1.6 × 10
16He/m
2s
図
2.照射時間増加に伴う 300-600K
におけるHe
放出量と
Mixed-material
堆積層の厚さの関係タングステンの水素吸蔵に対する表面改質効果に関する研究
筑波大学数理物質系 坂本瑞樹
1.はじめに
プラズマに照射される材料の表面状態は、照射損傷、スパッタリング、再堆積、バブル形成等の 様々なプラズマ・壁相互作用(PWI
)現象に起因して変化する。この表面改質が壁の水素吸蔵・放 出特性に与える影響の理解は、材料の特性を理解する上で重要である。本研究では、低損耗、高融 点、低水素吸蔵率という特長から現在注目を集めているタングステン材料に着目し、小型の直線型 プラズマ生成装置APSEDAS
を用いた低エネルギー・高フラックスプラズマのタングステンへの 照射及びタンデムミラー型プラズマ閉じ込め装置GAMMA10
を用いた高イオン温度プラズマのタ ングステンへの照射実験を行い、極限環境下におけるタングステン中の水素吸蔵、材料損傷に関す る基礎過程の理解を深めることを目的としている。本報告では、ヘリウムバブルの効果を中心に報 告する。2.実験結果及び考察
タングステン表面へのヘリウムバブル生成はAPSEDAS
を用いて行われた。通常は試料を冷却 ステージにしっかりと固定するが、今回は冷却が効かないようにステージの上に設置した。このタ ングステン試料(ニラコ社製、厚さ0.1mm
)に対して、フルエンス4~8 x 10
25He/m
2程度ヘリウ ムプラズマを照射した。ヘリウムのフラックスは約2 x 10
22He/m
2s
であり、エネルギーは約30 eV
であった。また、タングステンの表面温度は、1700 K ~ 1900 K
であった。このようなヘリウムプ ラズマにより生成されたタングステン表面のSEM
画像を図1に示す。表面に数μm
以下の凹凸や 筋模様ができていることが分かる。また、FIB
加工とTEM
観測を組み合わせた試料の断面画像を 図2に示す。表面直下に約10nm
から200nm
以下のヘリウムバブルが形成されていることが分か る。 ヘリウムプラズマを照射して、表面にヘリウムバブルを形成したタングステン試料に対して、昇 温脱離装置を用いた加熱(昇温速度1 K/s
、最高温度1173 K
)により試料内部のヘリウムの脱離を 3回実施した。これにより、800 K
以下でのヘリウムの脱離は観測されなくなった。この試料に対 して、APSEDAS
を用いて重水素プラズマ照射を行い、その後昇温脱離スペクトル(
TDS
)測定を行った。 今回の実験では、同一のヘリウム予照射試料に対し、フ ルエンスを変えて重水素プラズマ照射とその後のTDS
解析 を繰り返し行った。ヘリウム予照射試料に用いた重水素プ ラズマパラメータは、電子密度が2~3
×10
17m
-3、電子温度 が6
~8 eV
、空間電位が20~30 V
、フラックスが2.6~3.0
×10
21D/m
2s
であり、プラズマ照射中の試料温度は約500K
であった。重水素プラズマの照射時間は、600
秒~約14000
秒であり、重水素フルエンスは1.6
×10
24 ~4
×10
25D/m
2図1 ヘリウムプラズマ照射された タングステン試料表面の
SEM
画像図2 ヘリウムプラズマ照射されたタングステン表面の断面
TEM
画像である。
TDS
の条件は昇温速度1 K/s
、最高温 度は750 K
である。図3
に重水素プラズマ照 射(
フルエンス1.8
×10
24D/m
2)
を行ったヘリウ ム予照射試料の高分解能QMS
解析による昇温 脱離スペクトル(昇温速度1K/s
)を示す。重 水素の脱離が約600 K
以下で起きているのに 対し、ヘリウムの脱離は1000K
以上で主に観 測されている。TDS
中の最高温度が高い場合、材料内におけるバブルの移動
(>1300K)
や高温 側に捕捉されているヘリウムの脱離による特 性の変化が考えられるため、実際のTDS
測定 では最高温度を低く設定(773K
)した。 図4にヘリウム予照射タングステン試料と ヘリウム未照射試料に対する重水素リテンシ ョンのフルエンス依存性を示す。ヘリウムプラ ズマを照射していない未照射タングステンの 重水素リテンションはフルエンスの約0.5
乗で 増加するが、ヘリウム予照射試料では、低フル エンス側ではリテンションが未照射タングス テンよりも1桁以上高いのに対し、高フルエン ス側ではリテンションが飽和傾向にあり、未照 射タングステンとほぼ同じ値になっているこ とが分かる。この現象は、ヘリウムバブル層が、重水素の捕捉サイトになっていることと同時 に材料中の重水素の放出も促進していること を示唆していると考えられる。6番目と7番目 のリテンションが低いのは、それまでの重水素 プラズマ照射と
TDS
の繰り返しにより、ヘリ ウムバブル層の特性が変化したものであると 考えられる。3.研究組織
氏名 所属 職名等 役割分担
坂本 瑞樹 筑波大学・数理物質系 教授 代表者
大木 健輔 筑波大学・プラズマ研究センター 研究員 プラズマ計測 吉川 基輝 筑波大学・数理物質科学研究科 大学院生(M2) 表面計測 野原 涼 筑波大学・数理物質科学研究科 大学院生(M2) プラズマ計測 寺門 明紘 筑波大学・数理物質科学研究科 大学院生(M1) 表面計測 野尻 訓平 筑波大学・数理物質科学研究科 大学院生(M1) プラズマ計測 宮本 光貴 島根大学・大学院総合理工学研究科 准教授 水素吸蔵解析
時谷 政行 核融合科学研究所 助教 微細組織解析
渡邉 英雄 九州大学・応用力学研究所 准教授 所内世話人 吉田 直亮 九州大学・応用力学研究所 名誉教授 微細組織解析
図3 重水素プラズマ照射を行ったヘリウム 予照射試料の高分解能
QMS
解析による昇温 脱離スペクトル図4 ヘリウム予照射タングステン試料と未 照射試料に対する重水素リテンションのフル エンス依存性。図中の数字は重水素プラズマ 照射の順番を示している。
10-11 10-10 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 HeD2
Ion current(A)
Temperature(K)
1020 1021 1022
1024 1025 1026
Hepre W Anneal W
R e ten tio n ( D /m
2)
Fluence (D/m
2)
1 2
4 5
3 6 7
輸送コードに導入するためのジャイロ運動論解析を用いた熱拡散係数のモデリング
核融合科学研究所 登田慎一郎 磁気核融合装置におけるプラズマ閉じ込めを行うには,乱流輸送は最も重要な課題のひとつである。
最近では,トロイダルプラズマにおいて多数のジャイロ運動論シミュレーションが行われている。
LHD
におけるITG
モードや帯状流を研究するのにジャイロ運動論方程式を解くGKV-X
コードが使 われている。LHDでの高イオン温度放電(#88343)
のときに,簡約化モデルχ
i∼ ρ
2tiv
tif ( L , τ ˜
ZF)/R
が提唱されている。L
は混合長概算˜ γ
˜ky/ ˜ k
y2を˜ k
y空間で積分したものである。ここで,γ ˜
˜kyはITG
モー ドを規格化した線形成長率で,˜τ
ZF は規格化した帯状流崩壊時間である。しかしながら,TASK3D
のような動的な輸送コードで時間ステップごとにジャイロ運動論線形シミュレーションを行うのは コストがかかる。なぜならヘリカルプラズマを対象とする輸送解析は,径電場や磁場配位を正確 に評価するために径方向に高解像度が必要だからである。本研究では,低計算コストでの,ジャイ ロ運動論シミュレーションから導かれたITG
モードの乱流熱拡散係数に関する簡約化モデルの適 用方法を示す。簡約化モデルの中の項L
は,動的な輸送コードでのプラズマ不安定性のパラメー ター依存性を含むことが必要である。イオン温度勾配の典型長L
Ti(= − T
i/(∂T
i/∂r))
がL
を,輸送 コードで適用するパラメーターとして選ばれる。磁場配位は輸送シミュレーションの初期状態で固 定される。項L
に対する式をL
Ti に関してモデル化した。帯状流の崩壊時間は磁場配位にのみ依 存し,プラズマ分布には依存しない。従って,帯状流崩壊時間の式は初期状態でのみ計算する必 要がある。項L
とτ ˜
ZF の式を簡約化モデルに代入した計算は,簡約化モデルの値を許容できる誤 差の範囲内で再現できる。輸送シミュレーションでの時間ステップごとで乱流イオン熱拡散係数 の値を得るためのコストは,本研究でのモデリングによれば,線形ジャイロ運動論シミュレーショ ンによるものよりも大きく削減できる。本研究で示すモデリングは輸送コードに適用され,シミュ レーション結果をLHD
における実験結果と比較研究することができる。初めに,LHD での高イオン温度放電
(#88343)
におけるITG
不安定性について考察した。図
1: (a) R/L
Tcと(b) a(ρ)
の径方向依存性 まず,乱流イオン熱拡散係数χ
(1)i/χ
GBi の値は関数L
(≡
∫(˜ γ
˜ky/ k ˜
2y)d k ˜
y)だけで,χ(1)i/χ
GBi= C
0(C
TL )
δ のように近似されている。ここでχ
GBi はジャイロ ボーム因子であり,規格化はγ ˜ = γ/(v
ti/R)
とk ˜
y= k
yρ
ti である。またL
とτ ˜
ZF(= τ
ZF/(R/v
ti))
の関 数であるITG
乱流熱拡散係数の簡約化モデルは,χ
(2)i/χ
GBi= A
1L
α/(A
2+ ˜ τ
ZF/ L
1/2)
のように得られ ている。C0, C
T, A
1, A
2, α
とδ
は数値因子である。イオン温度勾配の特性長が
ITG
不安定性に重要なパラメーターであると考えられている。LTiの関数として, パラメーター
L
は以下のようにモデル化 される。L = a(ρ)
(
R L
Ti− R L
Tc)