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A-RICH の粒子識別原理

ドキュメント内 Belle II (ページ 35-38)

3 Aerogel RICH の開発

3.2 A-RICH の粒子識別原理

図3.1: RICHの基本構成とリングイメージ検出方法の概念図

する原理を以下に示す。Cherenkov光放射角θcと荷電粒子の質量mの間で成り立つ以下 の式を利用する。

m= p c

n2cos2θc1 (3.2)

ここでpは荷電粒子の運動量、cは真空中の光速、nは輻射体の屈折率である。粒子の 軌跡や運動量はCDCから得ることのできる情報であり、nは輻射体の屈折率を計測する ことで既知である。あとはθcの値を知ることができれば粒子の質量mを決定することが できる。RICHでは積極的に Cherenkov光を発生させ、正確に放射角を求めることが重 要となる。図3.1のように輻射体を荷電粒子が通過した際、物質内でCherenkov光が発生 する。それが円錐状に放射され、後段の光検出器でそれを2次元的に検出する。そこから 得られたリングイメージを解析することでリング半径を求め、最終的に粒子識別を行う。

 発光点から検出点までの拡散距離 L を用いて、放射角θc とリング半径 r の関係をθc

= tan1(r/L)の式で書くことができる。

次に、A-RICH の特徴・構成について解説する。一般的な RICHの構成は Cherenkov 光の焦点方法により2種類に大別される。1つはミラー焦点型(図3.2(a))といい、発生し

たCherenkov光を鏡で反射させその焦点に検出器を設置する構造である。一般的にRICH

では輻射体を厚くすることで発生光子数を増大させることができるが、得られるリングイ メージの焦点がぼやけるために角度分解能の悪化につながる。ミラー焦点型は、鏡の曲率 を調整することで可能な限り光を絞ることができ、角度分解能を落とさずに検出光子数を 増やすことが可能である。他にもLを大きくとれることや、光を集光することにより光検 出器の面積を小さくできるなど様々な長所がある。しかし、構造が大きくなってしまい、

十分な設置スペースが必要となる。

 もう1つが近接焦点型(図3.2(b))である。これは輻射体の正面に検出器を配置し、正面 でリングイメージを観測する構成になっている。ミラー焦点型のように鏡を設置する必要 がなく設置規模は抑えることができる。しかし、角度分解能を悪化させずにリングイメー

ジをとらえようとすると、輻射体を薄くしなければならず検出光子数は低下することにな る。

図3.2: RICHの構成による分類

Endcap部粒子識別装置に要求される設置スペースは奥行約30 mmと限られているた

め近接焦点型 RICH を採用した。しかし、検出器の性能向上のためには近接焦点型は検 出光子数の増大が課題となる。1トラック(1回の荷電粒子の通過) 当たりの角度分解能σ は以下の式に従う。

σ = σsingle

Np.e. 1

√d (3.3)

σsingleは1光子当たりの角度分解能、Np.e. は平均の検出光子数、dは輻射体の厚さであ

る。輻射体を厚くすればNp.e. は増えるが、式3.3より1光子当たりの角度分解能も大き くなり悪化してしまう。これは輻射体が厚くなることで内部の光子放射点の不定性が大き くなることに由来する。先行研究で輻射体の厚さは 20 mmが最適値であることが分かっ ている[15]。そこで、輻射体の厚さにも制限がある中で、検出光子数を保ちつつ、1光子当 たりの角度分解能をよくするため屈折率の異なる輻射体を複数組み合わせるというマルチ レイヤー方式を取り入れた。その概念図を図3.3に示す。図3.3(a)が同一の屈折率を持っ た輻射体が1枚のとき、同図(b)がそれぞれ異なる屈折率n1(上流側)、n2(下流側)を持っ た輻射体を用いたときの様子である。特に、屈折率を n1 < n2 に設定することで、全段 の輻射体で発生した Cherenkov光と後段で発生した Chrenkov 光でリングイメージの幅 を絞ることができ角度分解能を小さくすることができる。この方法により、角度分解能を 悪化させることなく、検出光子数を最大限に保つことができる。A-RICHではこのマルチ レイヤー方式を用い、高い K/π 識別能力を実現する。

図3.3: (a)輻射体 1枚の単層。(b)輻射体 2枚の複層 でのCherenkov放射を表した図。

(b) では屈折率を n1 < n2に設定することでリングイメージを絞っている。

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