2. 中南米の主要鉄鋼企業動向
2.4. Usiminas
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する鉄鋼大手によるM&Aで鉄鋼業界のグローバルな規模での再編が進む中、Usiminasとの 関係強化を通じて、これに対応しようとする新日鐵の意図がみてとれる。
その後、新日鐵は2009年1月に、Usiminasの株式の追加取得を発表した。現在Usiminas の株主であるValeが株式の5.9%を売却することを決めており、この半分以上を取得して、出 資比率を30%近くにまで高める20。
Usiminas グループは、Usiminas本体と15の子会社から構成される。主要子会社は、100%
出資のCosipaと、Usiminasが79%を出資する(残21%は新日鐵)のUnigalである。
元国営のCosipaは1993年に民営化され、1999年にUsiminasの傘下に入り、2005年には Usiminasの100%子会社となっている。Unigalは自動車用の溶融亜鉛メッキ鋼板を生産する ため、1999年、新日鐵と合弁で設立した会社である。
現在の主力生産拠点は、イパチンガ製鉄所と Cosipa のクバトン製鉄所である。両製鉄所を 合わせて、Usiminas System と呼ばれるラテンアメリカ最大の鋼板製造コンプレックスを構 成する。2007年の粗鋼生産量は、イパチンガ470万トン、クバトン420万トン、合わせて870 万トンであった(前年比1%減)。また、熱延・冷延のコイル・鋼板、および厚板を主とした Usiminas Systemの鉄鋼販売量は800万トン(前年比0.6%減)で、うち77%が国内市場向 けであった。
国内では自動車および自動車部品への販売量が 32%と圧倒的に多く、そのマーケットシェ アは 60%。厚板を使う造船への販売量は 5%で、マーケットシェアは35%。マーケットシェ アでみると、高いのは造船100%、産業機械97%、農業機械97%、大口径鋼管88%、電気機 械73%などである。
2007年のUsiminasの総売上高は138億レアルで、前年比11.4%増となった。国内市場へ
の売上を 25%伸ばしたことが数字に大きく反映されている。一方、輸出は、販売が国内へシ
フトしたことと、ドル安の影響により、27%落ち込んだ。EBITDAは50億レアル(前年比14.5%
増)、連結総売上高は32億レアル(前年比26%増)であった。
2008年1~9月の粗鋼生産量は620万トン(前年同期比3%減)、販売量は570万トン(前
年同期比5%減)。わずかながらマイナスとなった理由は、クバトン製鉄所の設備改良工事のた
め、生産ペースが落ちたことによる。
国内販売の輸出に対する割合は、国内市場での鋼板の需要が高まったことで、87%とさらに シェアを増している(前年同期77%)。2008年1~9月の販売量は570万トン(前年同期比5%
減)、EBITDAは46億レアル(前年比22%増)であった。
¾ 主要子会社・関連会社
製鉄所:Cosipa Cubatao(100%), Ternium(14.25%), Unigal (79%)
インフラ:Usiminas Mechanica(鉄骨建造物、製鉄機器製造販売)(99.97%),Usiparts(99.09%)
20 2009年1月30日、日本経済新聞
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ロジスティクス:MRS(11.13%), Porto TPPM(33.33%), Port TMPC(100%)
販売およびサービス: Fasal (20%), Rio Negro (ブラジル三菱商事との合弁、鋼材加工販売)
(64%), Usiroll (50%), Usial (98%)
¾ 主要製品21
<鋼板>熱延シート・コイル、冷延シート・コイル、厚中板、<二次製品>亜鉛メッキシート・
コイル(溶融・電気)、合金鋼、<半製品>スラブ
¾ 主要設備22
コークス炉(日産4,750トン)、焼結炉(日産17,700万トン)、高炉:2基(日産2,150トン)、
1基(日産8,200トン)、転炉2基(年産100万トン/360万トン)、LH2基(200万トン)、
RH脱ガス設備1基、連続鋳造4基(計470万トン)、ホットストリップミル、コールドスト リップミル、電気亜鉛メッキライン(36万トン)、溶融亜鉛メッキライン(40万トン)など。
¾ 企業業績
主要財務諸表(連結)
2008年 2007年
売上高(百万レアル) 15,707 13,825
EBITDA 6,008 5,003
EBITDA率 38.3% 36.2%
税引後利益 3,224 3,172
総資産 27,580 20,699
株主資本 15,029 12,474
負債 12,551 8,225
投資額(鉱山買収を含む) 2,100 901
販売量(千トン) 7,176 7,990
(出所)Usiminas Earnings Report 2008
21 Metal Bulletin2009
22 Metal Bulletin2009
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¾ 買収・提携・事業拡大動向
ブラジルをはじめとした南米においては、自動車生産や石油・天然ガス等のエネルギー開発 が拡大しており、高級鋼を中心に鋼材需要が伸びていくと見込まれ、これに対応すべく、2007 年8月、Usiminasは、前表のような拡張計画を発表している。これにより、2011年には粗鋼 生産が新日鐵の約半分近くに当たる年産1,400万トンへと拡大する見通しである。
イパチンガ製鉄所
厚板工場の生産能力増強
2010年央・稼働
…現状100万トン/年を、150万トン/年に 予定
(背景)エネルギー分野を中心とした需要増加への対応
クバトン製鉄所
最新鋭の熱延工場の新設
2011年4月・稼 働予定
…第一期230万トン/年(拡張時最大能力470万トン/
年)
(背景)エネルギー分野向け高級鋼への対応
Unigal
第2CGLの建設
2010年末・稼働 予定
…55万トン/年(第1CGLは48万トン/年)
(背景)ブラジル、アルゼンチンの自動車生産拡大への対 応
新規
新規鉄源製鉄所の建設(クバトン製鉄所隣接地が候 補)
…300万トン/年
(背景)高級半製品生産を目的とする
また、Usiminasは、鉄鉱石資源の獲得戦略にも積極的である。2008年2月には、Mendes Nogueira家から、J. Mendes鉄鉱山を19億ドルで買収した。同時に、SOMISA Siderurgica Oeste de Minas LtdaとGlobal Mineracao Ltda.の2社も買い取った23。
この買収により、鉄鉱石の自己調達能力を高め、他社への資源依存度を下げることが狙いで ある。Usiminasは750百万ドルを投資して、J. Mendes鉱山の生産能力の向上と、輸送イン フラの拡充を図り、2013年には、同鉱山から29百万トンの鉄鉱石を調達する計画である。J・
メンデス鉱山の買収により、Usiminas は一部の鉄鉱石を輸出に充てるとの報道もあるが24、 基本的には自己調達能力拡充のための投資であり、現在、大部分の鉄鉱石を調達しているVale との関係上、これ以上の鉱山の買収や輸出への業容拡大の可能性は考えにくい。
23 Feb 18, 2008 Thomson Financial
24 International Herald Tribune 2008/3/14
(http://www.iht.com/articles/ap/2008/03/14/business/LA-FIN-Brazil-Usiminas.php)
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