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日本の事業者が SDS 作成等で苦慮している点への支援策

5. 日本への適用における課題の検討 (解決策の提案)

5.2. 日本の事業者が SDS 作成等で苦慮している点への支援策

SDS作成者への教育

x SDS作成者が受けるべき教育の策定

REACH規則ではSDSを作成する人物について「Compentent person」に言及してい

るが、日本ではこのような考え方は導入されていない。この考えの最も重要な点は、

SDS作成者に教育を受けさせることを義務付けていることである。そこで、我が国に おいても、SDS作成者が受けるべき教育について明らかにすることが必要と考えられ る (例えば、熟知しておくべき法規、SDS作成についての法的義務等)。このことによ り、SDS作成者が適切な教育をうけることができ、SDS作成時で苦慮する多くの問題 が解決されることが期待される。

SDSの信頼性の担保

・SDSについての適切な教育を受けた者によるSDSの作成

SDS作成について適切な教育を受けた者がSDSを作成することで、SDSそのものの 信頼性が担保されると考えられる。

・国際的に合意された分類についての検討

現在、国内でSDSを作成する企業の多くがNITEから公開されている分類結果を参 照しているが、この分類結果はあくまで参考分類であり、国内で承認された分類では ない。このことから、企業が個別に分類する現行制度では、同一物質であっても異な る分類結果になりえる。例えば、同じ有害性のデータを用いても、同じ分類結果にな らないことはOECDで実施されたパイロットプロジェクトでも証明されている。まし て、分類のために用いる情報源が異なれば、企業間で分類結果が異なることは自明で ある。また、分類及び表示の内容の信頼性については、①適切な情報収集が行われた のかという点と②得られた情報と分類指針に基づき適切に分類が行われたのかという 点のふたつの側面の信頼性がある。特に、適切な情報収集が行われたのか、という点 については、その適切さを判断すること自体が困難である。しかし、欧州のように承 認された分類結果があることで、分類結果の信頼性を担保できるとともに、分類に伴 う事業者の負担の軽減につながる。現在、国連レベルでも調和した分類の必要性、実 現性についての検討が行われているため、これらの動向に注視するとともに、協調し た取り組みについて検討を行う必要があると考えられる。

上記アプローチについては、単一成分について特に有効であるが、混合物について

も、個別成分の分類が明確となり、組成情報が十分に得られているのであれば、適切 な教育を受けた担当者が SDS を作成することによりその信頼性は向上できるものと 考えられる。

国内サプライチェーンでのSDS作成における役割

・国内サプライチェーンでのSDS作成における役割の明確化

欧州の制度では、サプライチェーンの全てのプレイヤーがSDSの内容に責任を追って いることが明確に示されており、サプライチェーン間でSDSの品質を向上させる枠組み も設けられている。少なくとも、国内においては、川上のみに責任があるとの誤認があ ると考えられること、サプライチェーンの各プレイヤーの役割について国が明確する必 要があると考えられる。役割が明確になることで、サプライチェーン間のコミュニケー ションが円滑になり、例えば、混合物の組成情報の伝達についても、事業者が自らの役 割を認識することで、自らの状況にあった伝達方法を自主的に模索することが期待でき る。

6. まとめ

① 欧州CLP規則に基づく消費者用調剤製品に対する表示に関する現状調査

欧州では、CLP規則制定以前からDSD/DPD指令において商品の包装とラベル表示の規 制を行ってきており、DSD/DPD 指令においても有害性に関する各種のシンボルマークが 使用され消費者製品のラベルに広く使われてきたことから、CLP規則によりシンボルマー クがGHSの絵表示に変わることでの大きな混乱はないようである。しかし、ECHAが実施 したCLP絵表示に対する一般公衆の知識と理解に関する調査結果では、CLPラベルは一般 公衆にはほとんど理解されておらず、いくつかの絵表示だけが実際に意図するところを理 解されており、誤解が存在することが明らかになった。このことから、日本でCLP絵表示 を消費者製品へ導入した場合、国民が絵表示を正しく理解できない事態が生じることがな いようにするための工夫が必要である。

日本における消費者用製品へのGHS導入については、平成26年度委託事業「消費者用 調剤製品等使用の安全確保における規制とラベル表示に関する調査」 (H26 年度調査) に おいて、消費者側に危険有害性を知ることができる、商品選択の幅が広がるといったメリ ットがある一方で、危険有害性情報そのものより使用方法や応急処置等の注意事項の方が 重要であると認識されていること、GHSが十分に認知されていないことから、誤認や消費 者の不安感の増加等が懸念されるため、消費者の教育・啓発活動が必要であることが指摘 されている。

今回の調査で、消費者に対する普及啓発活動を実施していたのはデンマークで、消費者 に対して複数のチャンネルを活用した情報発信や知名度の高い人を活用した情報伝達を行 っている。また、オランダの消費者への具体的活動を実施している NGO 団体では、消費 者の経験に基づく行動を改善するための試みとして、子供と大人それぞれを対象としたキ ャンペーンを実施している。これらの取り組みから、単に危険・有害であることを伝える だけではなく、“どうすればよいのか”という安全使用に関する説明と組み合わせて説明す ることが重要であった。また、身の回りに危険有害な物質があることを認識してもらうた めには、単純に「記載しています」、「読んでください」と伝えるだけでなく、ラベル宝く じのような消費者が興味を持つような方法を模索する必要があると考えられた。消費者に 対しては、“安全な使用方法”を伝えることが大事であり、“絵表示があればラベルを読む”

という点については平成26年度調査で消費者団体から出た意見と一致している。この点に 関しては、産業団体 (欧州石鹸洗剤工業連合会) がCLP規則の“有害性”ラベルに対して

“安全使用の方法”の絵表示を開発し、CLPラベルに追記している。日本においても、消 費者製品にCLP絵表示を導入する場合には、“安全な使用方法”を伝える絵表示を併記し て消費者の具体的な行動につながるように工夫することが重要であると考えられる。

CLP規則に関する学校教育プログラムについては、英国及びデンマークのいずれも当局 が直接的に関わることはなく、各国で定められた学校教育 (幼稚園、小中学校) の一環と して有害性等についての教育が行われている。これにはCLP規則の絵表示に関する知識も

含まれている。なお、英国については、CLEAPSS という組織が化学物質の安全性に関す る一般的なガイダンスを作成し、有害化学物質を扱うスタッフに対する訓練コースを提供 している。産業団体 (欧州石鹸洗剤工業連合会) の意見としては、合成洗剤製品に関連し た典型的な事故を防ぐには学校教育では遅すぎる、多くの事故は小さな子供で起こってい るため就学年齢よりも小さな子供を持つ親に対した教育を実施すべきであるとしている。

これはオランダのNGO団体でも同様の意見であった。

② SDS作成及びラベル表示の信頼性確保のための欧州の取り組みについて

欧州では、企業でもSDS作成請負業者でも SDS及びラベルを作成する際にはソフトウ ェアを使用するのが一般的である。SDS及びCLP/GHS分類の信頼性確保については、公 的に保証/認証するシステムは今回調査したいずれの国でも存在せず、CLP 規則のとおり、

実際に分類、表示及びSDSを扱う担当者がしかるべき知識及び能力を有していることを前 提として、CLP規則が執行されている。英国ではCLP及びSDS作成の訓練コースを化学 物質ハザードコミュニケーション協会が提供している。また、デンマークでは、小企業の ように分類、表示及びSDSの編集に十分な知識や資源がない企業に対して、コンサルタン トを利用するためにアドバイスを行っている。一方、EU 加盟国ではないが、トルコでは 政府によるSDS作成の認証システムがある。このように、EUでは特にSDSやラベルを政 府が承認するようなシステムはないが、CLP規則の中でSDSの信頼性を保つ仕組みがある (2章参照) ため、ある程度の質が保たれていると考えられる。

SDS 作成請負業者はクライアントから提供された情報に基づき SDS 作成等を実施する ため、作成されたSDS及びラベルに関する責任はクライアントにある。SDS作成請負業者 として、スタッフをSDS作成及びCLP/GHS分類ができるように訓練したり、ISO認証に より品質を保証したりする努力を行っているSDS作成請負業者もあった。

以上から、欧州ではCLP規則以前からDSD/DPD指令により消費者製品に有害性ラベル が付けられている。また、REACH規則、CLP規則及び調和分類により、日本に比べてSDS 及びCLP ラベル作成のための法律的な基盤が整備されている。日本で消費者製品に GHS を導入する場合は消費者製品に有害性情報を載せるのは初めての試みであり、REACH 規 則やCLP規則といった包括的な法律がないことが欧州との大きな違いである。したがって、

日本で消費者用製品にGHSを導入する際の消費者への教育・啓発活動としては、5.で提 案した(1)ラベル表示があることの認識率を上げ、身の回りに危険な製品があることを認 知してもらうための活動、(2)特に安全な取扱いを見るべきサインとして認識してもらう 表示の特定、(3)特に注意すべき消費者層の特定と特定した層への有効な啓発活動の特定 について関係省庁の連携のもと、長期的に取り組んでいく必要がある。

また、日本のSDS作成時業者への支援策としては、5.に示したように、SDS作成者が受 けるべき教育の策定、国際的に合意された分類についての検討及び国内サプライチェーン

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