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分析結果

ドキュメント内 小売業国際化要因の実証分析 (ページ 86-91)

第 5 章 所有特殊的要因としての PB

3. 分析結果

分析結果は表5-3-1のとおりである31。まず、パターン1)の結果から、国際化有無の 決定要因にPB比率の高さは影響しないことが明らかになった。次に、パターン2)の結 果から、海外5 市場以上進出という国際化推進度合いにはPB 比率の高さはプラス要因 となることが判明した。そしてパターン3)の結果から、海外1~4市場進出ではPB比 率の高さはプラス要因にならないが、5 市場以上進出となると PB 比率がプラス要因と なった。これは国際化有無および国際化推進度合いを被説明変数に、PB比率のみを説明 変数とした分析結果でも同様である(表 5-3-2)。以上より、国際化推進度合いにPB 比 率はプラス要因であることが確認できた。

次に、営業利益率は国際化推進要因としてプラス要因になることは認められなかった。

一方、補足分析ではPB比率と営業利益率の間には相関性がみられた(補足:表A-2 )32。 小売業が収益性を高めるために PB を積極的に導入していることが、実際のデータによ る分析においても確認できたことになる。しかし、PB比率の高さは小売業の国際化推進 に影響するものの、営業利益率の高さは影響しなかった。

この理由であるが、ひとつにはデータ取得の制約上、営業利益率が海外市場での実績 を含めた総営業利益率を用いていることがあげられる。さらに、小売業の国際化は途上 にあり、海外市場進出先での収益性向上には時間がかかることが考えられる。小売業は、

近隣諸国に進出することは以前からあったものの、世界的な規模で本格的に国際化を推 進するようになったのはここ10数年ほどのことである。元来が地場産業である小売業は、

地元での知名度は高いものの、製造業のように他市場で築き高めたブランド力をもって 世界的な知名度に発展させている企業は少ない。ゆえに、海外市場進出に際しても、ま ず現地市場で店舗数を増加させ、認知度を少しずつ高めていくことが求められる。出店 してから集客力を高めて利益に反映させるためには時間がかかるため、進出市場数や出 店数の多いことがすぐに営業利益率に結びつかない場合が多々あるのである。ゆえに、

本分析ではプラス要因としての結果は得られなかったが、今後、母数は絞られるものの 本国市場における営業利益率が公表されている企業を対象として時系列データによる分 析に取り組み、営業利益率と国際化推進との関係性を明らかにしていきたい。

そして、本国市場規模がマイナス要因になった。これは本国市場規模が小さい企業ほ ど海外に活路を求めていると考えられる。アメリカの市場規模を100 とすると、日本は

31 5-2節で議論されたPB比率と市場占有化率、PB比率と収益性についても分析を行った。補足に結 果を示す。

32 ただし、PB比率の高さが営業利益率に影響しているのか、あるいは逆かという点については補足分析 では明らかにできなかった。詳細は後述の補足分析を参照のこと。

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40、フランスやドイツ、イギリスは15である33。本論文第2章において、市場規模が大 きなアメリカと日本の非国際化率が高いと述べた。実状を示すデータと分析結果は一致 する。

家電ダミーはプラス要因となった。同業態はほとんど PB を持たず、海外市場販売で もソニー製やフィリップス製といった NBを販売することが主体である 34。ゆえに、そ れら製造企業が有する世界的ブランド力や配送網に影響される部分が大きい。地元食材 を取り扱うことなど、現地適応化戦略を求められがちな食品小売業態と比較すると、国 際化しやすいと考えられる。

表5-3-1:分析結果

パターン1) パターン3)

パターン2)

注: ***:1%有意水準,**:5%有意水準,* :10%有意水準

33 Planet Retailのデータから算出

34 厳密には、特定の家電量販店のみに販売されるメーカー品というのもあるが、現時点ではそれらをPB とはみなしていない。

係数 t-値 PBRATIO 0.54 2.17 ***

NTLSALES 0.43 -0.40

SALESPACE 0.40 1.10

TPROFIT 0.27 0.29

CASHFLOW 0.26 1.09

SALESGROW 0.36 -0.55

MKTSCALE 0.30 -3.12 ***

ELEDUMMY 0.74 2.22 ***

_CONS 0.35 -3.20

係数 t-値 1 | (base outcome) 2 |

PBRATIO 0.77 -0.30

NTLSALES 0.57 -0.29

SALESPACE 0.53 1.32

TPROFIT 0.27 0.53

CASHFLOW 0.32 0.11

SALESGROW 0.37 0.90

MKTSCALE 0.40 1.05

ELEDUMMY 0.94 1.81 ***

_CONS 0.38 -1.63

3 |

PBRATIO 0.77 1.89 ***

NTLSALES 0.61 -0.48

SALESPACE 0.58 1.54

TPROFIT 0.40 0.48

CASHFLOW 0.36 1.02

SALESGROW 0.58 -0.06

MKTSCALE 0.44 -3.19 ***

ELEDUMMY 1.12 2.64 ***

_CONS 0.48 -2.37

係数 t-値

PBRATIO 0.47 1.06

NTLSALES 0.37 -0.50

SALESPACE 0.34 1.62

TPROFIT 0.24 0.60

CASHFLOW 0.20 0.81

SALESGROW 0.26 0.61

MKTSCALE 0.25 -2.63 ***

ELEDUMMY 0.64 2.55 ***

_CONS 0.25 -0.42

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表5-3-2:分析結果(説明変数をPB比率ダミーのみに設定)

パターン1) パターン3)

パターン2)

注: ***:1%有意水準,**:5%有意水準,* :10%有意水準

第5-4節 考察

以上より、PB比率の高さは国際化推進度合いにプラス要因となるということが明らか になった。諸研究において事例として取りあげられたPBは、国際化推進における所有特 殊的優位となりうるとことが実証分析においても確認することができた。ただし、小売業 の業績データやPB比率をはじめとするオペレーションにかかるデータ取得が困難である ことから、本研究における実証分析は一定の条件のもとに行った分析の結果であることは 留意しなければならない。また、PB比率と国際化推進度合における相関性は確認できた が、2006年単年データでの分析であることから、PB比率が高いことが国際化推進に影響 しているのか、国際化推進がPB比率の高さに影響しているのかについては確認できてい ない。さらに、PB比率の高さが本国市場における収益寄与をした結果として海外市場へ の投資力にもつながったのか、あるいはPB比率の高さがブランドとしての知名度につな がり、海外市場におけるマーケティング活動に活かされているのかなどは明らかにできて いない。これらはデータ収集も含めて今後の課題としたい。

本研究においては、PB 開発および販売強化は、小売業の国際化推進における所有特殊 的優位になりうることが確認できたことから、日本小売業は日本市場の消費力低下に呼応 すべく今後国際化を推進していくべきだという議論がある中で、小売業が本国市場にて PB 強化を打ち出している方向性は利に叶っているともいえる。しかし、補足分析でも明 らかなように、PB比率に対して市場占有化比率、営業利益率はプラス要因となっている。

日本小売業界の市場占有化比率は欧米諸国に比べて低く、また営業利益率も同様に低い。

PB 比率の高さが市場占有化比率や営業利益率に影響しているのか、市場占有化比率や営 業利益率がPB比率の高さに影響しているかは本研究では明らかにできなかったが、国際 化推進をふまえた日本小売業のPB強化という視点において研究していく際には、本国市 場における市場占有化比率や小売業の営業利益率との関係も検討が必要であろう。

限られたデータで本格的な実証分析を試みることには困難がつきまとうが、取得できる 限りのデータを収集しての実証分析は、経営学や商学研究で行われている単一企業や複数

係数 t-値

PBRATIO 0.54 1.60

_CONS -0.03 -0.16

係数 t-値 1 | (base outcome) 2 |

PBRATIO 0.57 -0.20

_CONS 0.30 -1.60

3 |

PBRATIO 0.50 2.47 ***

_CONS -1.63 -2.26

係数 t-値 PBRATIO 0.99 2.84 ***

_CONS -0.82 -3.62

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企業の事例分析を補完しうると考える。今後も小売業に固有な国際化推進要因の是非を明 らかにすべく、さらに研究および分析を重ねていきたい。

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補足

第5章において議論されたPB比率と市場占有化比率、PB比率と収益性との関係を分 析した。まず、PB比率ダミーを被説明変数とし、本国の食品小売市場における売上高上 位 5 社の市場占有化比率を説明変数とする実証分析を行った。食品小売市場における上 位集中度を測定することから、第 3 章で用いたデータのうち、食品小売業態を含む企業 62社を抽出し、上位5社の市場占有化比率(FIVE)を説明変数とする分析を行う。

Y(PBRATIO)=α0+β1(FIVE)

その結果、本分析においてもPB比率の高さと本国市場における市場占有化には相関性 が高いということが確認できた(表A-1)。

次にPB比率と収益性について、Ⅲにおける実証分析で用いた全データを利用して分析 を行った。PB 比率ダミーを被説明変数とし、本国市場における売上高、総営業利益率、

キャッシュフロー比率を説明変数とした。

Y(PBRATIO)=α0+β1log(NTLSALES)+β(2 TPROFIT)+β(3 CASHFLOW)

その結果、本国市場における売上高や総営業利益率はプラス要因となることが明らか になったがキャッシュフロー比率は影響がなかった(表A-2)。

以上から、PB比率の高さと市場占有化比率、またPB比率の高さと売上高および収益 性には高い相関性があることが明らかになった。これにより、PBが収益性に貢献してい るのかという疑問は解消され、日本小売業のPB強化戦略の方向性とも合致する。

表A-1:分析結果

注: ***1%有意水準,**5%有意水準,* 10%有意水準

表A-2:分析結果

注: ***1%有意水準,**5%有意水準,* 10%有意水準 係数 t-値

FIVE 0.05 4.22 ***

_CONS -2.57 -4.24

係数 t-値

NTLSALES 0.21 3.92 ***

TPROFIT 0.24 3.68 ***

CASHFLOW 0.20 -0.99

_CONS 0.22 -3.42

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