概要
SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)とは、ソフトウェアを開発するために必要なプログラムや 技術⽂書などをひとまとめにしたパッケージである。通常はソフトウェア開発者がユーザーとなる。SDKの使⽤例には、
企業などのウェブサイト上に、SNS(Twitter/Facebookなど)の「いいね!」ボタンを組み込むことや、動画を組み込む ことなどがある。
同社の「V-CUBE Video SDK」を使うことで、顧客は⾃社アプリケーションやウェブサイトに、映像・⾳声のビデオ通話 機能やライブ配信機能を組み込むなどのカスタマイズを⾃ら⾏うことができるようになる。
(具体例)SDKを利⽤すれば;
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Coverage▷チャットアプリに、利⽤者の映像が映るテレビ電話の機能を付加することができる。
▷電⼦カルテに映像機能を組み込むことができる。これは、医師と患者がリモートでやり取りできる遠隔医療の仕組みと なる。
▷ヨガ、フィットネス、英会話教室のような、講師1名と受講者多数(リモート)の双⽅向コミュニケーションにおいて、
受講者は、他の受講者と画⾯共有や通信接続を⼀切することなく、講師との1対1のコミュニケーションが可能となる。
通常のウェブセミナーソフトウェアでは、受講⽣間の映像を隠すことはできても、送受信⾃体は発⽣するなど、ユーザー のネットワークとデバイスに負荷が掛かるデメリットがある。
▷SNSやメディアサイト上に、フォロワーや読者との映像コミュニケーション機能を組み込むことができる。
SDKの利⽤状況について、2020年12⽉期はエンターテイメント分野が全体の6割を占めたと同社は発表した。
▷構成⽐:芸能⼈などのファンサービス30%、SNS・メディア30%(以上エンターテイメント分野)、ビジネス18%、医療・
教育16%、その他エンターテイメント6%
利⽤状況
同社は、中⻑期的にはビジネス利⽤の拡⼤を図る⽅針である。実例として、調剤薬局のオンライン服薬指導アプリケーショ ンにビデオ通話機能を実装し、薬剤師と患者の遠隔コミュニケーションが実現している。薬局には遠隔服薬指導の記録を1 カ⽉間残すことが厚⽣労働省から義務づけられており、録⾳・録画機能が必須となっている。同社のSDKを使い、録⾳・録 画機能つきのビデオ通話を実装することができた。
ビジネスモデル
同社が提供するSDKにはライブ配信SDK、ビデオ通話SDK、⾳声通話SDK、など多様な⽤途があり、同社は顧客毎に開発⽀
援を⾏う。サービスリリース後に、映像コミュニケーションの利⽤時間に応じた従量課⾦(1分当たり)を課⾦する。同社 の売上⾼=単価×⼈数×利⽤時間(分)である。顧客企業数は約100社とのことである。
限界利益率は約60%である。
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CoverageイベントDX事業(2020年12⽉期:売上⾼構成⽐同31.7%、営業利益構成⽐35.6%)
業績表とKPI
出所:会社資料よりSR社作成
事業概要
イベントDX事業は、集客イベントのオンライン化ならびにハイブリッド化(ひとつのイベントで集客とオンライン配信 を同時に⾏うこと)を実現するサービスを提供する。同社は2020年12⽉期に約4,800のイベント配信を⼿掛け、このうち 約7割(約3,300件)が製薬業界のウェブ講演会*だったとSR社では理解している。
*ウェブ講演会とは、ホテルや会議室といった会場やスタジオでの講演を撮影もしくは収録し、インターネット上で配信する講演会である。実際に 会場で⾏う講演会とは異なり、セミナー講師が会場やスタジオのカメラの前で講演を⾏い、視聴者はパソコンやスマートフォンで視聴する。「オン ラインセミナー」や、ウェブとセミナー2つの単語を組み合わせた「ウェビナー」と呼ばれることもある。
製薬業界のウェブ講演会は国内で年間約10千回開催されたとのこと。このうち同社は4割の配信を⼿掛けたことになる。
製薬業界のウェブ講演会以外では、株主総会や就職説明会などを⼿掛けた。
同社はイベント配信⽤の⾃社ソフトウェア(SaaS)に「V-CUBEセミナー」と「EventIn」(イベントイン)を持つ。この ほか、Zoomセミナーなど、他社SaaSプロダクトを⽤いた配信も請け負う。
また同社は、V-CUBEセミナーのライブ配信・収録⽤のスタジオを本社および⼤阪営業所に持つ。専⾨スタッフによる各 種配信業務の事前・当⽇・事後の⽀援も実施する。
イベントDX事業の主要プロダクト
V-CUBEセミナー Webセミナーのライブ配信や、オンデマンドコンテンツの配信ができるクラウド型配信サービス。全世界 の最⼤10千拠点(台)のパソコン等端末に対して、セミナーを⽣中継で配信できる。
EventIn(イベントイン) 企業と参加者が出会い交流できるオンラインイベントプラットフォーム。出展者による講演に加え、イベ ント参加者(出展者と訪問者)が個別の質問や商談を⾏うことができる展⽰・商談ブースを設定できる。従 来のウェビナーの⽋点(参加者同⼠のコミュニケーションが困難)を克服する。
出所:会社資料よりSR社作成
SaaS+Serviceによる価値提供を狙う
同社はイベントDX事業において、SaaSプロダクトと同社独⾃のサービスを組み合わせること(「SaaS+Service」)で、
業界・⽤途に特化した価値を提供することとしている。同社が提供するサービスとは、イベントの配信業務(⾃社スタジ オを含む)、配信機材の準備・運⽤、その他業界特有のロジスティクス関連業務である。
イベントの当⽇には、同社からスタッフ(パートナー企業含む)をイベント開催場所に派遣する。⾃社スタジオで配信・
収録する際には同社スタッフが待機する。顧客は不慣れな配信業務を同社にアウトソースすることで、イベントのコンテ ンツ制作に注⼒できる点が、同社サービスの提供価値のひとつと同社は説明している。
19年12⽉期 20年12⽉期
(百万円) 実績 実績
売上⾼(単価×回数︓百万円) 1,163 2,628
前年同期⽐ - 126.0%
イベントのオンライン配信(回) 2,382 4,753
前年同期⽐ - 99.5%
イベント毎平均単価(千円/回) 494 565
前年同期⽐ - 14.5%
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Coverage同社では、製薬業界のウェブ講演会において、主催者である製薬企業とともに、参加者(製薬企業の顧客)である医師へ の「ホスピタリティ」が、技術的な配信業務と同様に重要と考えている。例えば、宿泊先の⼿配、⾷事や移動⼿段の⼿配 なども同社では⾏ってきた。同社の⾃社スタジオは、VIP⽤控え室やメイクルームを備えている。
顧客にとってのオンライン化のメリット
同社によれば、企業にとってミッションクリティカルなイベントの多くは従来オフラインで開催されてきた。これは、特 定の会場を確保し、集客を⾏うものである。リアルなイベント開催が新型コロナウイルス感染症の流⾏拡⼤によって制限 された結果、イベントのオンライン化が否応なく進んだ。結果的に、オンライン化のメリットが顧客に認知されつつある とのことである。
そのメリットとは、低コストでのセミナー開催が可能であること。同社は、⼀部顧客において「V-CUBEセミナー」を⽤
いたことで、会場費の削減、旅費の削減などを通じたコスト削減率が40%に及んだとの事例をホームページで紹介して いる。
同社は、コロナ後もオンラインイベントの開催は⾼⽔準で推移すると⾒ている。例えば、製薬企業が開催するセミナーは 年間160千回におよぶ。このうち2020年にオンラインで実際されたものは全体の1〜2割(16千回〜32千回)とのこと。同 社によれば、将来、オンライン⽐率は7割程度となり、年間約100千件となる可能性もあるとのことである。
新型コロナウイルス感染症の拡⼤の影響
同社のイベントの配信回数は、新型コロナウイルス感染症の拡⼤を契機に急拡⼤した(下表)。単価についても2020年12
⽉期第2四半期(4-6⽉)以降は、前年同期⽐で上昇している。
イベント配信件数
出所:会社資料よりSR社作成
同社が製薬業界のウェブ講演会配信を事業領域とする背景
2020年12⽉期現在、イベントDX事業において⼿掛けるウェブ講演会のうち約7割は製薬業界のウェブ講演会とSR社では 理解している。
製薬業界におけるウェブ講演会市場
製薬業界では、2013年に営業ガイドラインが厳格化されるなどして、MRによる医師への訪問を通じた直接的な情報提供 が制限されることとなった。これにより、製薬企業から医師への情報提供⼿段として、ウェブ講演会サービス(ライブな らびにオンデマンド配信)への需要が⾼まったとSR社では考えている。
同社の事業参⼊の経緯
同社が製薬業界のウェブ配信業務を本格的に開始したのは2015年である。同社は2015年に、エムスリー株式会社(東証 1部:2413)との合弁企業、株式会社エムキューブ(⾮上場:同社議決権49%)を設⽴した。
1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
イベント配信回数(回) 609 456 595 722 707 572 1,175 2,299
前年同期⽐ 16.1% 25.4% 97.5% 218.4%
平均単価(千円) 550 544 437 443 547 656 504 554
前年同期⽐ -0.5% 20.6% 15.3% 25.1%
単価×回数(百万円) 335 248 260 320 387 375 592 1,274
前年同期⽐ 15.5% 51.3% 127.8% 298.2%
2019年12⽉期 2020年12⽉期
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Coverage同社は、エムキューブ社と共同で製薬企業向けのウェブ講演会サービスを開発、展開した。同サービスは、ウェブ講演会 のライブ配信にとどまらず、事前の集客や事後の参加者(主に医師)への情報提供もカバーするものである。
同社は2016年12⽉期にエムキューブ社の事業をエムスリー社に譲渡した。以後は、製薬業界のウェブ講演会事業を⾃社 で推進している。