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使用データと対象小売業

ドキュメント内 小売業国際化要因の実証分析 (ページ 65-86)

第 5 章 所有特殊的要因としての PB

2. 使用データと対象小売業

Deloitte Touche Tohmatsu(2008)およびPlanet Retail社収集の2006年度小売業デー タを利用し、各社アニュアルレポートの情報を追加してデータベースを構築した。なお、

営業利益率に限っては、年毎の差異を考慮し、2002-2006年の5年間の平均値とする。

データの特徴を表4-2-1に示す。

対象小売業はDeloitte Touche Tohmatsu(2008)が発表している世界売上高上位250 社のうち、商品と店舗および付随する知識の海外移転を要しない小売業態(アパレルな ど自社ブランドを持つ専門店業態)および無店舗販売業態を除いた146 社を選出した。

このうち、収益性をはかる営業利益率が非公表の小売業を除いた計104社を対象とした。

表4-2-1:分析データの特徴

3)分析手法

被説明変数(従属変数)には、海外市場進出を 1、本国市場のみを 0 とする「小売業 が国際化するか否か」を示す国際化ダミー(INT)を用いるプロビット分析モデルで行 う19

Y(INT)=α0+β1log(NTLSALES)+β2log(MKTSCALE)

+β3(COMRATIO)+β4(TPROFIT)

+β5(PLCDUMMY)+β6(FOODUMMY)

18 本国事業の営業利益率を公表している小売業の平均本国営業利益率は4.67%、海外事業を含めた平均 総営業利益率は4.19%である。

19 なお、同時にロジスティクス分析も行っているが、データ数が104と少ないため、プロビット分析と の差が出る結果は得られなかった。本論文ではプロビット分析の結果のみ掲載する。

平均 最大値 最小値 平均 最大値 最小値 平均 最大値 最小値

海外市場進出数 8 34 1 0 0 0 4 34 0

本国売上高(100万US$) 20,350 281,806 950 11,684 68,957 1,143 16,183 281,806 950 本国市場規模(100万US$) 1,131,025 3,003,193 27,955 1,518,155 3,003,193 66,614 1,317,146 3,003,193 27,955 本国市場上位集中度(%) 27.0 46.0 2.1 25.1 43.3 1.1 26.2 46.0 1.1 本国市場における売上高シェア(%) 9.4 33.9 0.2 5.2 28.4 0.1 7.3 33.9 0.1 06年総営業利益率(%) 2.7 8.5 -3.7 2.5 9.1 -0.8 2.6 9.1 -3.7 企業数

上場企業数

食品小売業態を含む企業数

51 38 89

35 38 73

非国際化 合計

国際化

54 50 104

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4)分析結果

分析結果は表 4-2-2 のとおりである。この結果から小売業の国際化に影響を与える要 因を係数推定値の統計的有意性が高い順に整理すると以下のようになる。

① 本国市場規模はマイナス要因となりうる

② 食品小売業はマイナス要因となりうる

③ 企業の上場はプラス要因となりうる

④ 本国市場売上高の高さ(企業規模)はプラス要因のひとつとなる傾向にある

⑤ 本国市場の上位集中度の高さが国際化にプラス要因となる傾向はうかがえない

⑥ 収益性の高さが国際化要因のひとつとなる傾向はうかがえない

表4-2-2:分析結果

注: ***1%有意水準、**5%有意水準、* 10%有意水準

本国市場の規模が大きく成長が見込めれば、あえて国際化の必要はないためマイナス 要因となりうる。対象企業146社のうちの44%を占める本国市場規模第1位のアメリカ、

同第 2 位の日本の小売業の非国際化比率も影響していると考える。食品は地域特色が出 やすいため、家電や住関連品などに比べて国際化が困難といえる。一方、本国市場にお ける売上高や株式上場は、企業基盤や資金調達力を示し、国際化を進める基礎になるた め、プラスになりえる。そして、欧州の一部の国においては小売企業の大規模化、市場 における上位集中化が進み、海外市場に販路を求める傾向があると議論されてきたが、

世界上位小売業を対象とした本分析において上位集中化は国際化有無の要因とはならな かった。最後に、収益性は国際化の有無を決定する要因とはならなかった。収益性が低 くとも、資金調達力があれば国際化しうることが考えられる。また、国際化し、売上高 規模は大きいものの収益性は低迷している小売業があることも考えられる。

2. 食品小売業の国際化要因分析

上記の多業態による分析結果では、食品小売業ダミーがマイナスとなり、食品小売業は 他業態に比して国際化の決定に負の影響を与えることが明らかになった。食品が現地適応 化を求められる商品であること、また食品小売業は参入市場別に業態および付随する知識 を適応させていくマルチナショナル戦略を基本とすることが、実証分析によっても確認さ

変数 係数

_CONS 5.388 1.900**

log(NTLSALES) 0.368 1.620 log(MKTSCALE) -0.730 -3.480***

COMRATIO 1.213 0.590 TPROFIT 0.025 0.270 FOODUMMY -1.423 -2.420***

PLCDUMMY 1.920 2.300**

t-値

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れたことになる。

次に、食品小売業における国際化決定要因を分析し、同小売業独自の要因を検証する。

その際、上記本章本節 1. 小売業の国際化要因分析(以下同)で行った分析のうち、食品 小売業のデータを抽出して行う。

1)分析対象

本節 1. の分析対象のうち、食品小売業ダミーを除いた 5 要因を説明変数とするプロ ビット回帰分析を行う20

・小売企業要因

本国売上高(NTLSALES):本国市場における売上高 総営業利益率(TPROFIT):小売業の総営業利益率 上場企業ダミー(PLCDUMMY)

・市場要因

本国市場規模(MKTSCALE):本国市場の小売総売上高

上位集中度(COMRATIO):本国市場規模に占める同国を本国とする 小売業の売上高比率

2)分析データの特徴

分析対象は、本節1. の分析対象104社のうち、本論文で定義する食品小売業73社で ある。そのうち、海外に1市場でも進出している企業は35社、本国市場のみで事業を 行っている企業は38社である。

表4-2-3:分析データの特徴

20 なお、同時にロジスティクス分析も行っているが、データ数が73と少ないため、プロビット分析との 差が出る結果は得られなかった。本論文ではプロビット分析の結果のみ掲載する。

平均 最大値 最小値 平均 最大値 最小値 平均 最大値 最小値

海外市場進出数 7 31 1 0 0 0 4 31 0

本国売上高(100万US$) 25,759 281,806 950 13,608 68,957 1,143 19,434 281,806 950 本国市場規模(100万US$) 718,046 3,003,193 27,955 1,572,148 3,003,193 66,614 1,156,960 3,003,193 27,955 本国市場上位集中度(%) 25.0 46.0 2.1 27.0 43.3 5.0 26.0 46.0 2.1 本国市場における売上高シェア(%) 11.2 33.9 0.3 4.4 19.4 0.1 7.7 33.9 0.1 06年総営業利益率(%) 3.0 8.5 0.5 2.5 6.6 -0.8 2.7 8.5 -0.8 企業数

上場企業数 32 27 59

国際化 非国際化 合計

35 38 73

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既存研究および仮説より、本国市場要因や企業要因の国際化への影響をはかるべく、

変数 係数

_CONS -0.351 -1.160***

log(NTLSALES) 0.581 1.920* log(MKTSCALE) -1.357 -3.750***

COMRATIO -0.104 -0.340 TPROFIT 0.168 0.510 PLCDUMMY 0.826 2.670***

t-値

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プロビット分析およびマルチプロビット分析を行う。国際化の有無と国際化推進の度合 いを分析のパターンに応じて被説明変数とし、国際化有無、国際化推進それぞれにおい てどのような要因が影響するのかを分析する。なお、国際化推進についてはパターン 2 とパターン3に分け、推進度合いによる影響分析を目的とする。度合いの分類であるが、

欧州やアメリカは2~3市場は陸続きで進出できる国がある。5市場以上になると陸続き の国だけではない進出になる国が増える。そして10市場以上となると自国が所属する地 域以外の地域にも進出する国が多くなる。以上の観点から分類を決定した。一方、説明 変数については、既存研究および現状整理で指摘された要因を用いる 21。以上より、被 説明変数および説明変数を以下に設定する。

・被説明変数

【プロビット分析】

パターン1)国際化有無(INT1;(国際化=1、非国際化=0))

【マルチプロビット分析】

パターン2) 国際化推進度合い(INT2;(海外5市場以上進出=2、海外1市場以上5 市場未満=1、非国際化=0))

パターン3) 国際化推進度合い(INT3;(海外10市場以上進出=2、海外5市場以上 9市場未満=1、海外市場4市場未満(非国際化含む)=0))

・説明変数

本国売上高(NTLSALES):

本国市場における売上高(自然対数に転換)

本国市場シェア(NTLSHARE):

本国市場における当該小売業の売上高シェア 本国市場規模(MKTSCALE):

本国市場の食品小売業総売上高(自然対数に転換)

上場企業ダミー(PLCDUMMY)

2年前本国売上高(SALESTWOYRAGO):

本国市場における当該年の2年前の売上高(自然対数に転換)

2年前からの売上高成長率(GROWTHTWOYRAGO): 本国市場における当該年の2年前からの売上高成長率

なお、ラグの存在を考慮するために設定した2つの説明変数である2年前本国売上高

(SALESTWOYRAGO)、2 年前からの売上高成長率(GROWTHTWOYRAGO)を用

21 横井(2009b)にて、既存論文より小売業国際化要因を整理しており、それらをもとに横井(2009a

にて国際化要因を説明変数とした実証分析を行っている。

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いる分析を変数①、さらに1年前となる3年前本国売上高(SALESTHREEYRAGO)、 3年前からの売上高成長率(GROWTHREEYRAGO)を代入する分析を変数②とし、そ れぞれパターン1)~3)の分析を行うことで、経年度合いの差による結果が異なるか 否かをも確認する。

2)使用データ

Deloitte Touche Tohmatsu(2008)の小売業売上高上位250社のうち、食品小売業96 社を抽出し、同96社の2000年から2009年までの10年間のデータをPlanet Retail社収 集データを利用し、各社アニュアルレポートの情報を追加してデータベースを構築した。

変数①では、説明変数である2年前本国売上高(SALESTWOYRAGO)、2年前からの 売上高成長率(GROWTHTWOYRAGO)を有することから、2002年~2009年のデータ であり、変数②では3年前本国売上高(SALESTHREEYRAGO)、3年前からの売上高成

長率(GROWTHREEYRAGO)を有することから、2003 年~2009 年のデータで構成さ

れている。変数①および②のデータの特徴は以下のとおりである。

表4-2-5:変数① データの特徴

表4-2-6:変数② データの特徴

説明変数 データ数 平均 分散 最小値 最大値

log(NTLSALES) 754 3.922045 0.510791 2.686636 5.545959

HMMKTSHRE 754 7.303316 7.639972 0 34.1

log(MKTSCALE) 754 5.476969 0.655287 3.932423 6.332229 PUBLICDM 754 0.632626 0.48241 0 1 log(SALESTWOYRAGO) 754 724.1099 4910.45 1.875061 53668 GROWTHTWOYRAGO 754 1.235419 0.397833 0.200593 7.4 被説明変数(パターン1))データ数 平均 分散 最小値 最大値

INT1 754 0.485411 0.500119 0 1

被説明変数(パターン2))データ数 平均 分散 最小値 最大値

INT2 754 0.770557 0.830452 0 2

被説明変数(パターン3))データ数 平均 分散 最小値 最大値

INT3 754 0.370027 0.679585 0 2

説明変数 データ数 平均 分散 最小値 最大値

log(NTLSALES) 658 3.945504 0.504674 2.731589 5.545959

HMMKTSHRE 658 7.33997 7.631817 0 32.9

log(MKTSCALE) 658 5.497901 0.64408 3.996336 6.332229 PLCDUMMY 658 0.632219 0.482568 0 1 log(SALESTWOYRAGO) 658 666.5381 4571.642 1.875061 43965 GROWTHREEYRAGO 658 1.405727 0.691933 0.167233 12.44 被説明変数(パターン1)) データ数 平均 分散 最小値 最大値

INT1 658 0.489362 0.500267 0 1

被説明変数(パターン2)) データ数 平均 分散 最小値 最大値

INT2 658 0.775076 0.831927 0 2

被説明変数(パターン3)) データ数 平均 分散 最小値 最大値

INT3 658 0.37386 0.682495 0 2

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