第 6 章 有名どころの定理 140
6.6 Schwarz の鏡像の原理 (Schwarz reflection principle)
Functions on One Complex Variables I, II, John B. Conway, Springer.
6.6.1 実軸を超えての拡張
この項では、A⊂Cに対して、
A∗:={z∈C;z∈A}
とおく。すなわち、A∗ はA を実軸に関して折り返した集合である。
A∗=Aであるとき、A は実軸に関して対称である、と言うことにする。
命題 6.6.1 ΩはCの開集合、f: Ω→Cは正則とするとき、
Ω∗ :={z∈C;z∈Ω}, とおき、f∗: Ω∗ →Cを
f(z) :=e f(z) (z∈Ω∗) で定めると、f∗ は正則である。
証明 c∈Ω∗ とすると、c∈Ω. f はΩで正則だから、∃ε >0,∃{an}n≥0 s.t f(z) =
∑∞ n=0
an(z−c)n (z∈D(c;ε)).
このとき、∀z∈D(c;ε) に対して、z∈D(c;ε) であるから、
f(z) =
∑∞ n=0
an(z−c)n. ゆえに
f∗(z) =f(z) =
∑∞ n=0
an(z−c)n=
∑∞ n=0
an(z−c)n. ゆえに f∗ は D(c;ε) で正則である。ゆえに f∗ はΩ∗ で正則である。
同様にu がΩ で調和ならば、u∗(z) :=u(z) はΩ∗ で調和である。
補題 6.6.2 ΩはCの領域で、Ω̸=∅, Ω∗ = Ω (Ωは実軸に関して対称) とするとき、Ωは実軸の 開区間を含む。
証明 Ω∩R̸=∅である。実際、もしも Ω∩R=∅ ならば、
Ω+:= Ω∩H+, Ω−:= Ω∩H−, H+:={z∈C; Imz >0}, H−:={z∈C; Imz <0} とするとき、
Ω = Ω+∪Ω−, Ω+∩Ω−=∅. これは Ωの連結性に矛盾する。ゆえにΩ∩R̸=∅.
x ∈ Ω∩R とすると、Ω が開集合であることから、∃ε > 0 s.t. D(x;ε) ⊂ Ω. このとき、I :=
(x−ε, x+ε) ={t∈R;x−ε < t < x+ε} とおくと、I ⊂Ω.
命題 6.6.3 ΩはCの領域で、Ω̸=∅, Ω∗ = Ω (Ωは実軸に関して対称),f: Ω→Cは正則、実軸 上のある開区間でf は実数値を取るとする。このとき
f(z) =f(z) (z∈Ω).
証明 補題から、開区間I ⊂R が存在して、f(x)∈R (x∈I).
g(z) :=f(z)−f(z) (z∈Ω) とおくと、g はΩで正則であり、
g(x) = 0 (x∈I).
一致の定理から、g≡0 in Ω. ゆえに f(z) =f(z).
定理 6.6.4 (調和関数の鏡像の原理) Ω はCの領域で、Ω̸=∅, Ω∗ = Ω (Ω は実軸に関して対称) とする。
Ω+:= Ω∩H+, Ω−:= Ω∩H−, H+:={z∈C; Imz >0}, H−:={z∈C; Imz <0}, σ:= Ω∩R
とおき、v: Ω∗∪σ={z∈Ω; Imz≥0} →Rは連続で、
△v= 0 in Ω+, v= 0 onσ とするとき、
V(z) :=
{ v(z) (z∈Ω+∪σ)
−v(z) (z∈Ω−)
とおくと△V = 0 in Ω. すなわち実軸上で0 である調和関数は奇関数拡張で調和に拡張できる。
証明 △V = 0 in Ω− は明らかである。x0 ∈σ として、△V(x0) = 0 を示そう。D(x0;ε)⊂Ωとな るε >0 が取れる。
PV(z) := 1 2π
∫
|z−x0|=ε
PV は|z−x0|< εで調和であるから、V −PV はその円盤の上半分、下半分のそれぞれで調和である。
V −PV は円周上で0 である。円盤内の実軸上(⊂σ)では V =v= 0,また積分の対称性から PV = 0 であるから、V −PV = 0. 調和関数の最大値原理から V −PV は円盤の上半分、下半分で0に等しい。
ゆえに V =PV. 特に △V(x0) =△PV(x0) = 0.
余談 6.6.1 (調和関数の “偶関数拡張”, “奇関数拡張”) 上の話を実関数として見てみよう。良くやる ように、正則関数 f に対して、実部、虚部をそれぞれ u,v とおく。つまり
f(x+iy) =u(x, y) +iv(x, y), x, y, u(x, y), v(x, y)∈R.
このとき
f∗(x+iy) =f(x−iy) =u(x,−y)−iv(x,−y).
u とv が調和ならば、u(x,−y) と−v(x,−y) も調和である。確かにそれは明らかだ。
u,v がΩ+∪σ で調和であるとするとき、
U(x, y) :=
{ u(x, y) ((x, y)∈Ω+∪σ) u(x,−y) ((x, y)∈Ω−), V(x, y) :=
{ v(x, y) ((x, y)∈Ω+∪σ)
−v(x,−y) ((x, y)∈Ω−)
とおく。まずU はΩで調和である。V は不連続かもしれない。連続であるためには V = 0 on σ
である必要がある。逆にこの条件が成り立っているとき、V はΩ で調和である。1変数実関数の偶関 数拡張、奇関数拡張の滑らかさの話に良く似ている。
上の定理の正則関数版。系としての証明と、Morera の定理を用いる証明と。
6.6.2 円弧を超えての拡張
円に関する鏡像
複素平面内の円C: |z−a|=r を固定する。
円C に関して、z∈Cの鏡像 (鏡像点,鏡映点) がwであるとは、a,z,wが一直線上に並び、
|z−a| · |w−a|=r2
を満たすことを言う。z の鏡像w はz から一意的に定まる。以下、これをz∗ と書くことにする。
(z∗)∗ =z が成り立つ。また、
zlim→az∗ =∞, lim
z→∞z∗ =a
が成り立つ。(気分的には「だから」)a の鏡像は∞,∞ の鏡像は aと定義する: a∗ =∞, ∞∗ =a.
Cb :=C∪ {∞}とする。R(z) :=z∗ により、R:Cb →Cb が定まる。これは同相写像であり、R−1=R.
z̸=aであれば、
(z∗−a) (z−a) =r2 が成り立つ。これから
z∈C ⇔ z∗=z がすぐに分かる。
A⊂Cb が円 C に関して対称であるとは、
R(A) =A が成り立つことをいう。
命題 6.6.5 a∈C, r >0 とするとき、R:Cb →Cb を円C: |z−a|=r に関する鏡像とする。こ のとき、
S(z) :=a+ r2
z−a, T(z) :=a+ r2 z−a とおくと、S はC\ {a}で、T はC\ {a} で正則で、
R(z) =S(z) =T(z) (z∈C\ {a}).
円に関する Schwarz の鏡像の原理
前項の結果を、領域Ωが上半平面内に含まれ、実軸上の開区間σ が境界∂Ωの一部となっていると き、Ω で定義された正則関数の、下半平面への正則な拡張を保証する定理ととらえ、上半平面の代わ りに円 C の内部で置き換えた定理を考えよう。
C1 :={z∈C;|z−a1|=r1}, D1:={z∈C;|z−a1|< r1}, C2 :={z∈C;|z−a2|=r2}, D2:={z∈C;|z−a2|< r2}, Ω⊂D1, σ :=∂Ω∩C1 =C1 or
{
a+r1eiθ;θ∈(α, β) }
, β−α≤2π f: Ω→C,
f(Ω)⊂D2, f(σ)⊂C2
とする。
f(z) :=e
{ f(z) (z∈Ω) R2(f(R1(z))) (z∈R1(Ω))
Ω := Ωe ∪σ∪R1(Ω)はC1に関して対称な領域で、feはΩeで正則である。実際、正則関数S1:C\{a1} → C,T2:C\ {a2} →Cで、
R1(z) =S1(z), R2(z) =T2(z) を満たすものが存在する。
R2(f(R1(z))) =T2(f(S1(z))) であるから、fe|R1(Ω) は正則である。