53
54
Figure 4-3 適用結果(SWOT matrix)
S1
カスタマイズレベルが基本だが,最近 はカートPOSの開発で広島の企業と
やっている
3 W1 PSS開発の研修はない 1
S2 製品販売の収益は多い 3 W2
PSS化について大半の従業員は考えて
いない 1
4 W3部署横断チームはなし,基本は製品主
体 1
5 W4
メンテナンス等を行う研修や人材がい るが,PSS開発の人材がいない 2
O1
原料やリソースに関わる市場では,人件 費が上がっているが,それ以外は横這い 5
O2 収益の魅力は,シェア率No.1の実績の通
り大きい 4
O3
代替製品は個人店舗(もしくは,ユニク ロ)対象としたら,タブレットPOS,
ノートパソコン等
4
O4
社会的・文化的なトレンド:人手不足
(コンビ二夜間営業)消費者,顧客の多 様化
3
O5
制度・規則的なトレンド:消費税とキャ シュレス,(個人情報保護 5
O6 買い手の交渉力 4
O7 競合他社はNEC富士通,シェア率No.1 3
T1 経済インフラは変わらないず,可もなく
不可もなし 2
T2
資本市場の状況は5年以内ならとてもい いが,その後は分からない 1 T3 グローバル市場の状況:中国経済次第
(下がり気味),イギリスのEU脱退 0 T4 ニーズと要求:ニーズ:人手不足解決,
人件費削減 2
T5
市場セグメント成長:POS市場は人口に 現象に伴って下がっている 1
T6 市場の問題:無人店舗系,RFID,
Amazon等今までやってない企業の動き 2
T7
経済的なトレンド:落ち着いてきてはい る,中国の景気後退の状況次第 1
T8
技術的なトレンド:画像認識(商品や人 等を認識),センシング(情報取得),
全体含んでAI
2
T9 売り手の交渉力 2
T10
代替製品は個人店舗(もしくは,ユニク ロ)対象としたら,タブレットPOS,
ノートパソコン等
2
T11
新規参入者の個人店舗(もしくは,ユニ クロ)対象としたら,タブレットPOS,
ノートパソコン等
2
Threat S-T 戦略目標 W-T 戦略目標
Strong Weakness
Opportunity S-O戦略目標 W-O 戦略目標
シェア率No.1を活かして顧客参画の共同設 計を行う
イノベーション S2,O7
収益を開発費にし,人材不足等の社会的問 題を解決するPSSを開発する:
イノベーション S5,O4
コンサルティングや情報を活用したサービス を開発や提供出来る人材を育成もしくは,新
たに雇用する 人材リソース W1,W2,O4
製品部分に特化してPSS部分は パートナーに任せる
オペレーションマネジメント W2,W3,W4,T6,
コンサルティングや情報を活用したサービス開 発や提供出来る部門の設立 W1,W4,O4 組織変革
組織方針で「ハードからの脱却」し代替品
(タブレット等)とも共存できるシステムを イノベーション W1,W2,O4
情報を活用したサービスや付加価値のある製品 サービス(コンサルティング等)を提供する
イノベーション W1,W2,O4
CRMの強化を行う 顧客視点 S3,T3,T7
収益を開発費にし,人材不足等の社会的問 題を解決するPSSを開発する
イノベーション S5,T3,T6
市場の問題に対応している パートナーを組む
オペレーションマネジメント S5,T6
実証実験ベースの顧客とのアジャイル的な 開発を行う
顧客視点 S1,T4
料金体系を「使用率に合わせた料金」等,
より顧客満足度が向上するものへ見直す オペレーションマネジメント S2,T4
Point of Xの製品サービスを開発を顧客と 共創で行う
顧客視点 S2,S5,T4,T8
55
本章のまとめ
本節では,提案手法を実際のPSS設計に適用し,その結果について述べた.
第 2 節では,POS システムをコア製品とする事業を対象とした事例とその適用つい て説明した.
第3節では提案手法への適用結果ついて述べた.具体的には,POSシステムにおける 市場の外部環境と自社の内部能力の分析を行い,その結果に基づき策定した戦略目標に ついて説明した.
56
57
考察
はじめに ... 58 提案手法の有効性 ... 59 企業状況の分析支援の有用性 ... 59 戦略目標策定支援の有用性 ... 60 提案手法の課題と解決策に関する考察 ... 61 企業情報の調査に関する課題点とその解決策に関する考察 ... 61 戦略目標カテゴリに関する課題点とその解決策に関する考察 ... 62 戦略目標策定に関する課題点とその解決策に関する考察 ... 62 提案手法の応用性に関する考察 ... 64 本章のまとめ ... 65
58
はじめに
本章では,第4章において述べた,実際に提案手法に適用した結果に基づき,提案手 法の有効性と課題について考察する.
59
提案手法の有効性
本節では,4章で述べた事例検証の結果を踏まえて,提案手法の有効性について説明 する.
企業状況の分析支援の有用性
提案手法による企業状況の分析の有用性を考察する.既存の SWOT 分析では,サー ビス化の観点を考慮しておらず,分析項目も詳細に展開されていないため,サービス化 に係る企業状況を分析するためには,分析者がサービス化に関する詳細な知識を持ち合 わせる必要がある.一方で提案手法は,サービス化に係る企業状況の構成要素を明確化 し,詳細な分析項目へ展開したことで,分析者がサービス化に係る専門知識を有せずと も分析可能とした.実際に実務家からも,「サービス化に関する専門知識が無くとも分 析が可能である」との評価を実務者の見解として獲得した.
また,サービス化に係る専門知識を有せずとも分析可能としたことで,戦略目標策定 においても同様に,分析者がサービス化の知識を有せずとも自社の内部能力と外部環境 を考慮した戦略目標の策定が可能となった.本検証では,例えば,「収益を開発費にし,
人材不足等の社会的問題を解決するPSSを開発する」や「コンサルティングや情報活用 したサービスを開発,提供出来る人材育成,や新たに獲得する」等の企業状況の考慮さ れた戦略目標が策定され,また,実際に本手法を使用した実務家からも「企業状況の分 析結果に基づいた戦略目標の策定が行えた」という意見が寄せられた.
60
戦略目標策定支援の有用性
戦略目標策定手法の有用性を考察する.本手法で策定する戦略目標は,企業がサービ ス化を実施する上での方針であり,企業の状況に応じた具体的な戦略目標の策定を重視 している.一方で既存手法は,戦略の大まかな方向性の把握支援に留まっており,戦略 目標の具体化は十分でない.本研究は戦略目標カテゴリを設けることにより,策定する 戦略目標の観点を明確化し,より具体化することを可能とした.事例適用では,「POS システムから得られる顧客情報に基づくコンサルティング」に関して,整備した戦略目 標カテゴリから指針を獲得し,「人材リソース」,「組織改革」,「イノベーション」の3 つの観点の戦略目標が策定された(Table 4-1).
また,実際に策定された戦略目標の具体性に関して,実務家から「本手法によって策 定された戦略目標は POS システムにおける企業の実情が十分に考慮されており,サー ビス化を実施する上での方針として実際に活用可能である」との評価が寄せられたこと から,本手法によって策定される戦略目標は実際のサービス化に活用可能な水準の具体 性を伴うと判断できる.
さらに,戦略目標の観点が明確化されることで,分析者間での認識の共通化が容易と なる.また,戦略目標カテゴリは,観点に対応した策定されうる戦略目標の例を伴って いるため,サービス化戦略目標策定の指針となり,分析者の思考の表出化や分析者間で の議論の促進の効果も考えられる.
以上より,本研究の提案手法は,4.4.2 項で述べた 2 つの観点に対する一定水準の有 効性を有している.これはつまり,本研究の目的である
「企業状況を考慮したサービス化戦略策定手法の提案」
を達成したことを示すものである.
61
提案手法の課題と解決策に関する考察
企業情報の調査に関する課題点とその解決策に関する考察
本手法では,分析に先立って参照する企業情報の調査を行う必要がある.しかしなが ら,企業情報の調査は容易ではなく,特に競合企業に関する情報は,インターネット等 による公開情報が主な調査先となる.その範囲を超えての調査は,自社内で実施する場 合多大な時間と労力を必要とし,専門機関への外注の場合,時間の経費を要する.また,
その時間や労力,費用を費やしたとしても本手法が必要とする情報を全て収集すことは 困難である.実際に本検証においても,自社,競合他社ともに,一部の企業情報の調査 を断念した.
企業情報の調査範囲・調査手法に係るこの問題の解決手段として,必要となる情報の 再検討分析におけると評価基準の明確化とを行う必要がある.例えば,競合他社におけ る企業情報の調査範囲をその企業のアニュアルレポートに限定する等である.しかしな がら,調査範囲の限定は,調査範囲外に係る分析項目において競合他社との比較によっ て相対的な評価を不可能する.そのため,分析における評価基準の再検討が必要となる.
本手法において,調査した情報を基にした分析の評価基準は明確化されておらず,分析 者の主観に委ねるものであるため,その分析の支援のために多くの企業情報を必要とし ている.そこで,限定した調査範囲内の情報においては,例えば,他社と比較して20%
以上高い場合は,評価が5段階中5となるような定量的な基準を定める方法がある.ま た,調査範囲外においても同様に,例えば,「部署横断チーム」の分析項目に関してな ら,「部署横断チームに関して,企業は何もしていない」場合は評価1,「実際に機能し ておりその成果がある」場合は評価5,等明確な基準を設けることで,競合他社の情報 や分析の主観を伴わない分析が可能となり,企業情報の調査における労力も軽減される.