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本節では,第一原理分子動力学法を用いて,SiC 結晶の格子定数や原子座標に関する構 造最適化を実施する.第1章で述べたように,SiCには数多くの多形構造が存在する.デ バイス応用の観点から,4H-SiC, 6H-SiC, 3C-SiC構造が注目されており,本研究においても これらの構造を研究対象とした.4H-SiC,6H-SiCおよび3C-SiC結晶構造を Fig. 3.2に示 す.4H-SiCと6H-SiCは六方晶系,空間群P63mcに帰属され[10,11],3C-SiCは立方晶系,

空間群F-43mに属する[12].

構造最適化で使用した入力データを,Table 3.1に示す. k点メッシュは4H-SiC,6H-SiC

および3C-SiCに対して,それぞれ7×7×2,9×9×2,6×6×6とした.構造最適化計算では,

格子定数と原子座標を可変として最適化した.平面波のカットオフエネルギーは,すべて のモデルで1000 eVとした.

Table 3.1からわかるように,4H-SiCの構造最適化後の格子定数はa = 0.3084, c = 1.0089

nmであり,最適化前と比較すると,格子定数がわずか0.06%程度増加するに過ぎなかった.

6H-SiCおよび3C-SiCについても,格子定数の変化は

0.1%以内であることがわかる.4H-SiC,6H-SiCおよび3C-SiCのエネルギーバンド図を,Fig. 3.3に示す.Jiangaら[13]は,

2H-SiC,4H-SiC,6H-SiCおよび3C-SiCに関するエネルギーバンド計算を実施した.彼らは,

計算コードとして CASTEP,交換相関相互作用として局所密度近似(Local Density Approximation:LDA),Monkhorst-Pack形式におけるk点サンプリング数は54としている.

本計算で得られた4H-SiC,6H-SiCおよび3C-SiCに関するエネルギーバンド図は,Jianga らの結果とよく一致している.4H-SiC,6H-SiCにおいては価電子帯の頂点はG点に,伝導 帯の底はM点に位置している.3H-SiCは,価電子帯の頂上はG点,伝導帯の底はX点に ある.したがって,これらの3種類のSiC結晶はいずれも間接遷移型半導体であることが 明らかである.エネルギーバンドギャップは,それぞれ3C-SiC, 4H-SiC, 6H-SiCの順に,

1.445,2.262,2.172 eVであった.しかしながら,これらの計算で得られた値は,いずれも,

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実験値3.27 eV[14]と比較して小さな値である.このことは,バンドギャップ問題としてよ

く知られており,密度汎関数理論が基底状態に関する理論であることに由来する.即ち,

半導体物質の価電子帯は密度汎関数理論によって正確に記述することができるが,伝導帯 のエネルギー準位は励起状態であるため,密度汎関数理論の範疇を越えている.交換相関 関数としてLDAやGGA法を用いているためであり,ほかの物質でも例外なく同様の結果 が報告されている.

Fig. 3.2 The unit cell structure of (a) 4H-, (b) 6H-, (c) 3C-SiC.

(a) (b) (c)

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Table 3.1 Calculated parameters and coodinates of the atoms in SiC using CASTEP. Atomic position are given in relative units of the unit cell.

Exprimental parameter Space

group

Lattice constant (nm, °) Atomic position (x,y,z, α, β, γ) Si (x,y,z) C (x,y,z) 4H-SiC

[10]

P63MC 0.3081, 0.3081, 1.0061, 90, 90, 120

0, 0, 0.1875 0, 0, 0 0.3333,

0.6667, 0.4375

0.3333, 0.6667, 0.25 6H-SiC

[11]

P63MC 0.30817, 0.30817, 1.51183, 90, 90, 120

0, 0, 0 0, 0, 0.125 0.3333,

0.6667, 0.1667

0.3333, 0.6667, 0.2917 0.3333,

0.6667, 0.8333

0.3333, 0.6667, 0.9583 3C-SiC

[12]

F-43m 0.436, 0.436, 0.436, 90, 90, 90

0, 0, 0 0.25, 0.25, 0.25 Calcurated parameter

Space group

Lattice constant (nm, °) Atomic position (x,y,z, α, β, γ) Si (x,y,z) C (x,y,z) 4H-SiC P63MC 0.3084, 0.3084, 1.0089,

90, 90, 120

0, 0, 0.1878 0, 0, 0 0.3333,

0.6667, 0.4377

0.3333, 0.6667, 0.2494 6H-SiC P63MC 0.3082, 0.3082, 1.5118,

90, 90, 120

0, 0, 0 0, 0, 0.125 0.3333,

0.6667, 0.1667

0.3333, 0.6667, 0.2918 0.3333,

0.6667, 0.8333

0.3333, 0.6667, 0.9584 3C-SiC F-43m 0.4363, 0.4363, 0.4363,

90, 90, 90

0, 0, 0 0.25, 0.25, 0.25

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Fig. 3.3 Energy band structure for (a) 4H-, (b) 6H-, (c) 3C-SiC.

(a)

(b)

(c)

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次に,構造最適化後の4H-SiCについて全状態密度(Total density of states: TDOS)とSi原 子および C原子の部分状態密度(Partial density of state: PDOS)をそれぞれ Fig. 3.4 (a), (b), (c) に示す.DOS図では,価電子帯の頂上をエネルギーゼロとした.価電子帯は2つに分 裂しており,上部価電子帯は-8.5 ~ 0eV,下部価電子帯は-10.1 ~ -15.4eVに位置する.TDOS とPDOSの比較から,上部価電子帯ではC 2p軌道が優勢であり,下部価電子帯ではC 2s 軌道が優勢であることがわかる.また,両価電子帯においてSi 3s軌道やSi 3p軌道とよく 混成していることが明らかである.一方,伝導帯では,Si 3s, 3p軌道が優勢であり,C 2s, 2p軌道とよく混成している.Table 3.2で,本計算で得られた4H-SiCのバンドギャップ,

価電子帯幅,格子定数を,他の文献値と比較している.最適化された格子定数やバンドギ ャップだけでなく,価電子幅も文献値とよく一致していることがわかる.

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Fig. 3.4 Total DOS of 4H-SiC bulk (a), and PDOS of Si (b) and C (c).

(a)

(b)

(c)

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Table 3.2 Lattice constant and energy properties of 4H-SiC crystal.

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