2.1 全体構成
QUEST 装置の制御システムは、大きく二つのシステ
ム に 分 け ら れ る 。 一 つ は 、 プ ラ ズ マ 制 御 シ ス テ ム (Plasma Control System, PCS)であって、これはプラズマ の放電を行なっている最中に、リアルタイムに計測機器 等からの信 号を受け取ってプラズマの状 態等 を計 算に て求め、それを基に他の制御機器に指令値等を送出す る シ ス テ ム で あ る 。 も う 一 つ は 、 中 央 制 御 シ ス テ ム (Central Control System, CCS)であって、プラズマ放電 を開始して終了するまでの全 体的なシーケンスを司り、
同時にプラズマの放電の有無にかかわらず機器全般の 監視を定常的に行い、プラズマの放電が安全に行なえ るように警報の発呼や機器の保護動作を行なうものであ る。QUEST 装置はTRIAM-1M装置の稼動終了後に、
同 じ 場 所 に 新 た に リ プ レ ー ス さ れ た 装 置 で あ る が 、
TRIAM-1M装置で使われていたCCSが現在のQUEST 装置でも一部流用されている。一方、QUEST 装置で新 たに設置される周辺機器に対しては、QUEST装置用に 新たに用意したCCSが監視を行なうようにしている。この
ようにQUEST装置におけるCCSはTRIAM-1Mの時か
ら使用している従来のCCSとQUESTの時から使用して いる新規のCCSが並立して動作している状況である。
2.2 中央制御システムについて
従来のCCSはTRIAM-1M装置用に設計・開発され
たものであって、超伝導コイルを冷却するためのヘリウム 液 化 冷 凍 設 備 制 御 盤 や超 伝 導 コイルに通 電 するため の精密直流電源監視制御盤など、TRIAM-1M 装置に 特 有な周 辺 設 備 の監 視 もその役 割 に含まれている。し かし、QUEST装置ではこれらの設備は用いられず、これ らの存在は、従来のCCSを流用することにおいて却って 運用を複雑化させており、CCS 全体のメンテナンス性を 下げてしまっている。また、従来のCCSおよび周辺機器 のユーザーインターフェースは、ほとんどがランプやプッ シュボタンを用いて、ハードウェア的に構成されている。
その例としてFig. 1にTRIAM-1M装置の時から利用さ れている真 空 排 気系 監 視 盤 のユーザーインターフェー ス を 示 す 。 こ の 真 空 排 気 系 監 視 盤 に よ れ ば 、
TRIAM-1M 装置においてプラズマを生成・維持するた
めの超高真 空排気 系、プラズマに燃料を供 給するため のガス導入系、超伝導コイルの超伝導状態を保つため の 断 熱 容 器 真 空 排 気 系 と 3 つ の 系 統 が あ る。 現 在 の
QUEST装置でも、この真空排気系監視盤のユーザーイ
ンターフェースを使用しているが、このうちガス導入系は 使用されなくなっており、断熱容器真空排気系はプラズ マを生成・維持するための真空容器の粗引き系として流 用されている。このように、真 空排 気系 監視 盤で表示さ れている系統 図と、現在 の実 際の系 統は必ずしも一 致 しておらず、現状の実態を反映していない。このようなイ ンターフェースは、事実を誤 認させ、誤操作を招く恐れ があるため、実 態 を確 実 に反 映 しているインターフェー スを提供することが望ましい。しかし、系統をランプやプ ッシュボタンを用いて、ハードウェア的に表現していると、
その修正や変更はなかなか難しいといえる。他方、プラ ズマの生成・維持を行なうために、様々な周辺機器や制 御盤を用いて、それらの間で信号の送受信を行い全体 として協調動作をするのは従来の CCS においても同様 である。1982 年度から建設が開始され、1986 年にファ ーストプラズマの生成に成功した TRIAM-1M 装置にお ける当時の CCS では、それらの信号の送受信に当たっ て、基本的にはその信号ごとにケーブルが用意されてい る。従って、機器間で送受信される信号の種類が多くな るほど、多 くのケーブルを敷 設 する必 要 に迫 られるし、
増設等で新たに信号の種類が増える場合には、新たに ケ ー ブル を 敷 設 す る 必 要 に せま られ る 。 ま た、 当 時 の CCS で使用されているシーケンサは老朽化が進んでお り、代替部品の手配もままならない状況にある。
以上のような事柄から、メンテナンス性を下げてしまっ て い る 従 来 の CCS の 利 用 を で き る だ け 減 ら し て 、
QUEST制御システムの全体的な刷新を行ない、様々な
箇所で現在までの新しい技術を導入したいと考えている。
その対応の一つとして、ユーザーインターフェースのソフ トウェア化が挙げられる。これは、従来の実際のランプや プッシュボタンを、ディスプレイ上にソフトウェア的に表現 するものであって、この機能を提供するために National
Instruments 社が提供するグラフィカルプログラミング言
語 LabVIEW を採 用 することを想 定 して いる。従 来 の
CCS と並立動作している新規のCCS は、この言語を用 いて開発が行なわれている。LabVIEW は、プログラミン
Fig. 1 ハードウェアで構成された真空排気系監 視盤
Fig. 2 GUI の一例。加熱冷却パネルの冷却水およ び圧縮空気を操作するバルブの状態表示とその開 閉を操作するボタン群
グの開発がグラフィカルに行なわれ、グラフィカルユーザ ーインターフェース (Graphical User Interface, GUI)も 簡便に提供できる開発言語である。Fig. 2に GUIの一 例を示す。この例はQUESTのプラズマ対向壁に相当す る加熱冷却パネルにおいて、冷却水および圧縮空気を 操 作するバルブの状 態 表 示 とバルブを開 閉 するボタン 群が表示されている。バルブが閉じている場合には赤い 色のランプが点灯して、開いている場合には緑色のラン プが点灯する。また、開閉の途中段階ではランプが消灯 するといったように、ソフトウェアでユーザーインターフェ ースを構成することで多彩な表現方式が可能になり、ラ ンプの色の変更や系統の変更などにも、柔軟に対応で きるようになる。
QUEST 制御システムの全 体 的な刷 新に関して、他
には Ethernet の積極的な活用が挙げられる。最近は、
多くの計測器や制御器において、LAN コネクタが付い ており、リモートでそれら機 器 を操 作できることが多 い。
Ethernet を用いれば、送受信する情報の種類や量が変
わっても柔軟に対応することができ、従来の CCS のよう に 新 た に ケ ー ブ ル を 敷 設 す る 必 要 は な い 。 た だ し 、
Ethernet を用いた機器間の情報のやり取りに関しては、
TCP/IP, UDP/IPプロトコルやSambaによるファイル共有 など、一般的な技術を用いて行なうことを心がける。これ は、QUEST 実験においては、多くのメーカー製の機器 やソフトウェアが利 用されるはずであり、そのメーカーや ソフトウェアが提 供 する独 自 の技 術 やプロトコルの利 用 は、機 器 間の互換 性を妨げることに繋がると考 えるから である。実際、新規の CCS と他機器の通信で用いてい
る通信は UDP/IP による文字列の通信であって、タブコ
ードとリターンコードをデリミタとして、パラメータ名称とそ の値の送 受 信を行 うという極 めて簡 便な基 本的 技 術が 用いられている。UDP/IP はコネクションレス型のプロトコ ルであり、TCP/IP より信頼性が低いといわれているが、
複数の相手に同じデータを同時に転送することができる などの利 点も有している。この利 点を利 用 して、 新 規の CCS は、UDP/IP のブロードキャストにより、同じネットワ ークにある機器にショット番号や、シーケンスステータス、
シーケンスタイムなどを広報している。また、UDP/IPを用 いることに対して信頼性を上げるために、各機器は通信 相手に対して、定期的にデータを送信するようにしてい る。このようにすることで、パケットロスが発 生しても問題 がないようにしているのと同 時 に、 定 期 的に受 信できて いることを確認することで、送信側の機器が正常動作し ているという確認をすることもできる。
2.3 プラズマ制御システムについて
QUESTのプラズマ制御システム(PCS)は、日本ナショ
ナルインスツルメンツ社製の PXI システムを用いて構成 されている。これは、シャーシにAIO (Analog Input and Output)モジュールやDIO (Digital Input and Output)モ ジュールなど必要なモジュールを差し込んで要求される 機能を構築するものである。
PCS は、計測機器からデータを受け取り、プラズマ等 の状態を計算して、周辺制御機器へ制御信号を送ると いったことをリアルタイムで行なう必 要があり、高 い処 理 能力が要求される。このため、QUEST装置のPCSでは、
PXI システムを分散化、すなわち2台用意して処理能力 を上げている。具体的には、Workstation (WS)と呼んで いる主たるPXIシステムに、Subsystem (SS)と呼んでいる 従たるPXIシステムを用意しており、WSとSS間はリフレ クティブモジュールを介して、データの共有がなされてい る。その同期速度は4kHzであって、128個の倍精度実 数、すなわち1kBytesがWSとSS間で共有されている。
WSとSSは、いずれもIntel社製のQuad Coreが採用さ れており、それぞれのシステムにおいて、各タスクが並列 的に実行されている。
PCS では、ロゴスキーコイルで計測したプラズマ電流 と、フラックスループで計測した磁束、および各 Poloidal
Field (PF) コイルの電流値から、プラズマ由来の磁束を
算出して、プラズマの位置を算出している。これはプラズ マ電 流を一 本 のフィラメント電 流 と仮 定 して、 最 小 二 乗 法を用いてプラズマ由来の磁 束を最もよく再現できるフ ィラメント位置を求めるものである。ただし、ここで用いて いるロゴスキーコイルやフラックスループは、その信号処 理において時間積分を必要とするものであり、僅かな計 測 誤 差 があった場 合 、 長 時 間 の計 測 では誤 差 が積 み 重なって、正確な値が算出できなくなるという欠点がある。
ここでは、この誤差をドリフトエラーと呼ぶことにする。
一方、ホール素子と呼ばれる磁場を計 測するセンサ ーは、時間積分をする必要がなく、センサーの出力電圧 が、そのまま磁場に対応しているので、長時間の計測 に
Fig. 3 3軸ホール素子の外形写真