-89-パコト叫ご
tl肋 、
y〈〉N02
N N- a+
P==o陥芝
.N- N a+
y〈トO2
N- Na+
3-4 アソゃベンゼン色素のハロクロミズムに及ぼす溶媒効果
アゾベンゼン色素に対する金属イオンの付加反応活性は金属 イオンの溶媒 和の程度に依存する。 金属イオンと指示薬色素の種類を固定した場合、 極性、
あるいは溶媒和能の大きな溶媒中で金属イオンは溶媒和され、 その求電子能を 低下するため、 色素のハロクロミズムの応答が低下すると予測される。 ベンゼ ンからメタノールに至る極性及び溶媒和能の異なる溶媒中で、 Na TFPBーアゾ 色素(1 5)錯体の吸収スペクトルに及ぼす溶媒効果を観測した。 その結果を 溶媒のドナー数、5.6) Er値7)及び誘電率と併せて、 Tめle 3-6にまとめた。
Table 3・6. Solvent 目的ts of Na TFPB -(MeO)� B Complex.
Solvents Absorption Maxima Solvent Parameters
ìmax I rm ε ì..max I rm ε DNω Er�
Hexaned) sæ 7,f:l1J 340 5,500 . 31.0
CCI4 512 20,銃犯 341 11,以)() ー 32.4
Benzene 511 2O,3(氾 340 8,800 0.1 34.3
Toluene 512 19,300 お4 11,7'∞ . 33.9
Diethyl Ether 497 9,300 342 9,900 192 34.5
Chloroform sæ 17,銃刀 344 10,71∞ . 39.1
Dichloromethane 反あ 12,7∞ 3æ 8,ぼ氾 . 40.7
Acetone 479 6,400 342 7,800 1 7.0 42.2
Acetonitrile 471 4,以)() お2 8,300 14.1 45.6
Methanol 446 3,銃氾 347 14,300 19.0 55.4
a) DN : donor number; Ref. 6. b) Ref. 7. c) DC : dielectric constants; Ref.6 d) Sat urated solution
ー91-DCC) 1.88 223 227 2.38 4.20 4.81 8.93 20.日
32.飴
ヘキサンには試料が完全に溶けず、 飽和溶液となった。 そのた め 、 比較する ことはできないが、 参考のために吸収極大波長と完全に溶 けた と仮定した時の 見かけのモル吸光係数εを示した。
溶媒効果を考察する上で、 溶媒和能の高い溶媒群(A)ジエチルエーテル、
メタノール、 アセトン、 アセトニトリルと低い溶媒群(B)ヘキサン、 ベンゼ ン、 トルエン、 四塩化炭素、 クロロホルム、 ジクロロメタンに分けて、 アゾ色 素の吸収スペクトルに対する効果を調べた。 各溶媒中における 吸収極大波長と モル吸光係数の関係を溶媒群別にFig. 3-3, 3-4に示した。
Z以刃 2政x)
•
口v・・
E 1側
1
・8 •
ε 15000
ロ0• 。.ρ
A
4∞ ぼ氾
gx:ぬ 3x) o
:m fffi 4∞ f1X) 00)
Wavelength / nm Wavelength / nm
Fig.3・3. Solvent Effects of Na TFPB -Azo Dye (j豆) Complex in Solvating Solvents (A).
Fig. 3-4 . Solvent Effects of Na TFP8 -Azo Dye (ユ亘) Complex in
Non-solvating Solvents (8).
溶媒和能の高い 溶媒群(A)の場合、 Na TFPB-アゾ色素錯体の 吸収は500nm 以下に現われ、 溶媒の誘電率が高くなるにしたがって浅色効果及び淡色効果が 見られる(Figふ3)。 アゾ色素固有の300nm付近の吸収極大の吸光度よりも、
錯体に帰属される 500nm付近の吸収極大の吸光度が小さいことから、 錯体か らナトリウムイオンが解離したことが伺える。 これは、 錯形成してい たナト リ
-92-ムイオンの求電子能が溶媒和によって低下するためと考えられる。
__.方、 溶媒和能の低い溶媒(B)の場 合、 Na TFPBーアゾ色素錯 体の吸収極大 は、 いず、れの溶媒においても、 510 nm付近に現われ、 溶媒の種類による 極大 吸収波長の変化はほとんど見られない(Fig.3-4)。 また、 300nm付近の吸収よ り500nm付近の吸収が大きくなっていることから、 Na TFPBーアゾ色素錯体の 錯形成の割合 が、 溶媒和能の高い溶媒(A)の場合より大きいこと がわかる。 ク ロロメタン類溶媒の場合に、 顕著に認められるように、 溶媒和能の低い溶媒 ほ どNa官'PBーアゾ、色素錯体の見かけのモル吸光係数εの値が大きくなっている。
この濃色効果の大きさは、 ジエチルエ ーテルの場合を除い て、 誘電率との相関 が認められる。
ジ、エチルエーテルの場合、 Erfl直がベンゼンと同程度の低い 値にも拘わらず、
ハロクロミズムの大きさは、 吸収極大波長シフト及びεの 値共にベンゼン中に 比べてかなり小さな値となっている。 ジエチルエーテルのドナー数がメタノー ルに匹敵する大きな値を示すことから伺えるように、 エー テル酸素の大きな電 子供与能によ って、 錯形成していたナトリウムイオンを溶媒和し、 Na TFPB ーアゾ色素錯体を解離させることが考えられる。
-93-3-5 実験
3ふ1 倒的)4ABのプロトン付加体のモル吸光係数( ε)
溶媒にはジクロロメタンを用い、 プロトン源にはH30TFPBを 用いてアゾ色 素のプロトン付加体の調製を行った。 H30百PBは同体積(5 ml)の1 .00 X 10-4
MNa TFPBと0 .2MHClを振とうすることにより調製した。
Table 3・7. 有砲Spectral Changes of Protonated (MeO).A B in Dichloromethane.
[ (MeO)4A B ] = 3.4 X 10-6 M
Entry Conditions 山Irm Absorbance
blank fro 0256
2 Na TFPB ( 1 eq.) fffi 1.035
3 Na TFPB (2 eq.) 反応 1.ω9
4 HCI* 4汚 0.336
5 Na TFPB ( 1 eq.), HCI* 反応 1.476
6 Na TFPB ( 2 eq.), HCI* fJJ7 1.371
7 H30 TFPB (1 eq.) 日7 1264
8 H30 TFPB (2 eq.) fffi 1辺5
9 H30 TFPB (2 eqよHCI* fJJl 1ぷ訓D
10 2,6・Lutidine (万eq.) 442 0.1ω
* Dichloromethane phase was equilibrated with 0.2 M HCI 3 ml.
TFPBが存在しないと、En句r4に示すように、 ジクロロメタン相にプロトン は抽出されず、 プロトン付加体がほとんど生成しない。
Fntry 4 - 6, 9に示すようにジクロロメタンと塩酸とのこ相系におい て 、 プロ
トン化を行うと吸光度の値が増加する傾向がある。 本質的には、 ナトリウムイ オンが水相に抽出されるため、 イオン交換によって プロト ン化反応が促進され ることによるものと推察されるが、 実験操作上、 ジクロロ メタン相の容積変化 を伴うため、 吸光度増大の全てをプロトン付加体生成に帰することはできない。
1.00 X 10-4 M H30 TFPB 2 mlと1.02 X 10-4 M (MeO)4AB 1 mlを混合した試料 (Entry 8)の吸収スペクトルより、 プロトン付加体のεを算出した。
506 nm 1.325 Abs→ ε/αn mol/l = 3.90 x 104 , log(ε/αn M) = 4.59
-94-3・5・2 アルカリ金属ホウ酸塩によるアゾベンゼン色素のハロクロミズム
5.53 X 10-4 M (MeO)4AB 1.00 mlとTable 3-8に示した試薬(1.00 mlないし2.0 0 ml)を混合し、 全量が10.00m lとなるようにジクロロメタンで希釈して吸光度 の測定を行った。 飽和溶液となっているものについては、 飽和溶液(約6ml ) に、 (Meü)4AB(1.00 ml)を加えて10.00 mlに希釈し、 固体が共存している状 態の上澄み液を測定した。
Table 3・8. Preparation of Reagents
Reagents FW Weight Volume Conc.
/ mg /αn3 / mol dm-3
(MeO),/\B ま氾33 4.1ω 25 5.53 X 10-Õ
Li TFPB.4H20 制2.22 3.8 10 3.9 X 10-4ω
Na TFPB.2.5H20 931.29 6.5 10 6.7 X 10-4ω
K TFPB・0.5H20 913.84 4.0 10ω 5.5 X 10-õω R b TFPB・0.5H20 957.07 42 10ω 8.7 X 10-õω
Cs TFPB 996.11 7.8 10ω 7.2 x 10るω
Li HFPB.4H20 1838.75 5.5 10 3.0 X 10-4ω Na HFPB.4H20 1854.80 6.1 10 3.2 X 10-4ω
Cs HFPB 1関1.64 5.7 10 3.4 X 10-4ω
Me4N HFPB 1833.ω 5.0 10 2.9 X 10-4ω
18・Crown-6 264.32 132 10 5.∞X 10-3
a) Determined by absorbance a∞ording to the following equations;
了間: A = 4720 C -0.002, .l = 0.999 (270 nm)
HFPB: A = 日ωC - O.∞4,子=1.000 (273 rm ) b) Saturated solution.
-95-3・5・3 アゾベンゼン色素のクロモトロピズムに対する置換基効果
アゾベン ゼン色素(生、i三、1 4、 (MeO)4AB(J_QJ、 2人6-trimethoxy-3',5'・bis(凶fluorome出yl)位。benzene (1 6)、 4-me出0勾r-4'-(dime血ylamino)azobenzene (1 7)、4-(dime白ylamino)azobenzene (_l_�_)、 伯仲0勾留めenzene (l_jL)、 2,4-di
me出0勾r-4'-耐oazobenzene (2 0)、 4-me出oxy-3',5'-bis(削uoro脱出yl)位obenzene (2 1 )、 4・me出oxy・2',4'-d泊itroazobenzene (2 2)、 4-(4-me出0勾phenylazo)te回
f1uoropyridine (_g三))の1 X 10-4 Mジクロロメタン溶液を調製し、 この溶液1.00 叫にジクロロメタン2.00 m1を加えて吸収スペクトルを測定した。
同じ濃度のNaTFPB溶液を調製し、 アゾベンゼン色素溶液とジクロロメタン 各1.00 mlづっ合計3.00 m1を混合して吸収スペクトルを測定した。
-96-3・5-4 アゾベンゼン色素のハロクロミズム及ぼす溶媒効果
(MeO)4AB (FW = 302.33) 3.589 mg ( 1.19 x 10・5 mol)とNa宵PB・2.5H20 (FW = 931.29) (同仁化学製) 11.040 mg ( 1.19 x 10-5 mol, 1.00 eq.)を秤り取り、 ジクロ ロメタンで溶解希釈し、全量を10.00凶とした(一対一混合物、 1.19x 10-3 M)。
この溶液を 1.00 m1づっ採取し、 メスフラスコに入れ、 減圧下、 ジクロロメタ ンを留去し、 ナトリウムーアゾ色素錯体を調製した。 ヘキサン、 四塩化炭素、
トルエン、 ベンゼン、 ジエチルエーテル、 クロロホルム、 ジクロロメタン、 ア
セトン、 アセトニトリル、 メタノールでそれぞれ溶解希釈 して吸収スペクトル を測定した。
Table 3・9. Solvent E行ects 01 Na TFPB -Azo Dye (15) Complex.
Solvents Volume/αn3 Conc./ M λmax / nm ( Absorbance ) Hexane 25 4.76 x 10・5 506(0.356) 338(0.261) CCI4 25 4.76 x 10・5 512(0.996) 341 (0.565)
Toluene 25 4.76 x 10・5 512(0.918) 344(0.557)
Benzene 25 4.76 x 10・5 511 (0.966) 340(0.418) Diethyl Ether 25 4.76x 10・5 497(0.443) 342(0.469) Chloroform 10 1.19 x 10-4 509(2.135) 344(1.278) Dichloromethane 10 1.19 x 10-4 505(1.517) 335(1.021 ) Acetone 25 4.76 x 10・5 479(0.304) 342(0.373) Aceton itri le 25 4.76 x 10・5 471 (0.235) 342 (0.394) Methanol 20 5.95 x 10・5 446(0".229) 347(0.851)
-97-3-6 まとめ
アゾベンゼン色素のハロクロミズムとして、 これ までにアルカ リ金属イオン が色素分子に直接作用することは知られていなかった。 本章で明らかにしたハ
ロクロ ミズムの発現はジクロロメタンのような疎水性溶媒中で、 かさ高い、 し
か も高脂溶性のT F P Bという 有機アニオン種の特性を利用することによっ て はじめて可能になった。
アルカリ金属イオンの求電子能は、- イオン半径の小さいものほ ど高いと考 え られるが、 一方、 求電子能の高いものほど溶媒和や溶媒中の水分の影響を受け やすい。特に、 電子スペクトル測定におけるような希薄濃度の条件では、 溶媒 中の微量水分によってリチウムイオンはナトリウムイオンよりも大きく失活し、
結果的にナトリウムイオンの求電子能がリチウムイオンよ りも高く現われる。
このハロクロミズムはクラウンエーテルの添加に抑制できるため、 ハロクロミ ズム活性種がプロトンではなくアルカリ金属イオンであることを明らかにした。
アゾベンゼン色素にこのようなハロクロミズムが発現するため には、 アゾ基 窒素の電子密度がある程度高くなければならない。 ジメチ ルアミノ基の場合一 個、 メトキシル基の場合三個以上あれば、 ハロクロミズムを発現するのに充分 な電子供与効果が得られている。 スピロピラン骨格にアリールアゾ、基を導入し た化合物を合成し、 アルカリ金属イオンのアゾ窒素への付加を利用して、 メロ シアニン構造の安定化を試みたが、 アゾ窒素に充分な塩基性を付与できなかっ たため、 ハロクロミズムの発現は観察されなかった。
ハロクロミズムに及ぼす溶媒効果については、 溶媒の極性、 またはドナー性 の増大と共にアルカリ金属イオンの求電子能が低下することを明らかにした。
この結果は溶媒極性の増大が溶媒和によって金属イオンを不活性化し、 アゾ色 素ー金属 イ オン付加体の生成を抑制しているためと理解でき る 。 また、 ド ナー
-98-性の乏しい溶媒中では、 誘電率の低い溶媒ほど金属イオンーアゾ色素間のイオ ン一双極子相互作用を緊密化し、 付加錯体の形成を促進して、 見かけ上のモル 吸光係数を大きくする傾向が認められた。
以上の結果から、 金属イオンーアゾベンゼン付加体吸収帯の吸 収強度はアゾ
ベンゼン色素と金属イオン付加体との生成平衡(Scheme 3-5)に依存し 、 金属 イオンのLew包酸性が増すに従って付加体の吸収強度が増大することがわかっ た。 アゾベンゼン色素がプロトン酸に対して、 また、 金属イオンが水などの Lewis塩基に対 して極めて敏感である点を充分考慮すれば、 アゾベン ゼン色素
は溶液中における金属イオンのLewis酸性 の指標として利用できる。
-99-参考文献
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Springer Ver1ag, Berlin (1980); b) H. Zollinger, "Azo and Di位。
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e)時田澄男、 " カラーケミストリー" 、 丸善、 東京(1984)、 p145;
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4) H. Iwamoto, H. Kobayashi, P. Murer, T. Sonoda, H. Zollinger,
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5) V. Gutmann, "C∞rd泊ation Chemis句r in Non-Aquωus Solven札"
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6) 岡崎敏、 坂本一光、 " 溶媒とイオンー非水電解質溶液の化学" 、
さんえい出版、 京都(1990), p47.
7) C. Reichardt, "Solvents and Solvent Effects inωganic Chemistry,"
VCH,We加he加(1988), p365; 408.
-100-第4章 疎水性溶媒中におけるベタイン色素の吸収スペクトルに 及ぼすアルカリ金属ホウ酸塩の効果
4-1 はじめに
化学反応を行うときに、 試剤や温度、 時間等の反応条件と共に溶媒の選択が 重要である。ソルバトクロミズムと同様、 溶媒は反応速度や平衡に強く影響を 及ぼすためである。 現在までに、 約300種類の有機溶媒が知られており、 混合 溶媒をあわせるとその組み合わせは無数にある。化学者は無数の溶媒の中から、
いく つかのガイドラインと経験と直観を組み合わせて、 使用目的に適合する溶 媒を選択しなければならない。
一般に、 溶媒効果を理解するために" 極性" という言葉を用いるが、 その意 味を正確に定義したり、 定量的に説明することは容易ではない。 溶媒の極性を 定量的に表すために、 誘電率、 分極率、 屈折率などの物理 的溶媒パラメーター が用いられてきた。 しかしながら、 こ れらのパラメーターでは水素結合や電子 対供与一受容相互作用のような特異的溶媒ー溶質相互作用を充分説明するこ と ができない。 溶媒効果を包括的に計算できる理論式が無く、 単一の物理的特性 値で溶媒の極性を充分説明することはできないため、 プロトン化、 酸化、 還元、
錯形成のような溶媒一溶質相互作用の全てを含んだ" 全溶 媒和能" という概念 で溶媒の極性を把握した方が良い。
この" 全溶媒和能" は分子の基底状態と励起状態のみによって定まり、 特異 的、 非特異的な分子間力の全ての影響を受ける。 全溶媒和能を示すパラメータ ーは、 これまで用いられてきた物理的溶媒パラメーターに対して、 経験的溶媒
極性パラメーターと呼ばれ、 Winste加のY値1)、 KosowerのZ値3等が知られて いる。