3 Aerogel RICH の開発
4.5 SA03 の選定
本節では、検査システムで測定した増幅率(4段階)、オフセット調節機能(粗・微調節 各16段階)の値を用い、実機に使用する個体の選別方法と結果について述べる。
4.5.1 評価方法
表4.5に判定に必要な項目を示す。
表4.5: 定量的評価に使用した項目
項目 内容等 値[単位]
HAPD総増幅率 HV印加時の量産版HAPD 30個の平均 9.28 fC ノイズ量 放射線照射後 HAPD + SA03のノイズ量 1.28 fC SA03増幅率 SA03のチャンネル毎の増幅率(3段階) G [mV/fC]
オフセット SA03のチャンネル毎のオフセット(粗16段階) Voffset [mV]
『HAPDの総増幅率』はKEKで行われている量産版HAPD 30個の測定値の平均を用 いた。測定方法に関しては5章で詳しく述べる。『ノイズ量』はBelle II実験10年分に相当 する放射線量を照射したHAPDにASICを搭載した時に期待されるノイズ量である[17]。
『SA03増幅率』、『オフセット』は検査システムにより得られた測定値を用いる。増幅率は 不定性の大きい最大の増幅率(=Gain0)は今回は使用せず、残りの3段階(=Gain1,2,3)を 用いる。オフセットは粗調節で調節可能な16ステップのオフセットレベルを用いること とした。評価基準と評価方法を以下に示す。また、評価方法の概念図を図4.26に示す。
1. 1光子信号の波高値が閾値電圧以上になるようにオフセットの調節が可能。
i チャンネル毎の1光子信号の波高値6を求める。
ii オフセットを変えていき(粗16段階)、1光子信号の波高値が閾値電圧を超える オフセットレベルを探す。
iii 閾値を変え、i、iiを調べる。
2. オフセットからノイズ標準偏差の2倍以上の位置に閾値電圧を設定可能。
1-iiiにおける閾値電圧のスキャン領域は図4.27に示す。同図は良品2081個のSA03の オフセットレベル(粗)の度数分布である。最頻値である青いラインより高い領域に閾値電 圧を設定したときに最も条件を満たすサンプル数が得られるので、主にこの領域でスキャ ンを行った。次に閾値電圧の設定方法(図4.26(c))の解説を行う。閾値を決める方法とし て、まずはチャンネル毎でノイズの波高値7を求める。そのノイズ波高値を1σと定義する。
そして、評価を行うオフセットレベルからσの2倍以上の位置に閾値電圧を設定すること ができるかどうか評価した。今回は2倍(2σ)、3倍(3σ)の位置に閾値電圧を設定するこ とにした。また今回の評価では良品2081個の全てのSA03で閾値電圧を共通にした場合 を仮定する。実機のフロントエンドボードは4チップずつASICが搭載されるため実際は 4つずつで共通になれば良いが、本評価では厳しい条件での判定になる。
以上の条件で評価を行うことにより、A-RICHでの各チャンネルの性能は以下のように なる。
• 閾値をオフセットから2σの位置に設定した時はノイズの95.45% を排除でき、3σの 位置に設定した時はノイズの99.73% を排除できる。
61光子信号の波高値は表4.5の『HAPDの総増幅率』の値と素電荷の値の積からノイズ量を求め、その ノイズ量と表4.5の『SA03増幅率』の積から算出する。
7ノイズ波高値は表4.5で定義した『ノイズ量』と『SA03増幅率』と素電荷の値から算出する。
図4.26: 評価方法概念図
図4.27: 良品2081個の粗調節によるオフセットレベルの度数分布
4.5.2 評価結果
Threshold Voltage[V]
-100 -80 -60 -40 -20 0
# of chip
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600