第 6 章 結論 80
B.2 Seidel 収差係数
B.2.4 Seidel 収差
B.2Seidel 収差係数 第B章 光学
(RT2の係数) = {
Q2∆ ( 1
N s )
+ Ψ }
h2¯h+ 2Q∆
( 1 N s
) h¯h−∆
( 1 N2
) Q
= {
Q2∆ ( 1
N s )
+ Ψ }
h2¯h+ 2Q∆
( 1 N s
) h¯h−Q
{
−P Q− 1
Q∆ ( 1
N s )}
= {
Q2∆ ( 1
N s )
+ Ψ }
h2¯h+ ∆ ( 1
N s )
(2Qh¯h+ 1) +P
= {
Q2∆ ( 1
N s )
+ Ψ }
h2¯h+ ∆ ( 1
N s )
{( ¯Qh¯h)2−(Qh¯h)2}+P
=h2¯h2 {
Q¯2∆ ( 1
N s )
+ Ψ }
+P (B.2.158)
となり、収差係数IVが導かれた。以上の計算から3次収差係数はすべて確認できた。
B.2Seidel 収差係数 第B章 光学
となる。式(B.2.164)の結果より、係数Iの収差では光線は理想の結像点ではなく、理想の結像 点を中心とした半径m1R3の大きさの円を描いた収差を持つ。この収差は
球面収差∝R3 (B.2.165)
より、レンズの射出瞳の極座標系のRの3乗に比例し、画角の変数ωに依存しないことから画 角に関係なく平行光でも発生することが分かる。よって、図B.18のように平行光であってもレン ズが球面であることから発生する収差であるために球面収差と呼ばれる。つまり、球面収差がある と、像面をどこにおいて物点の像はぼやけた回転対象な円形形状になる。
このように、球面収差は光線の入射高の関数となるが、縦軸に光線の入射高hをとり、横軸に縦 の球面収差量s(h)をとったものを球面収差図とする。
図B.18: 球面収差
コマ収差
続いて、式(B.2.127)、式(B.2.128)のコマ収差係数II以外を全て0とすると、
∆y′k=m2ωR2(2 + cos 2ϕ) (B.2.166)
∆zk′ =m2ωR2sin 2ϕ (B.2.167)
となり、両式を2乗して足し合わせる。すると、
B.2Seidel 収差係数 第B章 光学
∆yk′2+ ∆zk′2=m22ω2R4(4 + 4 cos 2ϕ+ cos22ϕ+ sin22ϕ)
=m22ω2R4(5 + 4 cos 2ϕ)
=m22ω2R4{4(2 + cos 2ϕ)−3}
=m2ωR2{4∆y′k−3m2ωR2}
∆yk′2−4m2ωR2∆yk′ + ∆zk′2=−3(m2ωR2)2
(∆y′k−2m2ωR2)2+ ∆zk′ = (m2ωR2)2 (B.2.168) この結果からコマ収差係数IIが残っている場合、理想の結像点からy軸方向に2m2ωR2だけ離 れたところが中心となる半径m2ωR2の円を描く収差を持つことになる。これを図示すると図B.19 のようになる。式(B.2.168)より円中心の理想結像点からのズレと円の半径の比は2 : 1となるた め、円群の包絡線は交角60◦の二直線となる。像が尾を引いた彗星のようなボケの形になることか ら、この収差のことをコマ収差と呼ぶ。コマ収差は画角ωに比例するため、画角が大きくなるに したがってコマ収差も大きくなる。図(B.2.168)は光軸の外側に向かってを尾を引いた形になり、
これを正のコマと呼ぶ。逆に、光軸の内側に向かって尾を引いた形になるのは負のコマと呼ぶ。
図B.19: コマ収差
実際の光線収差の場合、コマ収差は像面上の横収差を示し、コマ収差図は図B.20のようになる。
入射瞳のメリジオナル座標を横軸に、像面上の横収差を縦軸に表示する。これを正式にはメリジオ ナルコマ曲線と呼ぶ。それに対して、入射瞳のサジタルの横収差を示す場合はサジタルコマ曲線と 呼ぶ。
非点収差と像面湾曲
式(B.2.132)からも分かるように非点収差係数と湾曲収差係数は互いに関係のある係数である。
そのため、収差係数III,IV以外の係数を0とした場合、式(B.2.159),式(B.2.160)は
B.2Seidel 収差係数 第B章 光学
図B.20: コマ収差の収差図[54]
∆y′k= (2m3+m4)ω2Rcosϕ (B.2.169)
∆z′k=m4ω2Rsinϕ (B.2.170)
となる。ここで係数ごとに整理し、図B.21を用いてそれぞれの収差について説明する。
図B.21: 非点収差と像面湾曲 係数m3= 0の場合
∆y′k =m4ω2Rcosϕ
∆z′k =m4ω2Rsinϕ (B.2.171) 両辺を二乗して足し合わせれば、
∆y′k2+ ∆zk′2= (m4ω2R)2 (B.2.172) となる。これは図B.21の赤線の円の部分を表わしており、主光線を中心として輪帯に入射した
B.2Seidel 収差係数 第B章 光学
光束は、主平面上の瞳半径Rに比例し画角の2乗に比例する円の形になる。これをより詳細に描 いた図は図B.22である。
図B.22: 像面湾曲
図B.22のように平面物体の像が湾曲してしまう収差のことを像面湾曲と呼ぶ。
次に、係数m4= 0の場合
∆y′k = 2m3ω2Rcosϕ
∆zk′ = 0
(B.2.173) 係数2m3+m4= 0の場合
∆yk′ = 0
∆zk′ =m4ω2Rsinϕ
(B.2.174) 式(B.2.173)と式(B.2.174)はそれぞれ図B.21中のサジタル像面とメリディオナル像面を表わし ている。このようにメリディオナル面内の光線とサジタル面内の光線の像の位置が異なることによ り像が点に収束しない収差のことを非点収差と呼ぶ。
歪曲収差
収差係数V以外の係数を0とした場合、式(B.2.159),式(B.2.160)は
∆yk′ =m5ω3
∆z′k = 0
(B.2.175)