それぞれの菌体の可溶性画分を 12.5 %のポリアク リルアミドゲルで,250 V,20 mA,60分泳動した.
4) ウエスタンブロッティング
PVDFメンブレンに12 Vで60分通電し転写した.
メンブレンは PBS で 5 分洗浄を 2 回繰り替えした後 に,EzBlock BSA ( アトー株式会社 ) を用いて60分ブ ロッキングした.PBSで5分洗浄し,60分1次抗体反 応を行った.一次抗体反応液は,各ウサギ血清抗体を
PBS で4,000 倍希釈したものを用いた.二次抗体反応
は Multi Capture HRP ( 和光純薬工業株式会社 ) を用 いて 60分行った.EzWestBlue ( アトー株式会社 ) を 用いて5-15分反応させ発色させた.
表1 使用菌株とプラスミドベクター 一般共同研究・生物圏
ブロッティングを行った結果,DHA合成酵素遺伝子産 物のうちPfaA,PfaB,PfaC,PfaDにおいて特異的な発 色シグナルを示した.PfaEには特異的な反応は見られ ず,S. pneumatophori SCRC-2738のサンプルのみ広範囲 に非特異的な微弱な反応が見られた(図2).また,上記 を含む全てのEPA合成酵素遺伝子産物には特異的な反 応は見られなかった.結果には示していないが,pfaE 遺伝子過剰発現大腸菌株を作成して同様の条件でPfaE 抗体を使用したウエスタンブロッティングでは特異的 な発色シグナルが確認できた.DHA合成に関わる pfa 遺伝子産物とEPA合成に関わるpfa遺伝子産物間のア ミノ酸配列上の類似性のため,MP-1由来の作製ポリク ローナル抗体がEPA合成に関わるpfa遺伝子にも反応 することが考えられた(表2).しかし,ウスタンブロッ ティングの結果,両者遺伝子産物の反応には明らかな 差異が見られたことから,実際には,抗原認識部位(エ ピトープ) において,使用した菌株間ではアミノ酸配 列上の相同性が低く,DHA合成酵素遺伝子産物にのみ 特異的に反応したことが考えられた.更に,MP-1と同 じ好冷菌であるColwellia psychrerythraea 34Hのpfa遺 伝子産物のアミノ酸配列を参照し比較した結果,S.
pneumatophori SCRC-2738 よりも高い相同性が認めら れたことから,MP-1由来の作製ポリクローナル抗体が C. psychrerythraea 34Hに反応する可能性が予想された.
これによって,作製ポリクローナル抗体を使用した DHA 合成細菌スクリーニングへの利用も期待される.
また,MP-1由来のpfaE遺伝子産物についてはpfaE 遺伝子過剰発現株のみに明瞭な反応が得られたことか ら,pfaE遺伝子の発現量がウエスタンブロットの感度 限界を下回った可能性が考えられた.より明瞭な反応 を得るためには,ウエスタンブロッティングの条件検 討,対象とする推定エピトープの変更を含めた更なる 最適化が必要であると考えられる.
図1.EPA/DHA合成細菌由来のpfa遺伝子群の遺伝子マップ
図2.ウエスタンブロッティングの結果.PfaA-Dには特異的な発色
シグナルを確認.( 1:SCRC-2738,2:MP-1,3:DH5α/pDHA4,4:
DH5α/pSTV29,矢印:各目的遺伝子産物と思われる発色シグナル )
[まとめ]
海洋細菌M. marina MP-1由来のDHA合成に関わる 5つのpfa遺伝子群(pfaA-pfaE)のうち、グラム陽性菌 であるBrevibacillus choshinensisにおいて確実に発現・
保持されていることを、ウエスタンブロット法で確認 するため,より特異的な抗体作成を試みた.その結果,
DHA合成遺伝子群pfaA-pfaEのほぼすべての産物に明 瞭な反応がみられることが示された.現在までにpfaB および pfaE において遺伝子導入が実施されているが,
今後は,今回作成した抗体を用いることでより安定し た抗原抗体反応が可能となることから,B. choshinensis の DHA 合成遺伝子群を導入した組み換え体の確実な 取得が期待される.
表2 推定エピトープのアミノ酸配列
[研究発表]
ポスター発表
1 ) Kenji Gocho, Mikako Hashimoto, Kiyohito Yoshida, Ayano Horiuchi, Megumi Yokoyama,Yoshitake Orikasa.
Detection of bacterial poly unsaturated fatty acids synthetic enzyme using polyclonal antibody. 第67回日本生 物工学会大会., Kagoshima, Japan, 26 Oct. 2015.
[研究協力者一覧]
堀内綾乃,午膓健司(帯広畜産大学・食品科学)
(共同研究報告書(終了) )
【研究課題名】
北極植物の気候変動に対する成長応答の解明
【共同研究者】
◎和田直也 富山大学研究推進機構極東地域研究センター・教授
(国立極地研究所)
内田雅己 准教授 伊村 智 教授
【研究期間】
平成28年~平成29年(6ヶ月)
【研究成果】
氷河後退域における植生遷移の理解を深めるた めに、氷河後退後約 70 年以内に侵入・定着したキ ョクチヤナギ(Salix polaris)の遷移初期集団に着 目し、遷移後期集団との葉形質の比較を通じて、本 種の生理生態学的環境馴化力を評価した。
調査地は、高緯度北極圏内にあるスバールバル諸 島ニーオルスンの東ブレッガー氷河後退域である。
現地調査及び資料の採取は2010年7月に実施した。
着目した葉形質は、個葉面積、SPAD値(葉緑素 含量)、LMA(Leaf Mass per Area)、炭素濃度、窒 素濃度、CN 比、プロアントシアニジン(縮合型タ ンニン)濃度、炭素安定同位体比、窒素安定同位体 比である。葉面積は葉の短径と長径の実測値から楕 円近似から算出し、SPAD値はコニカミノルタの葉 緑素計(SPAD-502PLUS)、炭素及び窒素濃度はCN コーダ分析器(Yanaco MT-700)、プロアントシア ニジンはブタノール塩酸法、炭素及び窒素安定同位 体比は元素分析/同位体比質量分析計(EA/IRMS) を用いて測定した。
遷移初期集団と後期集団の生育環境を明らかに するため、微気象の観測と土壌理化学性について調 査した。微気象については、気温、湿度、日射得量、
土壌水分量を、土壌理化学性については、炭素濃度、
窒素濃度、CN 比、炭素及び窒素安定同位体比につ いて調べた。
氷河後退域の遷移初期集団の生育環境は、未発達 な有機物土壌のため、貧栄養と乾燥ストレスに曝さ れていることが予想される。このような環境に馴化 するためには、菌根菌との共生による窒素利用効率 の増大や気孔の閉鎖に伴う水利用効率の増大が期 待される。これらの指標として、前者については窒 素安定同位体比、後者について炭素安定同位体比を 用いた。キョクチヤナギと共生している外生菌根菌 は有機物中の窒素を分解・吸収して宿主に渡す時に 同位体分別を行うため、菌根菌存在下では宿主の窒
素同位体比は有機物土壌の値や非共生植物の値よ りも低くなることが予想される。また、植物は乾燥 ストレスに曝されると水利用効率を高めるために 気孔を閉鎖する割合を高め、その結果として二酸化 炭素を固定する酵素であるルビスコ(リブロース 1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ)
の同位体分別が低下し高い炭素同位体比を示すこ とが期待される。さらに、植食者に対する防御物質 と考えられるプロアントシアニジンの濃度を調べ ることにより、遷移初期集団の被食防御力を評価し た。
図1.キョクチヤナギの遷移初期と後期集団の微気 象の比較
微気象の比較から、気温、湿度、日射量について は集団間に大きな違いはみられず、土壌水分のみに 顕著な違いがあることが分かった(図1)。
(裏面に続く)
(2枚目)
図2.キョクチヤナギの遷移初期と後期集団の土壌 特性の比較
土壌特性の比較から、遷移初期集団の土壌は炭素 及び窒素が著しく乏しく、また同位体比も大きく異 なることから有機物の起源が異なる可能性がある ことが分かった(図2)。
図 3.キョクチヤナギの遷移初期と後期集団の葉形 質(葉面積・SPAD値・LMA)の比較
葉面積は両集団間で有意な差はみられなかった
(図3)。SPAD値(図3)及び窒素濃度(図4)は 遷移初期集団でやや高い値を示していたが統計的 に有意な差は検出されなかった。
葉の窒素同位体比は両集団間で有意な差はみら れず(図 4)かつ土壌中の値(図 2)よりも低い値 を示していたことから、遷移初期集団においても外 生菌が関与しておりその結果高い葉内窒素濃度が 維持されていることを明らかにした。
図 4.キョクチヤナギの遷移初期と後期集団の葉形 質(C濃度・N濃度・δ13C・δ15N)の比較
乾燥ストレスに応じて増大が予想された葉形質 の一つであるLMAは遷移初期集団において低い値 を示した。葉の炭素濃度は遷移初期集団で有意に低 く、かつ葉の炭素安定同位体比が予想に反して低い 値を示した。これらの結果は、遷移初期集団におい てよりもむしろ遷移後期集団において水利用効率 が高く、乾燥ストレスが強いことを示唆していた。
図 5.キョクチヤナギの遷移初期と後期集団の葉形 質(CN比・プロアントシアニジン濃度)の比較
葉のCN比は遷移初期集団で低かった。一方、プ ロアントシアニジン濃度は両集団間で有意な差が 検出されなかった。これらの結果は、遷移初期集団 では防御物質に大きな投資を行っていないこと、低 いCN比は植食者の選好性を介して被食されるリス クが高いことを示唆していた。
1.平尾 章(筑波大学菅平高原実験センター)
2.蒲池 浩之(富山大学大学院理工学研究部(理学領域))
3.中坪 孝之(広島大学大学院生物圏科学研究科)
4.WIDORY DAVID(Université du Québec à Montréal)