第 3 章 マウスの解剖学的モデルの作成 7
4.2 ばく露装置から生じる振動音の定量化
4.2.1 LDV を用いた音圧測定方法
ばく露装置は強い磁界を発生させるため,騒音計を用いて測定を行う場合,コンデンサ マイクロホンに誘導電流が生じ測定結果に影響を及ぼす. 過去の研究では非接触で音圧を 測定するために,レーザードップラー振動計(Laser Doppler Vibrometer : LDV)を用いて 音圧を測定する研究が行われてきた [7]. 図4.1にLDVを用いた音圧測定の概要図を示す. 光路上の屈折率はスピーチから放射される音場の分布と周波数によって変化する. 光路長 ΦLは,屈折率nを距離で積分した式で定義され,以下のような式になる.
ΦL=
∫
L
ndx (4.1)
ここで,LはLDVとミラーの間の距離である. 音波によって屈折率が微小に変化した場合, 屈折率の変化により光路長が変化する.
ΦL+ ∆Φp(t) =
∫
L
(n+ ∆np(x, t))dx (4.2)
図4.1: LDVを用いた測定の概要図 式(4.1)及び式(4.2)より,
∆Φp(t) =
∫
L
∆np(x, t)dx (4.3)
LDVの測定値は振動速度vLDV で与えられ,測定値を積分すると以下の式になる.
∆ΦL= vLDV(t)
ω (4.4)
ここで,ωは各周波数である. 式(4.3), (4.4)より, vLDV(t)
ω =
∫
L
∆np(x, t)dx (4.5)
となる. 気体の屈折率はGladstone-Dale則により以下のように定義される. Rg = n−1
ρ (4.6)
ここで, RgはGladstone-Dale定数, ρは空気の密度である. 音波による空気の密度変化
∆ρpによって,屈折率が微小変化すると仮定した場合,屈折率の微小変化∆npは式(4.6)よ り以下のように表される.
∆np(x, t) = ∆ρp(x, t)·Rg (4.7) ボイルの法則により,空気の密度と気圧の関係しき式は以下のように表される.
W ρ = RT
P (4.8)
ここで,W は一般空気の分子量, Rは気体係数, T は温度である. 音波の圧力の微小変化
∆Pによって空気の密度の微小変化∆ρpが発生すると仮定した場合, 式(4.8)より以下の ようになる.
∆P(x, t) = RT
W ·∆ρp(x, t) (4.9)
式(4.7), (4.9)より,
∆P(x, t) = RT
W ·Rg ·∆np(x, t) (4.10)
光路上の屈折率の変化の空間的な平均np(t)は式(4.4)より, np(t) = vLDV(t)
ωL (4.11)
式(4.10), (4.11)より,光路上の音圧の空間的な平均は P(t) = RT
W ·Rg ·vLDV(t)
ωL = RT
W ·RgL ·
∫
L
∆np(x, t)dx (4.12) となる.
SPLとなった. 磁界ばく露用コイルが生じる超音波の音圧レベルは環境音より小さいこと から,測定にあたってロックインアンプを用いることで, 磁界ばく露用コイルの駆動周波
数である82kHzの音を抽出した. このとき参照信号はばく露装置と独立したファンクショ
ンジェネレータ(株式会社エヌエフ回路設計ブロック, WF1974)から参照した. 測定パラ メータを4.1に示す. また表??に測定結果を示す. ばく露用コイルは64.4dB SPLの超音 波を生じることが分かった.
図4.2: ばく露装置から生じる超音波の音場測定の概略図
4.2.3 ばく露装置から生じる振動音のシミュレーション
磁界ばく露装置から生じる音圧レベルの指標を得るために, 入力電流85 kHz, 100 A での駆動を想定して数値シミュレーションを行った.有限要素法に基づくシミュレータ
COMSOL Multiphysics(COMSOL.co) によって,電磁界ー振動ー音響の連成シミュレー
ションを行った.シミュレーション上の数値モデルを図4.3を示す. 図4.4にコイルの中心 軸上の音圧レベルの分布,図4.5にy = 0, z = 53上の音圧レベルの分布を示す. ここでy
表4.1: 磁界ばく露用コイルから生じる超音波の測定パラメータ 気体定数R [Pa×m3/K×mol] 8.31
実験環境の温度T [K] 300
分子量W [kg/mol] 0.028966
Gladstone-Dale定数RG [m3/mol] 0.00000655 音波の周波数f [kHz] 82
光路長L[m] 0.12
表4.2: 磁界ばく露装置から生じる超音波の音圧レベル
環境音 [dB SPL] 28.2
ばく露用コイルが生じる超音波[dB SPL] 64.4
(a)2次元モデル
(b) 3次元モデル 図4.3: シミュレーション上のばく露用コイル
COMSOL 5.1.0.136
図4.4: コイルの中心軸上の音圧レベル
COMSOL 5.1.0.136
図4.5: y = 0, z = 53上の音圧レベル
4.3 85kHz 対応スピーカーの音圧測定
4.3.1 スピーカーの配置決定
次にマウスが行動できる範囲内で,磁界ばく露用コイルの音圧レベルと同等な音圧レベル の音場をスピーカーを用いて生成する. 図4.6にスピーカーの音圧レベル測定の様子を示す.
85kHzの超音波を出力できるスピーカー(テイクティ有限会社, TAKET-BATPRO2)を用
いて, 磁界ばく露用コイルから生じる音圧レベルの超音波を出力した. ここで,
TAKET-BATPRO2を超音波スピーカーと呼ぶ. 表4.3に超音波スピーカーによる音圧測定の結果
を示す. 測定点1-3に比べて,測定点4, 5は音圧レベルが小さくなることが分かった.
図4.6: 85kHzの超音波が出力可能なスピーカーの概略図
表4.3: スピーカーの音圧レベル[dB SPL]の測定 測定点 1 75.9
測定点 2 77.2 測定点 3 74.1 測定点 4 63.0 測定点 5 50.5
の音場を生成できる超音波ばく露装置を作成することができた. しかし, 実際のばく露装 置にはばく露用コイルにマウスを入れるケージが設置してあるため,ケージを考慮した音 圧レベルの測定及び音場の生成を行う必要がある.
図4.7: スピーカーを用いたばく露装置の概略図
表4.4: スピーカーの音圧レベル[dB SPL]の測定 マイクの向き A B
測定点 1 76.7 76.7 測定点 2 79.0 65.5 測定点 3 72.3 58.6 測定点 4 66.3 76.9 測定点 5 57.8 76.7