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写真8:押し出した余韻
3)指導実践の結果及び考察
指導実践は,2010年10月4日に,兵庫県三田市内の少女バレーボール経験者小学六年 生女子児童10名を対象とし,兵庫県三田市立A台小学校の体育館にて実施した。指導形 態は一斉指導を行い,毎プログラムごとに活動内容を明確に説明した上で示範をし,被験 者の学習状態がどの形成位相にあるかを探りながら指導を進めた。指導中には,被検者個々 人の動きに注意しながら観察をし,運動中にて探索位相と見られる被験者を発見した場合,
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その被験者を対象としながら,練習を一度止め,全体に聞こえるよう動きの重要部分を細 かく説明した。次に,偶発位相・形態化位相に移行しそうな被験者に対し,指導者側がよ り大きな声でリズムをとるように連続的に声かけを行った。観察によってできたような感 覚を持った被験者には,動きの感覚がわかったか感想を聞くようにした。
その結果,大半の被験者が偶発位相時に動感化能力が発生し,リズミカルに運動を行え るようになった。また,動感化能力が発生していなかった被験者も,コツをつかむことの できた被験者のタイミングの取り方やリズミカルな動き見たり,指導者の声かけを聞きな がら運動することで,徐々にそのリズムが自分の中に入り込み,偶発位相へと導けたケー スも確認できた。
【指導実践による個人の成果】
被験者Aは,風船練習において,最初の段ボールによる面づくりの重要性は理解できた が,風船を打つと,飛ばしたい方向へはなかなか行かなかった。ここで,形成位相による 被験者Aの状態は,探索位相が続いていることがわかった。そこに「手首をロックし,段 ボールの面を上に向けたまま押し出す」と指導を加えると,被験者Aはただちに動きの感 じをつかみ偶発位相へと移行した。その後,連続して風船を上げることができ,図式化位 相へと移り,動きの感覚を感じ取ることができた。ここで,動感化能力における定位感能 力の発生により,自分の身体の中に絶対ゼロ点をおき,空間での位置感覚や体勢のとり方 を覚えることができた。この時の探索位相時では,風船にゼロ点を置いていたため,風船 の動きに合わせて自分の体を動かしていたことで,動きがっかむことができなかったので ある。その他にも,風船を自由に操る自在化能力,面の角度をそのまま風船に伝えること ができた伝動化能力が養えたことで,風船を自在に操ることができた。
バスケットボール練習では,最初は,ボールの重さによって片手で捕らえられず探索位 相が続いたが,「手首の柔軟性と肘の屈曲を使う」との指導を加えると,一度の偶発位相か ら連続して運動が行える図式化位相へ移行することができた。この練習では,ボールの重 量感により,手首の柔軟性や5本の指で包み込むような感覚となるハンドリングの「緩衝 動作」を習得することができ,動感化能力の発生は,ボールを押し出す方向へ余韻を残し たり方向を定めるための伸長化能力,タイミングを整えたり,次への動作など全体の動き を整える調和化能力が養うことができた。
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指導実践結果より,指導前後のパス動作を比較すると,
指導前はオーバーハンドパス動作において「はじく動作」
が目立ち,パスをした後のボールの軌道を追うような余 韻もなく,手のひらが左右に開いた状態になった。(写真 9)しかし,指導後には,上記の動感化能力が発生・充実 し,ハンドリングの動きを覚えたことで理想的なフォー ムとなったのである。(写真10)この時,発生論的運動学 の指導プロセスによって指導者がとった行動は,被験者 の学習状態(探索位相であること)を見抜き,何に困っ ているかに共感しアプローチをした。ここで大切なこと は,指導者側の考える詳細な動き(バスケットボールを 例にとると「準備局面からボールの軌道に手のひらを合 わせ,主要局面では手首の柔軟性と肘の屈曲を活かしボ ールを一瞬手の中へ入れ押し出す,終末局面ではボール の軌道を追いかけ真直ぐに手を伸ばす」)を専門用語や局 面構造などの難しい言葉で伝えるのではなく,できるだけ わかりやすく簡単に,示範や被験者の動きを映しだしなが
ら説明することである。
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写真9:実験指導前
ここでの指導実践において,有効であったアプローチは,運動学的用語を使わずに話し 言葉で説明し,運動中に指導者が「できた」と判断した瞬間に,「できてるよ」「それを続 けよう」「そうだそうだ」と声かけをすることで,実施者は「偶然かな」と思ったものが,
「できたんだ」という動きの感覚をつかみ取り,偶発的に手の中ヘボールが入る感覚をつ かむことができる(偶発位相)。その後,ボールの重みや丸いといった形状を感じながら,
無駄な手首の返しを使うことなく,連続して押し出せるようになる(図式化位相)。最終的 に,他者との関わりの中でも自在に動くことができるようになり(自在位相),このプロセ スを経て,被験者は運動を覚えることになる。
指導終了後のインタビューからも「風船とバスケットボールの練習によってハンドリン グがわかったような気がする。風船は,軽くて形が悪いことからしっかりあてることが大 切だと感じ,バスケットボ・一一一ルは,重たく感じたが,しっかり手に入った感じがした。」と 答え,自らの感覚で動きを感じることができた。
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写真11:被験者Aの安定した壁パス,一度手の中で止まっているような緩衝動作
被験者:Bは,被験者Aと同じく,バスケットボール練習において,形成位相による被験 者Bの学習状態が探索位相であることを確認した時点で,被験者Aと同じアプローチを行 った。被験者Bは,偶発位相への移行は早かったものの,連続して行う図式化位相までは なかなか到達できなかった。その原因は,被験者Bの持つリズム感にあると考える。この ケースから,単発となる一回きりの動きはできるが,リズム感よく連続的に動くことがで きなければ図式化位相へ移行することは難しいことがわかった。そこで,図式化位相への 移行が遅い場合の対処方法として,連続動作に必要なリズム感を覚えさせるために,被験 者のそばでリズムをとるように「はい,はい,はい」「そう,
そう,そう」など(時には手拍子)の声をかけることが有効 であることがわかった。最終的に被験者Bは,自在位相に到 達することはできなかったものの,動感化能力の発生は,ボ ールの重量感により手首の柔軟性や5本の指で支える感覚な
ど伸長化能力・調和化能力が養えた。
指導実践結果より,指導前後のパス動作を比較すると,指 導前の直上パスでは,身体の傾きから右にボールが流れるケ ース(写真12)が多くみられたが,指導後にはハンドリングに よるボールの捕らえ方が良くなり,動きまわることが少なく なり安定した位置取りや姿勢で運動ができた。(写真13)よっ て,ボールの落下位置が予測できる予感化能力,空間での位 置感覚を知ったり体勢のとり方を考える定位感能力が養われ たことから,指導の成果は認められる。
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指導終了後のインタビューからも「バスケットボールの片手パスで,手首を柔らかくする ことができた。オーバーハンドパスにとって,柔らかくパスを出すことは,とても大切だ と感じた。」と答え,自らの感覚で動きを感じることができた。
写真14:被験者Bの壁パス,緩衝動作により柔らかくボールを押し出し目標物へあてる
被験者Cは,被験者AやBとは違い,表面的には運動ができているものの,内面的に は自らの感覚で動きを感じとることはできていないという,決定的な違いがある。バスケ
ットボール練習において,形成位相による被験者Cの学習状 態が,探索位相であることを確認した時点でアプローチを行 い,偶発位相へ移行(「できた」という評価)したと思われる 時点で,その瞬間に声かけをした。しかし,指導者の目で評 価できるところまで到達しているにもかかわらず,実施身自
らの感覚では「できた」と感じ取れていなかった。このケV一一・
スを回避するための策として,指導者側の動感促発身体知の 代行身体知を活用し,評価ができるようになった「できた」
という被験者の運動実態と,探索位相時の「できなかった」
被験者の運動実態とを代行する,被験者の目の前で運動中の
「できた時の姿」と「できていない時の姿」を映し出す(真 似る)ことで,自らの動きは「できた」ものと認識させるこ
とができると考える。しかし,被験者Cに試みたが,「何故 できたんだろう」としか感じ取れず,内面と外面のズレを埋 めることはできなかった。指導実践結果より,指導前後のパ ス動作を比較すると,指導前では右手足が下がっていた(写 真15)が,指導後では理想的なフォーム(写真16)に近づくこ 38
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