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持っていたため、EnronはJEDIを連結処理するのではなく、持分法により処理していた(43, 58)。

図表 4-1-3 1993 年から始まる Enron と CalPERS による JEDI への共同出資関係

出所:申請者作成。

付記:図表中の実線矢印は出資関係を表す。

1997年、CalPERSと新たに10億ドルのパートナーシップ(JEDI II)を作ることを検討したEnron は、CalPERSに対してJEDI持分の売却を提案した(43)。EnronがCalPERSからJEDI持分を買い取 れば、JEDI はEnronの100%所有となり、会計上、EnronはJEDIを連結しなければならなくなる。

このため、従来通りEnronがJEDIを非連結のままにするためには、CalPERSに代わる新たな共同支 配相手が必要になる。そこでEnronは、1997年11月、その共同支配相手となるべく、Delaware州に おいて有限責任会社Chewco Investments L.P.(Chewco)を設立した(41)。Chewcoの設立を主導し

たのはEnronの当時CFOであり、その経営者となったのはCFOの部下であるEnron従業員であった

(43-44)。Enron従業員がChewcoに関与することは、当時のCEOを除く他の取締役会メンバーには 開示されず、また Enron の企業行動憲章が求める会長の承認を得ていなかった(46-47)。この点で

Chewcoの設立にはコーポレート・ガバナンス上の問題があるが、会計上、EnronがJEDIを非連結と

するためには、Chewcoが非連結でなければならない。そのためには、GAAPが求める2つの条件、

すなわち3%外部持分投資条件と支配力条件をともに満たす必要があった。

支配力条件に対応するため、Enronは1997年12月、Chewcoの構造に変更を加え(48)、Enronが

Chewco を支配しているとは断定できない外観を創出した(図表 4-1-4)。加えられた変更とは、設立

当時、経営者であったEnron従業員をGPとして、Little River Funding LLC(以下、Little River)を 単独メンバーとするBig River Funding LLC(以下、Big River)をLPとする、有限責任パートナーシ ップ(limited partnership)へとChewcoの構造を変更したことである(48)。実務上、支配力を判断 する際には、一般的にGP がパートナーシップに対する支配を行使するものと推定されるものの、こ

Enron CalPERS

の推定は、GP が主要な活動および財務方針に支配を及ぼさないことを取り決める、パートナーシッ プ合意書などにより反証を許すものである(48, 75-76)。Chewco構造の変更により、LP を関与させ GPの経営能力を制限したことによって、GPが支配しているという推定は十分に反証されうるものと なった(48-49)。

ただし、ChewcoのLPを構成するLittle RiverおよびBig Riverは、ChewcoのGPを務めるEnron 従業員が過去に支配していた会社であった。このため、たとえ構造上の変更を加えたとしても、人的 結びつきからEnronが実質的にはChewcoを支配していたのではないかとの疑いは依然として残るよ うに思われる。しかし、一連の変更によって、GAAPが求める支配力条件は満たされたものとされた。

図表 4-1-4 Chewco を非連結可能とするための仕組み―支配力条件への対応―

出所:申請者作成。

付記:図表中の実線矢印は出資関係を表す。

Chewcoを非連結とするためにはリスクと経済価値を伴う3%以上の外部持分投資が必要である。し

かし、Chewcoを設立した1997年11月時点において、Chewcoは外部資本を持たなかった(49)。そ こでEnronは、図表4-1-5に示すとおり、3%外部持分投資条件を満たすようChewcoの資本構造を新 たに創出した(49)。新たなChewcoの資本構造では、銀行からのEnronによる保証付き無担保劣後 ローン(unsecured subordinated loan)2億4000万ドル他に加えて、銀行融資を原資とするLPから の投資1140万ドルを含む、計1150万ドルの外部資本が組み込まれた。当該外部資本が独立の第三者 による持分投資に相当し、1150万ドルという金額はちょうどSEC3%ルールを満たす程度であった。

Enron従業員 Big River Chewco

LP GP

唯一のメンバー

Little River 過去にEnron従業員が支配 過去にEnron従業員が支配

図表 4-1-5 Chewco を非連結可能とするための仕組み―3%外部持分投資条件への対応―

出所:申請者作成。

付記:図表中の実線矢印は出資関係、破線矢印は貸付関係を表す。

こうしてEnronはGAAPが求める 2つの条件を満たすようChewcoを仕組み、その後Chewcoが CalPERSから3億8300万ドルでJEDI持分を買い取ることによって、CalPERSに代わる新たな共同出 資相手となった。その会計処理として、Enronは1997年以降、Chewcoを非連結とし、それに伴いJEDI も非連結処理していた50。しかし、臨時報告書(Form 8-K)において、Enronは一転して両社を1997 年から連結するべきであったことを公表した。これは、Chewcoの非連結処理がGAAPに違反してい たからである。

図表4-1-6は、図表4-1-4と図表4-1-5の要素を結合したものに、EnronとJEDIを組み込んでChewco との3社関係を示したものである。Enronは、GAAPが求める2つの条件を満たすようにChewcoの 構造を変更したが、実際には、Chewcoは3%外部持分投資条件を満たしていなかった。なぜならば、

銀行からLPであるBig RiverおよびLittle Riverに対する貸付には、Chewcoによる現金担保(reserve accounts)660万ドルが提供されていたからである(51)。投資を受けるChewco自身が提供していた この現金担保のために、LP から Chewco への持分投資はリスクを伴う持分投資には相当しないこと になる。従って、関連期間中、Chewcoを連結し、それに伴いJEDIも連結することが、Enronが本来 行うべき正しい会計処理であった。

50 1993年から2000年第1四半期まで、EnronはJEDIを持分法処理していた(58)。このため同期間中、

JEDIに損失が生じた場合には、持分に応じてEnronの連結損益計算書に損失が計上されることになる。し かし JEDIは、保有する資産および Enron 株式を公正価値で評価することによって利益を認識していたう

え(58-59)、損失計上の有無にかかわらず、JEDIを非連結することで負債をオフバランスすることは財務

諸表に著しい影響を及ぼすものであった(6)。

Enron従業員 Big River Chewco

33万1000万ドル

Little River 貸付

銀行

Enronの保証付 1100万ドル貸付 1140万ドル

無担保融資 2億4000万ドル

図表 4-1-6 Enron、Chewco、JEDI を取り巻く全体の構図

出所:申請者作成。

付記:図表中の実線矢印は出資関係を、破線矢印は貸付関係を表す。

LJM1の非連結スキーム51

1997年から2001年第2四半期まで、Enronは、LJM1を連結対象外とすることによって、純利益を 計1億300万ドル過大表示した(図表4-1-1)。LJM1は、Enronが1999年6月にLJM Cayman, L.P.

として設立したSPEである。本稿では深く立ち入らないが、LJM1の設立目的は、Enronが投資して いたRhythms NetConnections, Inc.の株価変動をヘッジすることにあり、LJM1の非連結スキームは、

ヘッジ取引の相手として利用するために仕組まれたものであった。Enron 取締役会は、LJM1 の設立 に際してCFOがLJM1に経営参画することを承認しており(69)、CFOは、仲介媒体(LJM Patners, LLC およびLJM Partners, L.P.)を通じて、GPとしてLJM1に経営参画した。

上述したChewcoと同様、会計上、EnronがLJM1を非連結とするためにはGAAPが求める2つの 条件を満たさなければならない。図表 4-1-7 は、Enron が構築した LJM1 を非連結可能とする仕組み を示したものである。

51 ここでの記述は、以下の文献に基づき作成した。Powers et al. 2002, 68-76.

Enron

Big River

Chewco

33万1000万ドル

Little River 貸付

銀行

Enronの保証付 1100万ドル貸付 1140万ドル

無担保融資 2億4000万ドル

Enron従業員

JEDI 現金担保660万ドル

提供 GP

GP LP

LP

図表 4-1-7 LJM1 を非連結可能とするための仕組み―支配力条件および 3%外部持分投資条件への対応―

出所:申請者作成。

付記:図表中の実線矢印は出資関係を表す。

LJM1 を非連結とするために満たさなければならない 1 つの条件は、支配力条件である。LJM1 の GPはEnronのCFOであり、この点でEnron従業員がGPであったChewcoに比べて、EnronがLJM1 に対してより大きな支配力を及ぼし得ると推定される。しかし、Chewco のところですでに述べたと おり、一般的にはGPがパートナーシップを支配しているものとの推定は、主観的であり反証を許す ものである。Enronは、ERNB Ltd.およびCompsie Ltd.の2社をLPとして関与させ、パートナーシ ップ合意書において、GPの権限を制約し、特定の投資意思決定についてはLPによる承認を必要とす る、と取り決めることによって、GPが支配しているという推定に対する反証を用意した(76)。

2000年4月以降、取り交したサービス契約(Services Agreement)のもとで、EnronはLJM1に対 して従業員派遣を行った(74)。このため、たとえパートナーシップ合意書によって制限されていたと はいえ、CFO が GP として経営権を行使しており、しかも従業員派遣を行っていたことを考えれば、

人的結びつきから実質的にはEnronがLJM1を支配していたのではないかとの疑いが生じるように思 われる。しかし会計上、GAAPが求める支配力条件は満たされたものとされた。

もう1つのLJM1を非連結とするために満たさなければならない条件は、3%外部持分投資条件であ る。Enronは、LPであるERNB Ltd.およびCompsie Ltd.からの投資計1500万ドルを組み込むことに

よって、SEC3%ルールを達成したようである。

こうして、EnronはGAAPが求める2つの条件を満たすLJM1を仕組み、1999年以降、LJM1を非 連結処理していた。しかし、臨時報告書(Form 8-K)において、Enronは一転してLJM1を1999年 から連結するべきであったと公表した。LJM1 の非連結処理は、Chewco や JEDI のように、明確に GAAP に違反していたわけではないようである。LJM1 を連結するか否かの判断は、解釈がわかれる ものであったからである。

LJM Partners, L.P.

LJM1

LP GP

Enron

LJM Partners, LLC

ERNB Ltd.

Compsie Ltd.

1500万ドル CFOが単独の経営メンバー

2000年4月~従業員派遣

GP LP