第 6 章 Lenovo のバリュー・チェーン分析
6.3 Lenovo のバリュー・チェーン分析
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リュー・チェーンへの参入は必ずしも高付加価値の活動(ブランド、ソフトウェア)から 参入するというわけでもない(Bamber,2014,p.7)。
そのような背景で、中国のスマートフォン市場は国内および海外メーカーの参入で、競 争が激しくなっている。それに対応するために、各メーカーがスマートフォンのバリュー・
チェーンを常にアップグレードしている。
Gereffi et al(2010) & Kaplinksy et al(2001)によると、バリュー・チェーンのアップ グレードは、おおむね 4 つの方法があるとされる。①生産プロセスのアップグレード、つ まり、生産システムや生産技術等の向上。②完成品のアップグレード、つまり、新製品の 開発や既存品の改善等のこと。③機能上のアップグレード、たとえば、生産を担う工場が 物流やアカウンティングなどの機能を追加すること、あるいは、既存の機能を放棄するこ と。④チェーンのアップグレード、すなわち、新しいチェーンに移ること、つまり、現在 と違う産業に参入することである。中国のスマートフォンメーカーを見渡せば、前述の 4 つの方法をすべて利用している。そこで、本章での研究対象である Lenovo は具体的にどう いう方法を利用したのかを第 3 節で考察する。
82 デザイン
•レノボ
サプライヤー
•クアルコム
•シャープ
•インテル
•レノボ
組立
•レノボ
ブランド企業
•レノボ
顧客
•消費者
キャリア
•中国移 動
•中国連 通 ォンを中心に考察していく153。
Lenovo のスマートフォンのバリュー・チェーンを示したのは図 24 である。最初のデザ インから、サプライヤー、組立およびブランド企業まですべての活動を Lenovo に支配され ている。Lenovo のバリュー・チェーンと異なり、アップル社あるいは Xiaomi のバリュー・
チェーンではモノづくりの部分の活動をアウトソーシングしている154。なぜこのような形 になったのか、原因は Lenovo のパソコン事業が数多くの工場および成功したサプライヤ ー・チェーンの管理にあることである。2013 年に、Lenovo のパソコン事業が HP を抜き世 界出荷シェアの 16.9%で世界一のパソコンメーカーになった155。Lenovo のスマートフォン
図 24 Lenovo のスマートフォンのバリュー・チェーン
出所:IHS を参照のうえ、筆者作成。
事業は Lenovo のパソコン事業に大きく影響されている156。現在、Lenovo のスマートフォ ンは3つのブランドに分けて世界に進出している。1 つは Lenovo のスマートフォンであり、
もう 1 つはモトローラであり、3つ目は Zuk である。それに関する議論は第 4 節で行う。
6.3.2 Lenovoのスマートフォンの原価分析
Lenovo のスマートフォンは中国市場での多様なニーズに対応し、幅広く機種を販売して いる。さらに、ブランドを 3 つ(Lenovo のスマートフォン、モトローラおよび Zuk)まで 増やし、多ブランドという戦略で海外にも本格的に進出している。本節では、2012 年にリ
153 2005年、レノボがすでにスマートフォンを研究していた。当時、レノボの研究開発部
門を最大限に統合し、スマートフォンの開発に動きを出した。2006年に「Beacon灯塔」
というプロジェクトができて、本格的にスマートフォンの開発を進めた。しかし、研究 能力および当時の生産技術が遅れていて、さらに2007年iPhoneの誕生によって、結局 失敗という結末に終わってしまった。
154 詳細は程(2015)135頁を参照。
155 Gartner,Jan.9,2014
(http://www.gartner.com/it/products/research/asset_129157_2395.jsp 2015年9月4 日閲覧)参照。
156 本研究では、スマートフォン事業を中心に考察していく。パソコン事業に関しては、
李鸿谷(2015)参照。
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リースされた LenovoA765e という機種を取り上げ157、具体的に Lenovo のスマートフォンの バリュー・チェーンを考察する。
表 14 が示しているように、Lenovo のスマートフォンの原材料は、中国から調達した部 品が大勢である。しかし、スマートフォンにとって、最も重要な部品であるプロセッサー、
ワイヤレスセクション、コネクティビティはアメリカのサプライヤーから提供されている。
表 14 Lenovo A764e のコア部品の原価1
Key component(コア部品) Cost Country of Origin(原産国) Assembly/Enclosure
(組立&梱包)
$6.57 China
Main PCB(メイン PCB)2 $52.47 China,Korea,USA Display/Touchscreen
(ディスプレイ&タッチスクリーン)
$26.49
China
Camera(カメラ) $8.48 China Others(Box and so on)
(金属ボックスなど)
$12.19 China
Total Cost(トータルコスト) $106.20 Retail Price(販売価格) $180.00 Profit(利益) $73.80 Profit Rate(利益率) 69.49%
注 1:32GB の機種を取り上げた。
2: メイン PCB には、メモリ(韓国)、プロセッサー(アメリカ)、ワイヤレスセクショ ン(アメリカ)、コネクティビティ(アメリカ)、パワーマネージメント(アメリカ)
といった部品がある。
出所:IHS を参照のうえ、筆者作成。
157 レノボのスマートフォンの機種が大勢であり、すべて取り上げるのは困難である。本 論文では、メインの機種の中で、代表的な A764e を取り上げ、レノボのスマートフォン を考察する。また、機種によって、原材料が異なるので、レノボのスマートフォンの原 材料原産国およびコストが必ずしも表 14 と同じであるというわけでもない。例としては、
レノボ K800 のディスプレイとタッチスクリーンを提供しているサプライヤーは日本の シャープである。
84 2.91%
10.68%
86.41%
2000~3000元 1000~2000元 1000元以下
11機種 3機種
89機種
Lenovo はスマートフォンのコスト削減のために、中国製の部品を多く使用している。な ぜなら、中国のスマートフォン市場において、Lenovo のスマートフォンは、ハイエンドで はなく、ローエンドに位置づけられているので、コストの削減に迫られているからである。
ZDC のデータによると158、千元(約 18,762円)159以下の Lenovo のスマートフォンの割合は Lenovo のスマートフォン全機種(合計:103 機種160)の 86.41%を圧倒的に占めている(図 25)。ローエンド機種がメインである Lenovo は優れた生産製造ラインおよび部品調達・物 流をうまく利用し、ハードウェアのコストを最大限に圧縮することを実現し、7 割近くの 高い利益率を維持している。
図 25 Lenovo のスマートフォンの販売価格
注1 モトローラの出荷量が含まらない。
出所:ZDC データを参照のうえ、筆者作成。