VI. ANSI/ANSの基準
3) HSE対応センター
HSEは、緊急事態の場合、事業者の活動のモニタリング及びGTAと中央政府への助言提供を担当す る。HSEの原子力施設検査官は、法的権限を行使して、事業者の活動について検査及び監査を行い、
事業者が発電所を安全な状態に復帰させ、かつ公衆へのリスクを最小化する。HSEは緊急事態の通報 を受けると、直ちに検査官を現場と該当するオフサイト施設に派遣し、状況の監視と制御復元の対策 に当たらせる。検査官は、発電所事業者を監督する権限を含む法的権限をもっており、緊急事態に必 要と思われるときに権限を行使することができる。
HSEは、マージーサイド州のブートル本部に自らの緊急事態室対応センターを設置して、技術評価 能力を提供し、オフサイト施設又は中央緊急時支援センターにおいて原子力施設の主任検査官及び現 場の原子力施設検査官を支援する。これによって、HSEは事故とその影響の進展予測について独自に 評価し、他の原子力施設への影響を考慮することができる。これらの評価は、NEBR又はSEERの原子 力施設主任検査官に転送される。
(3) 情報伝達
事業者から関係者のページャーに自動的に発信するアラートシステムがある。オフサイトにおける 広報センター(Media Briefing Centre)は、オフサイトセンターから2 km程度離れた場所に開設される。
これは、プレスがオフサイトセンターに集中することを避けるためである。通信手段は電話を主とし、
複数の独立回線を持つことにより回線故障に備えた多重性を確保している。
REPPIRは、地方当局に対して、緊急事態によって被害を受けた公衆が迅速かつ適切な情報を得られ るよう、対策を策定し、かつ、更新することを求めている。このような情報には、緊急事態に関する 事実、及び対象とする健康保護対策に関する助言を含むものでなければならない。場合によっては、
警察が被災区域に出向いて、戸別訪問又はパトカーのスピーカーによって住民に情報を伝えることも ある。また、このような対策は、地元ラジオ局やテレビ局との事前協定によって作成された情報パン フレットに頼ることも多い。地元対策には、公衆からの問い合わせに答えるため地方当局による広報 センターや電話相談回線の設置も含まれる。事業者も緊急事態宣言後、できるだけ早急に正式発表を 行う。被災施設の至近区域外の公衆との主な伝達経路は、メディアとなり、迅速に設置される地元の 記者会見施設では、新聞、ラジオ及びテレビ向けの配備を整え、情報が定期的に更新されるようにす る。施設についての地方のメディア向け概要説明は、事故現場で行われるのではなく、すべて記者会 見施設にて行われる。さらに、メディア向け概要説明は、主務省の情報室で入手可能であり、相互に 又は地元の記者会見施設と連絡し合う他の機関の緊急時センターでも入手できる。
付図I.2.1 緊急事態への対応組織の構造
付図I.2.2 オフサイト施設の代表者 施設:緊急時管理者
(技術者や科学者、スタッフによる支援)
警告:警察、救急及び関連するオフサイト組織
オフサイト緊急時施設
(付図I.2.2参照) HSE対応センター
イングランド及びウェールズ 原子力緊急時情報室(NEBR)
(付図I.2.3参照)
スコットランド スコットランド行政府 緊急時対応室(SEER)
(付図I.2.3参照)
技術情報
オフサイト施設の代表者
運転員 警察 地方当局
消防 保健局 救急
政府省庁 地方水道企業
オフサイト緊急時施設
調整グループ会議 議長:警察 設置後の責任範囲:
公衆防護のための活動 情報及び勧告
メディアへの状況説明
オフサイト機関との意思伝達 と調整
政府技術顧問(GTA)
上級政府関係代表者(SGLR)
付図I.2.3 NEBR及びSEERの代表者 NEBRの代表者
(イングランド及びウェールズ)
事業・企業・規制改革省(BERR)
環境・食料・農村問題省(DEFRA)
保健省(DoH)
健康保護庁(HPA)
食料基準庁(FSA)
原子力施設主任検査官(HSE/NII)
環境庁(EA)
気象局
NEBR又はSEER 役割:
省の活動を調整
以下の項目についてメディア及び公衆に情報を知らせる サイト周辺の公衆を保護するための対策
緊急事態の経過 その他の影響 電話による問い合わせ 大臣への報告
SEERの代表者
(スコットランド)
スコットランド行政府
事業・企業・規制改革省(BERR)
健康保護庁(HPA)
食料基準庁(FSA)
原子力施設主任検査官(HSE/NII)
環境庁(EA)
I.3 フランス (1) 緊急時計画
1) 法的基盤と関係機関の役割
原子力事故における規制組織は、原子力安全、放射線防護、社会秩序及び民間防衛に関する法律文 書や緊急時計画で規定されている。2004年8月13日法律「民間防衛の近代化」では、新しいガイドライ ンが規定された。これには、運転計画の徹底調査、公衆を含めた演習能力、公衆の情報や訓練、警報 システム等の更新情報が示されている。さらに、この法律を施行するにあたり、以下の法令が2005年 に発行された。
2005年9月13日法令2005-1156「地方の保障措置計画」
2005年9月13日法令2005-1157「ORSEC計画」:災害時における一般的な緊急時計画
2005年9月13日法令2005-1158「オフサイト緊急時計画(PPIs)」
また、2006年6月13日法律「原子力分野における透明性と安全保障」では、原子力安全局(ASN)がそ の権限内で全ての事柄に関して政府を支援することが規定されている。
緊急時組織は、地方レベル(県と原子力施設立地サイト)と国レベルに区分され、さらにそれぞれ に対して規制側(公的機関)と施設の設置者側(事業者)とに分かれ、全体として4つのブロックで構 成されている。付図I.3.1にフランス電力公社(EDF)の原子炉における事故の場合の緊急事態組織を 示す。地方レベル及び国レベルでの関係機関の役割は、以下の通りである。
地方レベル
緊急事態において、オンサイトについては事業者、オフサイトについては県知事に対して意思決 定を行う権限が与えられている。
事業者
事故を収束させるのに必要な準備と手段(影響の評価と緩和、施設要員の保護、公的機関へ の警告及び定期報告)を行わなければならない。これらの対策は、事業者が作成を義務付けら れているオンサイト緊急時計画(PUI)に詳述される。
県知事
住民及び財産を保護するために必要とされる対策を決定する責任を負う。また、オフサイト 緊急時計画(PPI)の枠内で、機器及び人的資源の調整について責任を負う。住民や地方組織 に対して事故に関する情報を常時提供する。
国レベル
関係省庁は、県知事が取るべき対策に関する助言や物的・人的支援を行う。特に、施設の状態、
当該事象あるいは事故の深刻度及び今後の展開の可能性について評価できるような情報や意見を 提供する。各省庁の役割は、以下の通りである。
内務省
市民防衛・安全局(DDSC)は、省間危機管理運営センター(COGIC)及び原子力危機管理支 援チーム(MARN)を通じて、公衆や財産を保護するために必要な人的・物的支援を県知事 に与える。
保健省
放射線影響に対する公衆の健康保護に責任を負う。
原子力安全を担当する省庁
産業大臣は、責任下にある施設における事象又は事故、あるいは放射性物質の輸送中事故に
ついて国内での調整を行う。
国防総事務局(SGDN)
原子力又は放射線緊急事態に対する省間委員会(CICNR)の事務的役割を担当する。事故時 に計画された対策について関係する省間の活動を調整するとともに、訓練を計画、評価する 責任を持つ。CICNRは、首相主導の下に開催されるもので、緊急事態における政府活動の調 整を担当する。
気象庁
環境に危険物質が放出されるような事故においてリスクがあるのはどこかという観点から、
関係機関を支援する。
原子力安全局(ASN)
2006年6月13日法律で緊急事態管理に関与することが規定された。ASNは、その責任下で全て の疑問に関して政府を支援するとともに、緊急事態が発生した施設の安全性について公衆に 情報を与える。環境省、産業省、保健省の共同管轄下にあり、原子力安全・放射線防護の法 的及び技術的な監督の役割を担う。原子力安全・放射線防護総局(DGSNR)と各地域にある 地域産業・研究・環境局(DRIRE)に設置された原子力安全・放射線防護局(DSNR)で構成 され、DGSNRを通じて、電離放射線に対する健康保護の役割を果たす。なお、DGSNR及び
DSNRは、2006年、ASNに所属することとなった。また、放射線防護原子力安全研究所(IRSN)
は、ASNの技術支援組織である。
フランスの緊急時計画は、事故進展を脅威期(Threat Phase)、放出期(Release Phase)、復旧期
(Post-accidental Phase)といった3つの段階に区分している。
オンサイトについては、これらの段階全てを含むオンサイト計画(PUI)が、ASNが作成したガイダ ンスに基づき、フランス電力公社(EDF)の調整下で、事業者によって作成される。PUIは施設を安全 状態に復旧させ、事故による被害を軽減させることを目的とし、現場で実施すべき組織の施策及び資 源を定義するものである。PUIは、施設や環境の状態、又は事業者の判断により、所定の基準に基づい て事業者によって発動される。1991年1月以来、PUIは、安全解析報告書及び一般運転規則と同様に、
原子力施設で放射性物質を使用する少なくとも6ヶ月前に事業者がASNに提出しなければならない安 全関係資料の一部となっている。これに関連して、PUIはIRSNが分析した上で関連諮問委員会に提出 され、その所見を受けることになっている。
また、オフサイトについては、脅威期及び放出期を含むオフサイト緊急時計画(PPI)が知事によっ て策定される。PPIは、住民を脅威から短期的に保護すること、事業者に外部からの支援を与えること を目的とし、関連するサービス、警報システムの使用法、物的・人的資源の責務を定義している。知 事は、ASNの援助を得て、過酷事故や放射性物質の拡散現象に関する最新データを考慮しつつ、PPI とPUIの間の整合を図る。PPIは、住民を保護する対策(屋内退避、安定ヨウ素剤の投与、避難等)が 必要になった場合に知事により発動される。
2) 事故想定と緊急時計画区域
事故想定の基本的考え方としては、サイトのあらゆる施設の潜在的事故の可能性を考慮しているが、
緊急時計画策定に際しては、水蒸気爆発等による格納容器の早期破損を伴うシビアアクシデントのよ うな極端に確率の低い事象は、除外できるものとしている。これは大型格納容器を用いているという プラントの特徴から起こりえないと考えられているためである(F. Charpin, 2008)。フランスでは、