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T1

T4 T3

T2 M

P

U

N

メインIGBT /FWD

主端子

P

E G E G G

E G

ゲート端子 C

コレクタ端子

エミッタ端子 ケース

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n1モジュールで構成すると、各モジュールを接続するためのブスバーとパッ ケージ内部のインダクタンスの合計値が100nH以上と大きく、ターンオフ 時のサージ電圧が大きいという問題があった。そこで、モジュール内部のイン ダクタンスを低減させるために三次元CADシミュレーションを活用し、端子 形状とレイアウトの最適化を行った。

図2.22は、M/U端子の形状を示す。(a)に初期設計時、(b)に最適 化後のM/U端子形状を示す。図中の矢印は主電流の向きを表す。初期設計で は主電流の電流経路は同じ高さ(平面上)になっていた。最適化後では、主電流 は逆方向にオーバーラップするように端子形状を改善し、負の相互インダクタ ンス作用により、内部インダクタンスを低減するようにした。図2.23は、

初期設計と最適化後のモジュール内部における各端子間のインダクタンスの比 較を示す。最適化により、内部インダクタンスを19~45%低減できた。こ れらの施策により、サージ電圧を20%低減することができた[7]。

図2.22 M/U端子形状

主電流の向き

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図2.24は、従来の2レベルインバータ、NPCインバータ、AT-NP Cインバータを同じ条件で運転した時の発生損失と電力を示す。従来の2レベ ルインバータは、第6世代Vシリーズ1700Vの特性として、NPCインバ ータは第6世代Vシリーズ1200Vの特性をそれぞれ用いた。NPCインバ ータモジュールの内部インダクタンスは、AT-NPCインバータと同じと仮 定した。インバータの運転条件は、キャリア周波数3kHz,DC電圧900V, 出力電圧100Aとした。

以上の結果、RB-IGBTを用いたAT-NPCインバータの電力変換効 率は98.57%であり、発生損失は従来の2レベルインバータよりも31%,N PCインバータよりも15%低減された。また、AT-NPCにおいて、双方向

図2.23 各端子間インダクタンスの比較 P-N間 P-M間 N-M間

0 20 40 60 80

初期設計 最適化後

ル内イタン (nH)

端子 19%

低減

39%

低減 45%

低減

- 67 -

スイッチとしてIGBTとダイオードを直列接続した場合と比較して、5.5%

の損失低減ができた。

2.10 まとめと展望

従来の熱拡散による分離層形成方法に伴う問題を克服した新しいハイブリッ ド型の分離層形成プロセスを開発し、耐圧1200VクラスのRB-IGBT を試作した。この1200VのRB-IGBTと1700VのIGBT,FWD を用いたAT-NPCインバータの電力変換効率は98.57%で、発生損失 は従来の2レベルインバータよりも31%,NPCインバータよりも15%低

図2.24 発生損失と電力変換効率

97.98%

98.37% 98.49%

98.57%

0 500 1000 1500 2000 2500

2-Level NPC Level Advanced 3-Level IGBT+Diode

Advanced 3-Level RB-IGBT

発生損失(W)

95.00%

96.00%

97.00%

98.00%

99.00%

Fixed loss Filter loss SW loss Von loss Efficiency

V

DC

=900V,Io=100A,Fc=3kHz,Tj=125DegC

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減される。

このハイブリッド方式を採用したRB-IGBTに関しては、1700Vま で試作[22-24]が行われており、更なる高耐圧化も期待される。

RB-IGBTを使用したAT-NPC3レベルモジュールは、2011年 にUPS(サーバー用)に採用され、2012年には太陽光PCSにも適用され た。図2.25に示すように、RB-IGBT、およびRB-IGBTを適用 したAT-NPC方式は、高い電力変換効率が得られるために、UPS、ID C(Internet Data Center)およびPCSへの適用を中心に、世界のデファク トスタンダードになりつつある。また、この方式は、電車用電源やEV、風力 発電などの新エネルギー分野適用への期待も大きい。今後、更に適用可能範囲 が広がっていくものと考えている。

図2.25 RB-IGBT,AT-NPCモジュールの適用分野

* 1:IDC:Internet ata enter *2:UPS: Uninterruptible Power Supply * 3: PCS:Power Conditioner System

*4 : EV:Electric Vehicle

RB-IGBT,3レベル,電源制御 太陽光PCS*3

風力PCS

グリーンIDC1,UPS電源2

モジュール、ディスクリート製品 小型・軽量化

高効率 高効率 低コスト

高効率 低コスト

軽量化 低コスト

高効率 小型・軽量

小型化 高効率

電車用補助電源,駆動

EV*4

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参考文献

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第3章 高温長時間熱処理により生じるウェハ結晶欠陥

3.1 はじめに

IGBTには、FZウェハが広く採用されている。また、低コスト化に対応 するためにFZウェハの大口径化が進み、最近ではFZウェハで直径200m mまでの供給が可能になった[1]。

ところで、パワー半導体デバイスを安定して生産するためには、大量のウェ ハが必要とされる。しかし、FZ法の原料となる多結晶シリコン棒の大きさに 限界があるため、同一ロットのFZウェハを大量に入手することが難しい。そ こで、長いCZ結晶インゴットを原料としてFZ法を行い、長いFZ結晶を生 産すること[2]が対策となると期待された。ここで懸念されることは、製造方法 に固有の結晶欠陥が発生し、製品に影響を及ぼすことである。

例えば、ここまで述べてきたRB-IGBTを製作するためには、逆方向に 耐圧を持たせるために、素子の端部に高温長時間の拡散によりp+分離拡散層を 形成している[3]が、この工程において未知の結晶欠陥が発生する恐れがある。

もしも使用するウェハに結晶欠陥が存在した場合、およびプロセス工程中に結 晶欠陥が存在した場合には、図3.1、図3.2に示すように、一般には、漏れ 電流が発生してデバイスの良品率を低下させることになる。図3.1は、順漏 れ電流の発生の説明図を示すが、コレクタ側に結晶欠陥がある場合、エミッタ 側から空乏層が広がるために順漏れ電流の絶対値は小さく、増加率も小さい。

図3.2は逆漏れ電流発生の説明図を示すが、結晶欠陥により電子-正孔対が

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発生し、逆漏れ電流が流れる。結晶欠陥密度が多いと、逆漏れ電流も増大する ことがわかる。図3.1中のアバランシェ降伏とは、雪崩降伏とも呼ばれ、空 乏層内に熱励起で発生した電子が空乏層内で電界の力を受けて加速され、格子 に散乱される過程で、価電子を次々と弾き飛ばして自由電子を作り出し、雪崩 のように電子が増えて、大きな電流が流れてしまう現象である。

そこで第3章では、CZインゴットを原料として製作したFZウェハを用い て、半導体プロセスの熱処理や拡散工程で一般的に使われているように窒素雰 囲気中で高温長時間の拡散を実施し、その際に問題となる結晶欠陥として析出 物を取り上げ、その発生と抑制方法について検討する[4-7]。

図3.1 順漏れ電流発生の説明

順漏れ電流

順方向電圧 結晶欠陥

正孔

電子

エミッタ(0V)

ゲート(0V)

n-ドリフト

p+コレクタ

コレクタ電極 pベース

n+エミッタ

ゲート 酸化膜

ゲート 電極

層間 絶縁膜

エミッタ電極

コレクタ (正電圧印加)

e-h+

e-h+

e-h+

e-h+

e-h+

結晶欠陥多い 結晶欠陥少ない

アバランシェ降伏

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3.2 熱処理条件と評価項目

ここでは、使用したウェハと、処理条件を示す。表1は、本研究に使用した ウェハの内容を示す。本論文では、CZ法により育成された結晶インゴットを 用いて生産されたFZウェハを、FZ1と表記した。そして、多結晶シリコン 棒を原料としたFZウェハは、FZ2と表記した。

比抵抗については、FZ1ウェハが28Ω・cm、FZ2ウェハが60Ω・

cmであり異なっているが、その他の直径、厚さ、方位はどちらも同じである。

FZ1ウェハの酸素濃度は、FZ2ウェハの3倍程度である。

図3.2 逆漏れ電流発生の説明

逆漏れ電流

逆方向電圧

結晶欠陥多い 結晶欠陥少ない

結晶欠陥 正孔

電子

エミッタ(0V)

ゲート(0V)

h+

e-h+

e-h+

e-h+

e-h+

e-逆

n-ドリフト

p+コレクタ

コレクタ電極 pベース

n+エミッタ

ゲート 酸化膜

ゲート 電極

層間 絶縁膜

エミッタ電極

コレクタ (負電圧印加)

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CZ法によるシリコン単結晶育成においては、引き上げの途中において石英 るつぼに含まれる酸素が結晶中に溶け込むため、ドーパントを添加しない場合 であっても抵抗率が低くなることから、高比抵抗の単結晶を形成することは困 難である。

FZ1ウェハは、そのCZインゴットを原料として製作したFZ結晶を用い ているために、FZ1ウェハには、酸素濃度がFZ2ウェハの3倍程度入って いる。但し、FZ1ウェハの酸素濃度は、CZウェハの酸素濃度よりは二桁程 度低い酸素濃度になっている。FZ2ウェハは、多結晶シリコン棒を用いた育 成方法であり、石英るつぼを用いないため低酸素濃度、即ち高純度であり高抵 抗のシリコン結晶を育成できる。FZ2ウェハでは、OSF(Oxidation Induced Stacking Fault)核となる酸素析出物が酸素が少ないため存在しないなど、一 般的に欠陥は少ない。

また、ここで使用しているFZ1ウェハ、FZ2ウェハでは、表面にDZ 表3.1 使用ウェハ

表記 FZ1 FZ2

原料 CZ単結晶インゴット 多結晶シリコン棒

比抵抗(Ω・cm) 28 60

ウェハ直径(mm) 150 150 ウェハ厚さ(μm) 500 500 ウェハ方位 (100) (100)

酸素濃度

(atoms/cm) 1.5~3×1016 0.4~1.6×1016

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