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Li‑Ga‑N 3元系平衡実験

第4章  実験結果及び考察

4.2. I Li‑Mg‑N 3元系平衡実験

4.2.3  Li‑Ga‑N 3元系平衡実験

この3元系においても、 Li‑Mg‑N 3元系同様試料を取り出した後Cuメ

ッシュを観察したが、 Cuメッシュの酸化は肉眼では認められず、また重量 変化も全く検出されなかった。したがって、試料に対する酸素の影響はほと

んど無かったものと思われる。 Fig. 4‑10には、平衡実験後に回収された試料 のXmパターンとJCPDSカードからの参照パターンの比較を、 Table 4‑6に

はそれぞれの試料においてXmにより解析された相をまとめて示すG Fig.

4‑10において、 700KにおけるLi‑Ga‑N 3元系で報告されている化合物の

標準回折パターン(Li,GaN2 : 06‑0193、Li,N : 30‑0759、 LiGa : 09‑0043、 (Li,Ga2 : 36‑0933、 ) Li2Ga : 36‑0934、 (Li : 15‑0401))の中でそれぞれが重ならない明瞭

なパターンがいくつか存在するため、いずれの物質が混在していても各相の

識別は可能である.解析結果はほとんど全ての試料がstarting materialのまま

であり、この系では平衡‑の到達が非常に遅いことを示している。この結果

はGaNの合成の困難さからも容易に理解できるが、 Fig. 4‑10に示す結果で 注目すべき点は、試料番号①〜③ではほぼ完全にsta'ting materialのままであ ったのに対し、試料番号④及び⑤ではstarting materialではないLiGaの生成

が確認されたことである。この点は後に詳細に議論する様に、等温状態図の 作成に関しては、この結果が非常に重要なポイントになると考えている。

4.3 3元系等温状態図の作成

4・3.1 Li‑Mg‑N 3元系等温状態図(900K)

Fig・ 4‑11に、 XRDによる相同定の結果(Fig. 4‑8、 Table 4‑4)に基づいて作成

した、 900KにおけるLi‑Mg‑N 3元系等温状態図を示す。作成時のポイ ントは、 LiMgN ‑ Mg平衡もしくはLi ‑ Mg,N2平衡のいずれが成立するかと いうところにあるが、 Fig. 4‑8の③〜⑧において、 Mg3N2の存在が確認され ているため、 Li ‑ Mg3N2平衡が成立しFig. 4‑11に示す状態図が妥当と考えら れる。

4・3・2 Li‑Al‑N 3元系等温状態図(900K)

一・ Fig・ 4‑12には、皿による相同定の結果(Fig. 4‑9、 Table 4‑5)に基づいて作

成した、 900KにおけるLi‑Al‑N 3元系等温状態図を示す。この場合も作 成時のポイントは、既にFig. 2‑11の(a)及び(b)の様に、 Li‑AIN平衡もしくは Li3AIN2 ‑ LiAl平衡のいずれが成立するかというところにある。 Fig. 4‑9に示

す結果からも明らかなように、固相平衡が十分に達成されていないところも

あり、解析は幾分困難な部分もあるoしかし、 Fig.4‑9の③〜⑤においては、

Li,AlN2の存在がわずかながらも確認されており、また②〜④においてはAIN

の存在が認められないことを考慮すれば、 Fig. 4‑12に示す状態図が妥当と考

えられるoまたFig・ 2‑11の(b)と見比べてわかるように、 Li,AlN2の△G「′:し.,A.N:

はおおよそ‑410‑‑550kJ/molの範囲であることも推定出来る。

4・3・3 Li‑Ga‑N 3元系等温状態図(700K)

Fig・ 4‑13には、皿による相同定の結果(Fig. 4‑10、 Table 4‑6)に基づいて

作成した、 700KにおけるLi‑Ga‑N 3元系等温状態図を示す。この場合も 作成時のポイントは、既にFig. 2‑12の(a)、 (b)及び(C)に示す様に、これらの いずれの平衡関係が成立するかというところにある. Fig. 4‑10の結果からも

明らかなように、圃相平衡が十分に達成されていないところもあり、解析は

幾分困難な部分がある。しかし、 4.2.3で述べたようにFig. 4‑10の④及び⑤ において、 LiGaの存在が確認されており、この点を考慮するとFig. 2‑12 (a)

のようにLi.,N‑ LiGa、Li.,N ‑ Li,Ga2、及びLi,N ‑ Li2Gaの平衡が成立し、Fig. 4113

に示す状態図が妥当と考えられる.またFig・ 2‑12の(a)より、Li,,GaN:の△G〔・

I:Li,GaNZは‑146kJ/molよりも大きい(負に小さい)ことが推定出来るo

4.4 伝導度測定

本来、複素平面インピーダンスプロット(Cole‑Coleプロット)からのイ

ンピーダンス算出は、測定しようとする物質の等価回路を考慮して行うもの

であるが、本研究では約1 kHz.の周波数を用いて測定したインピーダンスを 基に参照の伝導度を導出した(実際の周波数は1002.37 Hz.)。その理由とし て、本研究の3・3.I‑3.3.4でインピーダンス解析用グラフィックソフトウェ

ア(ScribnerAssociates社製Z‑I,t'ew)を用いて得られたC。1e ̲ C。leプロット

において、直線や曲線等その特徴が明瞭ではなく、またいずれの試料もl kH乙 以上の周波数においてインピーダンスの大きさに顕著な変化が生じなかった ため、この周波数で測定したインピーダンス値を採用することは妥当と考え たからである。したがって、今回の結果については定量的議論はむしろ避け るべきであると考えている。本実験で直接測定により得られる複素インピー

ダンスZ(ohm)は、

Z=Z'+Z" (Z':実部、 Z":虚部)

であり、その大きさは、

rZI ‑ (Z'2 + Z"2)I/2

(4.I)

(4.2)

であるoここで、材料の移動物質(Li+)の(規格化)伝導度αr(sm・lK)は、

uT= 1 /p'T‑ Tl/(lZI・A)      (4.3)

の関係より求められる。式(4.3)で、 〟(S)は比抵抗、 /(m)はペレットの長さ(厚 さ)、 A (m2)はペレットの断面積である。伝導度と温度の積の対数は温度の逆

数に対してほぼ直線関係にあるので、次式のように表わすことが出来る。

loguT‑a・1/T+b (4.4)

4.4.1 Li3Nの伝導度測定

Table 4‑7に本実験によって直接得られたインピーダンスと導出した伝導度 (log Jカ を、 Fig.4‑14にその伝導度の温度依存性プロットを示す。伝導度

は、温度が上昇するにつれて向上することが認められ、 Li3Nペレット内の主

たる伝導機構はイオン伝導であることを示唆しているo ここで、 Fig. 4‑15に

‑・最小二乗法による回帰直線を、 Ref. 33)に報告されている値と併せて示す。

回帰直線より、温度と伝導度との関係は以下の式のように表わされる。

logqT‑‑6210/T+ ll.23 (4.5)

Fig. 4‑15に示すように、本研究結果は報告されている値と比較して約770 K

において一致しており、試料はイオン伝導体であることが確認出来たc Lた がって、伝導度測定及び起電力測定用のセットアップはその性能が適正であ ると考えられ、また以降の起電力測定などの研究にこのLi3Nを用いること は妥当であることが確認出来た。

4.4.2 LiMgNの伝導度測定

Table 4‑8に本実験によって直接得られたインピーダンスと導出した伝導度 (log uZ)を、 Fig.4‑16にその伝導度の温度依存性プロットを示す。伝導度

は、概して温度が上昇するにつれて向上することが認められ、 LiMgNペレッ

ト内の主たる伝導機構はイオン伝導であることを示唆している。これより、

起電力測定においてはLiMgNを固体電解質として用いることが可能である

ことが確認出来たoここで、Fig.4‑17に最小二乗法による回帰直線を、 Ref. 12)

に報告されている値と併せて示す。回帰直線より、温度と伝導度との関係は

次式のように表わされる。

log qT‑‑3480/ T+4.95

(4.6)

Fig・ 4‑17に示すように、本研究結果は報告されているデータと測定温度範囲 こそ異なるものの、回帰直線の一次式は報告値と非常に近いものであった。

4・4・3 Li3AIN2の伝導度測定

Table 4‑9に本実験によって直接得られたインピーダンスと導出した伝導度 (log α乃を、 Fig. 4‑18にその伝導度の温度依存性プロ′ツトを示す。伝導度 は、LiMgN同様温度が上昇するにつれて向上することが認められ、 Li,AIN2

ペレット内の主たる伝導機構はイオン伝導であることを示唆している。これ

より、起電力測定においてはLi3AIN2を固体電解質として用いることが可能

であることが確認出来た。ここで、 Fig.4‑19に最小二乗法による回帰直線を、

Ref・ 12)及び20) (Pt、 Ag電極を用いた2通り)に報告されているLi3AlN三の 伝導度と、さらにRef. 34)に報告されているLiAlC14の伝導度と併せて示すo

回帰直線より、温度と伝導度との関係は次式のように表わされる。

log uT‑‑4240/ T+6.67

(4.7)

本研究結果は報告されている値(主としてRef・ 20))に比べlog qTで1程

度小さかった。これは、本研究で合成したLi3AIN2ペレットの純度が必ずし

も高くなく、絶縁体であるAIN (Table 1‑1参照)等の不純物が混入している

ためにイオン伝導度が低下したためと考えられる。

4・4・4 Li,GaN2の伝導度測定

Table 4‑10に本実験によって直接得られたインピーダンスと導出した伝導 皮(log q7)を、 Fig.4‑20にその伝導度の温度依存性プロットを示す。伝導 度は、LiMgN同様温度が上昇するにつれて向上することが認められ、 Li,GaNコ

ペレット内の主たる伝導機構はイオン伝導であることを示唆している。これ

より、起電力測定においてはLi3GaN2を固体電解質として用いることが可能

であることが確認出来た。 Fig. 4‑20に同時に示す最小二乗法による回帰直線

より、温度と伝導度との関係は次式のように表わされる。

log ♂7‑‑3270/r+4.80

(4.8)

Li,GaN2の参照値は探すことが出来なかったが、本研究で合成したLi,GaN2

ペレットの純度は必ずしも高くなく、ほぼ絶縁体に近いGaN (Table 1‑1参照)

等の不純物が混入している(Fig. 4‑6)ためにイオン伝導度が著しく低下する 一一と予想された。しかし、測定温度範囲が低いこと等による全体的なイオン伝 導度の低下が認められるとはいえ、LiMgNとほぼ同等の伝導度を得ることが 出来たことは注目に値する。最後に、本研究で行った伝導度測定の結果をFig.

4‑21及びTable4‑11にまとめて示す。

4.5 起電力測定

4・5・l Li‑Mg‑N 3元系試料の起電力測定

前章3.4.1で得られた起電力の結果をTable 4‑12に、またこの起電力の温 度依存性プロット(平均値)をFig. 4‑22に示す。起電力の値は概して温度が

上昇するにつれて増大しており、また一般に起電力は温度に対してほぼ直線 関係にあるので、次式のように表わすことが出来る。

E‑a+bT (4.9)

したがって、 Fig. 4‑22に示す最小二乗法による回帰直線より、温度と起電力

との関係は以下のように表わされる。

E=‑1.45×10 2+ 1.65×10・4・T

(4. 10)

4.5.2 LトAトN 3元系試料の起電力測定

前章の3.4.2節で行った起電力測定では、一定温度におけるガルバニ・セ

ルの起電力の安定性について、各温度で起電力が一定になったところで電極 を5ないし10 S短絡させたり、市販の乾電池を用いて1.5 Vの電圧を外部か ら短時間(3ないし5 Sで、これによる化学反応が起きないと思われる程度) 印加して外乱を与えることによりセルの平衡をずらし、再び起電力が外乱を

与える前の‑定借に戻るかどうかによって確認した. Fig. 4123 (T‑800 K)の一

例に示すように、 LトAトN 3元系ガルバニ・セルでは外乱を与える前と後 でほぼ同じ値の起電力を示した。したがってここで測定した起電力値はこの

温度におけるセルの平衡起電力に正しく対応していると判定したo Table4‑13

に得られた起電力の結果を、またFig. 4‑24にこの起電力の温度依存性プロッ ト(平均値)を示す。しかしながら、起電力の値は温度変化に対して特に一 定の傾向を示さなかったので、式(4.9)のような温度に対する1次式で表わす ことは無意味と判断した。特に900 Kにおける起電力値は他の温度の値に比 べ突出しており、この理由の解明は今後の課題である。この温度における起 電力測定回数は他の温度よりも多い6回であり、その測定した起電力の中で

最小値0.444 Vを記録した1回を除けば、残りの5回に得られた値は、 4.3.2

節において推定されたLi3AIN2の△GofLi.AlNZの範囲‑411・5‑‑553・O kJ/molに対 応する起電力債E,.Li.A,N2( 0・492‑0・977 V)内にある.更に、標準偏差がo・260 V

程度であることを考慮すれば、この900 Kにおける起電力の平均値は大きな 誤差を含むものの、得られた値は妥当と考えられる。これらをまとめると、

900 Kにおける起電力の平均値が正しいと仮定すれば、 700 K及び800 Kに

おいて測定される起電力は本来はもっと大きい値であると予想される。 Fig.

4‑24の結果については、複合窒化物であるLi,AlN2がLi,Nと絶縁体であるAIN

の化合物であることや、また測定温度が十分に高くなかった等でLiイオン の伝導が良好でなかったために、起電力が低下したと考えることが出来るが、

現在のところ明確な原因は分かっていない。

4.5.3 Li‑Ga‑N 3元系試料の起電力測定

前章の3.4.2節で行った起電力測定では、一定温度におけるガルバニ・セ

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