4. 欧州 CLP 規則に基づく消費者用調剤製品に対する表示に関する現状調査結果
4.4. SDS 作成及びラベル表示の信頼性確保のための欧州の取り組み等について
イツ、フランス)、産業界、及び、事業者からSDS作成等を請け負っている専門機関 (以下、
SDS作成請負業者) 等の取り組みについての調査結果を示す。
(1) 企業でSDS、CLP表示を作成する際の手順、体制について
企業等におけるSDSやCLP表示を作成する際の手順や体制ついて、以下に整理する。
<欧州石鹸洗剤工業連合会>
z 企業特異的な内容、と考えている。
<欧州塗料印刷インキ絵具工業連合会>
z 標準的な手順として、大量の情報の取り扱いにはソフトウェアを使用する。
z 法規の変更による例外的な作業はピークに達したが2020年までは“定常”には戻ら ないと考えている。REACH文書の作成及び更新が2018年中旬まであり、ある分類 のデータが新しくなるあるいは変更されうるためである。
<SDS作成請負業者>
z SDSは専門的な適任者によって作成されていなければならない。また、例え、SDS を作成していなくとも、サプライチェーンの各段階におけるSDSの正しさの責任は サプライヤーにある、と認識している。また、SDSの作成者 (製造者、輸入者、サ プライヤー等) に、有害性の分類又は有害ではない物質又は混合物だという主張 (claim) に責任がある。
z SDS作成請負業者の主な役割としては、① SDSの作成 (分類、ラベル表示含む)、
② 作成されたSDSのレビュー及び③ SDS作成に係るコンサルティングがある。た だし、実施しているサービス範囲は請負業者によって異なる。
z SDS作成に必要な情報 (例;組成情報) の責任はクライアントにあり、SDS作成請 負業者はその内容を用いてSDSを作成する。
z SDSの作成については、大手企業の多くは内部部門がソフトウェア等を利用して作 成し、中小企業や下請け企業がSDS作成請負事業者等を利用している。SDSの作成 にソフトウェアを使用していない会社は、コンサルタントへの問い合わせを行って いる。
z ソフトウェアの使用は、取引先の国の言語にSDSを翻訳するためにも不可欠なもの で、使用されているソフトウェアの例としては、ExESS、ChemManager、LISAM、
ChemGes等があり、クライアントの作成システムを使用している例もある。
z ただし、ソフトウェアの作成内容をそのまま採用するのではなく、レビューを行い 必要に応じた変更を行っている。
z 異なるサプライヤーは、登録文書の結果に基づき同じ物質であっても異なる分類を 使用又は提供する可能性がある、と認識している。
z 法律では、単一物質の分類を決定する責任は物質の製造者にあるため、異なるサプ ライヤーからの異なる分類を受入れなければならない。もし分類が明らかに不十分 あるいは間違いであると感じた場合には、我々がサプライヤーにケースバイケース でコンタクトする可能性がある。
企業でSDS、CLP表示を作成する際の手順、体制についてのまとめ
SDSの作成やGHS分類の実施方法としては、欧州の場合、多言語対応という背景もあ るため、ソフトウェアを使用するのが一般的である。ただし、その結果をそのまま利用 するのではなく、専門家レビューを行い、必要に応じた変更をするのが一般的なようで ある。社内でソフトウェアを持たない会社はコンサルタントを利用する。
また、SDS作成請負業者の認識として、法的にSDSの内容に責任を負うのは製造者、
輸入者やサプライヤーであり、業者は彼らから提供された情報に基づいて、自らが整備 した体制下でSDSを作成している、というスタンスであった。クライアントからの情報 だけでなく、追加の情報調査を行うSDS作成請負業者もある。
単一成分の分類については、製造者に責任があるため、製造業者が異なれば同じ物質 でも異なる分類を受け入れている。
(2) 混合物の分類について
混合物の分類方法及び組成が簡単に入手できない場合の混合物 SDS 作成方法について の対応について、以下に整理する。
<欧州自動車工業会>
z ソフトウェアと専門家による評価を行っている。ソフトウェアのみに依存すると、
非常に保守的な結果となり、実行可能性からかけ離れた方法が時として提案され、
労働者に係る法規が要求する作業現場での制限よりも厳しいものとなる。
z 必要なことは以下のとおりである。
¾ 100%となる成分を知ること (通常、サプライチェーンとのコミュニケーションで
実現する。必要な場合には秘密保持契約をする)
¾ 社内の物質データベース
¾ 提供されるSDSの確認 (ガイダンス文書及び社内データベースの活用)
z 複数段階/サイクルのサプライチェーンとのコミュニケーションが必要となること がよくある。また、“教育”や中小企業のサプライヤーの質の改善が必要となること もよくある。
z ただし、自動車産業において混合物のSDSを作成して提供するということは、ほと んどない。
< 欧州石鹸洗剤工業連合会.>
z 企業特定の内容である。大きな会社は主に分類やSDSのためのソフトウェアシステ ムを使用し、更に合成洗剤業界の分類ネットワーク (Detergent industry classification network)35を使用する。
z ただし、通常、日用品には関係がない。
<欧州塗料印刷インキ絵具工業連合会>
z DSD関連の分類に、社内用ソフトウェアを使用した会社がある。第三者はソフトウ ェアよりも高額であるため、第三者はほとんど使っていない。
z 中小企業はソフトウェアに資金を投じなければならないが、小さなITサプライヤー の使用につながり、低品質なアウトプットになるリスクがある。例えば、追加デー タがデータベースに反映されていない等である。
z 通常、会社では生データや分類について入力する人材を確保している。
z 組成に関する不十分な情報について
¾ 分類が重大なものでなければ、厳しい分類を使う (“保守的な値”の使用)。
¾ 分類が重大なものであれば、サプライヤーに再度コンタクトする。
z “毒性がわからないXX%の成分を含む”について
¾ ユーザーにとって価値がないため、合理的な (reasonable) 情報ではない。そ
35 www.det-net.eu; 合成洗剤等の場合、組成は異なるが、その成分に大きな違いがないため、一般的な組
成 (reference formulation) を専門家が分類した結果をセクターの中で共有している。
のような文言からは、ユーザーは安全な行動の結論を導けない。
¾ 欧州塗料印刷インキ絵具工業連合会メンバーが実施する分類ではそのような 文言は使用しない。サプライヤーからのSDSでそのような文言を受け取った ら、そのままやり過ごす。
<SDS作成請負業者>
z 混合物の分類にはソフトウェアを用いる業者とそうでない業者があった。ソフトウ ェアを使用した場合でも、内容を確認する。
z 通常、100%までの組成情報を得ることは非常に難しいと認識している。事業者によ
っては、信頼性のある分類ができないことをクライアントに伝える。
z 混合物分類を行う際にクライアントに提供してもらう情報として以下が挙げられて いた (ただし、要求情報は事業者によって異なる);
¾ 混合物の含有成分 (インデックス番号やCAS番号、EC番号、濃度や濃度域、
急性/慢性毒性、生態関連情報))
¾ 個別の物質が登録されている場合にはその情報
¾ 他のサプライヤーから受領したSDS (分類の参考にする)
¾ 必要に応じて、混合物製造者との意見交換
z もし、情報が提供されない場合には、残りの含有成分については「分類されない (not
classified)」、「有害性はない」と仮定する。
z 分類の際にはワーストケースシナリオを使用している事業者もある。
z チェコでは、SDS作成に利用したデータを補完し、秘匿情報として保健省 (Ministry
of Health) に提出するという情報があった。
z 全ての危険有害性成分がリストされていることが確実であれば、適切な分類が可能 であり組成に関する情報の不足による影響はない。疑いがある場合、クライアント による組成に関する必要な情報、あるいは有害でないことの証明 (declaration) の提 供を求める業者もあった。
混合物の分類についてのまとめ
混合物の分類を実施する際にもソフトウウェアを用いるのが一般的であり、混合物も 含めて分類のために必要な情報 (特に組成情報等) は、クライアントから提供される情報 が最も重要であり、それらの情報をクライアントに要求する。100%までの組成情報が得 られない場合、分類を実施できないとする業者もあれば、情報が提供されない成分は「分 類されない」/「有害性はない」と仮定し、既知成分でワーストケースシナリオによる分 類を行う業者もある。また、ソフトウェアに十分な資金を投じることができない中小企 業では低品質なアウトプットになるリスクがある。
業界特異的なアプローチとして、例えば、欧州自動車工業会の場合、サプライチェー ンが多様かつ複雑であり、中小企業も多く含むことから、川下となる自動車会社がセミ ナー等によるサプライチェーン教育を行っている。一方、欧州石鹸洗剤工業連合会の場 合、取扱う製品の特性上、基本組成が概ね同じであることから一般的組成の分類結果を 公表し、参照してもらえるような整備を実施している。
(3) 分類できない場合の理由の区別の必要性について
CLP 規則で「分類できない (not classified)」となる場合、情報がなく分類できない場合 や十分な情報があっても、例えば、LC50>5000 mg/kgのように分類区分に該当しないため 分類できないケースがある。このように、「分類できない」場合には本質的に異なる理由が 存在するがこのようなことが問題になるケースがあるか、また、消費者製品にそのような 情報を提供する必要性があるかについて調査した結果を以下に示す。
なお、SDSには、SDSの場合には、データの不足によって有害性なしと分類される場合、
対応するセクションにコメントをする必要がある(GHS Annex IV, A4.2.2.3)。
<英国安全衛生庁>
z 分類できない2つの理由の区別はSDSにのみ記載されるが、これはリスク評価及び リスク管理措置に責任を持つ専門家を支援することを目的としているからである。
一方、消費者はリスク評価を実施することは期待されない。関連するリスクを管理 するための表示に対するシンプルかつ理解しやすい注意警告文に従うことが消費者 にとって十分である。
z ‘insufficient data’と‘insufficient investigation for data’の現実的な違いは比較的軽 微である。
z 英国安全衛生庁は、同じ又は類似製品に対する異なる有害性表示について消費者か ら照会はほとんど受けていない。この理由は、消費者製品に対する有害性表示の目 的が有害可能性を警告するため、及び表示上の注意警告文に対して必要な注意を引 くためだからであろう。特定のピクトグラム又は分類はわずかに異なるが、必要な 注意は類似製品に対しては同じ可能性が高い。
z もしも執行官が化学物質の分類が不適切であると懸念した場合、通常の執行の手配 がなされる。小売りの場合、取引基準官(Trading Standards Officers;日本の県と同 様の地方自治体に相当)が執行に対して責務を負う。非消費者製品又は化学物質の 卸の場合、英国安全衛生庁の査察官が執行の責務を負う。詳細は以下のサイトで確 認できる36。
<デンマーク環境保護庁>
z 物質の分類を通知するとき、製造者又は輸入業者は各エンドポイントに対する「分 類できない」の理由を記述することを求めている。その理由は例えば、「データ欠損」、
「データ不確定」又は「確定的なデータだが分類には不十分」である。「分類できな
36 http://www.hse.gov.uk/enforce/