第 9 章 非平衡凝縮を伴う遷音速バンプ流れ 174
C.1.4 ウェーブレット変換の定義式
ウェーブレット変換には,連続ウェーブレット変換と離散ウェーブレット変換がある.
連続ウェーブレット変換(信号の性質を知るのに便利)
非定常信号に対して連続ウェーブレット変換を行うことで,時間情報と周波数情報が同時に得るこ とができ,現象の生起時刻の情報を容易に扱うことができる.また,必要な情報は,マザーウェーブ レット(アナライジングウェーブレット)の特性をうまく使うことによって,選択的に得ることが可能 である.
・スケール変換とシフト変換のパラメータを連続的に変化させることによって,信号のある特定の時 間における周波数の変化を連続的にとらえる方法である.
・アドミッシブル条件を満たす関数ならば,どんな関数でもマザーウェーブレットとして使用可能で ある.
∞
−∞ψdx= 0 (C.1)
この式は,ψが振動的であることを意味している.ここで,時系列信号f(x)の連続ウェーブレット 変換は次式となる.
(Wψf)(b,a) = ∞
−∞
√1
aψ(x−b
a )f(x)dx (C.2)
ここで,(Wψf)(b,a)をウェーブレット係数,ψ(x)をマザーウェーブレット(アナライジングウェー ブレット)という.よって,切り出す部分を作るためには,ウェーブレットψ(x)の変数xを(x−b)/a と置き換えて,ψ((x−b)/a)が信号の局所的な様子を表すように実数aとbを選べばよい.このよう にウェーブレットは信号を切り出すときの単位として使うものである.ここで,式中の記号a,bは 次のようになる.
・ a(スケールパラメータ,dilatation):
時間軸上での幅を表すパラメータであり,これを変化させることにより,信号中のさまざまなスケー ルの変動を抽出できる(Fig.C.1).小さなaの値を持つψ(x)はf(x)の変動成分のうち小さなスケー ルのものと大きな相関を持ち,大きなaの値に対してはスケールの大きな変動との相関が強くなる.
・ b (シフトパラメータ,translation):
時間軸上のパラメータで,これを増加させるに伴いウェーブレットは解析対象とする時系列信号の時 間軸に沿って平行移動する.これにより,信号中の時間軸情報を失うことなく,さまざまなスケール
の変動成分を抽出できる(Fig.C.1)(定義式をみると,変換後も元の時間軸情報tが失われずに残っ ている).
従って,上記のa,bからは,信号中にどのようなスケールの変動があるのかということだけでな く,その変動が時間軸のどのあたりにあるのかという情報も与えてくれるのである.しかし,これら によって抽出された構造は,ウェーブレットの形に依存するという問題点がある.
ここで,(b,a)空間におけるウェーブレット係数W(b,a)は,ウェーブレット波形とよく似た圧力 変動波形が存在すれば大きくなり,係数に対し等高線を描くことで複雑なスケールの階層構造を示す ことが可能となる.なお,マザーウェーブレット(3)には,次式で示すMorlet waveletを用いた.
ψ(T) = exp(ikψT)exp(−T2
2 ) (C.3)
T = t−b
a (C.4)
なお,本研究ではkψ=6(3)とした.また,iは√
−1である. 本解析で使用するMorlet waveletは,
Mexican hat waveletや反対称ウェーブレットと比較して,より詳細な情報を得ることが可能であ
る (3). Morlet waveletの実数部は,T=0に対して対称である.なお,本解析において使用したマ ザーウェーブレットは周波数領域において局在性がよいため,1/aは周波数fと同じことを意味して いるものと考えることができる.よって,縦軸と横軸にそれぞれa,bをとり,W の大きさを濃淡で 描くことにより,時系列的に細かい変化を時間-周波数面上で観察することができ,現象のマルチス ケール構造を明らかにすることができる.
離散ウェーブレット変換
離散ウェーブレット変換では,ウェーブレットは基底関数とならなければならない.しかし,これ らの条件を満たすウェーブレットはかなり限定される.ここで,もしψをうまく選び適当な離散化に よってψを完全正規直交系にできれば,信号解析には都合がよい.この変換を離散ウェーブレット変 換と定義され,信号f(x)のウェーブレット級数展開は次式で与えられる.
d(kj)= ∞
−∞f(x)ψj,k(x)dx=< f(x),ψj,k(x)> (C.5) 逆変換は,次式となる.
f(x)∼4
j
4
k
dψj,k(x) (C.6)
ここで,dは展開係数,ψj,kはあるアナライジング・ウェーブレットから離散的な平行移動とスケー ル変換によって生成される基底である.基底関数となるマザーウェーブレットは多重解像度解析と呼 ばれる関数空間の階層構造を利用して作られる.
従って,逆変換の右辺の和をとって元の信号f(x)が復元されることは,無条件に保証されていな い.和が正しくf(x)を表すには,右辺のψ(2jx−k)が関数f(x)の属する空間の基底(基底関数)で あればよい.また,離散ウェーブレット変換の特徴は基底が完全正規直交系をなるということで,こ の結果データf(x)のウェーブレット係数dは互いに完全に独立になる.すなわち,ウェーブレット 係数の示す内容はすべてもとのf(x)に起因するものであることが保証される.
関連図書
[1] 山口ら、ウェーブレット解析、科学、60-6(1990)、pp.398-405.
[2] 李ら、ウェーブレット相互相関法による平面噴流の解析、15-Suppl.、2(1995)、pp.81-84.
[3] 榊原ら、ウェーブレットを用いた乾性摩擦の解析法、機講論、No.940-26(1994)、pp.172-175.
索 引
i-mer, 22
アボガドロ数, 114 一般ガス定数, 19, 114 ウェーブレット解析, ix 運動方程式, 34, 36, 39, 42 液相分子集合体, 11, 22 液滴の密度, 118
液滴を含む混合気体の圧力, 21 液滴を含む混合気体の質量, 20 液滴を含む混合気体の状態方程式, 21 液滴を含む混合気体の分子量, 20 エネルギの式, 37, 39, 43
エネルギー方程式, 35 エロージョン, 17 遠心作用の損失, 17 応力テンソル, 38 音速, 20
核生成係数, 25, 116
核生成速度, 22, 23, 118, 122, 125 核生成速度式, 24
ガス定数, 117, 120, 123 加速損失, 17
過熱度, 13 過飽和状態, 11
過飽和度, 12, 117, 120, 123 過冷却状態, 11
過冷却度, 12 完全気体, 21
気体の状態方程式, 19
ギップス-ダルトンの法則, 21 Gibbsのcapillary近似, 25 Gibbsの自由エネルギー, 24 凝縮開始点, 14
凝縮クラスター, 22 凝縮係数, 26, 27, 116
凝縮衝撃波, 14, 15 凝縮速度式, 26, 28 凝縮粒子半径, 25 凝縮量, 13 凝縮領域, 14 均一核生成, 21 均一凝縮, 11 クラスター, 11, 22
クラスター成長速度, 119, 122, 125 クラスターの成長速度式, 26 クラスター半径, 26
古典凝縮理論, 11, 22 古典的な核生成速度式, 25 固有値, 108
混合気体の圧力, 20
混合気体の質量, 19, 118, 121, 124 混合気体の状態方程式, 20
混合気体の定圧比熱, 21 混合気体の粘性係数, 21 混合気体のプラントル数, 21 混合気体の分子1個質量, 21 混合気体の分子量, 19 サーマルチョーキング, 14 サザーランド定数, 119, 122, 126 サザーランドの公式, 119, 122, 125 時間分割法, 111
Sislian, 28 湿り空気, 12
湿り空気の潜熱, 119, 122, 125 湿り空気の表面張力, 118, 121, 125 湿り損失, 17
初期過飽和度, 13
水蒸気の圧力, 117, 120, 123 水蒸気の飽和蒸気圧力, 117 数密度, 23
ストークスの仮説, 39, 43