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ドキュメント内 第32回日本平滑筋学会総会講演抄録 (II) (ページ 47-50)

図2.  青 斑 核 ア ル フ ァ(LCa),青 斑 下 核(LSC)と 吻 側 橋 網 様 核 背 側 部(PoO)へ のinaperisone注 入 前 後 の 排 尿 量(A)と 残 尿 量(B)の 変 化.

行 った が,2回 目の 注 入 は1回 目 の注 入 の 影 響 が な くな った1時 間 以 上 後 に 対 側 に対 して行 っ た 。

結 果

LCaとPoOへ のinaperisone注 入 前 後 で は 反 射 性 排 尿 が 生 じ,排 尿 量,残 尿 量,膀 胱 容 量 と最 大 膀 胱 収 縮 圧 の い ず れ に も 有 意 差 は な く, 外 尿 道 括 約 筋 筋 電 図 に も 変 化 は な か っ た.LSC へinaperisoneを 注 入 す る と膀 胱 空 虚 時 の 筋 電

図 は 一 時 的 に 増 強 す る 例 も あ っ た が そ の 後 注 入 前 の レベ ル と な り,膀 胱 内 へ 注 入 し て も排 尿 反 射 は 抑 制 さ れ,溢 流 性 尿 失 禁 と な る か,排 尿 反 射 が 出 現 し て も 少 量 の 排 尿 が あ る の み で 多 量 の 残 尿 が 生 じ た(図1).LSCへ のinaperisone注 入 前 後 で 排 尿 量 は5.1±1.3ml(平 均 ± 標 準 偏 差)か ら1.5±1.Omlへ と有 意(p<0.01)に 減 少 し,残 尿 量 は1.6±1.2mlか ら21。0±7.Omlへ と 有 意(p〈0.05)に 増 加 し た(図2).ま た,膀 胱 容 量 も6.7±2.5m1か ら22.5±6.7mlへ と 有 意

(p<0.05)に 増 加 し た が,最 大 膀 胱 収 縮 圧 は 22.8±1.8cmH20か ら18.2±2.2cmH20と 有 意 差 は な か っ た.inaperisone注 入 前 の 反 射 性 排 尿 と 同 程 度 に 回 復 す る に は1時 間 以 上 を 要 し た.薬 剤 注 入 は 血 圧 に は 影 響 を 及 ぼ さ な か っ た.

考 察

私 た ち の これ まで の 除 脳 ネ コを用 い た 実 験 で は,LCaへ の 電 気 刺 激 やcarbachol注 入 は排 尿 を 誘 発 し(Sugayaetal.,1987),LSCへ の持 続 電 気 刺 激 は外 尿 道 括 約 筋 を収 縮 させ て 膀 胱 収 縮 を 抑 制 し た(松 崎,1990).ま た,PoOへ のcarba‑

chol注 入 は 膀 胱 と外 尿 道 括 約 筋 の 両 方 を 弛 緩 させ た(菅 谷 ら,1988)。 した が って,橋 に お げ る膀 胱 収 縮 の 抑 制 は,橋 排 尿 中 枢 で あ るLCaの 排 尿 促 進 機 構 の 抑 制 か,橋 蓄 尿 中枢 で あ るLSC

また はPoOの 排 尿 抑 制 機 構 の 促 進 が 考 え られ

る.今 回 の 結 果 か ら,inaperisoneに よ る膀 胱 収

縮 抑 制 作 用 は,橋 に お い て はLSCの 排 尿 抑 制

機 構 に対 す る促 進 効 果 と考 え られ た 。

文献

松崎章 (1990). 除脳ネコの橋における蓄尿機構に 関する研究.日泌尿会誌81: 672‑679.

森川宏二, 他 (1988). (±)‑4´‑Ethyl‑2‑methy1‑3‑

(l‑pyrrolidinyl) propiophenone hydrochloride  (HY‑770)の膀胱機能に及ぼす作用. 日薬理誌,

92: 311‑324.

能登宏光, 他 (1990). 除脳イヌ排尿反射に対する塩 酸イナペリゾンの作用.日本平滑筋誌, 投稿中.

 Sugaya, et al. (1987). Electrical and chemical  stimulationsof the pontine micturition center.

 Neurosci. Lett., 80: 197‑201.

菅谷公男, 他 (1988). ネコ吻側橋網様核の膀胱平滑 筋抑制作用. 日本平滑筋誌24: 237‑239.

除脳イヌ排尿反射に対する塩酸イナペリゾンの作用

秋田大学医学部泌尿器科 能登宏光,塚田大星,西沢理

菅谷公男,小浜丈夫,下田直威 原田忠,土田正義

はじめに

中枢性筋弛緩剤であるbaclofenは,外尿道括 約筋の活動を抑制するぼかりではなく,膀胱の 収縮をも抑制することが知られている(Taylor and Bates, 1979). Inaperisone hydrochlorid e (HY‑770)は,baclofenと同様に中枢性筋弛緩 剤として開発された薬剤であるが(Morikawa  et al.,1987),最近,Inaperisoneがやはり麻酔 下の動物の膀胱収縮を抑制することが報告され ている(森川ら,1988).今回,過活動性膀胱の モデルである除脳イヌを用いて,排尿反射に対 するInaperisoneの効果を尿水力学的に検討し たところ,興味ある結果が得られたので報告す る.

 対象および方法

 体重2.7‑4.3kgの雑種雌子イヌ6頭を用い た.エトレンと笑気の吸入麻酔下に気管切開を 行い気道を確保した後,両側尿管にカテーテル を挿入して,尿を体外に誘導した.次に,膀胱 頂部から二腔式カテーテルを膀胱内に挿入し て,一方を生理食塩水注入路,他方を内圧測定 路とした.また恥骨の一部を切除し,ワイヤー 電極を直視下に外尿道括約筋に刺入して筋電図

の導出用とした.腹部の創を閉じた後に開頭し, 上丘吻側部で脳幹を切断して除脳した.除脳後 は麻酔を止め,動物を脳定位固定装置に四足立 位の状態で固定し,反射性排尿で排出された生 理食塩水を容器に受けられるようにした.動物 の状態をモニターするため,頸動脈にカテーテ ルを挿入して血圧の測定も行った.

膀胱内に生理食塩水を持続注入することによ り排尿を誘発し,反射性排尿に及ぼすInaper−

isone(0.1,0.3,1.0 mg/kg i.v.)の効果を検討し た.urodynamic parameterとしては,膀胱容 量,排尿閾値圧,最大収縮圧,排尿量,排尿時 間および残尿量を測定した.

結果

生理食塩水の膀胱内への持続注入により,再 現性のある排尿反射を誘発できた.図1に実際 の記録例を示す.Inaperisone投与前には3.7 mlだった膀胱容量が,0.3 mg/kgの静脈内投与 後には4.0ml,1.0mg/kg投与後には5.1mlと 増加している.

Inaperisone 0.1, 0.3, 1.0 mg/kgの静脈内投 与前後の,urodynamic parameterの変動を表 1に示す.Inaperisone投与前には膀胱容量は 6.8±2.5(Mean±S.D)mlだったが,投与後に

日本 平 滑 筋誌26(6)1990391

図1.  Inaperisoneの 排 尿 反 射 に 及 ぼ す 影 響.

表1.  Inaperisone投 与 前 後 の ウ ロ ダ イ ナ ミ ッ ク パ ラ メ タ ー

+:  p < 0

.10,*:  p<0.05,**:  p<0.01,  Mean±S.D.

は そ れ ぞ れ7.6±3.0ml,8.0±2.8m1,8.0±3.0

mlと,推 計 学 的 に 有 意(p<0.01〜0.05)に 増 加 し た.ま た 排 尿 閾 値 圧 は,投 与 前 の7.5±2.0 cmH2Oか ら,そ れ ぞ れ8.2±2.8,8.3±2.4, 8.3±2.5cmH2Oと 軽 度 昇 し た.し か し,最 大 膀 胱 収 縮 圧 や 残 尿 量 は,Inaperisoneの 投 与 前 後 で 有 意 な 変 化 を 示 さ な か っ た.

一 方,Inaperisone  1.0mg/kgの 投 与 後 に は, 外 尿 道 括 約 筋 筋 電 図 が 減 弱 し た が,0.1,0.3mg/

kgで は そ の 効 果 は 弱 か っ た 。

考 案

過 活 動 性 神 経 因 性 膀 胱 や 不 安 定 膀 胱 に 伴 う頻 こ 尿 や 尿 失 禁 に 対 し て は,抗 ム ス カ リ ン 剤 が 有 効 で あ り,一 般 に 広 く用 い ら れ て い る が,膀 胱 収 縮 力 を 抑 え る た め に 症 例 に ょ っ て は 残 尿 が 増 え る と い う欠 点 が あ る.こ れ に 対 し て 今 回 用 い た Inaperisoneは,0.1,0.3,1.0mg/kgの 投 与 量 で

は,排 尿 反 射 の 閾 値 を 高 め て 膀 胱 容 量 を増 大 さ せ た が,膀 胱 収 縮 力 や 残 尿 量 に は有 意 な 変 化 を 示 さな か った.こ の 結 果 は麻 酔 動 物 で の報 告(森 川 ら,1988)と ほ ぼ 同様 で あ り,Inaperisoneは, 今 回 の投 与 量 で は,尿 排 出作 用 に は あ ま り影 響 を及 ぼ さな い で 蓄 尿 作 用 を 促 進 させ る と考 え ら れ た.ま たInaperisoneは 外 尿 道 括 約 筋 筋 電 図 を減 弱 させ た が,膀 胱 容 量 を増 加 させ る投 与 量 よ り も多 い 量 を要 した.中 枢 性 筋 弛 緩 剤 で あ る Inaperisoneが,ど うい う機 序 で 膀 胱 容 量 を 増 加 させ るか につ い て は,今 後 さ らに検 討 を 加 え る 必 要 が あ る が,過 活 動 性 膀 胱 に よ る頻 尿 や 尿 失 禁 な ど蓄 尿 障 害 に 対 す る 治療 薬 と して は,有 用 な 薬 剤 で あ る と考 え られ る.

文 献

Morikawa, K., et al. (1987). Pharmacological studies of the new centrally acting muscle

relaxant 4'-ethyl-2-methyl-3-pyrrolidino-propiophenone hydrochloride. Arzneim.

-Forsh ,/Drug Res., 37: 331-336.

森 川 宏 二,  他  (1988).  (±)‑4´‑Ethylと2‑methyl‑3‑

(1‑pyrrolidinyl)  propiophenone  hydrochloride  

(HY‑770)の 膀 胱 機 能 に 及 ぼ す 作 用.  日 薬 理 誌 92:  311と324.

Taylor, M.C. and Bates, C.P. (1979) A

double-blind crossover trial of baclofen-a new

treat-ment for the unstable bladder syndrome. Br.

ドキュメント内 第32回日本平滑筋学会総会講演抄録 (II) (ページ 47-50)

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