0 200 400 800
3.0 4.5
3.5 4.0
190 180
150 160 170
600
D is ta nc e be tw ee n punc he s (m m ) P re ss ur e o n lo w er punc h (k g)
全にガラス転移が完了したことが示唆された。ガラス転移が完全に進行した液 状の試料は、テフロンシートや臼の隙間を埋めることで臼内を密閉状態にし、
昇温に伴う気体の膨張が臼内圧を高めたと考えた。この考察は、650 Jで超音波 打錠したガラス状試料がテフロンシートの隙間を埋めていたという観察結果と 一致した。
Figure 20. Appearances of PVPVA ultrasound compacted by 280, 400, 550 and 650 J, respectively.
以上の検討結果から、高分子試料の超音波打錠時において、臼内圧が急上昇 する時点での照射エネルギーが試料の完全な状態変化に必要なエネルギーであ ることが判明した。超音波打錠工程において、臼内圧が急上昇する時点の照射 エネルギーをERIP (Energy at Rapidly Increased Point:ERIP) と定義した。従来の 超音波打錠工程においては、任意の照射エネルギー値を設定し、外観変化から 条件を最適化していく必要があったが、今後は、本知見により見出されたERIP 値を指標とすることで、高分子を状態変化させるエネルギー値を適切に設定す ることが可能となった。
2-3-2. 超音波打錠工程における試料のガラス転移点の関与
各高分子試料について、完全にガラス転移が完了する時の照射エネルギーに ついて調べた。PVPVAと同様に、各試料の超音波打錠を行い、臼内圧が急上昇 した時点での照射エネルギーをERIPとして求めた。Table 3に、本実験に用いた 高分子試料のERIP値を示した。試料の粒子径が、打錠工程中において圧縮力の 伝導に及ぼす影響について報告されているため61、全ての高分子試料を106~180 μmに分画して粒子径を揃えた。超音波打錠工程モニタリングの結果、全ての試 料において圧縮後ガラス転移が起こるまでの圧力は約170 kgとほぼ同一であり、
試料間で打錠工程による影響の差は小さいと考えられた。しかしながら、各試 料のERIP値はそれぞれ異なる値を示しており、打錠工程以外の要因が関係して いると考えられた。
Table 3. ERIP values (J) of polymer samples. The error bars represent standard deviation of n = 6.
PVP90 PVP30 PVPVA Kollicoat® IR
Kollidon®
SR Soluplus® 1012 20 882 24 587 20 604 20 397 39 510 35
一般的に高分子試料は、昇温過程においてガラス状態から液状態へと転移が 起こるガラス転移点を持ち、ガラス転移前後で試料の形状や流動性が大きく変 化する。ERIP値とは試料のガラス転移を完了させるために必要な照射エネルギ ーであるため、各試料のガラス転移点を評価する必要があると考えた。超音波 打錠工程におけるガラス転移点の関与を調べるため、各試料のガラス転移点を DSC で評価した。高分子に含まれる水が可塑剤として働き、ガラス転移点を下 げることは広く知られているため62-64、各試料について DSCで昇温測定後、直 ちに冷却し引き続き再測定を行った。Table 4に、DSCの初回測定と再測定で得 られた各試料のガラス転移点を示す。初回測定時と再測定時では、全ての試料
定時のガラス転移点の差が小さかった。これらの試料については、親水性高分 子の中では比較的吸湿性が低いことが報告されており65-69、初回測定時と再測定 時のガラス転移点の差が小さいことは低吸湿性に起因していると考えられた。
また、Kollidon® SR とSoluplus®は再測定時に比較的低いガラス転移点を示した ことから、熱熔融法で固体分散体を調製する際に低温処理での調製が可能であ ると考えられた。
Table 4. Glass transition temperatures (C) on first and second scans. The error bars represent standard deviation of n = 3.
First scan Second scan
PVP90 104.9 3.3 173.0 0.4
PVP30 107.3 0.9 155.8 0.4
PVPVA 47.1 0.5 112.1 15.8
Kollicoat®IR 45.4 0.3 152.1 0.2
Kollidon®SR 31.7 0.9 39.3 1.2
Soluplus® 49.8 0.7 64.3 4.1
熱分析によって求めた試料のガラス転移点と超音波打錠モニタリングで観察 されたERIP値との関係について評価した。Figure 21に、試料のERIP値を初回 測定時のガラス転移点に対しプロットした結果を示す。本実験に用いた高分子 試料のERIP値は初回測定時のガラス転移点と良好な相関を示した(R2=0.9192)。
Figure 21. Correlation between ERIP value (n = 6) and glass transition
temperature (n = 3) on first scan. The error bars represent standard deviation.
Figure 22では、再測定時に得られた試料固有のガラス転移点とERIP値とを比
較したが、相関性は良好でなかった(R2=0.7555)。以上の結果から、DSC測定 と同様に超音波打錠工程中においても、試料に含まれる水はガラス転移点に影 響しており、水を可塑剤として用いることで高分子試料のガラス転移を制御で きることが示された。