は付録C C.3.2小節を参照
*7例えば、2章2.3.2小節 でのAKLT模型 HAKLT =X
i
1
2Si·Si+1+1
6(Si·Si+1)2+1
3 (4.13)
と本章2.4節 でのAKLT模型
HAKLT =X
i
Si·Si+1+1
3(Si·Si+1)2 (4.14)
は定数項や比例係数がついてはいるがどちらも模型の構造は同じであり、同じ性質を有する
*8詳細は付録C C.3.3小節を参照
4.3 変形S=1 Bilinear-Biquadratic鎖における波数の導出 31
S=1 BLBQ 鎖の相図
t
-1 0 1
3 1
Dimer
Haldane
C IC
Trimer
α
-0 β -1
6p
(A) 一定の範囲に
Hp,0の基底状態がVBS状態
(A0) p= 0で AKLT模型と一致 EEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE
(B) β軸上で H0,β がS=1 BLBQ鎖
に比例する形で一致
@
(C) β軸上−1< β≤0の範囲で 負に向かうことはS=1 BLBQ鎖の
αをAKLT点から 正に向かうことに対応
@ (C)
図4.4 1次元スピン模型Hp,βの特徴
-0 β -1
6p
-0.34 E 0.32
EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E EE EE EE EE EE EE EE EE E
この領域で波数の解析法を適用
図4.5 1次元スピン模型Hp,βの波数の解析法を適用する範囲