第 4 章 数値解法 74
4.2 Riemann 問題
るため境界層のプロファイルが正しく保たれない.しかし,非圧縮性流れの計算には有効である が,接触連続面あるいはすべり面での数値粘性が問題になる.
4.2.2 Roeの近似Riemann解法
1次元スカラー方程式を保存形で表示すると次のようになる.
ut+fx= 0 (f =au, a>0)
ただし,aは特性速度である.上式を陽解法で差分近似すると次式で表される.
uni+1=uni −ν(fin+1/2−fin−1/2)
ここで,ν = ∆t/∆xである.また,CFLはクーラン数と呼ばれる.クーラン数は波の物理的な速
さと計算上の速さの比を表す定数である.時間積分に陽解法を用いる場合,CFL<1.0でなければな らない.これは計算上の波の速さが実際の物理的な速さを超えてはならないことを意味する.数値流 束fin+1/2は1次精度風上差分法では次のように表される.
fin+1/2= 1
2[(fi+1−fi)− |a|(ui+1−ui)]
次にこの1次精度風上差分をシステム方程式(Euler方程式)に拡張する.1次元Euler方程式を 保存形で表示すると次のようになる.
Qt+Fx= 0 ただし,
Q=
ρ ρu
e
, E =
ρu ρu2+p u(e+p)
Euler方程式は非線形方程式なのでこのままの形では解けない.そこで次式のように局所線形化
する.
Qt+AQx= 0 (A= ∂F
∂Q)
上式はAを局所的に線形化することを意味する.上式においてEuler方程式は双曲形であるから,
Jacobian matrixは対角化可能である.いまRを右固有ベクトル,R−1を左固有ベクトルとすると,
Λ =R−1AR= diag(al)
となる.ここでalは各要素の特性速度となり,1次元の場合,a1 =u−c, a2 =u, a3=u+c(cは 音速)である.いま左固有ベクトルR−1を左側から掛け,W =R−1Qとすると次式は次のように変 換される.
Wt+ ΛWx = 0
上式は,各特性波ごとに分解された独立した3つのスカラー方程式と見なせる.したがってこの方 程式において各特性波ごとにスカラー方程式に適用した1次精度風上差分法を適用し,これを逆変換 することによって元のシステム方程式形に戻してあげれば,Euler方程式を1次精度風上差分法で解
くことができる.これがFDSと呼ばれる計算手法である.結局FDSでは数値流束Fi+1/2は次式と なる.
Fi+1/2= 1
2[(Fi+1−Fi)− |A|i+1/2(Qi+1−Qi)]
ただし,A=R|Λ|R−1である.また,
α=R−1i+1/2(Qi+1−Qi)
である.αは各波をまたいでの物理量のjump量に相当するものである.
|A|i+1/2の値を決定するためにセル境界i+ 1/2における物理量を求めなければならない.これを求 める方法としてRoeはRoe平均(Roe’s average)を提案した.これがいわゆるRoeの近似Riemann 解法と呼ばれるものである(112).RoeはAi+1/2(A(Qi+1, Qi))を線形近似する際,Riemann問題の解 の分布はすべて線形波による不連続から構成される.また近似Riemann解は不連続面で厳密解の保 存則を満たすように次のような仮定をした.
Roe平均は,特性速度の方向を考慮してできるだけ流体力学の支配方程式の性質(特に不連続面 を正確に捉える性質)を満足するように i+ 1/2 位置での物理量を決めるものである.Eq(4.26)の Ai+1/2 (A(Ui+1,Ui))を例にしてRoe平均の満足すべき性質を以下に示す.
1.A(Ui+1,Ui) は,ベクトル空間U からベクトル空間E に線形に対応するように構成される.
2.A(U,U)→A(U) が成り立つ.
3.全てのiに対して,A(Ui+1,Ui)×(Ui+1−Ui) =Ei+1−Ei が成り立つ.
4.A(Ui+1,Ui) の固有値は線型独立である.
これらの性質を満足したものが,次に示すRoe平均である.すなわち,ξ 方向に対して,
ui+1/2,j = Du¯ i+1,j+ui,j
D¯ + 1 (4.55)
vi+1/2,j=
Dv¯ i+1,j+vi,j
D¯+ 1 (4.56)
Hi+1/2,j =
DH¯ i+1,j+Hi,j
D¯ + 1 (4.57)
c2i+1/2,j = (γ0−1)
*
Hi+1/2,j−1
2(u2i+1/2,j+vi2+1/2,j) +
(4.58) D¯ =
)
ρi+1,j/ρi,j (4.59)
H = γ0p
(γ0−1)ρ + 1
2(u2+v2) (4.60)
と定義される.なお,η 方向に対しても同様に定義される.
なお,今回のTVDの計算では前節で述べたように相加平均との違いが顕著に表れないということ よりRoeの近似リーマン解法(以下Roe平均)を用いていないが,時間∆tを計算する際にこれを用 いている.