4.5 同境理論
5.1.1 K 理論
【定義 5.1 (K群)】 空間X上のF-ベクトル束の同値類全体の作る
可換半群VF(X)に対して,そのGrothendiek可換群をK群といい,
KF(X)と表す.KF(X)の元は仮想束と呼ばれる.特に,F =Cお よびF =Rのとき,KF(X)をそれぞれK(X),KO(X)と表す.
【命題 5.2】 コンパクト空間XのK群KF(X)について次の性質が 成り立つ:
i) KF(X)は束の直和⊕とテンソル積⊗により可換環となり,KF は
(コンパクト)位相空間の圏から可換環の圏への反変関手となる.
ii) KF(X)の任意の元は適当なベクトル束V と自明なN 次元ベクトル 束θNF (N ≥0)を用いて,[V]−[θFN]と表される.
iii) KF(X)において[V]−[W] = 0となるための必要十分条件は,適 当な自明ベクトル束θFN に対してV ⊕θNF ∼=W ⊕θNF となることで ある.
【定義 5.3 (簡約K群)】 Xを基点ptを持つ空間として,制限写像
KF(X)→KF(pt)∼=Zの核を簡約K群と呼び,K˜F(X)と表す.
【定義 5.4(安定同値)】 位相空間X上の2つのベクトル束V,Wに
対して,2つの自明なベクトル束θm, θnが存在してV ⊕θm ∼=W⊕θn となるとき,V とWは安定同値であるという.
【命題 5.5】 コンパクト空間Xの簡約K群K˜F(X)について次の性 質が成り立つ:
i) ˜KF(X)はKF(X)から誘導される和と積により可換環となり,K˜F は(コンパクト)位相空間の圏から可換環の圏への反変関手となる.
ii) ˜KF(X)の任意の元は,適当なベクトル束V とV と同じ次元Nの自 明なベクトル束θFN(N ≥0)を用いて,[V]−[θNF]と表される.
iii) ˜KF(X)において[V] = [W]となるための必要十分条件は,V とW が安定同値となることである.特に,K˜F(X)とX上のF-ベクトル 束の安定同値類全体の集合は一対一に対応する.
【定義 5.6 (相対K群)】 空間Xとその空でない閉部分空間Y の組 に対して,相対K群KF(X, Y)を
KF(X, Y) := ˜KF(X/Y)
により定義する.ただし,X/Y の基点をY とする.Y =∅ に対し ては
KF(X,∅) :=KF(X)
と定義する.
【定義 5.7 (L群)】 位相空間対(X, A)(AはXの閉部分空間)に 対して,X 上のベクトル束V0, V1 とそのAへの制限の間の束写像 σ :V0|A→ V1|A の組V = (V0, V1;σ)からなる集合をL(X, A)とす る.L(X, A)の2つの元V,Vは,束同型φi : Vi → Viでφ1◦σ = σ◦φ0となるとき同値といい,V ∼= Vと表す.L(X, A) は束の直 和から誘導される和により自然に可換半群となる.L(X, A) の元 E = (E0, E1;σ)は,E0 = E1かつσ = idのとき要素的であるとい う.さらに,L(X, A)の2つの元V,Vに対して,適当な要素的元 E,Eが存在して
V ⊕E ∼=V⊕E
となるとき,同値とする.この同値関係によるL(X, A)の同値類 [V0, V1;σ]の集合をL(X, A)と表す.L(X, A)は可換群である.
【命題 5.8】 A=∅のとき,
χ([V0, V1]) = [V0]−[V1]
となる,関手の間の同値変換χ:L(X, A)→K(X, A)が一意的に存 在する.具体的には,一般のV = [V0, V1;σ] ∈ L(X, A)に対して,
χ(V)は次のように構成される.X0 =X×0, X1 =X×1をXのコ ピーとして,
[ ˜V]−[θN] = [V0∪σV1]−[V1∪idV1]∈K(X0∪AX1)
を作ると,この元のX =X0への制限はK(X)でゼロとなる.これ より,V˜ はX1上で自明束安定同値となり,K(X/A)の元χ(V) を
一意的に決定する.
【定義 5.9】 X, Y を位相空間,pX :X×Y →X, pY :X×Y →Y を 標準射影とする.このとき,a⊗b ∈K(X)⊗K(Y)にp∗X(a)p∗Y(b)∈ K(X ×Y)を対応させることにより定義される群準同型K(X) ⊗ K(Y)→K(X×Y)をK群のクロス積という.これは,部分集合に 制限することにより,K˜ 群のクロス積K(X)˜ ⊗K(Y˜ )→K(X˜ ×Y)
を誘導する.
【命題 5.10】 X, Y を基点付き空間とするとき,そのブーケX∨Y およびスマッシュ積X∧Y に対して次が成り立つ:
i) 包含写像i: X∨Y ⊂X×Y および射影p: X×Y → X∧Y は次 の完全列を誘導する:
0→K(X˜ ∧Y)−→p∗ K(X˜ ×Y)−→i∗ K(X˜ ∨Y)→0.
ii) クロス積とi∗の結合
K(X)˜ ⊗K˜(Y)→K(X˜ ×Y)−→i∗ K(X˜ ∨Y) はゼロ写像である.
【定義 5.11 (K群のカップ積)】 上の命題より誘導される写像 K(X)˜ ⊗K(Y˜ )→K(X˜ ∧Y)
を簡約K群のカップ積と呼ぶ.さらに,2つの空間対(X, A),(Y, B) に対してK˜ 群のカップ積
K(X/A)˜ ⊗K(Y /B)˜ →K((X/A)˜ ∧(Y /B)) = ˜K((X×Y)/(X×B)∪(A×Y)) から誘導される写像
K(X, A)⊗K(Y, B)→K(X×Y,(X×B)∪(A×Y))
を相対K群のカップ積という.
【定義 5.12 (次数付きK群)】 iを非負整数として,基点を持つコ
ンパクト空間Xに対して,
K˜−i(X) := ˜K(Si∧X), コンパクト空間対(X, Y)に対して,
K−i(X, Y) := ˜K−i(X/Y),
基点を持たないコンパクト空間Xに対して,X+ = (X,∗)(∗は仮想 基点),ptをSiの基点として
K−i(X)≡K−i(X,∅) := ˜K−i(X+) =K(Si×X,pt×X) と定義する.特に,
K−i(pt) = ˜K(Si)
である.
【命題 5.13】 位相空間X, Y と非負整数i, jに対して,簡約K群の カップ積
K(S˜ i∧X)⊗K(S˜ j∧Y)→K((S˜ i∧X)∧(Sj ∧Y)) は次数付き簡約K群のカップ積
K˜−i(X)⊗K˜−j(Y)→K˜−i−j(X∧Y)
を誘導する.この積により,K∗(pt)は次数付き環となる.また,K∗(X) は次数付きK∗(pt)-加群となる.
【定理 5.14 (Bottの周期性定理:複素K群)】
i) 環K−∗(pt)はξ ∈ K−2(pt) ∼= ˜K(S2)を生成元とする多項式環に同 型である:
K−∗(pt)∼=Z[ξ].
ii) (X, A)を任意のコンパクトHausdorff空間対とする.このとき,ξ
によるカップ積から誘導される準同型
μξ :K−i(X, A)→K−i−2(X, A) は任意の非負整数iに対して同型となる.
【定理 5.15 (Bottの周期性定理:実K群)】
i) 環KO−∗(pt)は,
η∈KO−1(pt), y∈KO−4(pt), x∈ KO−8(pt), として,
KO−∗(pt)∼=Z[η, y, x]/ <2η, η3, ηy, y2−4x > .
ii) (X, A)を任意のコンパクトHausdorff空間対とする.このとき,x によるカップ積から誘導される準同型
μx :KO−i(X, A)→KO−i−8(X, A) は任意の非負整数iに対して同型となる.
【定義 5.16 (コンパクト台のK群)】 局所コンパクト空間Xに対し
て,X+をXの一点コンパクト化X+ = X∪ {pt}として,Xのコ ンパクト台のK群を
Kcpt(X) := ˜K(X+), Kcpt−i(X) :=Kcpt(X×Ri)
で定義する.また,空間対(X, A)(Aは閉集合)に対して,コンパク ト台の相対K群を
Kcpt−i :=Kcpt((X−A)×Ri)
により定義する.
【定理 5.17 (Kcptに対するBottの周期性定理)】 任意の局所コン パクト空間Xに対して,次の関係が成り立つ:
Kcpt(X)∼=Kcpt(X×C), KOcpt(X)∼=KOcpt(X×R8).
この同型は,それぞれξ ∈ Kcpt(C) ∼= ˜K(S2),x ∈ KOcpt(R8) ∼= KO(S˜ 8)とのカップ積により誘導される.
【命題5.18】 W =W0⊕W1をZ2次数付きC−Cn加群,Ek =Dn× Wk をn次元球体Dn(⊂Cn)上の自明なベクトル束,μ:E0|Sn−1 → E1|Sn−1(Sn−1 =∂Dn)を同型μ(u, w) = (u, u·w)(|u|= 1)として,
φ(W) := [E0, E1;μ]∈K(Dn, Sn−1)
とおくと,φはZ2次数付きC−Cn加群のGrothendieck環からK 群への準同型
φ :MˆnC →K(Dn, Sn−1)
を与える.このとき,包含写像i : Rn → Rn+1 から誘導される Grothendieck 環の準同型i∗ : MˆnC+1 → MˆnC に対して,i∗◦φ = 0 となる.よって,φは準同型
φn:MˆnC/i∗MˆnC+1→K(Dn, Sn−1)∼=K−n(pt)
を与える.同様に,Z2次数付きClifford加群の実表現環に対して φn :Mˆn/i∗Mˆn+1→KO(Dn, Sn−1)∼=KO−n(pt)
が定義される.ここで,
MˆnC/i∗MˆnC+1 ∼=MnC−1/i∗MnC ∼=
Z n: even 0 n: odd および
Mˆn/i∗Mˆn+1 ∼=Mn−1/i∗Mn∼=
⎧⎪
⎨
⎪⎩
Z n≡0,4(mod8) Z2 n≡1,2(mod8)
0 他の場合
が成り立つ.
【定理 5.19 (Atiyah-Bott-Shapiro同型)】 次の次数付き環としての 同型が成り立つ:
φ∗ :Mˆ∗C/i∗Mˆ∗+1C −→∼= K−∗(pt), φ∗ :Mˆ∗/i∗Mˆ∗+1 −→∼= KO−∗(pt)